兄弟戦争:トリスケリオン

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トリスケリオン(Triskelion)は、タウノス(Tawnos)が設計した兄弟戦争期の巨大機械である。

カードセット「アンティキティー」が初出でアーティファクト・クリーチャー・カードとして収録され、兄弟戦争を扱ったストーリー作品で何度か登場した。

カードセット「兄弟戦争」ではトリスケリオン系列の巨大機械は出て来なかったものの、連載ストーリーにおいてアルガイヴ連合軍の兵器として存在は言及された。

今回はタウノスの機動要塞トリスケリオンを解説しよう。

トリスケリオンの解説

A brainchild of Tawnos, the Triskelion proved its versatility and usefulness in many of the later battles between the brothers.
タウノスの頭脳が生んだトリスケリオンは、のちに兄弟間の数多の戦いにおいて多才で有用であることが明らかになった。
引用:トリスケリオン(Triskelion)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳

トリスケリオン(Triskelion)

トリスケリオン(Triskelion)データベースGathererより引用

トリスケリオン(Triskelion)は工匠タウノス(Tawnos)が発明した巨大な機動要塞で3本の腕を持っている。

AR31-36年の間のどこかの時点でタウノスが開発し、アルガイヴ連合軍に配備され、AR63年の終戦時まで現役で使用され続けた。頑丈かつ怪力であり、戦場で敵の兵器や兵士を破壊するだけに留まらず、巨木を引き抜いたり城壁を崩したりといった作業にも有効であった。

玩具職人、タウノス(Tawnos, the Toymaker)

玩具職人、タウノス(Tawnos, the Toymaker)
データベースGathererより引用

トリスケリオンを描いたイラストでは様々なバリエーションで描かれているが、少なくとも3本の腕(あるいは脚)を有する点だけは共通している。ストーリー作品では「機動要塞(mobile fortification)」や「塔(tower)」あるいは「塔のようにそびえる(towering)」といった巨大さを形容する描かれ方をしていた。

小説The Brothers’ Warでは何らかの武器で砲撃しているが、それがどのような類のものかまで詳細は書かれていない(単に「The triskelions had opened fire on …」つまり「…に砲撃した」とのみ)。



カード・メカニズムと数字の「3」

カード名の「トリスケリオン(Triskelion)」とは、現実世界では「三脚巴」という紋章を表しており、図案化されて繋がった3本の脚や3つの渦巻き模様である。

MTGカードのトリスケリオンは「3本脚」の紋章ではなく、「3本腕」のアーティファクト・クリーチャーとなった。

カードのメカニズムでは+1/+1カウンターが「3個」乗った状態で戦場に登場する。このカウンターを1個取り除いて、任意の対象1つに1点のダメージを与えることができる。つまり「3回」起動可能で合計「3点」のダメージを飛ばすことができる。

以上のように、トリスケリオンというクリーチャー・カードはカード名、イラスト、メカニズムで「3」に拘ったデザインがされているのだ。

トリスケリオンの登場ストーリー

トリスケリオンは1994年のカードセット「アンティキティー」で初登場を果たし、フレイバー・テキストでタウノスの発明品であり、万能性と有用性を証明した機械だったと語られた。

1995年の小説Final Sacrificeでは、石脳(The Stone Brain)が幻視として見せた、兄弟戦争におけるラト=ナムの賢人の記録に一言だけ言及されていた。トリスケリオンとは明記していなかったが、「鉄の塔で、複数の目があり、3本の腕を持ち、カタパルトや攻城塔やちょこまかと動く兵たちを砕いた。」との描写であり、明らかにトリスケリオンであった。この短い言及は、ラト=ナム島での戦いにウルザ陣営が参戦していた証拠の1つである。

1998年の小説The Brothers’ Warでは、トリスケリオンは大砂漠やアルゴス島での戦場に投入されている描写が見られた。トリスケリオンは機動要塞や塔といった表現にとどまり、「3」に関する要素(腕の数)などには触れられていなかった。

