神秘の頭蓋骨(Mystic Skull)はカードセット「イニストラード:真夜中の狩り」収録のアーティファクト・カードである。両面カードであり、変身すると神秘の大怪物(Mystic Monstrosity)というアーティファクト・クリーチャーになる。
神秘の頭蓋骨の解説
It waited on the barn wall for decades, forgotten, looking for the perfect opportunity.
数十年もの間、家畜小屋の壁に掛けられたまま忘れ去られた頭蓋骨は絶好の機会を待ち続けた。
引用:神秘の頭蓋骨(Mystic Skull)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
神秘の頭蓋骨(Mystic Skull)はカード・メカニズム上で2つの機能を持っている。
1つ目が1マナとタップで、好きな色のマナを出すマナ・フィルター能力。2つ目が5マナとタップで変身して裏面にひっくり返る能力だ。
イラストを見ると、4本の水牛に似た大きな角を持つデーモンのような頭部だ。下顎からは鋭い2本の犬歯が突き出て、両目は赤く発光している。角や顎の脇などの部分部分に金属板や金属帯が被せられている。
この頭蓋骨は小屋の薄い板壁に飾られている。隣には何らかの道具であるフックが掛かっていて、壁や天井を見ると板材同士の隙間が空けられているのも分かる。角材と板の段差には所々に蜘蛛の巣が張っていて、藁屑のようなものが絡まっているようにも見える。
フレイバー・テキストによると、この頭蓋骨は数十年前から小屋の壁に忘れられたまま、何らかの絶好の機会を伺っているという。その機会が巡ってきた時に何が起こったのだろう?
神秘の大怪物の解説
Under the light of an unnatural moon, it walked out on legs of straw with joints of hinges ripped from the barn doors.
不自然な月の光に照らされて、それは家畜小屋の扉の蝶番で繋がれた関節と藁の脚で歩き出した。
引用:神秘の大怪物(Mystic Monstrosity)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
神秘の大怪物(Mystic Monstrosity)は神秘の頭蓋骨(Mystic Skull)が変身した裏面である。全ての自軍の土地は好きなマナを出せるようになる。
イラストを見ると、神秘の頭蓋骨が4本足の怪物となった姿である。シルエットは四足獣の哺乳類より昆虫や甲殻類に近い雰囲気がある。
体は藁の束で出来ており、筋肉の繊維のようだ(藁というにはかなり太いものも混ざっている)。その束にリベットが打たれた金属の帯が継ぎ接ぎに巻きついてまとめている。金属帯はまるで穴が開いた外骨格にもみえる。フレイバー・テキストによると、関節は小屋の扉から剥ぎ取られた蝶番1とのことなので、全身の金属帯も小屋の部品やそこにあった道具であったと考えられる。
周囲は農場の一角だろうか。大怪物の背後には小屋があり、斧と薪の山、荷車、低い木の柵、樹木が確認できる。
フレイバー・テキストでは、不自然な月光の下で大怪物は動き出したとある。カードセット「イニストラード:真夜中の狩り」の舞台背景では、夜が日ごとに異常なまでに長くなっていっており、人狼など夜の怪物が力を増している。この神秘の大怪物もこの夜の影響によって身体を作り出したに違いない。神秘の頭蓋骨が数十年間も待っていた「絶好の機会」とはこの夜の到来であったのかもしれない。
「Barn」は「家畜小屋」なのか?
フレイバー・テキストで「家畜小屋」と訳されている「barn」には、その他にも「納屋」や「物置」などの広い意味合いが含まれる。決して家畜を飼う場所に限定されてはいない。
このカードの文脈では「barn」は「家畜小屋」で正しいのだろうか?カードを眺めていてふとそんな疑問が頭をよぎった。このカードのどこにも家畜の存在を示唆する情報が見当たらないのだ。
では、そもそもこのカードに描かれている「barn」はどんな小屋なのだろう?
多量の藁・干し草
「barn」(以下、「小屋」)には、少なくとも神秘の大怪物の体の材料となった大量の藁・干し草が置かれていたのは間違いない。また、大怪物を構成する金属帯の多さを考えるに、小屋の中には扉の蝶番などよりももっと多量の金属部品を含む道具が置かれていたはずだ。
小屋の壁には頭蓋骨と一緒にフックが掛かっていた。これは干し草の塊(干し草俵:bales of hay)に引っ掛けて運ぶための道具と考えられる。
カードセット「イニストラード:真夜中の狩り」の季節は秋と設定されているため、時期的に干し草俵が小屋に蓄えられているのは極めて自然だ。貯蔵した藁・干し草は冬場の家畜の餌として利用されるものなので、この農場で馬か牛か何かの家畜を飼っていることもほぼ間違いないだろう。
もしこの小屋に家畜が飼われていたとしたら、大怪物の体の材料となった藁・干し草の中には、家畜の寝床に敷く寝藁や食べ残した飼い葉なども混ざっていたことだろう。
他言語版との比較
各種言語版の翻訳を比べてみる。
和訳版では「家畜小屋」としているが、その一方で中国語版とドイツ語版では「穀物倉庫」的な言葉に訳しているし、イタリア語の「fienile」は「干し草置き場」のようだ。
その他の言語版は、英語と同じように「納屋」くらいの広くやや曖昧な意味合いで捉えているように思える。2
結論
まとめに入る。
このカードの「barn」は中に藁・干し草を大量に貯蔵していて、それは冬場に備えた家畜の餌だと考えられる。その他にも干し草俵を運ぶフックだけでなく、金属製の道具が色々と収められていたようだ。
各種翻訳を比べると、小屋の中身を「家畜」「穀物」「干し草」と種類をある程度限定する翻訳も存在する一方で、原語の英語と同様に中身を限定しない「納屋」くらいの言葉に置き換えているものが大半であった。
この小屋の中で家畜が飼われていたともいなかったともどちらとも言えないが、藁・干し草と金属の道具は確実に存在していた。したがって、「家畜小屋」ではないとは断言できないが、このケースの場合は「納屋」と読んでおいた方が無難であろう。これが結論だ。
これは一体どういうことだろう?と考えていったものの、特段珍しい発見もなく、まあそんなとこだよねと大したことない事実の確認だけで終わってしまう。個人的にはよくあることだ。では今回はここまで。
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