カードセット「兄弟戦争」の「注目のストーリー」カードを並べて、ストーリーの流れを初めから結末までを紹介したい。
ただし、今度の「注目のストーリー」カードは今までの普通のセットよりもかなり数が多かったため、記事を分割することにした。
「その1」である本記事では「現在時間軸」編の全てと、「過去時間軸」編の方は兄弟の少年期(トカシアの発掘キャンプ)までを取り扱う。
※ 本記事での「注目のストーリー」の順番は本サイトの独自の判断で並べたものである。ウィザーズ公式のものではないのであらかじめ注意されたい。
追記(2022年11月6日):全カードが公開となったので、抜けていた現在時間軸の最後の1枚である同調解除(Desynchronize)を加えた。意外にもファイレクシアによる襲撃の流れは今回のカード収録から完全に省かれていた。
追記(2022年11月20日):カードに抜けがあるとの指摘を頂いた。確認して行き届いた採掘(Meticulous Excavation)を追加した。ご指摘に感謝。
兄弟戦争の注目のストーリー
カードセット「兄弟戦争」にはストーリーの重要場面を表した「注目のストーリー」カードが複数収録されている。
「兄弟戦争」の連載ストーリーが現在と過去の2軸で展開したのと同じく、「注目のストーリー」カードの方でも現在・過去に分かれている。
現在時間軸ストーリー
カードセット「兄弟戦争」の現在時間軸の「注目のストーリー」カードは、連載ストーリー現在時間軸編から読み取れる流れで描出されているようだ。ただし、現在時間軸の「注目のストーリー」は、過去時間軸に比べて少数となっている。
では、連載ストーリーから予想した順番で「注目のストーリー」カードを並べてみた。以下の通りだ。
錨の鍛錬
The metal turned and blossomed with Saheeli’s will, each filgreed twist bringing the temporal anchor closer to completion.
金属はサヒーリの意志に応えて曲がり、花開く。金線細工がひねり出されるたび、時空錨ができあがってゆく。
引用:錨の鍛錬(Forging the Anchor)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
錨の鍛錬(Forging the Anchor)では、サヒーリ・ライが時空錨を制作している。
サヒーリは時空錨と共に、今後の計画の要となる「酒杯」の複製品も作り上げていた。
時空錨
遂にサヒーリはタイムマシン「時空錨(The Temporal Anchor)」を完成させた。
時空錨で時間移動するのは時間魔法の専門家テフェリー(Teferi)だ。目的の時間と場所に辿り着くまでに、テフェリーは幾度も時を渡ることになった。
魂の仕切り
Teferi’s body couldn’t travel through time far enough, but with Kaya’s help, his spirit could.
テフェリーは肉体では望むだけの時間移動を行えなかった。しかしケイヤの助けにより、精神での移動を可能にしたのだった。
引用:魂の仕切り(Soul Partition)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
魂の仕切り(Soul Partition)が描いているのはタイムトラベル中のテフェリーの姿である。
時空錨は、ケイヤの幽体化能力を組み合わせることで、テフェリーの精神だけを過去へと送ることが可能となる。肉体での時間移動と比べて、精神のみならばより過去へと飛ぶことができ、実体が無いために理論上は過去に干渉を及ぼせないはずであった。
テフェリーのタイムトラベル中は、時空錨自体をサヒーリが操作し、ケイヤは幽体化を維持しつつテフェリーとの意思疎通もこなすことになる。
同調解除
Before Kaya could pull Teferi’s spirit back, the overloaded temporal anchor failed, and he was set adrift in the current of time.
ケイヤはテフェリーの精神を引き戻そうとしたが、時空錨が過負荷に耐えられず間に合わなかった。斯くしてテフェリーは時の流れを漂うことになったのである。
引用:同調解除(Desynchronize)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
同調解除(Desynchronize)が描く場面は、最後のタイムトラベルの結末である。
テフェリーはついに酒杯爆発の時間に辿り着き、時空の狭間でプレインズウォーカーに覚醒中のウルザと対話することで何らかの起爆のヒントを得られた。しかし、テフェリーが帰還するまで時空錨は耐え切れず、テフェリーの精神はどこともいつとも知れぬ海岸に漂着し、現実世界の現在に帰還することができなかったのである。
ケイヤは霊体化の制御をしながらテフェリーのタイムトラベルをモニターしていたことで、起爆の鍵は手に入れた。テフェリーに代わって新ファイレクシア攻撃では酒杯を操作する役割を担うことになった。
現在の活動拠点であるウルザの塔には続々と協力者のプレインズウォーカーたちが集結し、新ファイレクシアとの決戦は間もなく始まろうとしていた……。
過去時間軸ストーリー
カードセット「兄弟戦争」の過去時間軸の「注目のストーリー」カードは、アンティキティー戦争期から暗黒時代初期に渡る兄弟戦争と戦後の余波を描くものだ。
ほとんどが小説The Brothers’ Warに基づいた名場面であり、小説から努めて忠実に抜き出している。
トカシアの歓待
“Your father was a dear friend to whom I owe much. He wanted me to look after you, to care for you should something happen to him.”
