産業のタイタン(Titan of Industry)はカードセット「ニューカペナの街角」収録のクリーチャー・カードである。
公式の設定情報がほぼ皆無のこのカードに関して、カード名やイラストに基づいた考察を行った。記事の半分はおまけであり、私の個人的な妄想を語っている。
追記(2022年5月24日):アニメ「THE ビッグオー」との類似性について追記した。→こちら
産業のタイタンの解説
産業のタイタン(Titan of Industry)はニューカペナ次元のエレメンタル・クリーチャーである。
自然発生してビルに宿った精霊なのか、こういう存在として建造されたものなのか、何も語られていないため来歴は不明だ。
ただ、テキスト欄にはマークが刻まれているため、斡旋屋一家所属であることは間違いなさそうだ。1
斡旋屋一家のボス、ファルコ・スパーラ(Falco Spara)は破滅の預言を信じており、ニューカペナに再び起こるはずの戦争に備えて様々な準備を整えている。この産業のタイタンも預言された戦争のための秘密兵器だと考えるのが妥当に思える。
産業のタイタンのイラスト
カードのイラストは見ての通り、産業のタイタンは超高層ビルディングの組み合わせで構成された大巨人だ。中央胴体部の天辺には彫像のような顔があり、2本の腕の先には人間と同じく5本の指まである。
ニューカペナの都市をのし歩き、拳で建物を砕く。恐ろしい脅威として描かれている。
カードセット「ニューカペナの街角」のストーリー現時点ではイラストに該当する状況は確認できていない。ストーリー作品では、このタイタンに言及はなかったし、都市を崩壊させる大破壊までは発生していなかった。オブ・ニクシリス一派と一家同士の抗争や都市内の暴動程度で済んでいる。
それに斡旋屋一家は、悪辣な面もあるものの、ニューカペナの守護を大目的とする組織であるため、今の時点では都市の大破壊を起こす理由が見当たらない。
したがって、このカードのイラストに描かれた情景は、あくまで可能性の中の出来事なのかもしれない。あるいは、ストーリー作品で語られなかった幕外の事件としてすでに起こってしまった可能性もなくはないだろうし、将来のストーリーで発生する事態という可能性だって否定できない。
産業のタイタンのカード名
「産業のタイタン」の英語名は「Titan of Industry」であるが、このカード名は言葉遊びじゃないかと思われる。
というのも「Tycoon of Industry」と言えば「産業界の大物」を指す言葉になる。「Tycoon」は日本語の「大君(たいくん)」が語源なので発音も「タイクーン」くらいだ。
「Tycoon(タイクーン)」と「Titan(タイタン)」は音が近い。また、「titan」は巨人族タイタンのことだが、比喩的に「(巨人のような)大物」のことでもあるので、意味の上でも「Tycoon」と「Titan」は似ているのだ。
したがって、「Titan of Industry」と言う語感からは「産業界の巨人・大物」という比喩的な意味合いを想像してしまうことだろう。ところが、実際のカードを見ると文字通りの「工業的な巨人(Titan of Industry)」なので、予想とのギャップに驚いてしまう。製作者側はそんな反応を想定しているのではなかろうか?
言葉遊びだと考える理由はこんなところだ。
あまり想定したくはないのだが、もしかするとこのカードは言葉遊びで作られた一発ネタに過ぎず、特別な背景設定は(少なくとも「ニューカペナの街角」現時点で)背負わされていない。斡旋屋一家のマークも、盾カウンターを置くというゲーム的なメカニズムから機械的に割り振られたもの。こういった可能性はゼロとは言えない。
おまけ:産業のタイタンの妄想
この節は、あくまで私の個人的な妄想である。将来のストーリーの展開予想ともとても言えない、根拠薄弱のあくまで妄想である。読み飛ばしても構わない与太話なので十分に注意されたい。
では妄想語りに移ろう。
産業のタイタン(Titan of Industry)は斡旋屋一家の本拠地「ニドーの聖域(Nido Sanctuary)」が覚醒し変形した、要塞兵器なのではないだろうか?
ではまずニドーの聖域を説明する。
ニドーの聖域とは
To most, the Nido Sanctuary is an office complex. To the Brokers, it’s a vault of secrets.
