今回は、カードセット「ファイレクシア:完全なる統一」で初登場した「ファイレクシアン・ダニ(Phyrexian Mite)」と、伝説のダニである「スクレルヴ(Skrelv)」を取り上げる。
本記事は設定解説記事The Legends of Phyrexia: All Will Be Oneや各種関連カードを基にして作成した。
追記(2023年2月13日):イラストにファイレクシアン・ダニが描かれたカード2種類を節を新設して追加した。その他の部分でも誤った記述の訂正や情報の追記などの微修正をしている。
追記(2023年2月16日):イラストにファイレクシアン・ダニが描かれたカードを更に1種類確認したため加筆した。
ファイレクシアン・ダニの解説
ファイレクシアン・ダニ(Phyrexian Mite)は新ファイレクシア次元に生息する虫のようなクリーチャーで、体高わずか1フィート(約30cm)だが、噛みつき攻撃ができる鋭利な顎を備えている。何千ものダニは簡単な仕事をさせるために創られたものだ。
伝説のクリーチャー・カードである離反ダニ、スクレルヴ(Skrelv, Defector Mite)を除いて、ファイレクシアン・ダニはカードでは無く、全て何らかのカードが生成する無色のアーティファクト・クリーチャー・トークンである。パワー/タフネスは1/1で、能力として毒性1を有する反面、ブロックには参加できない欠点も持たされている。
ダニ・トークンを生成するカードは、大部分が白(あるいは白を含む多色)で、少数ながら黒と土地にも存在している。それを反映してか、トークン・カードには白陣営風イラストと黒陣営風イラストの2種類が用意されている。
また、各種カードに描かれたファイレクシアン・ダニは外見や大きさに個体差が見られ、中には何倍も大型な個体も存在している。
離反ダニ、スクレルヴの解説
離反ダニ、スクレルヴ(Skrelv, Defector Mite)は、カードセット「ファイレクシア:完全なる統一」に収録された伝説のファイレクシアン・ダニである、アーティファクト・クリーチャー・カードだ。男性。
ダニ・トークンが無色なのに対し、スクレルヴは白カードとなっている。
スクレルヴは自分に課せられた仕事を忘れ去ってから久しい。彼は強大なる機械正典のあらゆる規格に照らし合わせて無価値な不良品と見做されるため、とっくの昔に部品として回収されてより価値あるファイレクシアンに統合されるはずであった。ところが、賢さと幸運、さらに小さな体格が偶然にも重なり合ったことで、どうにかリサイクルされる運命を逃れて生き延びている。
離反ダニ、スクレルヴのカード名
スクレルヴの二つ名「離反ダニ(Defector Mite)」に関して考える。
「Defector」とは普通は「脱走・離脱する」を意味する「defect」をする者のことだ。
一方、設定解説記事中では「不良品(defective)」という表現がされている。こちらは「欠点」を意味する「defect」の方だ。
設定情報を見るに、二つ名「Defector Mite」には機械正典の規格から逃れて生き延びる存在としての「離反ダニ」という意味合いだけでなく、「不良品のダニ」という含みも持たされていそうだ。
スクレルヴの巣
スクレルヴの巣(Skrelv’s Hive)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録のエンチャント・カードである。
公式記事The Legends of Phyrexia: All Will Be Oneでは、スクレルヴと数千もの兄弟姉妹は簡単な仕事のために創られたとの旨が記されている。このスクレルヴの巣に描かれた小型のダニたちは、そうした数千の兄弟姉妹(おそらく弟妹)なのかもしれない。それとも、ファイレクシアン・ダニがもし繁殖可能な機能を持つのなら、スクレルヴの子という可能性もあるか。
ファイレクシアン・ダニに言及するカード
フレイバー・テキストでファイレクシアン・ダニに言及しているカードをピックアップした。
該当するカードは以下の2種類だ。
正典の執行者
The mites sniff out any potential interlopers. He handles the rest.
