ヴィルディン群れの頭目、ラヒルダ(Rahilda, Vildin-Pack alpha)はイニストラード次元のキャラクターだ。
今回、MTGアリーナ限定のカードセット「アルケミー:イニストラード」において、伝説のクリーチャーとしてカード化されることになった。ラヒルダは人狼なので表が人間形態の指名手配の殺し屋、ラヒルダ(Rahilda, Wanted Cutthroat)で、裏が人狼形態の残忍な無法者、ラヒルダ(Rahilda, Feral Outlaw)である。
今回は、ラヒルダ本人と、彼女の率いるヴィルディン群れを取り上げる。
追記(2021年12月10日):MTGアリーナに実装を確認したので和訳名やフレイバー・テキストなどを追加した。ちなみに、裏面のフレイバー・テキストの確認はプレイ中でなければできないので、確認のためだけに神話レア・ワイルドカード4枚消費してラヒルダと交換した。
ヴィルディン群れの頭目、ラヒルダの解説
“The coin is good . . . ”
「金貨は良い…」
引用:指名手配の殺し屋、ラヒルダ(Rahilda, Wanted Cutthroat)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下がMTGアリーナ和訳版
指名手配の殺し屋、ラヒルダ(Rahilda, Wanted Cutthroat)は伝説のクリーチャーとしてカード化されたラヒルダ(Rahilda)の人間形態である。イニストラードの人狼の例にもれず両面カードであり、裏面は人狼形態の残忍な無法者、ラヒルダ(Rahilda, Feral Outlaw)である。
ラヒルダはイニストラード次元の人狼女性であり、人間形態時は編んだ髪を長く垂らしフードを目深に被っている。
彼女は脱獄した残忍な殺人犯であるとともに、ヴィルディン(Vildin)の吠え群れを率いる頭目である。
残忍な無法者、ラヒルダ
“But the hunt is better.”
「だが狩りはもっと良い。」
引用:残忍な無法者、ラヒルダ(Rahilda, Feral Outlaw)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下がMTGアリーナ和訳版

残忍な無法者、ラヒルダ(Rahilda, Feral Outlaw)「アルケミー:イニストラード」公式カードギャラリーより引用
残忍な無法者、ラヒルダ(Rahilda, Feral Outlaw)は変身した人狼形態のラヒルダだ。この姿になっても人間形態と同様に編み込んだ髪の房が確認できる。
ラヒルダの率いるヴィルディン群れは最も悪名高い吠え群れの1つに数えられ、人狼となる前に殺人を犯した者のみを群れへと呼び寄せ仲間とする。活動範囲はステンシア州の高地やケッシグ州のナッターノールズだ。
ヴィルディンは大天使アヴァシンによる「呪い黙らせ(Cursemute)」が終わった後に出現したとされる。したがって、カードセット「イニストラードを覆う影」でアヴァシンが狂気に陥ったすぐ後の時期に形成された吠え群れと思われる。
「vild」は北欧系の言語で「wild」を意味する単語のようなので、「ヴィルディン(Vildin)」はその変形と思われる。
ヴィルディン群れの活動するケッシグ州ナッターノールズに関しては別の記事で解説している

ヴィルディン群れの頭目、ラヒルダというキャラクターの経緯
ラヒルダはカードセット「イニストラードを覆う影」で初登場したキャラクターで、設定集で解説された人物だ。
「イニストラードを覆う影」の放たれた怒り(Uncaged Fury)のフレイバー・テキストで、ラヒルダは「ヴィルディン群れの頭目、ラヒルダ」として登場しており、同時収録されたヴィルディン群れの頭目(Vildin-Pack Alpha)が(伝説のカードではないが)彼女を描いていると考えられた。
以上2種類のカードは、ラヒルダ本人を描いたものとしか思えないものだ。とはいえ、ラヒルダの設定がまずあって、それに応じてカード(のイラストやフレイバー・テキスト)が制作されたものか。それとも、出来上がったカードのフレイバー・テキストやイラストを結び付けてラヒルダというキャラクターに肉付けをしたのか。クリエイティブの舞台裏では、そのいずれであったかは定かではない。
その後、物語上2年後設定のカードセット「イニストラード:真紅の契り」でも、収録の夜へ(Into the Night)のフレイバー・テキストで存在が確認でき、大患期を生き延びたと判明した。
そして同年のカードセット「アルケミー:イニストラード」で伝説のクリーチャーとしてカード化を果たした。
ヴィルディン群れの頭目、ラヒルダの関連カード
ガイアー岬の山賊
The cathars realized they had not tracked her—she had led them here.