2022年のカードセット「兄弟戦争」の連載ストーリー過去時間軸第4回において、トリスケリオン自体は出て来ないものの、大砂漠の戦線で配備されている旨の記述があった。

トリスケリオンのバリエーション

トリスケリオンは初出以来何度か再録されている歴史あるカードだ。カードのイラストも色々なバリエーションがある。個性豊かなトリスケリオンの姿を登場順に取り上げていこう。

基本セット第4版のトリスケリオン

A brainchild of Tawnos, the Triskelion later proved both versatile and useful.
タウノスの頭脳が生んだトリスケリオンは、のちに多才で有用であることが明らかになった。
引用:トリスケリオン(Triskelion)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

トリスケリオン(Triskelion)

トリスケリオン(Triskelion)データベースGathererより引用

トリスケリオン(Triskelion)はカードセット「基本セット第4版」で再録された際には、フレイバー・テキストが若干短縮されていた。イラストはオリジナル版と同じであった。

腕が3本で、それぞれに3本の指がある。目は2つだ。寸胴で真っ直ぐな立ち姿はまさに「塔」という形容が似合っている。

1997年の日めくりカレンダー

This towering machine was useful primarily as a tool of war, though its great strength was also used to uproot large trees or to pull down castle walls.
塔のようにそびえるこの機械は主に戦争の道具として有用であったが、凄まじい怪力は巨木を引き抜いたり、城壁を打ち崩したりにも活用された。
引用:1997年の日めくりカレンダー
上が英語原文。下が私家訳

ここでついでに1997年の日めくりカレンダーでの解説文を紹介しておこう。短いながらも、兄弟戦争の正史となる小説The Brothers’ Warがまだ存在しない時代の、貴重な設定である。フレイバー・テキストの「多才で有用」とは具体的にこういうことであった。

ミラディンのトリスケリオン

“Why do bad things always come in threes?”
–Gisulf, expedition survivor
「何で悪いことはいつも三つまとめてくるんだろう?」
–探検の生き残り、ギサルフ
引用:トリスケリオン(Triskelion)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

トリスケリオン(Triskelion)

トリスケリオン(Triskelion)データベースGathererより引用

トリスケリオン(Triskelion)はカードセット「ミラディン」で再録された際に、イラストが新規のものに差し替えられた。このバージョンには当初はフレイバー・テキストは持たされていなかったが、カードセット「基本セット2011」再録時に追加された。

この再録によって、兄弟戦争期からAR4200年以上未来のミラディン次元でもトリスケリオンが存在していることが明らかになった。ミラディンの創造主カーン(Karn)はドミナリア次元出身でウルザ(Urza)に作られたゴーレムであるため、過去のデータを基にトリスケリオンをミラディンに再現することが可能だったのだ。

ミラディン版トリスケリオンは鋭角的でスリム、しなやかなフォルムをしており、アンティキティーのオリジナル版とは全く印象の異なる外見である。一番の大きな違いは「3本腕」ではなく「3本脚」に変更されている点だ。その代わりに、腕部は鞭のような蛇腹状の2本になり、目が3つになっている。

ドミナリア・リマスターのトリスケリオン

“What’s got three legs and three heads and wants to kill us? That’s not a riddle!”
–Jayeen, Fallaji scout
「三本の足と三つの顔を持つもので、僕らを殺したがっているものは何だ?これはなぞなぞじゃないぞ!」
–ファラジの偵察兵、ジェイーン
引用:トリスケリオン(Triskelion)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

トリスケリオン(Triskelion)

トリスケリオン(Triskelion)
公式カードギャラリーより引用

トリスケリオン(Triskelion)はカードセット「ドミナリア・リマスター」で再録される。イラストとフレイバー・テキストは新規のものである。

これはミラディン版に寄せたデザインのドミナリアのトリスケリオンである。フレイバー・テキストの発言者がファラジ人であることに加えイラストの様子から察するに、兄弟戦争期のタイプと考えられる。3つの顔、3本の鞭のような腕、先端が尖った3本脚を持っている。4200年後とのミッシングリンクを埋めるデザインと言ったところだろうか?

