有翼の先触れ(Winged Portent)はカードセット「イニストラード:真紅の契り」収録のインスタント・カードである。
間も無く発売される「イニストラード:真紅の契り」のカードについて、小ネタを拾って解説する。今回はこのカードだ。
有翼の先触れの解説
“No, no, it’s just a murder of crows, not an omen of murder. . . . I think.”
–York, Kessig tracker
「違う、違う。ただの鴉の群れだ。殺人の予兆ではない。多分。」
–ケッシグの足跡追い、ヨーク
引用:有翼の先触れ(Winged Portent)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
有翼の先触れ(Winged Portent)はカードセット「イニストラード:真紅の契り」収録のインスタント・カードである。該当するクリーチャーの数だけカードを引ける。
イラストでは、永遠の夜に閉ざされたイニストラードの空、月光を背景に群れ成して飛ぶ鴉の群れがまるで骸骨のようなシルエットを浮かび上がらせ、見る者には死の予兆を感じさせる…。
このイラストに相まって不吉さを掻き立てるのがフレイバー・テキストなのだが、少し説明が必要だ。
有翼の先触れのフレイバー・テキスト
“No, no, it’s just a murder of crows, not an omen of murder. . . . I think.”
–York, Kessig tracker
「違う、違う。ただの鴉の群れだ。殺人の予兆ではない。多分。」
–ケッシグの足跡追い、ヨーク
フレイバー・テキストを見ると、和訳すると通じなくなってしまう言葉の連想が含まれている。
和訳製品版で「鴉の群れ」と訳されている原文は「a murder of crows」だ。「murder」は普通は「殺人」を意味する言葉であるが、「a murder of crows」となると「鴉の群れ」の意味になるのだ(この言い回しの由来は諸説あってはっきりしない)。
ただでさえ鴉の群れには不吉な雰囲気がある。その上、英語では単に「鴉の群れ(a murder of crows)」と言っただけで「殺人(murder)」という単語が含まれているために無意識に「死」を連想してしまう。そういった含みがあるフレイバー・テキストなのである。
ちなみのこのフレイバー・テキストの発言者、ケッシグの足跡追い、ヨーク(York, Kessig tracker)はこれが初登場のようだ。
A Murder of Crowsの関連カード
カラスの群れ
Even more than carrion, they crave the last words of the dying.
彼らが求めるのは、死肉よりも瀬戸際にいる者の最期の言葉だ。
引用:カラスの群れ(Murder of Crows)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
カラスの群れ(Murder of Crows)というカードは既に存在している。イニストラード次元が初登場したカードセット「イニストラード」に収録されたクリーチャー・カードである。
これは当時、日本の一部のMTGファンの間で「『Murder of Crows』でなぜ『カラスの群れ』と訳せるんだ?正しい和訳なのか?」と話題に上がっていた記憶がある。「a murder of crows」は由来もはっきりしない言い回しであるし、英和辞書でも見かけにくい表現なのでこんな混乱が起こったのだろう。
カラスの嵐雲
Storm crow lonely, boon for a birder.
Storm crows together, likely a murder.
引用:カラスの嵐雲(Crow Storm)のフレイバー・テキスト英語原文
カラスの嵐雲(Crow Storm)はジョークカードセット「Unstable」で作られたカードだ。
これのフレイバー・テキストでも「カラスの群れ(a murder of crows)」の言葉遊びが隠されている。ではフレイバー・テキストを読解してみよう。
まず省略された語句を補って文章を分かりやすい形に変える。
If storm crow is lonely, boon for a birder.
If storm crows are together, likely a murder.
まず上の文。「birder」は色々意味合いに幅が合って「野鳥観察者」や「鳥の飼育者」、「鳥の狩猟者」などなど…鳥にまつわる人々が含まれる。どれでも良さそうなので取りあえず「猟師」としておこう。すると、「嵐雲のカラスが一羽なら、猟師とっては恩恵だ。」こんな感じに読めるだろう。
次に下の文だが、前半は「嵐雲のカラスが集まるなら、」と素直に読める。そして残りの後半「likely a murder.」はもちろん「カラスの群れ(a murder of crows)」を意識していて、二重の意味でとれるようになっている。つまり「群れのようだ。」とも「殺人(事件・現場)のようだ。」とも両方にだ。
嵐雲のカラスが一羽なら、猟師には天の恵み。
嵐雲のカラスが集まるなら、まるで殺しの現場。
取りあえず訳してみたが、原文の韻を活かすのも、二重の意味をスマートに日本語に落とし込むのも、どちらも難しすぎて断念した。
嵐雲のカラスが一羽だけなら、猟師にとっては天の恵みだという。じゃあ、もし嵐雲のカラスが集まったとしたら?「群れ(a murder)」になるのは当然だが、「殺人現場(a murder)」のような様相を呈するのだ。つまり、一羽だけなら猟師は助かるので天の恵みであるが、群れ相手では命を取られることになる、とそんな含みが読み取れるだろう。
おしまいに
以上で、「カラスの群れ(a murder of crows)」にまつわるカードは語りつくした。
ちなみに、カラスの嵐雲(Crow Storm)のネタ元である「嵐雲のカラス(Storm Crow)」にまつわるジョークに関しては過去記事で解説している。この記事では「ウルザの正体が嵐雲のカラス」などといった長編小説由来のネタも紹介しているので、興味ある方はどうぞ読んでみて欲しい。
過去記事の宣伝もできた。では今回はここまで。
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