イコリア:驚くべき発育

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驚くべき発育(Startling Development)カードセット「イコリア:巨獣の棲処」に収録されたインスタント・カードである。

フレイバー・テキストで何かおかしいぞと引っ掛かりを覚えたカードをピックアップする。


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驚くべき発育の解説

Remarkably, dinner continued with no further interruptions.
意外にも、夕食にはそれ以上の邪魔は入らなかった。
引用:驚くべき発育(Startling Development)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

驚くべき発育(Startling Development)

データベースGathererより引用

驚くべき発育(Startling Development)は、クリーチャーを一時的に大蛇に変化させる効果を持っているカードだ。

カードのイラストは、イコリア次元のあるハクトウワシの巣の情景である。魚をくわえた親ハクトウワシ、そして巣には幼い雛たちがおり、そこに交じって大蛇のような怪物がいる。何とも場違いな怪物大蛇の存在感だ。フレイバー・テキストによると、ハクトウワシ一家の夕食は怪物大蛇を交えたままに続けられたという。

カードのメカニズム的に見ると、何らかの魔法的な理由で「雛の1羽が怪物大蛇に変身した」のかもしれない。あるいは、「托卵的に巣に怪物大蛇が紛れ込んだ」という可能性もあるだろうか。色々な解釈が成り立つと思う。



驚くべき発育のフレイバー・テキスト

Remarkably, dinner continued with no further interruptions.
意外にも、夕食にはそれ以上の邪魔は入らなかった。

カードの効果とイラストを考えると、和訳版はフレイバー・テキストがどうにもしっくりこなかった。「それ以上の邪魔が入らなかった」とはどういう状況だったのだろうか?またもや、和訳製品版では意味合いが変わっているのではないだろうか…原文を確認してみた。

まず、和訳製品版の「意外にも、夕食にはそれ以上の邪魔は入らなかった。」という文章は、「邪魔が入って当然だった、あるいは、邪魔が予測されていた。なのに、それ以上の邪魔はなかったことが意外だ。」と、そんな意味合いに読み取れる。

一方、原文は「Remarkably, dinner continued with no further interruptions.」である。「continue」には「(中断後にまた)続ける」という意味がある。「邪魔」と和訳されていた「interruptions」は「邪魔、妨害」の他に「中断」という意味を含んでいる言葉だ。そうすると、次のように訳されるだろう。

驚いたことに、夕食はそれ以上の中断はなく進んだ。

つまり、「一度中断はあったものの、夕食はその後は中断せずに続けられた。それが驚きだった。」という意味合いとなる。

「邪魔が入らなかった」ことが意外なのではなく、「中断しなかった」ことが驚きなのだ。では、なぜ中断が入ったか、それは鳥の巣に巨大な蛇のような生き物が出現したことが原因だろう。

ハクトウワシの巣に怪物大蛇が現れた。夕食はいったん中断したものの、怪物大蛇がいるにもかかわらずそのまま食事は続けられたのだ。

驚くべき発育のクリーチャー・タイプ

このカードの機能によって、クリーチャーはクリーチャー・タイプ「海蛇」に変わってしまう。だが、イラストは海ではなく陸上のハクトウワシの巣である。

海に居ない大蛇を「海蛇」と呼ぶのはどういうことなのだろうか?

大海蛇(Sea Serpent)

「海蛇」と訳された最初のカード
大海蛇(Sea Serpent)
データベースGathererより引用

まず英語原文の説明をする。そもそも原文のクリーチャー・タイプは「Serpent」であって、この単語の意味は「蛇」であり、「海蛇」に限定されるものではない。これが「海蛇」と和訳されたのは最初の日本語版MTGである基本セット第4版の「大海蛇(Sea Serpent)」である。このカードは海の大蛇なので「Serpent=海蛇」で何の問題もなかった。

しかし、何年も経つと状況が変わってしまった。MTGの「Serpent」は、海だけでなく川や沼、陸上、溶岩、大空にも進出してきたのだ。さすがにこれらを海蛇というのは違和感がある。

川蛇(River Serpent)

海蛇なのに川に住む川蛇(River Serpent)
データベースGathererより引用

誤解がないように言っておくと、概ねMTGの「Serpent」は海にいる大蛇的な生き物なので、クリーチャー・タイプは「海蛇」が定訳でも問題はない。初期翻訳「海蛇」を継承した結果であり、20年以上さかのぼって何枚ものカードに渡るエラッタを出すのは無理があるので、さすがに仕方がない面もある。だが、現状では陸上や川にも「Serpent」が存在しているために、一様に「海蛇」と訳すとおかしくなってしまうのも事実だ。

ということで、ハクトウワシの巣に「海蛇」がいる理由はそういう経緯があるからなのだ。まあ、海蛇であろうとなかろうと、気にせず世話を続けるハクトウワシの親には正直ビックリした。

今回はここまで。

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