エルドレイン次元のアルコン(Archon) について解説する。
エルドレインのアルコンの解説
エルドレイン次元のアルコンも他の次元と同様のMTGらしい特徴を備えている。
カード化されているアルコンは2種類で、それに小説「Throne of Eldraine: The Wildered Quest」 での描写を加味すると、エルドレインのアルコンは顔の見えない人型をしており、立派な大鹿のような飛行クリーチャーに騎乗している。この騎乗生物は、大きな鳥のような翼を持ち、頭からは複雑に枝分かれした角が生えている。
スペクター
MTGの「スペクター(Specter) 」はアルコンと対称的な存在である。スペクターが黒の属性を体現していることを除けば、アルコンとの共通点が驚くほど多い。詳細はこちらの記事 を参照。
エルドレインの天使
カードと小説の情報によると、エルドレイン次元で「天使(Angel) 」の存在が確認できない(存在しないとまではまだ言い切れない)。仮定の話だが、一般的な次元での天使の役割は、エルドレインでは白のフェアリーの一部とアルコンが担っているのではなかろうか。
エルドレインのアルコン関連カード
カードセット「エルドレインの王権」にはカード化されたアルコンが2種類収録されている。
赦免のアルコン(Archon of Absolution)
データベースGathererより引用
赦免のアルコン(Archon of Absolution) は大鹿の枝角のような武器を携えている。
調和のアルコン(Harmonious Archon)
First among equals.
全ての上に立つもの。
引用:調和のアルコン(Harmonious Archon)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
データベースGathererより引用
フレイバー・テキストの英語原文「First among equals.」とは、ラテン語の「primus inter pares」の翻訳に当たるお決まりの表現。横並びの集団において唯一上に立つ存在くらいの意味合いがある。カードメカニズムでは、この文の通りに他すべてのクリーチャーは平等に3/3になり、この調和のアルコン(Harmonious Archon) だけが全ての者を超越した存在となる。
小説のアルコン
※ネタバレ※になる記述なので、小説を読む体験を損なう可能性があります。
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小説でのアルコン(ネタバレ注意)
18歳になる数か月前のケンリス双子は、父王が王国内を巡察する大巡行(The Grand Procession)に同行しようとして、両親の言いつけを守らずにアーデンベイル城を抜け出し、僻境の影響が残る危険なチョーキングドラム分水嶺の森を突っ切ることにした。近道をすればベックバラ(Beckborough)の街で大巡行に追いつける算段だった。
樹木と茨が入り組んで侵入不能な森の外れに到着した双子の前で、突然、森を抜ける上りの階段道が出現する。そして双子に向かって階段道を下りてきたのがアルコンであった。
注釈:チョーキングドラム(Choking Drum) は、アーデンベイル城からほど近い巨人顎の丘(Giant’s Jaw Hill)から、遠方のクラウンクラッグ(Crown Crag)までを走る分水嶺である。アーデンベイル本土の広大な低地と、アーデンベイル城のある小さなデイルを隔てる障壁でもある。「Choking(窒息する、息苦しい)」+「Drum(アイルランドで、分水嶺や丘を意味する言葉)」。日本ウィザーズ社記事の非公式訳は「締めつけ尾根」である(出典 )。
小説でのアルコン(ネタバレ注意)
アルコンは堂々たる大鹿に跨って苔むした階段道を下りてくる。アルコンの顔は青白いフードで隠れており、大鹿は地面を這う漂う霧でできているように見えた。大鹿の巨大な翼も枝角も入り組んだ木々をすり抜けて、さながら幽体のようであった。恐れを覚える双子の前でアルコンは影の中へと溶けるように消え去ってしまった。
アルコンは消えてしまったものの、木のトンネルのような階段道の方はまだそこに残っている。これは誘いか吉兆かそれとも罠だろうかといぶかしむのだった。
小説でのアルコン(ネタバレ注意)
思わず剣を抜いたウィルに対して、ローアンは並みの武器ではアルコンは殺せないと注意した。
小説でのアルコン(ネタバレ注意)
