エルドレイン次元のオーガ(Ogre)について解説する。
追記(2023年10月6日):記事全体に手を入れた。カードセット「エルドレインの森」のオーガ関連カードを追加した。MTG30周年記念展示で公開された「エルドレインの森ワールドガイド」に基づいて、オーガという種族の解説に手を加えた。
追記(2023年10月10日):カードセット「アルケミー:エルドレイン」の公式カードギャラリーが公開されたため、高架下の邪術師(Underbridge Warlock)を本記事に追加した。
追記(2023年10月14日):高架下の邪術師(Underbridge Warlock)の性別を追加した。
エルドレインのオーガの解説
オーガ(Ogre)もまた前回のトロールと同様にMTGでは定番の人型種族であり、様々な次元に存在している。エルドレイン次元のオーガは僻境(The Wilds)の種族だ。
エルドレイン次元のオーガの特徴は以下の通り。
顔は目が小さくて左右に離れており、鼻梁の高さがほとんどなく、全体的にのっぺりと平たく広い。あごはえらが張り出してがっしりとして噛む力が強そうだ。耳はやや低い位置にある。髪の毛はほとんど生えていない。
身体つきの方は、肩幅が広く、骨格がしっかりとした筋肉質で、身長は人間の倍ほどにもなる。皮膚は硬く堅固で頑健な生き物だ。肌の色は桃色や灰色だ。
「エルドレインの森ワールドガイド」によると、オーガは巨人よりも小柄で、身長は8-10フィート(2.4mから3m程度)である。そして、非常に恨み深い種族であり、恨みを抱く能力にかけては伝説級であるとの旨が記されていた。
小説「Throne of Eldraine: The Wildered Quest」でのオーガ
カードセット「エルドレインの王権」の小説「Throne of Eldraine: The Wildered Quest」でもオーガは登場する。
ケンリス王統治よりも前の時代には、2つの街が協力して防ぐということがなかったので、オーガやドラゴンは思うがままに暴れ回っていたという。そして、作中でケンリス王が行方不明になると、再び昔のようにオーガが僻境の領域を超えて王国内でたびたび暴れ回ることになった。
作中では、18歳となりアーデンベイル城を旅立ったケンリス双子の一行がヴァントレスに向かう途中、初めて遭遇した敵がオーガであった。
エルドレインのオーガに該当するカード
カードセット「エルドレインの王権」とカードセット「エルドレインの森」のオーガのクリーチャー・カード、およびオーガに言及する関連カードをピックアップした。
オーガの放浪騎士
Knights kept returning from Ogre’s Pass wearing nothing but bruises, so they decided to just pretend it was on their side.
オーガの道へ向かった騎士たちはみな痣だらけの裸で戻ってくるばかりだったので、こちらの味方だと思うことにした。
引用:オーガの放浪騎士(Ogre Errant)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
オーガの放浪騎士(Ogre Errant)はカードセット「エルドレインの王権」に収録されたクリーチャー・カードである。
オーガの騎士である。ただし、フレイバー・テキストによると本当の意味での騎士ではなく、オーガに敵わなかった騎士たちによって、そう扱われているだけのようだ。
イラストを見るに、オーガは騎士から奪った武具を乱雑に装備している。騎士の盾を継ぎ接ぎして鎧のように体を覆っているが、大きな体を隠しきれてはいない。長剣もこのオーガの巨体に比べると細くて頼りなげに見えてくる。
頭蓋叩きのオーガ
The ogre crashed through the massive door. The winged folios scattered like frightened birds.
オーガはその巨大な扉を破壊した。書物が怯えた鳥のように羽ばたき散らばった。
引用:頭蓋叩きのオーガ(Skullknocker Ogre)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
頭蓋叩きのオーガ(Skullknocker Ogre)はカードセット「エルドレインの王権」に収録されたクリーチャー・カードである。
巨大な扉を頭で叩き割って入ってきたオーガである。
カード名で「頭蓋叩き」とまとめられて和訳されている原文は「Skullknocker」である。すなわち、「skull(頭蓋骨)」+「knocker(扉を叩く者)」なので、カード名とイラスト、フレイバー・テキストがすべてピタリと合致している。
また、カードを1枚無作為に選んで捨てた後に1枚引かせるメカニズムも、扉をたたき壊す乱暴な侵入方法と、侵入した先で見つかるはずの発見を指し示しているように思える。イラストとフレイバー・テキストを確認すると扉の中には書物、つまり知識という発見があるのだから。
余談:翼が生えた書物
頭蓋叩きのオーガ(Skullknocker Ogre)のフレイバー・テキストの原文に注目したい。和訳の「書物」の部分は、実は単なる本ではなく「winged folios(翼が生えた書物)」である。
本当に書物に翼があるのだろうか?
