兄弟戦争:ミシュラの鋳造所

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ミシュラの鋳造所(Mishra’s Foundry)カードセット「兄弟戦争」収録の土地カードである。

今回は、ミシュラの鋳造所がストーリー作品でどのような扱いであったかを解説する。更に、ミシュラの鋳造所の関連カードからファラジ帝国の技術者に関する諸々へと話を脱線させて広げていく。

追記(2022年12月14日):MTGアリーナにカードセット「アルケミー:兄弟戦争」が実装されて鋳造所の地壊し(Foundry Groundbreaker)の公式和訳とフレイバー・テキストが判明したため、それに応じて編集を加えた。

ミシュラの鋳造所の解説

ミシュラの鋳造所(Mishra's Foundry)

ミシュラの鋳造所(Mishra’s Foundry)
データベースGathererより引用

ミシュラの鋳造所(Mishra’s Foundry)はカードのメカニズム上は、カードセット「アンティキティー」に収録された「ミシュラの工廠(Mishra’s Factory)」の派生カードだ。

ミシュラの工廠(Mishra's Factory)

ミシュラの工廠(Mishra’s Factory)
データベースGathererより引用

ミシュラの工廠は土地であるが2/2の組み立て作業員・アーティファクト・クリーチャーに変わることができ、更に組み立て作業員のパワーとタフネスを上昇させる機能も持たされている。ミシュラの鋳造所も基本は同じ。ただし、組み立て作業員になるための起動コストが増えたり、パワーとタフネスの強化は倍になったが攻撃中の組み立て作業員しか対象にできなくなったとの制約がついたりしている。

ミシュラの鋳造所は名前を変えたただのバリエーションかというとそうでなく、ちゃんとストーリー上で登場していたものだ。小説The Brothers’ Warでは、ミシュラのファラジ帝国は領地や進軍先にこの種の鋳造所を幾つも建造していたのである。



ミシュラの鋳造所のストーリー

苦々しい再会(Bitter Reunion)

苦々しい再会(Bitter Reunion)
データベースGathererより引用

AR26年、コーリスの平和会議においてミシュラは6年ぶりに兄ウルザと再会した。ウルザがヨーティア首都クルーグで立派な工廠を構え、タウノスを始めとする20人もの弟子を従えていると知って、嫉妬心を抱いた。

マク・ファワを手懐ける者、ミシュラ(Mishra, Tamer of Mak Fawa)

マク・ファワを手懐ける者、ミシュラ(Mishra, Tamer of Mak Fawa)
データベースGathererより引用

なぜならミシュラはこれまでの数年間、主君である長王の命じに従いファラジの統一に向けてずっと奔走してきたのだ。ミシュラは自分のウィークストーンや、ドラゴン・エンジンを詳しく調査する暇さえ与えられなかった。後にミシュラは、平時であったなら小規模でも鋳造所や研究所を建てたかったと語ってもいた。

ミシュラの工廠(Mishra's Factory)

ミシュラの工廠(Mishra’s Factory)
データベースGathererより引用

AR28年、クルーグの戦いで長王が戦死したことで、ミシュラは新たなファラジ帝国の長王として君臨することになった。絶大な権力を手にしたミシュラは、占領したヨーティア内で発見した巨大な樹木の洞に自分の工廠兼宮廷を建造したのである。

Mishra's Workshop

Mishra’s Workshop
データベースGathererより引用

そこには鋳造所や作業場(Workshop)が設けられており、ファラジ帝国製のドラゴン・エンジンや様々な自動機械、アシュノッドの人体改造機などが開発され、続々と生産されていった。

ミシュラの鋳造所(Mishra's Foundry)

特別版イラストのミシュラの鋳造所(Mishra’s Foundry)
データベースGathererより引用

ミシュラのファラジ帝国はウルザの陣営と40年近くの戦争を繰り広げるが、帝国の支配領域や帝国軍が進軍した先にはミシュラの鋳造所が幾つも建造されていくこととなった。

ミシュラの鋳造所に言及するカード

ミシュラの鋳造所と密接な関連を持つカードが1つ存在している。

鋳造所の地壊し

On Argoth, Mishra forced the land to serve him.
アルゴスの地で、ミシュラは大地を力づくで従わせた。
引用:鋳造所の地壊し(Foundry Groundbreaker)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下がMTGアリーナ和訳版

鋳造所の地壊し(Foundry Groundbreaker)

