カー砦のコボルド(Kobolds of Kher Keep)はカードセット「レジェンド」初出のクリーチャーである。
今回はドミナリア次元のカー砦(Kher Keep)に居住するコボルドと、カー地方に君臨するドラゴン、プローシュ(Prossh)について取り上げる。
追記(2022年11月23日):本サイトにおける「カー分水嶺」表記を「カー山脈」表記に改定する旨を記した。また、カードセット「兄弟戦争」の新カード、カー峠の暴君(Tyrant of Kher Ridges)の情報を記事に反映した。それに伴い最後の「考察」節の内容を書き替えた。
カー砦のコボルドの解説
Kher Keep is unique among fortresses: impervious to aerial assault but defenseless from the ground.
カー砦は要塞の中でも珍しい部類だ。空からの襲撃に動じることはない一方で、地上の守りはからっきしなのだ。
引用:Kobolds of Kher Keepのフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳
Kobolds of Kher Keepつまりカー砦のコボルドはカードセット「レジェンド」収録のクリーチャー・カードである。カー砦のコボルドは、ドミナリア次元テリシア地方カー山脈の山中にあるカー砦(Kher Keep)を住み処とするコボルドだ。
このカード自体は和訳され印刷されたことが無いのだが、同名のコボルド・トークンを生成するカードが複数存在しているために、そちらで「カー砦のコボルド」と和訳されている変わった存在なのだ。
カー砦のコボルドの設定
カー砦のコボルドの設定は、この種族に関係する伝説のクリーチャー・カードの解説記事に見ることができる(解説記事リンク1、リンク2、リンク3)。それらの情報をまとめると以下の通りだ。
カー砦(Kher Keep)に住むコボルドは偉大なるドラゴン、プローシュ(Prossh)を神同然に崇拝している。信仰の中心教義は、神に相応しい振る舞いをせよ。すなわち、略奪し、焼き払い、通った後に恐怖を撒き散らすのだ。この理想に生きるコボルドは、プローシュの卵からドラゴンとして生まれ変われると信じられているほどだ。
また、コボルドの信者の中には、同胞の助命のために神たる「大首領様(His Mighty Overlordship)」に自分の身を捧げる者もいる。プローシュは飽くなき捕食者であり、信者の死はその力をさらに強めることとなる。
カー砦のコボルドのキャラクターとして、伝説的な暴君ロフガフフ(Rohgahh)、その息子のログラクフ(Rograkh)、遠い子孫のロズナクフト(Rosnakht)が知られている。
コボルドの身体的特徴
ドミナリア次元のコボルドは様々な外見をしているものの、一般的には小型で非力な人型種族である。
肌の色は赤、青、緑、黒とこちらも幅が広い。親子関係でも肌の色が違う例が確認できる(ロフガフフとログラクフ)。
初出時のカードセット「レジェンド」時には赤い肌のコボルドが大半であった。カードセット「時のらせん」以降では、種族的な統一された特徴として、大きな鼻と、真横に長く突き出た三角の耳を持つ種族として描かれている。
カー砦のコボルドのフレイバー・テキスト
Kher Keep is unique among fortresses: impervious to aerial assault but defenseless from the ground.
カー砦は要塞の中でも珍しい部類だ。空からの襲撃に動じることはない一方で、地上の守りはからっきしなのだ。
カー砦のコボルドのフレイバー・テキストを解釈する。
カー砦とプローシュの設定が拡充した現在の視点から見ると、空はドラゴンがいるため難攻不落だが、地上には非力なコボルドばかりで守りが弱い、との意味合いに理解できる。
しかし、プローシュはカー砦のコボルドよりも18年も経ってから登場したキャラクターであるから、初出時には違った含みを持った文章だったと考えられる。
カードセット「レジェンド」当時には、カー地方に関するカードはコボルドを除けば、カードセット「リミテッドエディション(基本セット第1版)」収録のRoc of Kher Ridgesしか存在していなかった。だから、当初はこのロック鳥がカー砦の空の守りと想定されていたのだろう。
カー砦
カー山脈(Kher Ridges)はドミナリアの北半球、テリシア群島の新アルガイヴに位置する分水嶺だ。
「Kher Ridges」の公式和訳は「カー峠」であるが、世界地図にもはっきりと記されるほどの山脈地帯を「峠」と訳す感覚は普通ではないだろう。「Ridges」は「分水嶺」という意味であり、「峠」のようなごく狭い場所のみを指す言葉ではないのだ。
本サイトでは、この山脈は長い間「カー分水嶺」と訳してきたが、これを見直して「カー山脈」表記とすることにした。
現実世界の地理において、山脈地帯の英語名称で「Ridges」とつけられることは少なくないのだが、日本語に置き換えて「分水嶺」とは中々しないものだ。「Mountains」と被って区別がつかなくなるが分かりやすい「山脈」表記が好まれているような感触があった。だからそれに倣ったのだ。
カー砦(Kher Keep)は新アルガイヴ島の山脈地帯であるカー山脈の南部に築かれた要塞である。
カーの山脈一帯はドラゴンのプローシュ(Prossh)が君臨しており、カー砦にはプローシュを崇拝するコボルドが住んでいる。
カードとしてのカー砦
“They’re still here?! The cockroach may have finally met its match.”
