邪悪を打ち砕く(Destroy Evil)はカードセット「団結のドミナリア」収録のインスタント・カードである。
邪悪を打ち砕くの解説
Serra’s grace most often manifests as a healing touch, but it may also grant a merciful death.
セラの恩寵は大抵の場合は癒しの手として働くが、時として慈悲深き死を与えることもある。
引用:邪悪を打ち砕く(Destroy Evil)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
邪悪を打ち砕く(Destroy Evil)はカードセット「団結のドミナリア」収録のインスタント・カードである。
このカードは2種類の効果があり、唱える時に片方を選んで使用できる。1つ目の機能が「タフネスが4以上のクリーチャー1体の破壊」で、2つ目の機能が「エンチャント1つの破壊」である。
イラストは、セラの天使が鳥人間系ファイレクシアンを成敗している場面である。
では、この「邪悪を打ち砕く」について、カード名やイラスト、カードのメカニズムがどのような意図を込めてデザインされているか、読み解いていきたい。
「邪悪」の正体
まずはカード名。「邪悪を打ち砕く」と和訳されたカード名は「Destroy Evil」なので、「邪悪を破壊する」との意味になる。
次にイラストに目を向けると、ドミナリアを侵略せんとするファイレクシアンが「破壊」される「邪悪」なのは明らかだ。
カード効果も同じく対象の「破壊」で合致している。ところが、「破壊」する対象を踏まえると、このカードにおける「邪悪」とは「タフネス4以上のクリーチャー」か「エンチャント」を指し示すことになる。
これは奇妙だ。どちらもファイレクシアンの一般的な特徴とは言えないものなのだからだ。
いったいどうして「高タフネスのクリーチャーやエンチャント」が「邪悪」すなわち「侵略者ファイレクシアン」と見做されてしまうのだろうか?
その答えは「邪悪を打ち砕く」から遡ること24年前のカード、「隠れ潜む邪悪(Lurking Evil)」にある。
隠れ潜む邪悪
“Ash is our air, darkness our flesh.”
–Phyrexian Scriptures
灰の粉塵が我らの空気、闇が我らの肉体。
–ファイレクシアの聖句
引用:隠れ潜む邪悪(Lurking Evil)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
隠れ潜む邪悪(Lurking Evil)はカードセット「ウルザズ・サーガ」収録のエンチャント・カードである。カードセット「団結のドミナリア」(2022年)から24年も昔の1998年のカードだ。
カードのメカニズムを見ると、ライフ半分(端数切り上げ)を支払うとエンチャントでなくなり、飛行を持つ4/4のファイレクシアン・ホラー・クリーチャーへと変貌する能力を持っている。
イラストにはくちばしの細長い鳥人間タイプのファイレクシアンが描かれている。イラストを見比べてみると一目瞭然。邪悪を打ち砕くのイラストで天使に退治されているファイレクシアンは、この隠れ潜む邪悪だったのだ。
(隠れ潜む)邪悪を打ち砕く
「邪悪を打ち砕く」の「邪悪」の正体は「隠れ潜む邪悪」だと判明した。
カードの機能や特性に注目すると、「邪悪を打ち砕く」は「隠れ潜む邪悪」がエンチャント状態の場合でも、クリーチャー状態の場合でも対象に取って破壊できるモードが備わっている。
したがって、「邪悪を打ち砕く」というカードは、カード名だけでなくイラストでもカードの効果でもそれら全ての面で「隠れ潜む邪悪を打ち砕く」という意味を込めてデザインされているのだ。
邪悪を打ち砕くのストーリー
カードセット「団結のドミナリア」のストーリーでは、新ファイレクシアのシェオルドレッド(Sheoldred)と配下の軍勢はドミナリア次元で戦いを起こした。時代設定AR4562年。
ドミナリアの各地には、3世紀半前(AR4205年)の旧世代のファイレクシアとの戦争の遺物が残されており、シェオルドレッドの勢力はそれらを復元・修理して兵力を拡充させたのである。
何世紀も昔のファイレクシアンである隠れ潜む邪悪(Lurking Evil)が、現代ドミナリアに蘇ったのはこういう経緯があったのだ。
対するドミナリアでは、世界中の各陣営が連合を組んで団結しシェオルドレッドに立ち向かうことになった。その中にはファイレクシアの仇敵であるセラの天使(Serra Angel)の軍団がいた。
遥かな昔と同様に、聖なる天使と古の邪悪が空中で激突するのだった……。
シェオルドレッドの軍勢が復元・修理したファイレクシアの巨像(Phyrexian Colossus)と関連カードについて
さいごに
先日、X(旧ツイッター)で「邪悪を打ち砕く」と「隠れ潜む邪悪」の関係性について解説をしたところ、予想外に多くの方々からの反応を頂いた。知らなかった、デザインが素晴らしい、蘊蓄ネタは面白い、などなど。
私としては、このカードのネタ元がどういうものか余り認知されてなかったことにちょっと驚かされた。皆の興味を惹く話題であると分かったので、この際、本サイトで記録に残しておく意義はあるはずだと考えて、記事化した次第だ。
カードセット「団結のドミナリア」は去年なのでちょっと時期外れ感がないこともないけれど、私は久々に大好きなドミナリアの話ができて楽しかった。
では、今回はここまで。
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