フレイバー・テキストは、ファラジの偵察兵ジェイーン(Jayeen)が、トリスケリオンについて報告しているのだが、名前を知らないため「三本の足と三つの顔を持つもので、僕らを殺したがっているもの」とまるでなぞなぞのような表現になってしまっている。

ドミナリア・リマスターのボーダーレス版トリスケリオン

Optimally designed for agility, mobility, and lethality.
敏捷性、機動性、殺傷性において最適なデザインが施されている。
引用:トリスケリオン(Triskelion)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

トリスケリオン(Triskelion)

トリスケリオン(Triskelion)
公式カードギャラリーより引用

カードセット「ドミナリア・リマスター」ではボーダーレス版でも再録され、通常版とはまた別のイラストとフレイバー・テキストを持たされている。

イラストは初期MTGのクリエイティブ部門1の重鎮ピート・ヴェンタース(Pete Venters)が担当している。3面の顔があり、3本の指を持つ3本の腕で3振りの剣を構え、3本脚で立っている。最も「3」に拘ったイラストとなっている。

以上のように、トリスケリオンには色々な外見デザインのイラストがあった。時代が4200年も離れたミラディン次元は除外したとして、トリスケリオンは兄弟戦争期におよそ30年間も運用されてきた兵器であった。生産時期や要求される仕様によって、相応のバリエーションが存在するのがむしろ当然のように思える。

例えば、最初の素朴なデザインでは敵に舐められるから、もっと威圧感のある攻撃的デザインにした……とでも理屈付けは出来そうである。

さて、次の節ではトリスケリオンの関連カードをピックアップして行こう。



トリスケリオンの関連カード

モノスケリオン

An unfinished body with unfinished business.
未完成の体と、未完成の仕事。
引用:モノスケリオン(Monoskelion)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

モノスケリオン(Monoskelion)

モノスケリオン(Monoskelion)
データベースGathererより引用

モノスケリオン(Monoskelion)カードセット「モダンホライゾン2」収録のアーティファクト・クリーチャー・カードである。

「モノ(Mono)」つまり「1」に拘ったトリスケリオンからの派生カードだ。

カード名やフレイバー・テキスト、イラストを見るに、ミラディン次元のトリスケリオンの未完成版のようだ。3本でなく1本脚である。

ギザギザ・バイスケリオン

“Whereas I was created to protect, the biskelion was created to destroy.”
–Karn, silver golem
「私は守りのために生まれたが、バイスケリオンは破壊のために生まれてきた。」
–銀のゴーレム、カーン
引用:ギザギザ・バイスケリオン(Serrated Biskelion)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

ギザギザ・バイスケリオン(Serrated Biskelion)

ギザギザ・バイスケリオン(Serrated Biskelion)
データベースGathererより引用

ギザギザ・バイスケリオン(Serrated Biskelion)カードセット「ウェザーライト」収録のアーティファクト・クリーチャー・カードである。

「バイ(Bi)」つまり「2」に拘ったトリスケリオンからの派生カードだ。

鋸刃の矢(Serrated Arrows)

鋸刃の矢(Serrated Arrows)
データベースGathererより引用

このカードはトリスケリオンに加えて、カードセット「ホームランド」初出の鋸刃の矢(Serrated Arrows)の要素を組み合わせたデザインとなっている。和名が揃ってないので分かりにくいが、どちらもカード名に「Serrated」と冠している。

+1/+1カウンターの代わりに-1/-1カウンターを利用するメカニズムを持たされており、ダメージの代わりにクリーチャーを永続的に-1/-1弱体化できる。使う度に自身にも-1/-1カウンターが乗るため、通常なら「2回」まで使用可能だ。

