団結のドミナリア:アーボーグのラタドラビック

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アーボーグのラタドラビック(Ratadrabik of Urborg)は2006年のカードセット「時のらせん」のフレイバー・テキストが初出のキャラクターである。その後、更に3種類のフレイバー・テキストに登場した。

2022年、初出から16年後のカードセット「団結のドミナリア」で伝説のクリーチャー・カードととして収録された。

今回は、ドミナリア次元アーボーグの有力リッチ、ラタドラビックを取り上げる。また、ラタドラビックとライバル関係にあるアーボーグの憑依者、モイラ(Moira, Urborg Haunt)も一緒に紹介する。

アーボーグのラタドラビックの解説

アーボーグのラタドラビック(Ratadrabik of Urborg)

データベースGathererより引用

アーボーグのラタドラビック(Ratadrabik of Urborg)はドミナリア次元アーボーグのリッチ男性である。大ラタドラビック(The Great Ratadrabik)とも称されている。

少なくともAR4205年に開戦したファイレクシア侵略戦争よりも前の時代から存在しており、AR4562年現在まで生き延びている。アーボーグの沼地に建つ今にも崩れそうな居城から、訪れては去っていく幾多の黙示録を目撃しつつ、自称英雄たち、ファイレクシア侵略戦争、時間の崩壊を乗り越えた。

ラタドラビックの正確な年齢は明かされていないものの、過去に存在した強大な3名のリッチ、ドラルヌ(Dralnu)ネビニラル(Nevinyrral)そしてジョス・ヴェス(Josu Vess)の誰よりも多くの歳を重ねて生き続けられている。1

アーボーグのラタドラビック(Ratadrabik of Urborg)

特別版イラストのアーボーグのラタドラビック(Ratadrabik of Urborg)
データベースGathererより引用

名立たる強力なリッチが既に滅んでしまったために、現在のドミナリアにはラタドラビックと並び立てる屍術師は残っていない。あるいは、反目するモイラ(Moira)がそうかもしれないが、彼女が居なくなれば、ラタドラビックこそがアーボーグに最後まで生き残った唯一の権力者となるに違いない。



アーボーグの憑依者、モイラ

アーボーグの憑依者、モイラ(Moira, Urborg Haunt)

アーボーグの憑依者、モイラ(Moira, Urborg Haunt)
データベースGathererより引用

アーボーグの憑依者、モイラ(Moira, Urborg Haunt)カードセット「団結のドミナリア」の統率者デッキ収録の伝説のクリーチャー・カードである。ラタドラビックとライバル関係にある屍術師キャラクターという設定で登場した。

生前のモイラはアーボーグの強力な屍術師であった。沼地で術を振るい、霊(spirits)を拘束して、強制的に使役していた。

だがある時、モイラの呪文の1つが逆流して、彼女の人としての死すべき定めの肉体を破壊してしまった。モイラは、自分自身が下僕と同等の存在「霊」になったことで、生き方の過ちに気付かされた。

現在のモイラは屍術の力を慈悲深く用いており、亡くなって間もない者たちが死後の人生に順応する手助けをしている。いかなる霊も隷属されるべきではないと固く信じており、そのためにリッチのラタドラビックとはしばしば反目している。

カードのイラストを見ると、モイラの周りにはお付きの霊たちが何人もいる。過去には使役が強制されていた霊たちだったが、モイラが心を入れ替えた今では、喜んで奉仕をしているのだろう。

ラタドラビックとモイラの設定解説記事

ラタドラビックとモイラに関する来歴や設定は公式記事The Legends You’ll Find in Dominaria United公式和訳版)で公開されている。

カードセット「団結のドミナリア」現在で、これが2人の情報のほぼ全てである。本記事をまとめる際にも大いに参考にしている。

ラタドラビックとモイラの両名の設定を確認できたので、次の節ではラタドラビックに言及するカードを見ていこう。

アーボーグのラタドラビックの関連カード

アーボーグのラタドラビックに関連するその他のカードを取り上げる。

フレイバー・テキストでラタドラビックに言及するカードが4種類ある。カードの登場順に紹介しよう。

小悪疫

“Great losses often bring only a numb shock. To truly plunge a victim into misery, you must overwhelm him with many small sufferings.”
–Ratadrabik of Urborg
「大きな損失は、えてして衝撃を麻痺させるものだ。犠牲者を真の苦痛へと追い詰めるのであれば、細かな苦痛を大量に浴びせなければならぬ。」
–アーボーグのラタドラビック
引用:小悪疫(Smallpox)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

小悪疫(Smallpox)

小悪疫(Smallpox)
データベースGathererより引用

小悪疫(Smallpox)はカードセット「時のらせん」収録のソーサリー・カードである。

フレイバー・テキストの発言により、相手をちくちく痛めつけるのが真の苦痛を与えるには効果的だということで、ラタドラビックの性格が垣間見える。

背びれクーサイト

“It offers but a taste of the power that the shadows have to offer. But even that is a heady wine indeed.”
–Ratadrabik of Urborg
「それが与えるのは、影が与えねばならぬ力の味わいだけだ。だが、それだけでも実に酔いやすいワインだな。」
–アーボーグのラタドラビック
引用:背びれクーサイト(Ridged Kusite)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

背びれクーサイト(Ridged Kusite)