多くの人にとって、ニドーの聖域とはオフィス街である。斡旋屋一家にとって、そこは秘密の金庫室である。
引用:スパーラの本部(Spara’s Headquarters)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
スパーラの本部(Spara’s Headquarters)はカードセット「ニューカペナの街角」収録の土地カードである。斡旋屋一家の本部「ニドーの聖域(Nido Sanctuary)」を表している。
公式記事Planeswalker’s Guide to Streets of New Capennaによると、ニドーの聖域は次のような設定が公開されている。
ニドーの聖域はメッツィオ地区中心部にある明るく清潔で、設備の整った事務所の複合体で、いつでも気軽に法律事務所や弁護団を利用できる場所だ。
聖域の立ち入り禁止区域には、訓練場や武器庫、弁護士2や新入構成員の寮が含まれる。
ファルコ・スパーラはここにも住居を持っているものの滅多に使わず、むしろ預言書が厳重に保管されたここの事務所の方へと頻繁に出向いている。
MTGの伝統:動き出す拠点
斡旋屋一家の本部「ニドーの聖域」について、基本公開設定が確認できた。私の考え(妄想)では、斡旋屋はこの複合体施設を魔法的・工業的に改造して、巨人兵器にしている、というものだ。
まあ、これだけでは何の根拠もない突飛すぎる思い付きなのだが、MTG史を振り返ってみると「拠点の巨大建造物が機動兵器として動き出す」という前例が存在しているのだ。だから、これもまた同じパターンをやるんじゃないか?とそう単純に連想してしまったわけだ。
動き出す拠点を具体的に上げると……。
その1:シヴの掘削施設
まず1つ目がドミナリア次元のシヴのマナ掘削施設。
このマナ掘削施設はAR-5000年頃のスラン帝国の遺産なのだが、AR4205年のファイレクシア侵略戦争時に、施設の一部が分離して火炎放射攻撃をする機動要塞となったのだ。この場面は小説Invasionにおいてもきちんと描写されている。
この分離&機動要塞化は何の伏線もなく、唐突に発生したものだった。こんな前例があるので、ニューカペナ次元でも伏線なしでニドーの聖域が変形して動き出してもおかしくはないのではないか?私はそう思ってしまうのだ。
参考記事:
その2:ボロス軍のパルヘリオン
2つ目の前例がラヴニカ次元のボロス軍が所有する浮遊城塞「パルヘリオン(Parhelion)」だ。
パルヘリオンは最初のラヴニカ・ブロックの小説Guildpactで初登場した。当初は飛翔艦として建造され、成層圏までも上昇するという性能を発揮したが、後に地上に降下してボロスの要塞となった。小説Dissensionのストーリーで破壊されたてしまったものの、後に残骸から再建造されることになった。
パルヘリオンⅡ(Parhelion II)は再建されたパルヘリオンをカードセット「灯争大戦」でカード化したものだ。
先立ってのラヴニカへの回帰ブロック時点で再建描写が前振りされ、灯争大戦ではやはりただの地上要塞では終わらずに、大空を飛びニコル・ボーラス(Nicol Bolas)の侵略軍と激戦を繰り広げることになった。
パルヘリオンの場合は元々が飛翔艦であったので、機動要塞化するのは予想の範疇ではあった。
しかしパルヘリオンⅡが中央で縦に分割変形して、「神秘的なカノン砲(Mystic Cannon)」を発射したのにはちょっと驚かされたものだ。
参考記事:
ニドーの聖域=産業のタイタン
過去のシヴの掘削施設と、ボロス軍のパルヘリオンの例を見るに、拠点の機動要塞化や隠し秘密兵器の実装はすでに2度も行われているのだ。
来るべき新ファイレクシアとの決戦が起こるとするなら、超巨大ロボット要塞はかなり見ごたえがあるんじゃないか?……正直言うと、ファイレクシアの巨大機械生物との対決とか見てみたいのだよね。
以上、妄想語りお終い。
追記:THE ビッグオー
この記事を投稿した後に、ロボットアニメ「THE ビッグオー」を意識しているではないか?との指摘を受けた。
「THE ビッグオー」の作品世界はというと……
過去に起こった何らかの出来事によって世界はほぼ壊滅しており、その出来事とそれ以前の記憶を失った街が舞台である。そこはマンハッタンに似た大都市で、街の外は荒廃している。都市は残されたテクノロジーを用いて社会を再建しており、スーツ姿の犯罪者や工作員が跋扈している。
なるほど。基本の要素を見るに、「ニューカペナの街角」と「THE ビッグオー」は高い類似性を示している。
では産業のタイタンと主役ロボット「ビッグオー」ではどうか?
比較すると、まず両者とも巨人である。顔が高い位置にあり、顔つきが似ている。巨大な前腕部を有し、拳を叩きつける攻撃を行う。
こちらも似ていると言えそうだ。
だが「The ビッグオー」は日本のロボットアニメである。ネットが発達した現代では、制作された国をそれほど気にせずにアニメを視聴する環境が整っているが、20年前はそうではなかった。アメリカ産ゲームのMTGで、20数年前の日本ロボットアニメが引き合いに出されるのはありえるのだろうか?それほどアメリカで知名度がある作品なのだろうか?
それで確認してみると、「THE ビッグオー」は元々は1999年の日本のアニメだが、実は「アメリカでの好評」を受けて続編「THE ビッグオー second season」が2003年に制作されたことが分かった。
こういう経緯があるのなら、アメリカのファンを見越してMTGでも「THE ビッグオー」のオマージュネタを組み込んだ。それが産業のタイタンだ、というのは十分あり得えそうだ。
さいごに
今回は1枚の神話レア・カードに関して、記事の半分はほとんど妄想を語った。
こうなったのは、ある意味では「ニューカペナの街角」のクリエイティブの詰めの甘さのせいだと思っている。
「ニューカペナの街角」は、1920年代アメリカ大都市のギャング系ジャンルをMTG風に解釈したカードセットであり、その点では非常に素晴らしい。が、それ以外はあまり考えてない印象で、ユーザーがどうぞ好きに解釈していいですよ、と丸投げされている気分になるのだ。「ニューカペナの街角」とその他との連続性が希薄に見えるし、ニューカペナ自体やキャラクターに関する解説と描写が曖昧で通例よりも情報そのものが足りなすぎる。
じゃあ妄想するしかないじゃない。好きにしろと言うなら勝手にするよ。そんな感じでいいのかもね。
では今回はここまで。
産業のタイタンの関連記事
カードセット「ニューカペナの街角」関連のリスト