ダニは侵入者の可能性を嗅ぎつける。残りは彼が処理する。
引用:正典の執行者(Orthodoxy Enforcer)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
正典の執行者(Orthodoxy Enforcer)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録のクリーチャー・カードである。
これは新ファイレクシアの白陣営「機械正典」に属するファイレクシアン聖職者だ。イラストでは腰から伸びた帯の先端にファイレクシアン・ダニ2体を接続している。フレイバー・テキストによれば、ダニが侵入者の可能性を嗅ぎつけると、執行者が後の始末を引き受けるとのことだ。つまり、ダニが番犬や探知機のような役割を果たしている。
爆片投げ
“They may have unlimited mites, but that just means we have unlimited ammunition.”
–Urabrask
「彼らは無限にダニを持っているのかもしれないが、つまるところ、それは我々が無限に弾薬を持っているということだ。」
–ウラブラスク
引用:爆片投げ(Shrapnel Slinger)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
爆片投げ(Shrapnel Slinger)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録のアーティファクト・クリーチャー・カードである。
爆片投げは赤派閥「静かなる焼炉」の弩弓型多脚のファイレクシアンだ。
赤派閥の法務官ウラブラスクは、白派閥の法務官エリシュ・ノーンが率いる主流派に対して反乱を起こした。フレイバー・テキストでは、ウラブラスクは敵陣営の無数のファイレクシアン・ダニを捕らえ、自陣営の弾丸として利用しているようだ。
ファイレクシアン・ダニを生成するカード
この節では、ファイレクシアン・ダニ・トークンを生成するカード群を列挙する。
該当カードは全11種類。これらほとんどのカードのイラストには、ファイレクシアン・ダニが描かれている。
しかし、イラスト内にダニが見当たらないカードが3種類含まれており、イラスト発注時よりも後の調整でダニ生成機能が付加された可能性がある。
聖堂の導き手
聖堂の導き手(Basilica Shepherd)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録のクリーチャー・カードである。
このファイレクシアン天使のカード名の「聖堂」とは、白陣営「機械正典」の本拠地である新ファイレクシア次元第七球層「美麗聖堂(The Fair Basilica)」のことだ。
そして「導き手」と訳された「Shepherd」は、「羊飼い」や「牧師」「世話人」などを指す。イラストではファイレクシアン・ダニを抱えており、カードのメカニズムの方では戦場に出た時にダニ・トークン2体を生成する。この天使はファイレクシアン・ダニを羊に見立てた羊飼い、つまりダニの世話人なのだろう。
ダニの突撃
ダニの突撃(Charge of the Mites)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録のインスタント・カードである。
イラストでは、赤陣営の人型ファイレクシアンを前脚で串刺しにするほど巨大なファイレクシアン・ダニが2体描かれている。
カードのメカニズムの方では、自軍の数でクリーチャーやプレインズウォーカーを圧殺するようなモードと、ダニ・トークン2体生成のモードから片方を選ぶことになっている。
比べてみたところ、カードの効果はイラストのような巨大ダニの姿とは相容れないものだ。想像するに、このカードは当初はパワー/タフネスを一時強化するインスタント・カードを想定したデザインだったのかもしれない(イラスト発注後にカード機能の調整で変更された可能性)。
這い回る合唱者
“We need not be swift. We are inexorable.”
