灯争大戦:イゼットの執事、マーレー

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イゼットの執事、マーレー(Maree, Izzet Chamberlain)は灯争大戦のストーリーに登場したキャラクターである。

イゼットの執事、マーレーの解説

団体のギルド魔道士(League Guildmage)

マーレーの代役として
団体のギルド魔道士(League Guildmage)を抜擢
カードデータベースGathererより引用

イゼットの執事、マーレー(Maree, Izzet Chamberlain)掌編「Project Lightning Bug」1で初登場し、灯争大戦の小説版「War of the Spark: Ravnica」でも登場したキャラクターである。カード上では、灯争大戦時点で、奇矯なサイクロプス(Erratic Cyclops)のフレイバー・テキストにのみ登場している。

マーレーはイゼット団(Izzet League)所属の精霊術士(elementalist)である。人間ゴブリン2女性。ギルド内で執事(Chamberlain)の地位に就いている。

科学者・研究者としては間違いなく優秀な人物である。奇魔メーレク(Melek)の制作や、「電光虫計画(Project Lightning Bug)」での実績が物語っている。特に後者の計画ではラル・ザレック(Ral Zarek)が内部工作しなければ、あわや成功と言うところにまで迫っていた。計画で他の研究者と協力したり、装置建設を手配し実行する手際にも問題はない。



マーレーの外見的特徴・年齢

マーレーの外見や年齢については特に記述がない3。ただ、片方の目に「レンズ」4を装着していることだけが示されている。

イゼット団員の装備としてはその類は珍しいものではないが、マーレーの場合はしゃべるたびにレンズがふるふる小刻みに触れ動いたり、レンズの位置を直したり、頭の上からするりと下ろして装着したり、といった描写で、マーレーの特徴を見せる小道具になっている。

マーレーは慇懃無礼?

マーレーの言葉遣いは丁寧な表現がされている。少し丁寧が過ぎて慇懃無礼に聞こえるようなところがある。マーレーに対抗心を燃やすラル・ザレックのような人物にとってはなおのこと煽っているように響くだろう。

マーレーの言葉遣い
掌編「Project Lightning Bug」から抜粋して翻訳した。

I hope you don’t mind me saying, we found room for improvement.
お気を悪くなさらないでくださいね私たちで改良の余地を見つけてしまいましたの。

「I hope you don’t mind me saying」は丁寧な表現。「私のこれから言うことであなたが気分を悪くされなければ良いのですが」くらいの意味。
そして「we」はマーレー自身とイズマグナスのミジックスらであろう。自分1人だけでなくweとすることで、ラルの見落とした改良点をみんなが気付きましたけど、と受け取り方によっては嫌味が増して聞こえる。

Firemind, I’m afraid I disagree with the Head Researcher.
火想者様、残念ながら首席調査員には賛成できかねます。

「I’m afraid」は「残念ながら…」「申し訳ございません…」など丁寧に断る際の文句。

イゼットの執事、マーレーのストーリー

ラヴニカへの回帰ブロック(の裏側で)

イゼットの模範、メーレク(Melek, Izzet Paragon)

データベースGathererより引用

マーレーは奇魔メーレク(Melek)の制作に従事した精霊術士の1人である。

ラヴニカへの回帰ブロックのストーリーで、「イゼットの模範、メーレク(Melek, Izzet Paragon)」はイゼット団の代表者として「迷路走者」の役割を果たすべく登場した。人工精霊の奇魔であり、イゼット団の複数の精霊術士、複数の薬術師、複数の精神造物士などなどからなるチームが創造した完璧な迷路走者だった。

その時のマーレーの働きがギルドマスターの二ヴ=ミゼットに感銘を与えたことで、寵愛を受けるに十分な理由となり彼の「執事(Chamberlain)」に任命された。こうして、マーレーは二ヴ=ミゼットの後ろ盾の下で、イゼット団の権力を振るえる高い地位を得た。

