カード紹介:黒の魔力貯蔵器

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黒の魔力貯蔵器(Black Mana Battery)カードセット「レジェンド」収録のアーティファクトである。

先日、ツイッターでフォロワーの方が「パラディア=モルス(Palladia-Mors)は黒に属するキャラではないのにどうやってシミアの夜魔(Shimian Night Stalker)を召喚できたのか?」と疑問を持たれていたので、簡単な解説をしたことがあった。実はパラディア=モルスは黒の魔力貯蔵器を利用していたのだ。

そんなことがあったから、今回は良い機会なので黒の魔力貯蔵器と関連するストーリーの件を記事にして残しておこうと考えた。

黒の魔力貯蔵器の解説

黒の魔力貯蔵器(Black Mana Battery)

黒の魔力貯蔵器(Black Mana Battery)
データベースGathererより引用

黒の魔力貯蔵器(Black Mana Battery)は任意のマナを溜めておき後に黒マナとして取り出すことができる道具である。

効率を見ればマナ2点が黒マナ1点に半減してしまうものの、いくらでもマナを貯蔵しておくことが可能だ。現在ではこの種のメカニズムを持つカードは多数存在しているが、これが収録されたカードセット「レジェンド」では初出の新メカニズムであった。

ストーリー作品ではコミック版エルダー・ドラゴンvol.2で登場しており、エルダー・ドラゴンのパラディア=モルス(Palladia-Mors)が使用している。黒の魔力貯蔵器の形状はカードとコミックでほぼ同じで、下顎のない頭蓋骨で蜘蛛や蛇などがまとわりついている。



黒の魔力貯蔵器のストーリー

殲滅の龍、パラディア=モルス(Palladia-Mors, the Ruiner)

パラディア=モルスが2回目にカード化された姿
殲滅の龍、パラディア=モルス(Palladia-Mors, the Ruiner)
データベースGathererより引用

黒の魔力貯蔵器はコミック版エルダー・ドラゴンvol.2において登場した。舞台はドミナリア次元の東部ドメインズ地方1、時代は伝説時代である。

このコミックのストーリーでは、エルダー・ドラゴンのパラディア=モルス(Palladia-Mors)は「ティカリー(Tickery)」と呼ばれる魔法の封印から解放されたばかりである。パラディアは80年間も自由を奪われていたことに憤っており、モルス分水嶺(Mors Ridge)の街の住人への報復を企んでいた。

暴虐の龍、アスマディ(Vaevictis Asmadi, the Dire)

ヴァエヴィクティス・アスマディが2回目にカード化された姿
暴虐の龍、アスマディ(Vaevictis Asmadi, the Dire)
データベースGathererより引用

ティカリーの封印からパラディア=モルスを解放したのが、エルダー・ドラゴンのヴァエヴィクティス・アスマディ(Vaevictis Asmadi)2であった。

ヴァエヴィクティスはプレインズウォーカーのファラリン(Faralyn)にかけられた呪いによってドラゴンの幼体に変えられてしまっていて、エルダー・ドラゴンの強大な力を失っていた。そこで、ヴァエヴィクティスは従姉妹にあたるパラディアの封印を解くことで恩を売って、幼体化の呪いを解除させる魂胆であった。

パラディアはヴァエヴィクティスの行動が利己的な理由だったと承知しているが借りには違いないとして、報復に手を貸すならば呪いを解いてやってもいいぞ、と持ち掛けた。ヴァエヴィクティスは協力を約束し、両者は合意に達した。

あったよ!黒の魔力貯蔵器!
でかした!
黒の魔力貯蔵器をパラディア=モルスのもとに持ってきたヴァエヴィクティス・アスマディ
コミック版エルダー・ドラゴンvol.2より引用

パラディアの計画にはまず黒の魔力貯蔵器が必要であった。ヴァエヴィクティスはそれをどこからか調達してきた。

パラディア=モルスの色はカードを見ての通り赤緑白の3色であり、本来は黒マナとは無縁である。しかし、この黒の魔力貯蔵器を用いることでパラディアでも黒の魔法を操ることが可能となり、シミアの夜魔(Shimian Night Stalker)を召喚した。パラディアがこの夜魔に命じると、街の墓場に埋葬された死者がゾンビとして蘇りパラディアの配下に加わった。ゾンビはかつての街の住人達であり、現在の住人と同族同士で殺し合わせるのだ。

