イニストラード:飢えた餌あさり

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飢えた餌あさり(Famished Foragers)はカードセット「イニストラード:真夜中の狩り」収録のクリーチャー・カードである。

最近MTGアリーナで「イニストラード:真夜中の狩り」のクイック・ドラフトをプレイしている。それがきっかけで、再び「真夜中の狩り」のカードを見直す機会が出来たのだが、フレイバー・テキストで首を傾げる文章が色々目についてくる。MTG和訳では、いつも通りのこととはいえウンザリしてしまう。

というわけで、今回もフレイバー・テキストの誤訳を修正して、本来はどういう内容の文章なのかを確認したい。このカードの吸血鬼は一体どんな設定を持たされた存在なのだろうか?

飢えた餌あさりの解説

Furious to find the workshop empty, the starving vampires flew into a frenzy.
無人の作業場に憤怒し、飢えた吸血鬼は狂乱のあまりに空を飛びまわった。
引用:飢えた餌あさり(Famished Foragers)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

飢えた餌あさり(Famished Foragers)

データベースGathererより引用

飢えた餌あさり(Famished Foragers)はイニストラード次元の吸血鬼だ。

カード名そのままに、空腹に苛まれており、食料として血を吸える犠牲者を躍起になって探し回っている。



飢えた餌あさりのフレイバー・テキスト

Furious to find the workshop empty, the starving vampires flew into a frenzy.
無人の作業場に憤怒し、飢えた吸血鬼は狂乱のあまりに空を飛びまわった。

フレイバー・テキストが滅茶苦茶だ。吸血鬼が「空を飛び」回っているというのだが、これがデタラメなのだ。

まず、このカードはゲーム的に見て「飛行」能力はないし、イラストでも空を飛んでいやしない。それでは次に英語原文を確認してみれば、空を飛ぶというのが誤った解釈だとハッキリする。

原文では「flew into a frenzy」と表現されている。この「fly into …」という言い回しなのだが、例えば「fly into a passion/temper/rage/fury」であれば「急にかっとなった・癇癪起こした・激昂した」という意味合いになる表現なのだ。このカードの場合もそれと全く同じだ。

そして細かいことだがもう1点。フレイバー・テキストでの吸血鬼は「the starving vampires」なので複数である。カード名も「Famished Foragers」と複数形だし、イラストにも2人描かれている。つまり、複数の吸血鬼を1枚のカードとして表現したものなのだ。1

フレイバー・テキストを訳し直した

工房が空っぽなことに激昂して、飢えた吸血鬼たちは狂乱状態となった。

フレイバー・テキストを翻訳してみたが、何のことはない普通の文章だ。

イニストラード次元の吸血鬼は、他の大抵の次元にいる吸血鬼と変わりなく、強い吸血衝動を内に抱え続けている。吸血は飢えを満たし身体を維持する生命活動だというだけでなく、吸血行為自体が強い快楽をもたらすのである。

飢えた吸血鬼は危険な存在だ。血と快楽を求め、理性を捨てた野獣と化すこともあるほどだ。この飢えた餌あさりたちは、工房に乗り込んだが誰もおらず激しく怒り、あたりかまわず狂ったように荒らしているようだ。どこかに血がありやしないか、と。

飢えた餌あさりのカード・メカニズム

飢えた餌あさり(Famished Foragers)

データベースGathererより引用

フレイバー・テキストの正しい内容が判明し、この吸血鬼には飛行能力が無いことも確認できた。

では改めて、飢えた餌あさりはカードとしてどんな機能を持たされているのか、見てみよう。

メカニズムその1:吸血鬼

まず1つ目のカード・メカニズム。

「このターンに対戦相手がライフを失っていた場合」という条件を満たせば恩恵が得られるというものだ。これは「イニストラード:真夜中の狩り」で吸血鬼全般に関連付けられた象徴的なメカニズムだ。おそらくは相手に血を流させたことで、吸血鬼の吸血衝動が満たされる、といった具合なのだろう。

飢えた餌あさりの場合は、戦場に出た時に条件を満たせていると、赤マナ3点が手に入る。このカード自体が4マナなので、差し引き1マナで4/3クリーチャーが出せた計算になる。こうなれば、非常にお得だ。

対戦相手がライフを失い、この吸血鬼たちは血の匂いを嗅ぎつけて狂喜して集まって来たのだろうか?

メカニズムその2:ラミッジ

もう1つのメカニズムはいわゆる「ラミッジ(rummage)」と呼ばれるものだ。

「ラミッジ」とは「ひっかき回して捜す」「くまなく捜索する」といった意味だ。MTGでは、「先にカードを捨て、その後にカードを引く」というメカニズムを指して用いられる開発部用語である。ラミッジは赤が得意としている。

飢えた餌あさりの場合は、赤を含んだ3マナを払って手札からカードを1枚捨てることで、新たにカードを1枚引くことができる。ちなみに、先述したメカニズムによって手に入る赤マナ3点の使い道としても活用可能だ。

このカードのラミッジ機能だが、カード名やフレイバー・テキスト、イラストを鑑みるに、飢えた吸血鬼たちが周囲をひっかき回して血を捜し求めている、という姿にピタリと符合している。もっと、もっと血が欲しい。

メモ:ラミッジ

かき回すゴブリン(Rummaging Goblin)

かき回すゴブリン(Rummaging Goblin)
データベースGathererより引用

ラミッジ(rummage)」は日本ではほとんど使われているのを聞いたことが用語である。語源はこの能力を持ったクリーチャー・カードであるかき回すゴブリン(Rummaging Goblin)のカード名の「Rummaging」だ。

私の個人的な経験であるが、海外のプレイヤーによる動画配信などを見ていると結構「ラミッジ」という言葉が耳に入ってくる。ちゃんと俗語として使われてるんだなと実感したものだ。

公式和訳記事では語源のカード翻訳に合わせて「かき回し」と訳されているが、こっちも全然定着していない。「ラミッジ」も「かき回し」も日本人には意味がピンとこない言葉だからだろう。そもそも「ひっかき回して捜す」を意味する「Rummaging」を、「かき回す」なんて置き換えたのが意味合いが伝わりにくい上に用語としても馴染まなかった発端だと思うのだ。

ちなみに、検索したところ知ったのだけれど、日本のMTG wikiで「Rummage」が開発部用語として使われていたのは2018年までといった旨が記述されていたのだが、全然そんなことはなく2022年現在でもばんばん使われている。



さいごに

こうして見直すと、今までは大したカードじゃないと思っていた飢えた餌あさり(Famished Foragers)だが、意外や意外にも細部まで設定面に配慮した、こだわりのデザインだったようだ。地味だけどキチンとつじつま合わせしてあるのが好印象である。

まあ個人的な評価を上げはしたけれど、「イニストラード:真夜中の狩り」のドラフトで私はこのカードをピックしないと思うけれどね(私は青黒のゾンビが好きなので、いつもそっちを目指してしまい過ぎるのだ……)。

では、今回はここまで。

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