ただし、メーレクは迷路走者となる直前に、イゼット団の同士であるラル・ザレック(Ral Zarek)によって殺害されてしまった。迷路走者の地位は自分が就くべきだと信じるラル・ザレックの強引な行動であった。



電光虫計画

ラル・ザレック(Ral Zarek)

データベースGathererより引用

ラヴニカへの回帰ブロックのストーリー終了後、ギルドパクト体現者ジェイス・ベレレン(Jace Beleren)が不可解な失踪をするようになる。失踪を懸念する二ヴ=ミゼット(Niv-Nizzet)に対して、マーレーが詳細な調査を提案したことで、いわゆる「電光虫計画(Project Lightning Bug)」が発足する。

計画の首席調査員にはラル・ザレックが任命されたが、半ば強引にマーレーは計画の拡張や改善を実行して有能さを証明していく。電光虫計画の成功を望んでいないラル・ザレックは、計画完遂まであと一歩にまで迫るマーレーの脅威に追い詰められて、あろうことか観察対象のジェイスと共謀し計画を失敗させてしまう。

電光虫計画が徒労に終わったことで二ヴ=ミゼットは2人に対して今回の件を再考して反省しろと告げた。マーレーは計画の失敗はラル1人の責任(事実としてそうである)だと受け取ったようで、ラルが首席調査員からただのギルド魔導士に戻された、と考えた。一方のラルはマーレーも二ヴ=ミゼットの寵愛を失って、自分と同列まで降格するだろうと考えた。ところが、2人の思惑は良い方向に外れることになる。

和訳版の「電光虫プロジェクト」では、二ヴ=ミゼットによる計画終了宣言からマーレーとラルの会話の終わりまで、ここの流れが私とは全然違う解釈になっている。そこで以下に抜粋し、私個人の解釈の下で訳してみた。

少し長いので折り畳み表示にしてある。

二ヴ=ミゼットによる計画終了宣言からマーレーとラルの会話の終わりまで
掌編「Project Lightning Bug」から抜粋して翻訳した。

“Project terminated,” snarled the dragon, spreading his wings and chopping at the air, his great body ascending. “You‘ll have to rethink this entirely, if you ever want to prove something of merit.”
「プロジェクトは終了とする」ドラゴンはうなった。翼を広げて空気を叩きつけると、巨体が宙に浮かんだ。「今回の件をじっくりと再考してみることだ、これから先も自分が役立つことを証明したければな。」

Yes, Firemind,” said Chamberlain Maree.
火想者様の仰る通りです。」執事マーレーは言った。

Niv-Mizzet hesitated, his eyes lingering for a brief, curious moment on the two of them, then he swiveled in the air and shot into the clouds. His wings tore a hole in the storm, dissipating it with a rumble.
ニヴ=ミゼットは口ごもってしまった。目は2人を捉えたままで、ほんの短い奇妙な間があった。するとドラゴンは空中旋回して雲へと突っ込んだ。翼が嵐雲に穴を開けたが、轟きと共にかき消えていく。

“Sorry, Head Researcher Zarek,” said the Chamberlain. “Or should I say, Guildmage Zarek.”
「残念でしたね、主席調査員ザレック殿」執事は言った。「あら、ギルド魔導士ザレックさん、とお呼びするべきかしら。」

Ral cocked his head to the side, like a tiny shrug. He thought about responding that the Chamberlain might be joining him as guildmage soon, but he decided informing her of that was probably the dragon’s job.
ラルは小首をかしげた、少しばかり肩をすくめて。もうすぐあなたも同列のギルド魔導士に降格でしょうね。執事に言い返してやろうか思案したが、それを通告するのがドラゴンの仕事かもしれんな、と判断してやめた。

赤字強調した部分の解説・個人的な解釈。

「You」は「あなた」でも「あなたたち」でもどちらにも受け取れる。二ヴ=ミゼットとしては、マーレーとラルの2人に対して反省を促しているつもりで発言している。

「火想者(Firemind)」は二ヴ=ミゼットの敬称。マーレーは彼の執事なので「Yes, Firemind」は「Yes, Master」と同じで、執事として決まりきった返答になる。「仰せのままに」「かしこまりました」「御意に」など。反省しろ→分かりました反省します、という流れにはない。少なくとも返答を受けた後の二ヴ=ミゼットの反応を見れば。