–Teferi
「まだいたのか?! ゴキブリもついに敵とご対面か。」
–テフェリー
引用:カー砦(Kher Keep)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
カー砦(Kher Keep)はカードセット「時のらせん」初出の伝説の土地カードである。
このカードは、裂け目時代(AR4306-4500年)のカー砦を表したものだ。ドミナリア次元全体が荒廃し尽くしたこの時代にあってもカー砦のコボルドはしぶとく生き延びていたのだ。
フレイバー・テキストを見ると、テフェリー(Teferi)はこの砦とコボルドの在り様を見て、「ここにまだいたのか?!ゴキブリもついに好敵手を得たな。」1と驚きを示した。
それから60年が経ったAR4560年にはドミナリアは世界的な復興を成し遂げた。カー砦も同じである。この年にはプローシュと配下のコボルドは、新アルガイヴの首都アーギヴィーアに攻撃を計ったが、ヤヤ・バラード(Jaya Ballard)の支援を受けたアルガイヴの兵団に阻まれた。
カーの空奪い、プローシュ
カーの空奪い、プローシュ(Prossh, Skyraider of Kher)はカードセット「統率者2013」初出の伝説のクリーチャー・カードである。
プローシュはテリシアのカー地方に君臨するドラゴン男性で、カー砦のコボルドから神として崇められている。プローシュの支配がいつの頃から始まったのか不明であるが、AR4562年現在でもこの飽くなき捕食衝動を抱えた暴君は健在である。
プローシュ自身の設定は公式解説記事(リンク)で語られている。以下の通りだ。
プローシュは毎日夜明けに空を舞い、獲物を追い、自分のものだと主張する土地を監視して回る。遠方からドラゴンの羽ばたきが聞こえてくると、領民たちは慌てふためき、ドラゴンの炎から身を守れる避難場所を探して走り回る。もしたった1人でも狩人が縄張りを侵せば、プローシュはその罰に村を丸ごと更地にしてしまう。貢ぎ物を納めぬ者ならば、生きたまま焼かれることになる。
カーのドラゴン
カー地方のドラゴン・カードやトークンには、プローシュと同じ特徴を備えたイラストが描かれている。
カードセット「未来予知」のカー峠2の災い魔(Scourge of Kher Ridges)やカードセット「団結のドミナリア」のドラゴン・トークンが該当する。
頭からうねりを伴い曲った長い角を複数生やし、全体的に暗い体色を示し、両翼の翼膜は炎を噴き上げている。明らかにプローシュの同族である。あるいは、プローシュがカーのドラゴンの祖なのかもしれない。
カー峠の暴君
In war, dragons don’t see sides, just side dishes.
戦争においてドラゴンは味方など気にしないが、味は気にする。
引用:カー峠の暴君(Tyrant of Kher Ridges)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
カー峠3の暴君(Tyrant of Kher Ridges)はカードセット「兄弟戦争」収録のクリーチャー・カードである。
このカードの登場によって、アンティキティー戦争期には既にカー山脈にドラゴンが生息していたと確定した。
翼は燃えていないものの、うねる長い角はプローシュ系のドラゴンの特徴である。
考証:カー砦のコボルドとプローシュの起源
コボルドのカー砦がいつ建造されたものか、カー山脈に君臨するドラゴンのプローシュがいつ現れたのか、時代を特定できるほどの情報はない。伝説のカー砦のコボルドであるロフガフフおよび息子のログラクフがいつの時代の人物であるかも不明である。
アンティキティー戦争期をかなり詳細に描写した小説The Brothers’ Warでは、カーはロック鳥の存在が語られる程度であったし、カーの山脈内での戦争行為は発生していたがプローシュやコボルドが関わってくるといった状況も皆無であった。それどころかドラゴンやコボルドの言及すら作中には出て来ない。
具体的には作中描写を読むとカー山脈を越えて進軍したり、飛行機械編隊が上空を飛んだり、山中が戦場になったり、山腹や峡谷に前哨地や塔が建設されたりしていた。縄張り意識の高いプローシュがこうした狼藉に一切口を挟んで来ないのは不自然であった。
ところが、カードセット「兄弟戦争」でカー峠の暴君(Tyrant of Kher Ridges)が収録されたことで、単に語られていない行間に(コボルトはともかく少なくとも)ドラゴンが存在していたと解釈せざるを得なくなった。
コボルドの方に視点を変えて、カー砦のカードのフレイバー・テキストに着目すると、テフェリーがカー砦とコボルドを知っていたことが分かる。テフェリーがAR4205年にドミナリアを離れてAR4500年に戻ってきて、それからの発言となる。したがって、カー砦とコボルドはAR4205年のファイレクシア侵略戦争以前には既知の存在だったことになる。
以上をまとめると、カー砦とコボルド、プローシュの起源は定かではないが、カー山脈には少なくともアンティキティー戦争期にはドラゴンがおり、カー砦とコボルドはAR4205年以前に既知であった。これだけは分かっている……これしか分かっていない。
さいごに
カー山脈の砦、コボルド、ドラゴン、プローシュをまとめた。それなりに公式情報は見つかるというのに、AR4560年代現在を除けば年代が全く特定できなくて当惑している。
兄弟戦争期にドラゴンが出現したせいで増々もって分からなくなってしまったぞ。
では、今回はここまで。
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