背びれクーサイト(Ridged Kusite)
データベースGathererより引用

背びれクーサイト(Ridged Kusite)はカードセット「次元の混乱」収録のクリーチャー・カードである。

クーサイトについて、ラタドラビックによれば影の力を、味わい程度とはいえ幾分なりとも与えるクリーチャーだというのである。奇妙な姿のクーサイトには、情報はほとんどないものの、アーボーグの住人というのは十分にあり得そうだ。

背びれクーサイトには元ネタとなったカードが存在している。それが狙い撃ち(Guided Strike)だ。ちょっと寄り道して紹介しよう。

狙い撃ち

“If you can kill your enemy with the first stroke, you save yourself the labor of the second.”
–Gerrard of the Weatherlight
最初の一撃で敵を葬れれば、つぎを繰り出す手間が省けるだろ。
–ウェザーライトの艦長代行、ジェラード
引用:狙い撃ち(Guided Strike)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

狙い撃ち(Guided Strike)

狙い撃ち(Guided Strike)
データベースGathererより引用

狙い撃ち(Guided Strike)カードセット「ウェザーライト」収録のインスタント・カードである。

このカードのイラストには、クーサイトが初めて登場している。

実際のところは、この狙い撃ちというカード自体と、イラストの謎の生き物の両方を基にして、背びれクーサイト(Ridged Kusite)という新カードが制作されたのだ。その表れとして「背びれクーサイト」の英名「Ridged Kusite」は、「狙い撃ち」の英名「Guided Strike」のアナグラムとなっている。

この手のイラストレイターがカードに描いた謎の存在は他にも沢山存在するが、クーサイトのようにまれに拾われてカード化されたり、設定が後付けされることがあるのだ。ヴォーソスとしては嬉しい深掘りだ。

少し脱線した。次はラタドラビックに話を戻そう。

下僕の呟き

“They are quick to offer advice, those whose mistakes doomed them to undeath. How can I not listen to the wisdom of failure?”
–Ratadrabik of Urborg
「失敗を犯したために死ねぬ運命を負わされた者どもは、すぐに助言を与えてくれる。失敗から得た知識に耳を傾けぬ手はないだろう?」
–アーボーグのラタドラビック
引用:下僕の呟き(Minions’ Murmurs)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

下僕の呟き(Minions' Murmurs)

下僕の呟き(Minions’ Murmurs)
データベースGathererより引用

下僕の呟き(Minions’ Murmurs)はカードセット「未来予知」収録のソーサリー・カードである。

このカードの効果、カード名、イラスト、フレイバー・テキストを総合的に考えると、イラストでアンデッドに囲まれた人物はラタドラビックを想定していたものだったのかもしれない。カード化されたラタドラビックと比べると、胸・腹・両腕の肌の露出が多い格好で、黒い杖を携えている。このカードの緑色のガウンと、ラタドラビックが体に纏う緑色の瘴気も似た雰囲気がある。

あるいはこのイラストを下敷きにして、ラタドラビックの外見デザインが創作された可能性もある。

闇の取り引き

“I have pustules of the great Ratadrabik, very cheap. No? Surely you’ll want a tincture of Nevinyrral’s pulverized remains. Genuine!”
「大ラタドラビックの膿疱がある。安くしとくよ。だめかい?じゃあ、ネビニラルの屍骸粉液ならいいだろう。本物だよ!」
引用:闇の取り引き(Dark Bargain)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

闇の取り引き(Dark Bargain)

闇の取り引き(Dark Bargain)
データベースGathererより引用

闇の取り引き(Dark Bargain)はカードセット「ドミナリア」収録のインスタント・カードである。カードのイラストはAR4560年頃のアーボーグの露店を描いている。

フレイバー・テキストでは「大ラタドラビックの膿疱(pustules of the great Ratadrabik)」が売りに出されている。「膿疱」と訳された「pustule」とは「皮膚にできた膿の溜まった水膨れ」やそれに似たいぼ状のものを指す。

ラタドラビックの膿疱?

ここでアーボーグのラタドラビックのイラストを観察してみると、胸や腹、腕の所々にボコボコと緑色の水疱のようなものが見付けられる。これを「大ラタドラビックの膿疱」と称して、露天商は売っているのだろう(おそらく本物ではあるまいが)。

そして、これも逆算の創作なのだろう。ここで「大ラタドラビックの膿疱」が言及されていたから、それを拾って現在のラタドラビックの外見デザインに反映したとの流れ、その方が私には自然に思える。

余談。「大ラタドラビックの膿疱」と一緒に売られている「ネビニラルの屍骸粉液」に関しては、こちらの記事で解説している。興味のある方はご覧あれ。

以上で、ラタドラビック関連カード4種類(+α)の紹介完了だ。



さいごに

アーボーグのラタドラビックは初出から16年の歴史があると言っても、ほぼ新キャラ同然のキャラクターであった。

とはいえ、カード化にあたって公開された情報によれば、現在のドミナリアで最高峰と目される屍術師にしてリッチであり、モイラとの対立関係が明かされた。ラタドラビックは想像以上の大物だったようだ。

では、今回はここまで。

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  1. 註:ラタドラビックがドラルヌ、ネビニラル、ジョス・ヴェスらよりも古い存在だという意味ではない。