縫込み刃のスカーブ(Bladestitched Skaab)はカードセット「イニストラード:真夜中の狩り」収録のクリーチャー・カードである。
現在MTGアリーナでは、カードセット「イニストラード:真夜中の狩り」のクイック・ドラフトが期間限定で開催されていて、私も久しぶりにプレイして楽しんでいる。この前のプレイで「縫い込み刃のスカーブ」をピックして気付いたのだが、このクリーチャーの姿形って意味不明で、ゆえに、ものすごく不気味なんじゃないか?と。それにイラスト以外にも、カード名とかフレイバー・テキストとかもなかなか面白いじゃないか。
そんな縁で今回は、この(ドラフトで青黒ゾンビ・デッキを組む時に沢山ピックしたい)縫い込み刃のスカーブを取り上げる。
追記(2022年7月3月):フォロワーからスケッチ段階のイラストの情報を頂いたので、そこから読み取れた1つの解答を加筆した。
縫込み刃のスカーブの解説
The surviving militia members reunited with their fallen comrades sooner than they’d hoped.
生き残った民兵は願っていたより早く死んだ同胞と再会することになった。
引用:縫込み刃のスカーブ(Bladestitched Skaab)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
縫込み刃のスカーブ(Bladestitched Skaab)はイニストラード次元のゾンビの1種である。
スカーブ(Skaab)とは、イニストラード次元の錬金術的なアプローチで作られたゾンビの総称だ。死体を縫い合わせ、繋ぎ合わせて形作られた怪物である。スカーブを製造する魔術師が「スカーブ師(Skaberen)」だが、別名「縫い師(Stitcher)」とも呼ばれる。スカーブ師とスカーブの元ネタには、フランケンシュタインとその怪物のイメージが含まれている。
縫込み刃のスカーブは、どんな特徴が持たせられたスカーブのだろうか。カードのメカニズム上では、自軍の他の全ゾンビを+1/+0強化する分かりやすい機能がある。ではカード名やイラストやフレイバー・テキストがどんな感じだろう?
縫込み刃のスカーブのカード名
「縫い込み刃のスカーブ」と訳された英語原文は「Bladestitched Skaab」である。
先述したようにスカーブの製造者は「縫い師(Stitcher)」と呼ばれていて、スカーブは死体などを縫い合わせて作られる。このカードは「bladestiched」つまり「刃(blade)」が「縫い込まれた(sticthed)」スカーブなのだ。
上のイラストを見ると、2本ある左腕はどちらも刃と一体化しているのが一目瞭然だ。
また、この「Bladestitched」という形容はおそらく英語の言葉遊びである。
まず、「組み紐」や「編んだ髪」という意味を持つ「braid」という英単語がある。「blade」と「braid」は綴りはあまり似ていないものの、発音の違いは「l」か「r」の子音の1か所しかない。
そして「braid stitch」となると、これは刺繍の「ブレード・ステッチ」という縫い方を指すことになる。
つまり、このカードは「braidstitched(ブレード・ステッチの技法で縫った)」を捩って、「bladestiched(刃を縫い込んだ)」と変えた冗談という訳なのだ(確定ではないが少なくとも私はそう読んだ)。
縫込み刃のスカーブのフレイバー・テキスト
The surviving militia members reunited with their fallen comrades sooner than they’d hoped.
生き残った民兵は願っていたより早く死んだ同胞と再会することになった。
縫い込み刃のスカーブのフレイバー・テキストを確かめた時、私は英語原文と公式和訳版のちょっとした違いが面白いなと感じた。
英語は単数か複数化がハッキリ分かるような書き方をする言語だが、それに比べて日本語は必ずしもその辺が常に明確になっているわけではない。このフレイバー・テキストも言葉の違いが現れている。
和訳製品版で「生き残った民兵」と「死んだ同胞」となっている部分だが、英語原文を見ると「The surviving militia members」と「their fallen comrades」というようにどちらも複数だと判明する。和訳文は1人の民兵と1人の死んだ同胞と読んでも通じる文章なのだが、実際はどっちも複数で「生き残った民兵たち」と「死んだ同胞たち」だったのだ。
と、ここまでが前提だ。
では改めてカードを見ると、描かれたスカーブは1体だけなのだ。フレイバー・テキストでは、生き残りらが遭遇したのは「死んだ同胞たち」なのにだ。
イラストとフレイバー・テキストは常に完全一致する性質のものではなく、食い違いも珍しくないものである。とはいえ、このカードの場合はきっとそういう不備ではないはずだ。
縫い込み刃のスカーブの姿をよく観察すると、左腕が2本あるし、左右の腕の太さがかなり違う(右腕がかなり細い)。つまり、左腕が2人分だし、右腕と左腕は別人のものだと考えられる。縫い込み刃のスカーブは1体のゾンビなれど、その材料として最低でも3人、あるいはそれ以上の人間の死体が使われているのだ。
そういうわけで、「生き残った民兵たち」がこの1体の縫い込み刃のスカーブに遭遇した時、複数の「死んだ同胞たち」の死体が材料となっていることに気付いた。英語原文からはそういう含みが読み取れるのだ。言語の性質によって生じたちょっとした違いが、元々あったニュアンスを欠落させてしまう。こういうところが面白い。
縫込み刃のスカーブのイラスト
ではお終いに縫い込み刃のスカーブのイラストについて気になったこと。といっても腕から下の部分は、これまでに2度確認してあるので、顔についてだ。
顔の造形がよく分からなくて不気味だ。
上下の位置や大きさが不揃いな2つの真っ暗な穴があるが、これは眼孔なのか、歯のない口なのか、それとも別の何かなのか、私には判別が出来ない。
きっと顔だよな、いや別の部位なのか、それとも、そもそも人とは違う何かから取って来た生体部品なのだろうか?
なんなの?なんなのこれ?分からないから余計に不気味なんだが。
追記:記事投稿後に、このカードのイラストのスケッチ段階(リンク)があると知った。
これを見るに、顔の穴には歯が生えている。したがって、口であることが明確になった。完成イラストでは、皮膚がぶよぶよに肥大化していて元の輪郭から大きく印象が変わってしまっている。不気味さはいや増しているので、これはこれでイラストレイターの狙い通りの仕上がりではあるのだろう。:追記ここまで
さいごに
以上で、縫い込み刃のスカーブを改めて細部まで見直して見て、色々と感じ考えた諸々を書き終わった。
MTGアリーナのクイック・ドラフトが別のカードセットに切り替わるまであと数日か……今のうちに「イニストラード:真夜中の狩り」を堪能しておくとしようかな。
では今回はここまで。
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