奉仕への切望(Dying to Serve)はカードセット「イニストラード:真紅の契り」収録のエンチャント・カードである。
間も無く発売される「イニストラード:真紅の契り」のカードについて、小ネタを拾って解説する。今回はこのカードだ。
追記(2021年11月05日):フレイバー・テキストの訳し直し案について、フォロワーから提案を頂いたのでそれを反映した。
奉仕への切望の解説
“I used to have hired hands, but I discovered they make better waitstaff with the rest of the body attached.”
–Olivia Voldaren
「昔は手首を雇っていたけど、残りの身体がくっついている方が役に立つ召使いであることに気づいたのよ。」
–オリヴィア・ヴォルダーレン
引用:奉仕への切望(Dying to Serve)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
奉仕への切望(Dying to Serve)が描くのはヴォルダーレン家のゾンビの給仕たちだ。オリヴィア・ヴォルダーレン(Olivia Voldaren)の結婚式では招待客への接客に大勢のスタッフが必要なのである。
カードのメカニズム上はこれ自身がゾンビではなく、手札からカードを捨てるとゾンビ・トークンが出てくる仕組みとなっている。ただし、1ターンにつき1体までの制限付き。
このカードは、カード名とフレイバー・テキストが二重の意味合いを匂わせる冗談となっている。「イニストラード:真紅の契り」はめでたい結婚式だからなのか、こういう遊びが散りばめられていてよく目に留まる。
奉仕への切望のカード名
「奉仕への切望」の原題は「Dying to Serve」である。
「dying(die) to do」は「…したくてたまらない、…を切望・熱望している」を意味する言い回しだ。そして、「serve」は「奉仕する・召使いとして働く・尽くす」だ。
「dying(die)」はもちろん「死ぬ」なので、死ぬほどあれがしたい、ってことだろう。つまり、「Dying to Serve」は「死ぬほど召使いとして働きたい」となる。
しかし、このカードの場合は出てくるのはゾンビの接客係なので、おいおい働き過ぎてもう死んでるじゃないか!?となるわけだ。
奉仕への切望のフレイバー・テキスト
“I used to have hired hands, but I discovered they make better waitstaff with the rest of the body attached.”
–Olivia Voldaren
「昔は手首を雇っていたけど、残りの身体がくっついている方が役に立つ召使いであることに気づいたのよ。」
–オリヴィア・ヴォルダーレン
フレイバー・テキストは、オリヴィア・ヴォルダーレン(Olivia Voldaren)による言葉遊びの冗談である。ただし、英文でないと成立しない冗談だ。説明しよう。
まず和訳製品版で「昔は手首を雇っていたけど」の部分が肝である。
英文では「I used to have hired hands」となっている。「hired hand」は「雇い人・使用人」を指す言葉なので、オリヴィアは「昔は雇い人を使っていましたの……」と話を切り出したと普通は受け取る。
それ続いて「but I discovered they make better waitstaff」なので「でも、発見しましたのよ、彼らを素晴らしい接客係に仕立てる方法に」と聞き手の興味を引き付けて…。
最後に「with the rest of the body attached.」つまり「身体の残りもくっついていれば良かったのね。」で文章が結ばれる。
すると、あれ?何か変だぞと考え直して、最初の「I used to have hired hands」が「雇い人を使っていた」でなく「手首を雇っていた」の方の意味だったと気付いて、そんな馬鹿な!?オリヴィア様にからかわれましたわ!と笑いがこぼれるのである。
流石、イニストラードに君臨される御方、オリヴィア・ヴォルダーレン様でございます。洗練されていらっしゃる。晩餐の主人役としても一流ですわ。お追従は尽きることは無かったことだろう。
フレイバー・テキストを試しに訳し直してみた
「昔は『働き手』を雇っていましたの。でも、発見しましたのよ、彼らを素晴らしい接客係に仕立てる方法に。身体の残りもくっついていれば良かったのね。」
–オリヴィア・ヴォルダーレン
フレイバー・テキストを試しに訳してこんな感じにしてみた。
この翻訳には、「雇い人を使う」よりも「働き手を雇う」の方がしっくりくるのでは?というフォロワーから頂いた提案が反映されている。言われてみれば、確かに原文の「手」のニュアンスが残るし、この文脈の流れなら日本語でも言葉遊びに気づけそうだ。この発想は私には思いつかなかった。感謝。
さいごに
おしまいに少しだけ補足。
フレイバー・テキストでは「手首(hand)」を雇うのをやめて、全身が揃った「接客係(waitstaff)」に変えたと語っているけれど、カードのメカニズムに呼応しているのだろう。すなわち、「手札(hand)」を捨てると「ゾンビ・トークン」に変わるわけだ。
それから、ホラーな世界のイニストラードなので、手首だけの召使いも別に存在していてもおかしくはないだろうとは思う。「アダムス・ファミリー」とかでも動く手首は定番だしね。
ということで、以上で話のネタは尽きた。
冗談の解説するはちょっと無粋だなと思わないでもないが……そこは言語的なすれ違いの問題なので、イニストラードの絶対君主オリヴィア・ヴォルダーレン様にはなにとぞご容赦いただきたい。
今回はここまで。
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