鋳造所の地壊し(Foundry Groundbreaker)
公式カードギャラリーより引用

鋳造所の地壊し(Foundry Groundbreaker)はMTGアリーナ専用のカードセット「アルケミー:兄弟戦争」収録のクリーチャー・カードである。

このクリーチャーが戦場に出た時に土地1つを生け贄にして、代わりにミシュラの鋳造所(Mishra’s Foundry)2枚をタップ状態で戦場に創出する。

カード名で「地壊し」と訳された「Groundbreaker」は「草分け・先駆け・開拓者」と言った意味合い。それを踏まえるなら、このカードは土地を切り拓いて鋳造所を建設するファラジ帝国の工兵や技術者ということになるだろう。イラストには、巨大な鋏のような装置を持つ人物と、樹木を伐採する自動機械が描かれている。樹木は幹全体が白っぽいことに加えてフレイバー・テキストの内容から、ここはアルゴス島で間違いない。

※ ここから先はミシュラの鋳造所からどんどん脱線して行くので注意。

以上のように、鋳造所の地壊しはミシュラの鋳造所に直接言及するカードなので本記事で取り上げる意義があるカードだ。だが、私にとってはそれだけに留まらず、未解決の1つの「謎」を解く「鍵」となったことが重要だった。

その重要な「鍵」とは、イラストの人物が「ファラジ帝国所属」と確定できたことだ。

ファラジ帝国の技術者

今度は鋳造所の地壊し(Foundry Groundbreaker)に描かれた人物の格好に注目して確認する。

赤い半袖の服の上に、鉄製と思われる手甲や胸当てを装着し、ベルトにはポーチを付けている。そして、後頭部にかけて緩やかに広がった形状の、全体が黒で縁取りのラインが入った兜を被っている。

鋳造所の地壊し(Foundry Groundbreaker)

鋳造所の地壊し(Foundry Groundbreaker)
公式カードギャラリーより引用

これがファラジ帝国所属の技術者の姿だ。

実はカードセット「兄弟戦争」にはこれと同じ格好のイラストが複数存在していた。しかし、私は所属陣営がどこか読み取れずに困っていたのである。

この「謎」が鋳造所の地壊しの出現という「鍵」によって一気に氷解。ファラジ帝国所属と判明してスッキリした、というわけだ。

該当するカードは次の3種類だ。廃品置場の天才(Junkyard Genius)ドワーフの炉の詠唱者(Dwarven Forge-Chanter)軍拡競争(Arms Race)

順番に見ていこう。

廃品置場の天才

廃品置場の天才(Junkyard Genius)

廃品置場の天才(Junkyard Genius)
データベースGathererより引用

廃品置場の天才(Junkyard Genius)カードセット「兄弟戦争」収録のクリーチャー・カードである。

ファラジ帝国の人間工匠だ。廃品置き場のジャンクパーツ利用に際して才能を発揮する。

ドワーフの炉の詠唱者

ドワーフの炉の詠唱者(Dwarven Forge-Chanter)

ドワーフの炉の詠唱者(Dwarven Forge-Chanter)
データベースGathererより引用

ドワーフの炉の詠唱者(Dwarven Forge-Chanter)カードセット「兄弟戦争」収録のクリーチャー・カードである。

ファラジ帝国に与したドワーフの魔術師系技術者のようだ。

兄弟戦争においては、テリシア大陸東部のサルディア山脈のドワーフ諸王国1が戦いに巻き込まれて滅亡している。当初はアルガイヴ連合王国側と友好関係を結んでいたドワーフは、ファラジ帝国側にも通じていたとされて、ウルザのアルガイヴ連合軍に滅ぼされたのだ。そうした経緯の中で、このドワーフ技術者はファラジ側についたのだろう。

軍拡競争

“You want it good, fast, or cheap? You can’t have all three.”
「強くしたいか、速くしたいか、それとも安くしたいか?三つ全部は無理だよ。」
引用:軍拡競争(Arms Race)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

軍拡競争(Arms Race)

軍拡競争(Arms Race)
データベースGathererより引用

軍拡競争(Arms Race)カードセット「兄弟戦争」収録のエンチャント・カードである。

イラストでは多脚型自動機械を整備する人物が描かれている。メカニズムやフレイバー・テキストを考慮するに、機械に応急処置を施して出撃させるものの、それ1度きりで機械は壊れてしまう、というカードらしい。

