ゴブリンの爆風走り(Goblin Blast-Runner)はカードセット「兄弟戦争」収録のクリーチャー・カードである。
今回は、フレイバー・テキストが何やら引っ掛かるぞ、というこのカードを紹介する。
ゴブリンの爆風走りの解説
Most goblins can light a fuse and run, but only the cleverest remember to drop the bomb.
たいていのゴブリンにできるのは導火線に点火して逃げることで、最大級に頭の良いゴブリンだけが、爆弾を下ろすことに思い至る。
引用:ゴブリンの爆風走り(Goblin Blast-Runner)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
ゴブリンの爆風走り(Goblin Blast-Runner)は兄弟戦争期のドミナリア次元テリシア大陸のゴブリンである。
イラストを見ると、導火線に点火した火薬樽を頭上に掲げて、敵陣を突っ切って行くようである。カードの機能でパワー+2強化と威迫を持つのは、この爆弾のせいに違いない。爆弾を恐れて敵は道を開け、爆発でダメージ+2だ。
また、ファラジの十字デザインがある胸当てなどを身に着けているので、ファラジ軍所属で爆弾を敵陣に直接運ぶ特攻役を担っているのであろうか。あるいは、戦場跡などを漁って見つけた防具を着ているだけかもしれないが。
さてこのカードを個別に取り上げた理由はフレイバー・テキストにある。次の節で詳しく解説する。
ゴブリンの爆風走りのフレイバー・テキスト
Most goblins can light a fuse and run, but only the cleverest remember to drop the bomb.
たいていのゴブリンにできるのは導火線に点火して逃げることで、最大級に頭の良いゴブリンだけが、爆弾を下ろすことに思い至る。
まず、和訳製品版のフレイバー・テキストに私は強烈な違和感を覚えてならない。
どういうことかというと。前半の「(爆弾の)導火線に点火して逃げる」は容易にイメージができるのだが、後半の「最大級に頭の良いゴブリン」の行動である「爆弾を下ろすことに思い至る」が上手く想像を繋げられない。「導火線に点火して逃げる」に対して「爆弾を下ろす」がどう対応しているのかが見えない。そこが気持ち悪いのだ。
上述したようにイラストでは、導火線に火が点いた火薬樽を頭上に持ち上げて走っている。なら、こう言いたいんじゃないだろうか?
「たいていのゴブリンにできるのは(置いてある爆弾の)導火線に点火して逃げることで、最大級に頭の良いゴブリンだけが、爆弾を(イラストのように持ち上げて運んで)下ろすことに思い至る。」
和訳製品版はこういう解釈で作文してるんじゃないかと想像した。これなら「点火して逃げる」と「下ろす」に筋が通せる。
でも、これじゃ原文と内容が変わってしまうのだ。
ゴブリンの爆風走りのフレイバー・テキスト:原文確認
原文がどういう内容なのかを順番に確認していく。
まず前半。「Most goblins can light a fuse and run,」だから「大抵のゴブリンは導火線に点火して走ることができる」となる。このカードの場合は「逃げる」じゃなく素直に「走る」でいい。
次に後半は「but only the cleverest remember to drop the bomb.」なので、「しかし、最も賢い者だけが爆弾の投下を覚えている。」あるいは「しかし、最も賢い者だけが忘れずに爆弾を投下できる。」となる。
以上を踏まえて訳し、言葉を整えて次のようになった。
ゴブリンの爆風走りのフレイバー・テキスト:再翻訳
大抵のゴブリンが導火線に点火して走ることまではできるけれど、爆弾の投下を覚えていられるのは最大級に頭の良いゴブリンだけなのだ。
このカードは、イラストとカード機能を考慮するに、導火線に火のついた爆弾を持ち上げて向かって来るので、敵はこのゴブリンを避けて通してしまうのである。この爆弾がパワー強化と威迫の正体だ。
並のゴブリンはこのまま自分も爆死してしまうところを、このゴブリンは頭がいいから爆発する前にちゃんと敵に投下して、無事に戻って来れるというわけなのだ。
火の点いた爆弾を爆発するまで持ち続けてしまうというが、自分の命すら軽く見て、無茶苦茶をやらかすのはまさに典型的なドミナリア次元のゴブリンて感じである。
さて、カードに沿って文章の内容を解釈できた。ただ、この原文はそれだけでないと感じさせるものがある。
ゴブリンの爆風走りのフレイバー・テキスト:言葉遊び
Most goblins can light a fuse and run, but only the cleverest remember to drop the bomb.
フレイバー・テキストの原文は、二重の意味合いを持った言葉遊びでもあるんだろうなと感じる。
説明すると、「light a fuse and run」は問題の火種となるものを作って逃げ出すって意味合いに読めるし、「to drop the bomb」はまるで爆弾を落としたような衝撃・驚きを周囲に与えるという表現にもなる。
そうすると以下のような内容にも意訳できよう。
並のゴブリンは問題の火種を作って逃げ出しちまうが、一番賢い奴は忘れずにきっちり問題が爆発するようにしていくのさ。
一番賢い、つまり最悪な奴なら、火種は消せずに爆発不可避にして逃げていく。こんな風に周りに厄介をかける迷惑なゴブリンの話という解釈にもなる。
カード自身からは離れた内容であるけど、ダブルミーニングで別の含みも匂わせることで、カードには深みと可笑しさが増すのである。
さいごに
これにてゴブリンの爆風走り(Goblin Blast-Runner)の話は終わりだ。
最初は兄弟戦争期のテリシアのゴブリンについてまとめてたのだけれど、フレイバー・テキストが何かおかしいカードが交じってるぞ、と書いていくうちに話が長くなったので個別カード記事に変更となった。
実は兄弟戦争期のゴブリンと火薬「ゴブリン・パウダー(Goblin Powder)」ついても話のネタはまだあるんだ。けれど、本記事はもうぐちゃっとしてるので次の機会に回すことにした。
では、今回はここまで。
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