「迅速である必要はない。我々は止められない。」
引用:這い回る合唱者(Crawling Chorus)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
這い回る合唱者(Crawling Chorus)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録のクリーチャー・カードである。
不気味な姿のファイレクシアンだ。イラストは「ファイレクシア:完全なる統一」のプレビュー初期に公開されていて、この異様な姿がユーザーに強い印象を残していた(カードが公開された後は、イラストのインパクトに比べて小粒なスペックに肩透かしを食らったという感想も目についた)。
カード名で「合唱者」と訳されているが、「Chorus」は「合唱隊」という集団を指して用いられる。イラストでは、ファイレクシアン・ダニの群れを引き連れて這い寄って来ているため、この一団全体を指してのカード名と考えられる。
教化案内人
教化案内人(Indoctrination Attendant)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録のクリーチャー・カードである。
この巨人のように背が高いファイレクシアン聖職者は、「教化(Indoctrination)」と名付けられていることから考えて、機械正典の教義を植えつける(あるいは洗脳する)役目を持たされている。イラストは、信者を教化している最中と思われる。
カードのメカニズムは、戦場に出た際に条件を満たせばダニ・トークン1体を生成できるという機能だ。カード名で「案内人」と訳された「Attendant」には、「付き添い」「随行者」といった意味合いもあることから、ダニに付き添うという含みが感じられる。
ちなみに、イラスト内にファイレクシアン・ダニの姿が見当たらないカードである(1つ目)。
感染した肉裁ち
感染した肉裁ち(Infested Fleshcutter)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録の装備品アーティファクト・カードである。
カード名で「感染した」と訳された「Infested」は、「害虫などが場所を荒らした」「害虫などにたかられた」という意味合いがある。
そしてイラストでは、この剣の周囲には無数のダニが所狭しと描かれている。まさにダニが横行して荒らしている状況だ。装備して攻撃するたびにダニ・トークンが湧くのは、こんな場所から持ってきたことでダニがたかっているせいであろう。
ダニの監視者
ダニの監視者(Mite Overseer)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」の特殊ブースターパック収録のクリーチャー・カードである。
「監視者」と訳された「Overseer」はただ見張るだけの者ではなく、「監督者・管理者」といった意味合いを含んだ言葉である。カードの機能はダニ・トークンを増やし、群れを強化するものであることから、やはり単なる監視ではなく「ダニの管理者」であろう。
白の太陽の黄昏
白の太陽の黄昏(White Sun’s Twilight)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録のソーサリー・カードである。
ライフX点を得て、ダニの群れ(X体)を生み出すカードだ。Xが5以上ならば、このとき生成したダニでない他のクリーチャーを全破壊してしまう。ダニの群れが全てを喰らい尽くしたか!?
有刺巣主
From within its form, a single word echoed forth: “Devour.”
その姿より、一つの言葉が響き渡った。「貪りつくせ。」
引用:有刺巣主(Stinging Hivemaster)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
有刺巣主(Stinging Hivemaster)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録のクリーチャー・カードである。
今回唯一のファイレクシアン・ダニを生成する黒単色カードだ。イラストを見ると明らかに黒陣営に属するファイレクシアンだ。
刃砦の災厄、リーア・イヴォール
刃砦の災厄、リーア・イヴォール(Ria Ivor, Bane of Bladehold)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録の伝説のクリーチャー・カードである。
リーア・イヴォールはミラディン人レジスタンスの英雄であった。しかし、味方の生存者を逃がすために命を落とし、現在はファイレクシアンに堕落させられてしまった。
ファイレクシアンとなったことで白単色から、白黒の多色カードに変化している。黒要素の追加なので、現時点では新ファイレクシアの黒陣営に属していると考えられる。
ちなみに、イラスト内にファイレクシアン・ダニの姿が見当たらないカードである(2つ目)。
破滅の巣、ヴィシュグラズ
破滅の巣、ヴィシュグラズ(Vishgraz, the Doomhive)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」統率者デッキ収録の伝説のクリーチャー・カードである。
公式記事The Legends of Phyrexia: All Will Be Oneによると、ヴィシュグラズは生みの親であるイクセル(Ixhel)によってドロス窟に捨てられ、今でもそこに潜んでいる。この地を学ぶと共に、有毒クリーチャーの蠢く大群を手懐けて従えるようになった。とのことだ。
したがって、ヴィシュグラズの有毒クリーチャーの蠢く大群、すなわちファイレクシアン・ダニはドロス窟生まれの黒陣営タイプと考えられる。
ミレックス
ミレックス(Mirrex)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録の土地カードである。
新ファイレクシア次元第二球層「ミレックス」は白と黒のどちらの陣営の領土でもない、旧ミラディンの廃墟である。このカードの存在から、ミレックスにはファイレクシアン・ダニのコロニーの存在が示唆されているように思われる。
ちなみに、イラスト内にファイレクシアン・ダニの姿が見当たらないカードである(3つ目)。
ファイレクシアン・ダニがイラストに描かれたカード
この最後の節では、上述した以外のイラストにファイレクシアン・ダニが描かれたカードを3種類紹介しよう。
板金鎧の猛攻
“Witness the glory of true, unwavering unity.”