ちなみに多脚系メカはファラジ帝国陣営に多く見受けられる。このカード・イラストのタイプは他のカードにも登場している。

以上、カードセット「兄弟戦争」のカード3種類のイラストがファラジ帝国所属の技術者だったのだ。



ファラジ帝国の技術者のデザイン

ミシュラの鋳造所を建造する技術者の格好から、今まで所属不明だった3種類のカードも同じファラジ帝国所属の技術者だと判明した。

ここでもう一歩、ファラジ帝国の技術者の格好に関して踏み込んで話を進めたい(本記事の主軸であるミシュラの鋳造所からは更に外れてしまうが……)。

デザインの元ネタ

赤い半袖の服の上に、鉄製と思われる手甲や胸当てを装着し、ベルトにはポーチを付けている。そして、後頭部にかけて緩やかに広がった形状の、全体が黒で縁取りのラインが入った兜を被っている。

先述したように、これが技術者に共通するスタイルだ。

カードセット「兄弟戦争」では、既存の元ネタからデザインをしている例が数多く確認できる。例えば、ファラジ帝国の軍人の装備は小説The Brothers’ Warの描写に倣ったものだ。作中では磨かれた真鍮製の防具の記述があり、幅広の兜あるいは帽子、重々しい肩飾り、その他を装備している。そして、歩兵の武器の中には曲刀や槍が言及されていた。

忠実な護衛、ハジャール(Hajar, Loyal Bodyguard)

忠実な護衛、ハジャール(Hajar, Loyal Bodyguard)
データベースGathererより引用

この忠実な護衛、ハジャール(Hajar, Loyal Bodyguard)のイラストでは、ちゃんと真鍮の鎧兜を身に着けている。二振りの偃月刀を持つのも小説作中のハジャールと一緒である(小説では背中で交差するように、2本の剣を差していた)。

こうしたこだわりは、ファラジ技術者の格好でも同様であるはずだ。どこかに元ネタがある。それはどこか?(ちなみに小説The Brothers’ Warには元ネタは見つけられなかった。)

答えは「ファラジ帝国最高位の技術者」すなわち「工匠長王ミシュラ」その人であった。

ミシュラの兜

Mishra

Mishra
データベースGathererより引用

ヴァンガード版ミシュラのイラストをよく観察してほしい。兜が技術者のものと似ていると気付くだろう。

廃品置場の天才(Junkyard Genius)

廃品置場の天才(Junkyard Genius)
データベースGathererより引用

緩やかに広がる形状で、色は黒だが、縁取りがある。技術者の兜との違いは、装飾がミシュラの方が豪華な点だが、ファラジ帝国長王という地位を考えれば華美になるのは自然なことだ。

内骨格器(Endoskeleton)

内骨格器(Endoskeleton)
データベースGathererより引用

カードセット「ウルザズ・サーガ」収録のカードでもミシュラは全く同じ兜を被って描かれている。

ミシュラは優れた工匠つまり技術者であり、「工匠長王(Artifice Qadir)」という敬称でも呼ばれている。彼は帝国の頂点であると同時に、最高位の技術者なのだ。とすれば、「兄弟戦争」で一般技術者のデザインを描き起こすとなった際に、ミシュラの格好を簡素化してダウングレードするというアプローチは十分あり得る選択となる。

20数年前の既存のミシュラのイラストから装飾を全部取り払い、防具も最小限に差し替え、簡素な作業服の上に、ベルトを増やして、道具や小物を入れた便利なポーチを幾つも持たせて……。そうして導き出された回答が、名残りはほとんど兜だけになってしまったけれど、現在の技術者のデザインだった。

つまり、ミシュラのダウングレード版デザインが、ファラジ帝国の一般技術者の格好の元となっている。私の考えはこうだ。



さいごに

カードセット「兄弟戦争」も味わい尽くしていないのに、もうすぐMTGアリーナでは次の「アルケミー:兄弟戦争」が実装されてしまう。なんとも忙しない。

今年はMTG30周年目前とはいえ、製品数が異常に多く、そのラインナップには批判意見も出ている。私もクリエイティブ解説記事をおざなりにしたままで、次の製品リリースに移っていく現在のウィザーズ社の姿勢は好きではない。以前と同じく腰を落ち着けてほしいものだ。

まあ今回は「アルケミー:兄弟戦争」のプレビュー・カードのおかげで、「謎」が1つ解けたのでそれ自体は悪くなかったのだけれどね。

では、今回はここまで。

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