「Niv-Mizzet hesitated」の部分。「hesitate」は「何かするのをためらう」もあるがここは「口ごもる」の方の意味で文が通じるだろう。マーレーの返答を聞いて「もしかして執事は自分にでなくラルだけに反省するように言われたと思ってるのでは?」と疑念がよぎったのであろうか、言葉に詰まって一瞬固まってしまう二ヴ=ミゼットという、珍しくもありちょっと笑えもする場面となる。

一番最後の段落は、和訳版の「電光虫プロジェクト」と比べると、全く別の文書になってしまった。参考として以下に和訳版から抜粋する。

ラルは首を横にかしげた、少しだけ肩をすくめるように。その侍従はまもなくギルド魔道士としての彼に会うかもしれない。どう返答しようか彼は考え、そして言うべきことを決めた。それはきっとあのドラゴンの仕事でしょう、と。

ラヴニカのギルド

蒸気孔(Steam Vents)

データベースGathererより引用

カードセット「ラヴニカのギルド」は電光虫計画の少し後の出来事に当たる。

マーレーはカードのフレイバー・テキストに登場したが二つ名は「執事」のままであり、二ヴ=ミゼットの寵愛を失っていないことが明らかになった。

そして、ラルはラルで副長(Viceroy)、すなわち二ヴ=ミゼットの片腕へと昇進していた。

さらに失敗し凍結されたはずの「電光虫計画」は「次元間ビーコン発信施設」へと姿を変えて(本当の用途は公にされないままに)建設が続行されていた。

灯争大戦

灯争大戦のストーリーは二ヴ=ミゼットの死後から始まるが、マーレーは依然として執事職に就いたままである。

マーレーは新ギルドマスターのラル・ザレックに次ぐイゼット団ナンバー2としてギルド部隊の指揮を執り、諸々の実務をこなし、アホのドムリ(Domri)と同類と思われるくらいならヴォレル(Vorel)と仲良くするのがまだましと割り切ったり、不意の放電を受けてビクンと跳ねて尻餅をついたりした。

灯争大戦外伝掌編

ラットの視点から小説「War of the Spark: Ravnica」を語り直す掌編連作では、マーレーは第2話War of the Spark: Ravnica – The Path to Opulentに登場した。マーレーの出番は小説本編の第23章でイゼット団を率いて参戦してきた件から、第26章でマーレーがドムリ(Domri)よりヴォレル(Vorel)を味方に選んだ件までが相当する。

この掌編第2話でマーレーがゴブリンであることが初めて明かされた。

公式和訳ラヴニカ:灯争大戦――絢爛の聖堂へでは、マーレーが「ヴォレル氏と一緒にいるよりもと、馬鹿ドムリに続いた。」と訳されているが誤訳である。「She decided she’d rather be Mister Vorel’s ally then follow Dumb Domri’s example.」なので「むしろヴォレルさんの味方でいようと決心してから、駄目ドムリの後に続いた。」くらいだ。ここは上述の通り、ドムリよりヴォレルを味方に選んだ場面なのだ。「むしろ(rather)」とあるのは、この直前ではマーレーはヴォレルの指揮ぶりに異議を唱えようとしていたからである。

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  1. 和訳版の「電光虫プロジェクト」では、「執事マーレー」ではなく「侍従メイリー」と訳が違っていた。
  2. 小説外伝War of the Spark: Ravnica – The Path to Opulentで突然、ゴブリンだという情報が出て来た
  3. ただし、極端に若かったり年寄りであれば、その旨の描写が入るはず。大人と呼べる範囲内ではあろう。
  4. 原文は「lens」。単数形である。和訳版の「電光虫プロジェクト」では「眼鏡」と不明瞭に訳されている。「glasses」でも「lenses」でもない片目専用のものなので、「眼鏡」という言葉から普通想像する形状ではないので注意。