らせん樹の滑空獣(Helica Glider)はカードセット「イコリア:巨獣の棲処」収録のクリーチャー・カードである。
前回までに、イコリア:巨獣の棲処で久しぶりに再登場を果たしたMTGのレア生物を紹介してきた。ブラッシュワグ(Brushwagg)(24年ぶりの新種)とナール(Gnarr)(14年ぶりの新種)である。
そして実は、このらせん樹の滑空獣(Helica Glider)もレアなクリーチャー・タイプ「リス」を持つクリーチャーである。通常のカードセットで「リス」がクリーチャー・カードとなったのは、カードセット「オデッセイ」以来、19年ぶりである。1
といわけで、今回はレア生物つながりで取り上げてみた。
らせん樹の滑空獣の解説
It could subsist on seeds but its preferred fare is your face.
種を食べて生きることもできるが、食べ物としては種よりも顔を好む。
引用:らせん樹の滑空獣(Helica Glider)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
らせん樹の滑空獣(Helica Glider)はイコリア次元に生息するリス・ナイトメアである。ムササビのような膜があり滑空することができる。肢の数は6本あるが、これはイコリア次元のナイトメアの特徴である。真っ黒で丸い目は左右で3個ずつある。
フレイバー・テキストによると、らせん樹の滑空獣は種を常食としているが、種よりも顔の方がご馳走なのだという。らせん樹の上から滑空して人の顔を狙って襲うのだろう。メカニズム上は、飛行か先制攻撃のどちらかを選択して持つ機能があるが、滑空が飛行に対応するとして、先制攻撃の方は思わぬ樹上からの奇襲あたりを表しているのだろうか。
この滑空獣が住み家とするらせん樹(Helica Tree)とはどういった植物なのか次項で解説する。
らせん樹
らせん樹(Helica Tree)とはイコリア次元インダサ(Indatha)の樹木。根元から成長した幹は複数に分かれし、互いに巻きついて二重らせんを作り出す。樹冠2は葉が茂って広がりをなしている。
Crystals nestle in the roots of Indatha’s helica trees as if being nurtured by their embrace.
水晶はインダサのらせん樹の根に抱かれている。まるでその抱擁に育まれているかのようだ。
引用:インダサの水晶(Indatha Crystal)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
らせん樹の中には、水晶や何かを包み込んで成熟していくものもある。こうして曲がって歪んだ形になったらせん樹は、ある種の夜行性生物を惹きつけるようだ。
19年ぶりのリス
冒頭でも書いたように、このらせん樹の滑空獣は19年ぶりの新種のリス・クリーチャー・カードである。カードではなく、リス・トークンの方はそれなりに存在しているイメージがあったが、通常のカードセットでリス・トークンが収録されたのだって14年前のカードセット「時のらせん」が最後だったという。ジョークセットや特殊な製品ではそこそこリスの姿があったので、19年ぶりと知って驚いた。
なぜリスは19年間も新種に恵まれなかったのだろう?
マーク・ローズウォーターが記事Ikoria of the Beholder, Part 1(公式和訳『イコリア』の目 その1)で語ってくれている。
私は『オデッセイ』のカード名やフレイバーテキスト、クリーチャー・タイプと、セットのデザインの責任者になっていて、リスを1/1の緑のクリーチャー・トークンの標準として使っていた。それがやりすぎとなって、ブランド・チームから、リスをマジックから取り除くようにとの要請が来たのだ。そして正式に禁止されることになった。
和訳記事『イコリア』の目 その1より抜粋
リスの大ファンだというローズウォーターは、カードセット「オデッセイ」でやり過ぎてしまったため、ウィザーズ社からリスが禁止されてしまったのだという。それで長年の地道な努力を続けて、開発部内のリス嫌悪者(Squirrel haters)を減らし、リス・ファンを増やしていき、ようやく「イコリア:巨獣の棲処」でリスを収録できたのだという。
そして、『イコリア』で、我々の尽力が報われるときがきた。そう、ただのコモンで小さな2/2のクリーチャーだが、障壁を打ち破り、あとに続く道を作ったのだ。リス愛好者よ、喜ぶがいい。我々は長年抑圧されていたが、ついにリスがスタンダード・セットに帰ってきたのだ!
和訳記事『イコリア』の目 その1より抜粋
ただのリスになんと大げさなと思わないでもないが、ローズウォーター氏のこういうこだわりは嫌いじゃない。
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