この文章の場合は、和訳製品版の解釈が正しいのかもしれない。このカードのイラストでも本には翼は生えていないことだし、オーガが扉を壊した衝撃で本棚かが崩れ落ちる書物の様子を、比喩的に「怯えた鳥のように羽ばたき散らばった」と表現しているだけかもしれない。
比喩表現と考えるのが普通だろう…おとぎ世界のエルドレイン次元でなければ。
エルドレインの王権には、本当に翼の生えた書物がカードとして収録されている(空想の書物(Folio of Fancies)も参照)。
The winged folios scattered like frightened birds.
翼の生えた書物が怯えた鳥のように散り散りに飛んで逃げた。
エルドレイン次元では、こう解釈しても成り立ってしまうのだ。
吼える暴れ者
オーガに迂回させることはできない。
You can’t give an ogre the runaround.
引用:吼える暴れ者(Bellowing Bruiser)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
吼える暴れ者(Bellowing Bruiser)はカードセット「エルドレインの森」に収録されたクリーチャー・カードである。出来事は道を切り拓く(Beat a Path)だ。
出来事の効果は、対象最大2体のクリーチャーに対し1ターン間、ブロックを禁止するものだ。名称は「道を切り拓く」で、イラストでは障害物を力任せにぶち壊して突進する姿が描かれている。フレイバー・テキストでも「オーガに迂回させることはできない。」とまさにピッタリの一言が添えられている。
イラストでオーガに追いかけられているのは、エルドレインの森版「赤ずきん」のルビー(Ruby)である。
晩餐会の好戦漢
晩餐会の好戦漢(Belligerent of the Ball)はカードセット「エルドレインの森」に収録されたクリーチャー・カードである。
エルドレインの森版「シンデレラ」のストーリーに登場したオーガである。レッドキャップと共にデルヴァーホウの大餐会を襲撃したのだ。
カード名の言葉遊びの解説など、詳細はこちらの記事を参照のこと。
オーガの囀王
オーガの囀王1(Ogre Chitterlord)はカードセット「エルドレインの森」の特別ブースターに収録されたクリーチャー・カードである。
これはネズミの群れを従えるオーガだ。
騙し討ち
“Korlag carefully prepared to try the new ‘am bush’ strategy he’d heard about.”
–The Ogre’s Revenge
「コルラグは話に聞いた、新たな戦略『木襲』を試みるべく、細心に準備を進めていた。」
–「オーガの仕返し」
引用:騙し討ち(Sneak Attack)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
騙し討ち(Sneak Attack)はカードセット「エルドレインの森」におとぎ話という特別枠で再録されたエンチャント・カードである。カードセット「ウルザズ・サーガ」が初出だ。
おとぎ話版の騙し討ちは、ユーモラスなイラストとフレイバー・テキストのカードである。
オーガのコルラグ(Korlag)は聞きかじった知識で、新しい戦術「木襲(am bush)」を試み、薮そのものに変装して騎士たちを騙し討ちしようとしているのだ。
英単語の「ambush」は「待ち伏せ(して襲う)」という意味なのだが、コルラグは「am bush」と2語に間違って解釈している。「(I) am bush」で「(私は)薮です」となってしまうので、コルラグは自分は薮そのものになり切ろうとしているのだ。
和訳版では、この勘違いを「奇襲」と音を合わせた「木襲」とすることで、巧みに再現している。
余談だが、英単語「ambush」の語源は「薮に隠れる」から来ているので、実はコルラグはそれほど的外れでもない。
高架下の邪術師
高架下の邪術師(Underbridge Warlock)はカードセット「アルケミー:エルドレイン」に収録されたクリーチャー・カードである。
このカードは、エルドレイン次元における初の黒いオーガで、かつ、邪術師のオーガである。2
イラストを担当したNereidaはこのオーガをレディと読んでいることから、女性であると判明した(出典)。エルドレインの女性邪術師がカード名で魔女でなく邪術師と命名されるのは極めて珍しい。
カード名の「高架下」という和訳からは現代的な雰囲気が漂ってくる。原語は「Underbridge」で、これは「道や河川、鉄道などの下を横断するための橋」であったり、もっと単純に「橋の下」を表す言葉だ。だから、「高架下」という言葉はおとぎ話よりも現代的に感じてしまう言語選択ではあるものの、それほど意味合いは外れていない。
このオーガの邪術師は、伝統的なトロールがそうであるように、橋の下にいるのを好むのだろう。
さいごに
記事全体に再編集を施して、エルドレイン次元のオーガをまとめ直した。
Shafer Brownが描いたイラストのオーガの姿が実際よりも可愛らしくて気に入っているので、拡大イラストを優先して使ってみることにした。オーガはエルドレインで決して目立った存在ではないのだが、このイラストが種族のイメージ向上に貢献していくんじゃないか。そんな予感がしないでもない。
では、今回はここまで。
エルドレインのオーガの関連記事
カードセット「エルドレインの王権」関連のリスト
カードセット「エルドレインの森」関連のリスト