シミアの夜魔の死
コミック版エルダー・ドラゴンvol.2より引用

パラディアのもとへと集合したゾンビ軍団は沼沢から不浄な力を引き出し、苦痛と呪詛に満ちた歌として吐き出していった。パラディアの手中には沼の精髄が集まった。

まずはパラディアがシミアの夜魔に、苦痛が集まった…炎の洗礼として汝が受けよ、と力を放つと、夜魔は感謝の絶叫を挙げて果てた。

続いてヴァエヴィクティス・アスマディがパラディアの放った力に包まれると、ついに幼体化の呪いが解呪されてエルダー・ドラゴンの姿を取り戻した。

さらに2体のエルダー・ドラゴンは近隣のオークも配下に組み入れ、モルス分水嶺と戦う準備を完了したのだった。報復の時が来た。

以上が黒の魔力貯蔵器に関する前後の一連の流れである。



シミアの夜魔は何だったのか?

シミアの夜魔(Shimian Night Stalker)

シミアの夜魔(Shimian Night Stalker)
データベースGathererより引用

コミック版エルダー・ドラゴンvol.2では上述したように、黒の魔力貯蔵器はシミアの夜魔を召喚するために利用された。そして、シミアの夜魔は墓地からゾンビを蘇らせた後、パラディア=モルスの放った力を受けて殺されてしまう。

パラディア=モルスが黒の魔力貯蔵器を使ってシミアの夜魔を召喚した理由は作中では「ゾンビ軍団を作らせる」ためであった。ところが、シミアの夜魔のカードにはゾンビを生み出す能力はない。カードの能力は「プレイヤーに与えられるダメージをシミアの夜魔へと移し替える」ものである。

作品とカードで食い違いを起こしている。コミック巻末解説を見てもこの食い違いに関する記述は載っていない。これはおかしい。3

そこで個人的にゲーム的な説明付けを考えてみた。

パラディア=モルスをゲームのプレイヤーとみなしてコミックのシーンを順番に読み解く

  1. パラディア=モルスは黒の魔力貯蔵器から黒マナを発生させる。
  2. パラディアは黒マナを用いてシミアの夜魔を召喚する。
  3. パラディアが先ほど発生させた黒マナの残りでゾンビを生み出す(ゾンビは黒カードである)。コミックでは夜魔経由であるがそれは演出とみなして、実際にはパラディア自身が行使していたという解釈。
  4. ゾンビの歌により黒マナが集まる。墓場の死者が歌うことで黒マナが生まれることから、この現象はカードセット「アイスエイジ」の忌むべき者の歌(Songs of the Damned)相当と解釈できるだろうか?
  5. 使い切れない黒マナはマナ・バーン4を起こす。
  6. シミアの夜魔の能力でマナ・バーンのダメージ5を移し替え、夜魔が死亡する。

つまり、シミアの夜魔は「マナ・バーンの無効化のために召喚されていた」という解釈である。この解釈は、なぜそこで無意味に忌むべき者の歌を使ってるんだという疑問が出てしまうが、シミアの夜魔の辻褄合わせだけはできている……と思う(多分?)。

さて、黒の魔力貯蔵器に関しては他にストーリー的なエピソードは見当たらない。話が尽きた。では今回はここまで。

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マジック・ザ・ギャザリング(MTG)のカードセット「レジェンド」収録のカードの中からピックアップしてストーリーや設定を解説する。
  1. 原文は「Eastern Domains」
  2. コミックでは「Asmadi」ではなく「Asmodi」表記
  3. 実は、このコミックに限らず、ストーリー作品とカードとの差異が出るのは昔も今もままあることだ
  4. マナ・バーンは当時あったルールで随分前に廃止されている
  5. コミック当時のルールでは、マナ・バーンは「ダメージ」扱いだった。後に「ライフを失う」に扱いが変更される