フレイバー・テキストは、カーンのコメントである。AR4204年当時、カーンはまだプレインズウォーカーではなく、非暴力主義を貫く銀のゴーレムであった。

テトラバス

テトラバス(Tetravus)

テトラバス(Tetravus)
データベースGathererより引用

テトラバス(Tetravus)はカードセット「アンティキティー」収録のアーティファクト・クリーチャー・カードである。

「テトラ(Tetra)」すなわち「4」に拘ったカードである。トリスケリオンとは「アンティキティー」の同期であり、テトラバスはまた独自の派生カードを生み出している。

テトラバスは、4体の小型飛行メカが合体した大型飛行メカというイメージをデザインしたカードであった。+1/+1カウンターが3個置かれて登場し、本体と3個のカウンターでそれぞれ1/1の飛行クリーチャー相当という体裁である。

本体から1/1飛行クリーチャー「テトラバイト」として分離したり、再合体して+1/+1カウンターに戻すことができた。黎明期のカードらしく粗削りな実装であったものの、合体メカの雰囲気はよく出ていた。

より詳しくは個別記事(リンク)を参照のこと。

兄弟戦争:テトラバス
マジック・ザ・ギャザリング(MTG)のアーティファクト・クリーチャー・カード「テトラバス(Tetravus)」を紹介。アンティキティー初出。数字の「4」に拘ったカード・デザイン。MTG史上初の合体分離メカを取り上げる。

トリスケラバス

トリスケラバス(Triskelavus)

トリスケラバス(Triskelavus)
データベースGathererより引用

トリスケラバス(Triskelavus)はカードセット「時のらせん」収録のアーティファクト・クリーチャー・カードである。

このカードは、トリスケリオンと、上述のテトラバスの両方のコンセプトを融合させたデザインだ。

トリスケラバスは基本的にテトラバスに似た合体飛行メカだ。イラストの姿もトリスケリオンよりもテトラバスによく似ている。

テトラバスと大きく異なるのは、分離した小型メカ「トリスケラバイト」は本体に再合体できない点だ。

再合体の代わりに、トリスケリオンの要素が加算されており、小型メカ「トリスケラバイト」には「自身を生け贄に捧げて任意の対象に1点ダメージを与える」という能力が持たされている。分離という手間を挟むものの、+1/+1カウンターが1点ダメージに変換できる計算になるので、その点でトリスケリオンと同じなのだ。

機動砦

機動砦(Mobile Fort)

機動砦(Mobile Fort)
データベースGathererより引用

機動砦(Mobile Fort)はカードセット「ウルザズ・サーガ」収録のアーティファクト・クリーチャー・カードである。

このカードは兄弟戦争期の機械の1種で、移動可能な砦だ。イラストはアルゴス島の伐採された森林である。ウルザとミシュラのどちらの陣営所属か不明だが、両陣営ともに運用していておかしくはない類だ。

これとトリスケリオンとの関係だが、他のカードとは違って数字の拘りやカードのメカニズムとの類似性ではなくて、設定的な面に繋がりがある。

本記事の最初で少し述べているが、トリスケリオンは小説The Brothers’ Warにおいて「機動要塞(mobile fortification)」という表現がされていた。つまり、トリスケリオンは種別としてはこの「機動砦」に分類される機械と言えるのである。

3本の手足もなく、人型でもないが機動砦はトリスケリオンと同類となる。「無」のトリスケリオンだ。とすれば、「ナルスケリオン(Nullskelion)」とでも言おうものか。



さいごに

トリスケリオンはつい先日、カードセット「ドミナリア・リマスター」で新規イラスト2種での再録が発表された。けれど、昔の素朴なオリジナル版イラストを懐かしむ声がそこここから聞こえて印象に残った。昔を懐かしみまとめてみることにした。

では、今回はここまで。

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