「あなたたちの父は大切な友人でした。自分の身に何かあったときには面倒を見て欲しいと頼まれていたのですよ。」
引用:トカシアの歓待(Tocasia’s Welcome)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
トカシアの歓待(Tocasia’s Welcome)には、左から順にトカシア(Tocasia)、ミシュラ(Mishra)、ウルザ(Urza)の3人が描かれている。
AR10年、ウルザとミシュラの兄弟はトカシアの発掘キャンプにやって来た。兄弟の父親は病に弱っており、継母に疎まれた2人はアルガイヴ貴族の子弟が夏季に過ごす発掘キャンプに送り出されたのだ。父親の訃報はAR12年秋に届いた。
兄弟はAR20年までの10年間ずっと首都ペンレゴンに戻ることなくキャンプ地で暮らすことになった。
フレイバー・テキストのトカシアの言葉は、小説The Brothers’ War第1章からの引用である。
厳しい授業
“The brothers are brilliant, but their quarreling will be the death of me.”
–Tocasia, journal entry
「兄弟は素晴らしく優秀だ。だが、その兄弟喧嘩は私に死をもたらすだろう。」
–トカシアの日記
引用:厳しい授業(Stern Lesson)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
厳しい授業(Stern Lesson)では、トカシアが喧嘩をした兄弟を教え諭す場面を描いている。
トカシアの指導の下で、兄弟はそれぞれに溢れる才能を示した。しかし、兄弟間の度を過ぎたライバル関係にはトカシアはほとほと困り果てていた。
2人はAR0年の元日(1月1日)と大晦日(12月35日)に生まれた。ほぼ1年の開きがあるため、ウルザは弟を自分が守るべき存在のように振舞い続けた。しかし、同じ年の生まれでもあるため、ミシュラは歳に変わりはないと見做しており、折に触れ兄貴風を吹かすウルザの態度には我慢がならなかった。
フレイバー・テキストの和訳製品版で「私に死をもたらすだろう。」と物騒な預言めいた記述がある。原文の「will be the death of me.」という言い回しは「命取りになる」という意味合いでは確かにあるが、この文章でなら「死んでしまいそうだ・実に困っている」くらいの含みだろう。実際は2人の諍いがトカシアの死因になるとはいえ、彼女は占術師でなく考古学者・工匠なのだから、預言を書き残したのではあるまい。
行き届いた採掘
“Remember, students, if it’s glowing, humming, or whirring, don’t touch it!”
「生徒諸君、光ったり、唸り音を立てていたりしたなら、触ってはならないぞ。忘れるな!」
引用:行き届いた採掘(Meticulous Excavation)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
行き届いた採掘(Meticulous Excavation)のイラストには、中央にトカシアがいる。他は発掘キャンプの生徒たちになるが、左の金髪がウルザで右がミシュラかもしれない。
フレイバー・テキストでは、トカシアが発掘における注意点を生徒たちに念押ししている。古代スラン文明の遺物は、特にパワーストーンは、扱いを間違えると危険な代物なのだ。
後のシーンなのだけれど、パワーストーンの分割(Splitting the Powerstone)でパワーストーンが2つに割れた際、兄弟は互いに相手が遺物に触ったから割れたと主張していた。トカシアはその時の光景を目撃していた。しかし、どちらが触ったのか、あるいは同時に2人とも触ったのか、むしろどちらも触らずに別の要因で割れてしまったのか、彼女には判別はできなかった。
ちなみにカード名で「行き届いた」と訳された「Meticulous」は、「慎重な」「細心の注意を払う」くらいの意味合い。このカードの場合は「(細部まで注意の)行き届いた採掘」ということになる。公式和訳版は、トカシアの指導が行き届いている、という含みを強め出して訳しているのかもしれない。
トカシアの採掘場
Sent by their noble parents to toughen up and learn something of the world’s past, Urza and Mishra instead uncovered Terisiare’s future.
