エルドレイン次元のアウフ(Ouphe)について取り上げる。
追記(2023年9月10日):MTG30周年記念展示で公開された「エルドレインの森ワールドガイド」に基づいて、アウフという種族の解説に一部手を加えた。
追記(2023年9月20日):アウフがカードのイラストのどこに描いてあるのか分かり易いように、いくつかの画像を足した。
追記(2023年10月3日):成長の季節(Season of Growth)のアウフのイラストに関して加筆修正した。
追記(2023年10月8日):リンクを足したり、不正確な記述の修正、画像の追加などを行った。
エルドレインのアウフ
エルドレイン次元のアウフ(Ouphe)は僻境の至るところで見られる好奇心旺盛な生き物である。1
アウフはカードセット「エルドレインの森」で数を増やしたクリーチャー・タイプだ。カードセット「エルドレインの王権」にも1種類だけ存在していたが、ほぼ新規種族としてデザインし直されている。
MTGのクリーチャー・タイプ「アウフ」には童話で定番の妖精「ブラウニー」も分類されている。アウフは童話モチーフのエルドレイン世界に相応しい存在なのだ。
エルドレインのアウフのゲーム的な特性
ゲーム的な特性を見ると、アウフの色は緑である。
緑以外の4色を振り返れば、前回のカードセット「エルドレインの王権」にはどの色にも種族として「小さな妖精の仲間」が収録されていた。白・青・黒には(ハイフェイに比べて)下級のフェイとしてフェアリーが設定されており、色ごとに異なる性格付けがされていた。赤には、悪い妖精としてゴブリンのレッドキャップがいた。
これらを「小さな妖精の仲間」で括ると、アウフは今まで欠けていた緑の枠にピタリと収まる種族になった。これで5色全てに童話に出てくるような小さな妖精が揃ったことになる。
エルドレインのアウフの特徴
エルドレインのアウフは、他の色の小さな妖精の仲間よりも、より野生的で明るく無邪気な雰囲気を持たされている。
頭部が大きく、顔は横に広く、低い鼻と大きな口を有する。ある種の猿にも似たシルエットで、ひょろ長い腕と脚と細い尻尾が伸び、手と足は大きい。ぼさぼさとした髪や頬ひげがあり、同じような体毛がうなじや背面、肩、肘、腰回り、尻尾の先端に生えている。体色は茶系統で、顔、胸、腹そして体の内側の方はより色が薄い。髪や体毛の色は緑系である。
服や道具、装備の類は他の色の小さな妖精の仲間たちとは異なり、ほぼ身に着けていない。
以上は、エルドレインのアウフという種族の全体的な特徴であり、そこから外れる例外も存在している。
エルドレインのアウフの関連カード
この節ではエルドレイン次元のアウフを表現したクリーチャー・カードを紹介しよう。
イラストやフレイバー・テキストでアウフに言及している関連カードも一緒に取り上げている。
棘茨砦の嫌われ者
No matter the cruelty of Oko’s jokes, he’s always guaranteed the sycophant’s laughter.
オーコの冗談がどんなに残酷であっても、オーコに媚びる者は必ず笑う。
引用:棘茨砦の嫌われ者(Bramblefort Fink)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
棘茨砦の嫌われ者(Bramblefort Fink)はカードセット「エルドレインの王権」のプレインズウォーカー・デッキに収録されたクリーチャー・カードである。
「エルドレインの王権」時点で唯一のアウフである。
イラストを見ると、カードセット「エルドレインの森」でデザインし直されたアウフとは趣の異なる容姿をしている。とはいえ、僻境の妖精の類は魔法的でその姿も様々なのが当たり前である。こういう例外があってもおかしくはない。
毒茸の称賛者
Where an ouphe makes its home, the land blooms with color and joy.
アウフが住み着くと、その土地は色と活気で溢れかえる。
引用:毒茸の称賛者(Toadstool Admirer)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
毒茸の称賛者(Toadstool Admirer)はカードセット「エルドレインの森」に収録されたクリーチャー・カードである。
カード名で「毒茸」と訳された「Toadstool(「ヒキガエルの椅子」の意)」とは、食用に適さないか毒を持っているかする、傘のあるキノコを指す、古い言葉である。
フレイバー・テキストによれば、アウフは住み着いた場所にキノコをどんどん増やして、色合いと活気を溢れさせる。イラストでは、周囲の樹々にカラフルなキノコが茂っており、アウフ自身もキノコを帽子にしてかぶっている。カードのメカニズムの+1/+1カウンターを自身に置く能力は、キノコを増やして豊かになる様を表しているのだろう。
やんちゃなアウフ
Heavy is the head that wears the vase.