さて、作中のアルコン出現の場面は一体何なのだろう?いきなり現れた階段道とアルコン。だがアルコンは道を降りてきて消えるだけである。なにこの怪現象。
実は作品には、このアルコンと類似したシーンが後日に発生している。それが双子とスペクター(Specter) との遭遇だ。スペクターは運の尽きた者の前にのみ姿を現わすと言われており、まさにその時、双子の旅の仲間が命を落とした。
スペクターは言い伝え通りに不幸の兆しとして出てきた。では、スペクター自体はそのあと何か行動をしたのか?実は何もしないのである。スペクターはそのまま何をするわけでもなく退場するのだ。アルコンと同じく出てきて消えるだけなのだ。
黒のスペクターと白のアルコンが色的に対になって扱われているとしたら…?アルコンも双子の現状かこの先に起こる何かを暗示していると考えられるだろう。
※ 2019年10月14日時点ではここまで明日以降に考察を加筆予定。→以下10月23日に追記。
小説でのアルコン(ネタバレ注意)
アルコンとの遭遇後、双子は続けざまに3つの不吉な出来事に遭遇することになる。
まず始めがウィルの幻覚だ。双子は木々がトンネルとなった暗い階段道を上っていく。ウィルはほんの数歩先を行くローアンの姿を見失い、上り抜けると周囲の木々が生きた蛇のように思えてならなくなり、この土地がチョーキングドラム(窒息する分水嶺)と呼ばれる由来について、ぞっとするようなおぞましい連想をとめどなくしてしまう。そこでローアンに呼びかけられてウィルは正気に戻る。蛇の幻も止められない妄想も消え去った。
だが、すぐに続いてレッドキャップの集団が双子を襲う。命の危険をはらんだ脅威に2人きりの力で対処しなければならない。双子にとって人生初の体験である。
最後は助っ人の姿をとって現れた。巨漢の狩人「犬」とその主人オーコ氏との遭遇である。レッドキャップの危険から逃れられた双子は、オーコをロークスワインのエルフと見当をつけた。オーコは言葉巧みにローアンにしゃべらせて情報を引き出していく。そうこうしてるうちに4人はチョーキングドラムを無事に抜けることができた。この一見友好的な遭遇が、王国全土を巻き込む大事件が起こるきっかけとなってしまう。
小説でのアルコン(ネタバレ注意)
ここでMTGでのアルコンの基本設定を再確認したい。「秩序を厳格に守らせ、法を破る者をきつく罰する」白の属性の具現である。
アルコンが出現した時、双子は言いつけを破って城を抜け出してこれから僻境の森へと踏み入ろうとしていた。すなわちアルコンにとって双子は法と秩序を乱す者、罰する対象となってしまうのだ。これ以上先に進めば取り返しのつかない罰を受けるぞ、とアルコンは最終警告をしに出現したのかもしれない。
翻訳について
最後に「Archon」の和訳についての誤りについて解説する。
MTGでは「Archon」には2つの公式訳がある。「アルコン」と「執政官」だ。 結論を先に言っておくと、本サイトでは「アルコン」が正しく、「執政官」は誤りと考えている。
まず、英語の「Archon」の語源はギリシア語で「統治者」「支配者」といった意味合い(出典 )。辞書的には「統治者」「支配者」の他に、ある種の超自然的な存在を指して用いられる言葉である。
こういう意味の単語であるためか、MTGの公式和訳では最初は役職として解釈して「執政官」と翻訳されていて、もうすでに定訳化してしまっている。エルドレインの王権現時点では、クリーチャー・タイプとしては「執政官」が定訳。カード名では「執政官」が大多数で、まれに「アルコン」と訳されている。
データベースGathererより引用2005年に「執政官」と訳された最初のアルコン魅力的な執政官(Blazing Archon)
「執政官」とは「政治を取り仕切る者」という意味なので、設定的に明らかに間違いだが、競技ゲーム的には(残念ながら)問題がない。だからおそらくは、変更すると印刷されたカードとの食い違いが生じ競技的にはむしろ混乱が増えるために、クリーチャー・タイプとしては「執政官」という訳語が変更されることはないだろう。
まだ幸いなことに、エルドレインの王権では、少なくともカード名は「アルコン」とより正しい翻訳になっている。今後のカード名でも「アルコン」のまま継続して訳されることを期待したいものだ。
本サイトは、競技ゲーム的側面よりも、MTGの背景世界や設定を重視している。したがって、この種のクリーチャーは「アルコン」と呼称する(極力「執政官」訳は用いない)。
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