心身を鍛え、世界の過去を学ぶようにと高貴なる両親に送り出されたウルザとミシュラは、その代わりにテリシアの未来を明らかにした。
引用:トカシアの採掘場(Tocasia’s Dig Site)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
トカシアの採掘場(Tocasia’s Dig Site)は大砂漠の東方にあり、アルガイヴ貴族の支援と友好的なファラジの協力の下で発掘チームがスラン帝国時代の遺物を探していた。兄弟はトカシアから考古学・工匠術・スランの技術・パワーストーンについて学んだ。
AR16年春、雨の後で発見された羽ばたき飛行機械の遺物が発掘チームの、兄弟の、そしてテリシアの未来の、大きな転機となるのだった。
フレイバー・テキストはやや皮肉だ。「高貴なる両親」が兄弟のためを思って送り出したというものの、実父はともかく継母の方はそれは上辺だけであったろうに。
飛び立ち
Though neither brother cared to admit it, flying the ancient thopter was their last happy moment together.
兄も弟も認めようとはしなかったが、太古の飛行機械を飛ばしたのが、共に幸せに過ごした最後のひとときだった。
引用:飛び立ち(Take Flight)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
飛び立ち(Take Flight)は修復した羽ばたき飛行機械が空に飛び立った場面だ。
発掘場から回収した飛行機械の復元には8か月を要し、AR16年の大晦日(12月35日)に初飛行試験を成功させた。そしてミシュラが操縦する羽ばたき飛行機械はスランの地上絵を発見するのだった。
これ以降の2年は飛行機械の導入で上空からの調査が可能となり、更なるスランの地上絵や塚山を発見し、その調査結果からスランの隠された中心地と推定される位置を割り出した。AR19年、兄弟とトカシアの3人はその場所をコイロスと名付け、調査に赴いた。
パワーストーンの分割
As the glowing stone broke apart, so too did the last shred of the Brothers’ bond.
輝く石は砕け散り、最後に残っていた兄弟の絆もまた砕けた。
引用:パワーストーンの分割(Splitting the Powerstone)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
パワーストーンの分割(Splitting the Powerstone)はタグシンの広間の大きなパワーストーンが爆発し、破片が残った2つの破片をウルザとミシュラがそれぞれを手に入れる瞬間である。
ウルザが手にしたのはマイトストーン(The Mightstone)、ミシュラの方はウィークストーン(The Weakstone)である。
ファイレクシアの幻視
ファイレクシアの幻視(Visions of Phyrexia)はマイトストーンとウィークストーンを手にした瞬間に、兄弟が見たそれぞれの幻視を描いている。
5000年前のスラン・ファイレクシア戦争の光景かファイレクシア次元と思われる同じ場面を、兄弟は別の視点から見せられることになった。イラストの左半分はウルザと彼が見た光景で、右半分はミシュラのものであろう。
ミシュラはファイレクシアのイメージをその後も幻視や夢の中で何度となく目にすることになる。
兄弟仲の終焉
The brothers’ rivalry escalated into all-out enmity, and Tocasia paid the price.
兄弟の意地の張り合いは、取り付く島もない反目へと激化し、その対価はトカシアが払うことになった。
引用:兄弟仲の終焉(Brotherhood’s End)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
兄弟仲の終焉(Brotherhood’s End)は、ウルザとミシュラの決別が決定的となったある夜の事件を表現している。
石を所有して以来、2人は相手が自分のものを奪おうと狙っていると思い込むようになり、その執着から兄弟間の対立が再燃し、かつてないほど強い衝突を繰り返すようになった。
AR20年、コイロスから帰還して10か月後のある夜、遂に兄弟は互いの石を巡って争った。石の持つ破壊的な力を振るったことで、2人は取り返しのつかない過ちを引き起こすことになった。闘いに巻き込まれた恩師トカシアを殺してしまったのだ。
やり場のない悔恨
Tocasia’s face haunted his vision. The explosion still rung in his ears. Mishra kept running and never once looked back.
トカシアの顔が、彼の眼に焼き付いて離れなかった。耳の中では、まだ爆発音がこだましていた。ミシュラは走り続け、決して振り向きはしなかった。
引用:やり場のない悔恨(Overwhelming Remorse)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
やり場のない悔恨(Overwhelming Remorse)は、トカシアを死なせてしまったミシュラが夜闇に紛れて発掘キャンプから失踪し、大砂漠をコイロスの洞窟を目指して進んでいく場面である。
ミシュラが去った後、トカシアを喪った発掘キャンプは解体されることになった。ウルザは故国アルガイヴには戻らずに、隊商に同行して南のヨーティアの首都クルーグに向かうのだった。
さいごに
兄弟が一緒に暮らしていた平和な少年期は、ここまででお終いとなる。次回は別々の道を進む兄弟の再会と、本格的な戦争勃発を取り上げることになる。
では、今回はここまで。
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