花瓶を抱えた頭は重いものだ。
引用:やんちゃなアウフ(Troublemaker Ouphe)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
やんちゃなアウフ(Troublemaker Ouphe)はカードセット「エルドレインの森」に収録されたクリーチャー・カードである。
フレイバー・テキストは、「王冠をかぶる頭は重し」などとも訳される「heavy is the head that wears the crown」の捩りである。
この言い回しは、シェイクスピアの「ヘンリー4世」からの引用である。本来は「Uneasy lies the head that wears a crown.(王冠を戴く者に安眠はない。)」つまり「責任ある立場の者には心休まる暇がない」という意味合いの文章だ。
「王冠(責任が重いもの)」の部分を「花瓶(何の責任も無いもの)」に挿げ替えたおかげで、バカバカしさと面白さがあるフレイバー・テキストになっている。
「花瓶を抱えた頭」
和訳製品版のフレイバー・テキストには1つ気になる表現がある。「花瓶を抱えた頭」の部分だ。
「抱える」とは「腕を回して支え持つ」「胸に抱くように持つ」との動作を指す。しかし、イラストのアウフは花瓶を頭にかぶっているのだから、「花瓶を抱えた頭」というのは違和感を覚える表現だ。
ただ、「抱える」には「負担や責任を負う」との意味合いでも用いられることから、そういう含みを匂わせたいとの和訳意図があったのでは、と想像はできなくもない。
あるいは、「思い悩んで途方に暮れる」という意味の「頭を抱える」という言い回しを意識した技巧とも捉えることはできるか。
私見ながら、和訳製品版のフレイバー・テキストは混み入って解り難いと感じた。もっと単純な方が好みだ。例えば「王冠」の代わりに「花瓶」なのだから、王冠に用いる「戴く」を使って「花瓶を戴く頭は重し。」とか。
小間物のアウフ
小間物のアウフ(Knickknack Ouphe)はカードセット「エルドレインの森」の統率者デッキに収録されたクリーチャー・カードである。
カード名とイラスト、カードの機能を併せて考えるに、このアウフは小間物や骨董品、小さな装身具など(に見立てたオーラ・カードおよび+1/+1カウンター)を自分の回りにかき集めてしまうようだ。
剛力化
“Looks like you need a bigger net, mister fae-catcher.”
「その網じゃ捕まえられそうにないね、フェイの密猟者さん。」
引用:剛力化(Titanic Growth)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
剛力化(Titanic Growth)はカードセット「エルドレインの森」に再録されたインスタント・カードである。初出はカードセット「基本セット2012」だ。
イラストの左下の角に笑ってるアウフが小さく描かれているのが分かる。
イラスト内にはその他にブルー・フェアリーやマルハナヒツジ(Bumblesheep)も描かれている。
錠前破りのいたずら屋
You can’t cage mischief.
いたずら小僧を檻に閉じ込めておくなど無理な話である。
引用:錠前破りのいたずら屋(Picklock Prankster)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
錠前破りのいたずら屋(Picklock Prankster)はカードセット「エルドレインの森」に収録されたクリーチャー・カードである。
イラストでは青いフェアリーがガラスの箱や鳥籠に閉じ込められた妖精たちを救出している。その籠の中にアウフもいる。左真ん中の籠と、右下の籠である。
その他にマルハナヒツジ(Bumblesheep)も捕まっている。
野生の活力
野生の活力(Primal Vigor)はカードセット「エルドレインの森」のおとぎ話という特別枠で再録されたエンチャント・カードである。初出はカードセット「統率者2013」だ。
イラストの中央、巨木の影からにこやかにほほ笑むアウフが描かれている。
イラスト内にはその他にも僻境の住人が描かれていて、光り輝く鹿、フェアリー、マルハナヒツジ(Bumblesheep)、大型のウサギや角が生え葉で覆われた小動物、小人の妖精などがいる。
成長の季節
成長の季節(Season of Growth)はカードセット「エルドレインの森」のおとぎ話という特別枠で再録されたエンチャント・カードである。初出はカードセット「基本セット2020」だ。
イラストの右の方、地面からほぼ垂直に突き出た巨大なキノコの天辺にアウフがしがみついている。よく見ると、アウフ自身の胴体から同じ形の紫色の細長いキノコがにょきにょきと生えている。
その他には、フェアリー、マルハナヒツジ(Bumblesheep)、身体に葉が生えた小動物、小人の妖精などが描かれている。
僻境宮廷のエリヴェア
僻境宮廷のエリヴェア(Ellivere of the Wild Court)はカードセット「エルドレインの森」の統率者デッキに収録された伝説のクリーチャー・カードである。
まだ騎士の従者だったエリヴィアは動物と心を通わせる不思議な力に目覚めた女性で、ファイレクシア侵略戦争後の王国を放浪して人々を救った。その貢献を認められて崇王ウィル・ケンリスより最年少の騎士号を授かった。忌まわしき眠りの呪いの治療法を求め、僻境を探索するエリヴィアは森の平和な生き物たちに迎え入れられた。
イラストでは、エリヴェアと共に歩むアウフが確認できる(一番右)。木の枝を杖か槍のように持ち、葉っぱを集めた服のようなものを着込んでいるように見える。後方の石の段にいる3人の妖精も、赤いキノコの帽子をかぶったアウフ(かそれに近い種類の小人の妖精)のようだ。
アウフ以外には、エリヴィアの肩の上の狐、フェアリー、ウサギ系やその他の僻境の小動物も描かれている。
尾の強打
尾の強打(Tail Swipe)はカードセット「エルドレインの森」のストアチャンピオンシップの参加賞となったプロモ・カードである。
初出はカードセット「団結のドミナリア」だが、再録に当たってエルドレインのアウフが描かれた新規イラストを与えられた。
イラストのアウフは尻尾でネズミを払い落している。
さいごに
これでエルドレイン次元のアウフについてのまとめは終わりだ。
この緑の「小さな妖精の仲間」は中々面白い種族に作り込まれていた。もうエルドレイン世界に自然と馴染んでいるように感じる。
しかし、「エルドレインの森」のアウフの新鮮なイメージから、てっきり今回が新登場だと思い込んでいた。この記事を書くに際して、「エルドレインの王権」のプレインズウォーカー・デッキ限定のマイナーなカードまで調べてみて、初めて既出だったことに気付き、ビックリしたものだ。
オーコ・デッキの棘茨砦の嫌われ者(Bramblefort Fink)なんて記憶に欠片も残っていなかった。まるっきり別種族みたいじゃないか……。まあ、この記事の投稿前に発見して修整できたのは幸いだった。
では、今回はここまで。
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