こだまの検察官(Echo Inspector)はカードセット「ニューカペナの街角」収録のクリーチャー・カードである。
今回は短編作品にも登場した常夜会一家の調査員を取り上げる。
こだまの検察官の解説
The rendezvous took place hours ago, but the Obscura agent read the residue with ease.
会合が行われたのは何時間も前だが、常夜会一家の工作員はその残響を簡単に読み取った。
引用:こだまの検察官(Echo Inspector)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
こだまの検察官(Echo Inspector)はニューカペナ次元の常夜会所属のエイヴンだ。
こだまの検査官は魔法を駆使して現場の残留物を分析し、過去に起こった出来事を読み取ることができる。
ちなみに、フレイバー・テキストでは「残響」と訳された元の言葉は「residue」で「残留物」くらいの意味である。カード名が「Echo」すなわち「こだま・反響」であるので、それに揃えて「残響」と訳を工夫したのだろうか。中々に味な雰囲気が出ている翻訳だ。
こだまの検察官の登場ストーリー作品・記事
こだまの検察官(Echo Inspector)は短編「何を見る(What You Expect to See)」に脇役の調査チームとして登場している。
作中には種族に関する言及がないので、カードと同じエイヴンのみなのか、その他の種族もいるのかは不明だ。常夜会一家の構成員なので、セファリッドや人間などの可能性は十分あるだろう。
作品中での呼称について
この作品中での名称は「Echo Inspector」でなく「Echo Reader」と表記されているものの、現場で起こった過去の情報を魔法で読み取る常夜会一家の構成員という描写は全く同じだ。
ただし、公式和訳版では「痕跡読み」と訳されていて、カード名の「こだまの検察官」と共通する部分が皆無であるため、カードとの繋がりが見えなくなってしまっている。せめて「Echo」の翻訳をカードに合わせて「こだま読み」ならば良かったのだが……。
以下、この節では「こだま読み」と表記する。
作品中での活躍
短編中では、こだま読みのチームが常夜会一家の密偵長、カミーズ(Kamiz)の命令で爆発事件の発生したメッツィオ1の倉庫に派遣された。彼らは目を閉じて倉庫のスペクトル残像2を分析し、事件現場で起こった状況を探り出した。
最初の夜に新聞記者レイシー・レナイン(Lacey Lanine)が「光素」の瓶を倉庫に届けた(これは舞台座一家から盗まれたものと後に判明する)。受け取ったのは4人の魔術師で、この光素に向けて何十もの呪文を試み続けた。どの呪文も立ち消えたが、事件のあった今朝に何かの呪文が作用してここの全てを飲み込む爆発を起こし、爆発の中から影が弾け出したのだ。ここまで解明できたとはいえ、4人の術者の顔は呪文で影がかかったように隠蔽されて読み取れなかった。
こうしてこだま読みの分析結果で得られた情報によって、カミーズの捜査は真相解明に向けて大いに進展できたのだった。
おまけ:宴をかき乱す者
短編「何を見る(What You Expect to See)」には、こだまの検察官の他にもカード化している名もなき常夜会一家の構成員が登場している。
それがカードの宴をかき乱す者(Revel Ruiner)である。
短編内では単純に「Ruiner」と呼ばれていた。カミーズの部下クェザ(Queza)によると、もし推測通りにナンシー・レナインが自作自演で事件を起こして暴露記事を発表する計画であったとするなら、この「Ruiner」に指令すれば新聞掲載を阻止できる、とのことだった。
「Ruiner」という言葉には「破滅させる者」や「台無しにする者」との意味合いがある。カードでは「Revel Ruiner」なので、「宴を台無しにする者」となる。作中描写と合わせて考えるに、常夜会の「Ruiner」は一家の任務で何らかの標的を台無しにする工作員のようだ。
公式邦訳版では「破滅者」と訳されていて、「宴をかき乱す者」と共通する部分が無いため、カードと繋がりがあると気付くことはできない。こだまの検察官の時と同じだ。かといって、この短編内で「破滅者」の代わりに「かき乱す者」を用いればよかったかと言うと、そうでもない。役職や地位として見ると、「かき乱す者」という言い方は説明的すぎて、文章に締まりが無くなるだろうからだ。3
さいごに
今回は常夜会のモブ構成員を取り上げてみた。
MTGのストーリー作品のあるあるなのだけれど、この手の名無しのモブが登場する場合、カード名と同じ名称で呼ばれずに少しあるいは全く違う表記であることが珍しくはない。本記事で紹介したこだまの検察官や宴をかき乱す者は、名称の一部がそのまま同じなので、まだ分かりやすい方なのかもしれない。
そして、更なるあるあるだけれど、翻訳によってカードとはまた違う言葉に変換されてしまって、日本語読者は元ネタやモチーフのカードが全然見当つかなくなる。こっちも少なくなったはずだ。
見落とされがちな存在なれど、名無しモブのカードたちも実はストーリーに登場していて、創作世界を支えている縁の下の力持ちになっているのだ。確かにカードとそっくり同じではないかもしれない。でもモブに注目して作品を読むのもまた楽しいものだ。
では今回はここまで。
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