聖戦士たちは気づいた。あの女の後をつけていたつもりが、ここにおびき寄せられたのだと。
引用:ガイアー岬の山賊(Geier Reach Bandit)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
ガイアー岬の山賊(Geier Reach Bandit)はカードセット「イニストラードを覆う影」収録のクリーチャー・カードである。変身するとヴィルディン群れの頭目(Vildin-Pack Alpha)となる。
「ガイアー岬」と訳された「ガイアー・リーチ(Geier Reach)」はステンシア州に広がる大山地帯である。このカードはその地の山賊であるが、ただの人間の山賊ではなく、ヴィルディン群れの頭目の人としての姿なのだ。
カード化されたラヒルダのイラストは、このカードとそっくりに描かれている。ただし、このカードにはラヒルダの特徴である編み込んだ髪が描かれていない(フードの中に隠れているだけかもしれないが)。
ヴィルディン群れの頭目
ヴィルディン群れの頭目(Vildin-Pack Alpha)はカードセット「イニストラードを覆う影」収録のクリーチャー・カードである。ガイアー岬の山賊が変身した裏面が人狼形態のこれだ(条件を満たすと元の姿に戻る)。
ヴィルディン群れの頭目という名称から考えて、伝説のクリーチャーではないが明らかにラヒルダ個人を描いたとみなされているカードだ。ただし、このカードでも編み込んだ髪は描かれていない。
放たれた怒り
“It’s right to fear those that you keep locked away.”
–Rahilda, Vildin-Pack alpha
「しまい込み続けてきたものを恐れるのは正しい。」
–ヴィルディン群れの頭目、ラヒルダ
引用:放たれた怒り(Uncaged Fury)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
放たれた怒り(Uncaged Fury)はカードセット「イニストラードを覆う影」収録のインスタント・カードである。
まずフレイバー・テキストから見ていこう。
和訳製品版で「しまい込み続けてきた」と訳されてる部分は、原文では「keep locked away」である。「lock away」は「(ものを)しまい込む」「(ものや誰かを)閉じ込める」の意があるので翻訳としては誤りではない。とはいえ、このカードのイラストと合わせて解釈すると、もう一歩ニュアンスが足りないと感じてしまうのだ。
イラストでは牢獄の檻を破壊して、人狼が飛び出してきた場面だ。ならば、「lock away」されていたのは人狼であるので、「監禁する・幽閉する」といった含みがあると解釈するのが妥当に思える。
さらにカード名で「放たれた」と訳されている「Uncaged」は「檻や収容所から解放された」という意味である。
以上から、フレイバー・テキストは「(ものを)しまい込む」ではなく「檻に閉じ込められた」の意味合いで間違いはない。
「お前たちが閉じ込めてきた者を恐れるのは正しいぞ。」
–ヴィルディン群れの頭目、ラヒルダ
ラヒルダは脱獄囚との設定を持たされているため、フレイバー・テキストだけでなく、イラストの人狼もラヒルダ自身と考えられる。上述した通り、脱獄囚設定が先か、このカードから設定が盛り込まれたのか、どちらかは分からない。
夜へ
“When lost souls wander into the woods, the wilds have a way of showing them who they really are.”