–Ajani
「揺るぎなき真の団結という栄光を目撃せよ。」
–アジャニ
引用:板金鎧の猛攻(Plated Onslaught)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
板金鎧の猛攻(Plated Onslaught)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録のインスタント・カードである。
無数のファイレクシアン・ダニが赤陣営の建物やファイレクシアンを覆い隠すように襲っている。フレイバー・テキストは完成化したプレインズウォーカーのアジャニ(Ajani)の言葉だ。現在白陣営の一員となったアジャニは、赤陣営を襲撃するダニの群れを揺るぎなき真の団結の栄光だと宣言している。
カード名の和名は「板金鎧の猛攻」であるけれど、イラストには板金鎧を着た人物は描かれてはおらず奇妙である。これはMTG和訳で慣例的に「Plated」を「板金鎧の」と置き換えていることで生じる違和感だ。このカードにおける「Plated」つまり「金属板で覆われた」ものとは何を指すのか?ファイレクシアン・ダニの群れである。カード名は「金属装甲で覆われたダニによる猛攻」くらいの意味合いに解釈できる。
ギタクシア派の猛禽
Bored with the ruins of Lumengrid, it migrated to the ruins of the Mephidross.
ルーメングリッドの廃墟に飽き、それはメフィドロスの廃墟へと渡った。
引用:ギタクシア派の猛禽(Gitaxian Raptor)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
ギタクシア派の猛禽(Gitaxian Raptor)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録のクリーチャー・カードである。
このファイレクシアンの猛禽は青派閥「発展の動力源」に属している。フレイバー・テキストによれば、かつてのミラディンの青の都市であったルーメングリッドの廃墟に飽きたため、これまたかつての黒の沼地であったメフィドロスの廃墟へと渡って来たという。
イラストを見ると、猛禽が鉤爪で掴んでいる獲物は、黒陣営タイプのファイレクシアン・ダニだ。メフィドロスの廃墟で発見したのであろう。
策謀の有貌体
“I have raised many of my own contenders for the Coliseum. This one will be fearsome one day, mark my words.”
「私は闘技場のため、多くの候補者を育んできた。この子はいつか恐ろしいものに成長する。心しておきなさい。」
引用:策謀の有貌体(Scheming Aspirant)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
策謀の有貌体(Scheming Aspirant)はカードセット「ファイレクシア:完全なる統一」収録のクリーチャー・カードである。
この黒派閥のファイレクシアンが抱きかかえているのはファイレクシアン・ダニである。
さいごに
先日の「ドミヌス」に引き続き、未訳の設定解説記事The Legends of Phyrexia: All Will Be Oneの情報を基にして、新キャラクターの「スクレルヴ(Skrelv)」とファイレクシアン・ダニを取り上げて記事にまとめてみた。
MTGの毒殺戦略はたまに登場する分には楽しい刺激だと個人的には思っている(いつもあるのは嫌なんだよな……)。
では、今回はここまで。
スクレルヴとダニの関連カード
ファイレクシア完全なる統一:MTGアリーナの豆知識
ファイレクシア完全なる統一:ドミヌス