–Rahilda, Vildin-Pack alpha
「魂が迷い込むと、森はその本来の姿を露わにするのだ。」
–ヴィルディン群れの頭目、ラヒルダ
引用:夜へ(Into the Night)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
夜へ(Into the Night)はカードセット「イニストラード:真紅の契り」収録のソーサリー・カードである。
曖昧な「その」が出てくるよろしくない和訳のフレイバー・テキストだ。
「その本来の姿」とは「誰の」あるいは「何の」姿なのだろうか?和訳製品版の文章では定められない。「魂」でも「森」でもどちらでも成立しうる日本語作文になっている。つまり、森が魂の本来の姿を露わにするのか、はたまた、魂に対して森が本来の姿を露わにするのか、どっちにも読める悪文なのだ。
原文を確認すると、関係性は明確な文章だ。
「迷える魂が森をさすらう時、自然は彼らに本当の自分を見せる術を持っている。」
–ヴィルディン群れの頭目、ラヒルダ
より原文に近い形に翻訳してみるとこのようになるだろう。このカードの名称や機能を鑑みれば、迷える魂とは人狼、または、これから人狼に目覚める者であろう。彼らは誘われるように森へと入り込み、自然の中で夜が訪れ、人狼と化すのである。
このフレイバー・テキストによって、ラヒルダがいまだ健在であると確認できる。
ヴィルディン群れの関連カード
最後のこの節ではラヒルダが頭目を務めるヴィルディン(Vildin)の吠え群れに関連するカードを紹介する。
既決殺人犯
None are more dangerous than those who have already been sentenced to death.
すでに死刑を宣告された者ほど危険な者はいない。
引用:既決殺人犯(Convicted Killer)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
既決殺人犯(Convicted Killer)はカードセット「イニストラードを覆う影」収録のクリーチャー・カードである。変身すると焼き印の咆哮者(Branded Howler)となる。
「既決殺人犯」と訳されたカード名「Convicted Killer」は噛み砕いて言えば、「有罪判決を受けた殺人犯」のことである。
イラストを見ると、左胸に三叉の焼き印が押されている。フレイバー・テキストによれば、すでに死刑宣告を受けている。焼き印は死刑囚の印であろうか。
焼き印の咆哮者
It is said that one of the most notorious werewolf howlpacks, the Vildin, only calls those whose hands are already stained with blood.
最も悪評高い狼男の吠え群れであるヴィルディンは、すでに両手を血で濡らした者のみを仲間に迎えるという。
引用:焼き印の咆哮者(Branded Howler)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
焼き印の咆哮者(Branded Howler)はカードセット「イニストラードを覆う影」収録のクリーチャー・カードである。既決殺人犯(Convicted Killer)が変身した姿で、条件を満たすと元の姿に戻る。
カード名通りに、左胸には焼き印が押されており、もちろん人間形態の時と同じ位置である。
フレイバー・テキストで「仲間に迎え入れる」と訳している原文は「calls」だが、これはイニストラードの人狼の設定によれば、ただ「呼ぶ」以上の意味合いを持って用いられる。人狼の群れは吠え声によって、人狼候補を「呼んで(call)」人狼化の呪いをかけ、仲間を増やすのである。
ヴィルディン群れの除けもの
ヴィルディン群れの除けもの(Vildin-Pack Outcast)はカードセット「異界月」収録のクリーチャー・カードである。
「除けもの」と訳されている「Outcast」は「追放者」の意であり、このカードはヴィルディン群れから追放された人狼である。「異界月」の時代背景とこのカードの裏面を考慮するに、この除けものはエムラクールの影響で正気を失い異形に変異しつつある状態なのだ。
ドローン群れの身内
These new terrors will not recede with the setting of the moon.
この新しい恐怖は、月が沈んでも収まらないだろう。引用:ドローン群れの身内(Dronepack Kindred)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
ドローン群れの身内(Dronepack Kindred)はカードセット「異界月」収録のクリーチャー・カードである。
エムラクールの影響で完全にエルドラージのドローンに変異してしまったヴィルディン群れの除けもの(Vildin-Pack Outcast)である。こうなってしまってはもう元には戻れない。
ということで、以上でラヒルダとヴィルディン群れの人狼たちの紹介はお終いである。
では今回はこれまで。
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