隕石のクレーター(Meteor Crater)はカードセット「プレーンシフト」の土地カードである。
隕石のクレーターはドミナリア次元に落着した隕石が創り出した地形を表している。今回はストーリー作品に登場したドミナリア各地のクレーターを紹介しよう。
追記(2023年3月7日):ささやきの森の隕石「魔力の櫃」の正体を詳しく解説した。カードセット「兄弟戦争」の連載ストーリーにコメティア(Cometia)が21年振りに再登場していたことを(公式和訳版の誤訳も含めて)加筆した。
隕石のクレーターの解説
Legend has it that meteor craters are haunted by the ghosts of those who died on impact.
隕石のクレーターには、その衝撃で死んだ者たちの霊が取りついていると言われている。
引用:隕石のクレーター(Meteor Crater)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
隕石のクレーター(Meteor Crater)はドミナリア次元の隕石が落下してできたクレーターをカード化したものだ。
このカード固有の物語はカードセット「プレーンシフト」や小説Planeshiftでも特に語られていない(この小説に出てくる「crater」はほとんど「火山の噴火口」の意味だ)。
したがって、このカード自体はドミナリアの特定のどこかを指し示すものではない。フレイバー・テキストも隕石のクレーターにまつわるただの伝説ということになる。
隕石のクレーターのストーリー
このカードに直接言及するストーリーではないが、ドミナリア次元には隕石によってクレーターができた土地が複数登場している。ここではそういった隕石のクレーターを紹介しよう。
ささやきの森
クレイトン・エマリィの小説ささやきの森は、北エローナ大陸ささやきの森に落下した隕石が物語の発端となった。隕石の正体は魔法のアーティファクトに違いないと推定した魔術師たちが落着地点を目指し争奪戦を繰り広げる。その途中に小説の主人公兄妹ガル(Gull)とグリーンスリーヴズ(Greensleeves)の住むホワイトリッジの村があった。村は戦いで壊滅し兄妹は魔術師タウザー(Towser)に拾われるのだった。
タウザーの一行はホワイトリッジからささやきの森に入って北西を目指し、隕石が落着したクレーターをとうとう発見する。そこで掘り出したのは薄紅色の四角い箱。大きさは人の頭蓋骨程度だ。喜びと興奮を隠そうともしないタウザーはこの箱は多量のマナを蓄積できるアーティファクト、魔力の櫃(Mana Vault)に違いないと分析した。
この隕石「魔力の櫃」の真実は、続編の小説Shattered Chainsと小説Final Sacrificeで判明するが、残念ながら邦訳は三部作の1冊目で終了してしまった。
隕石「魔力の櫃」の正体
隕石の正体は、実は「魔力の櫃」に魔法的に偽装した「石脳1の兜(The Stone Brain Helmet)」である。
アンティキティー戦争期にラト=ナム大学の賢人たちが、ウルザ(Urza)とミシュラ(Mishra)に対抗するために創り出した古代のアーティファクトだったのだ。カードセット「兄弟戦争」では、伝説のアーティファクト・カード「石の脳(The Stone Brain)」として収録されている。2
石脳の兜は、使用した対象にタグ付けして隷属化に置いたり、魔法能力を奪ったりできる強力な魔法具であった。ドラフナ(Drafna)が率いるラト=ナム大学は、ウルザとミシュラを石脳によって支配する前に敗北した。ちなみに、ラト=ナム島での戦いは、AR45年頃からAR55年頃の期間のどこかで発生したと推定される。
ラト=ナムの賢人たちは石脳の悪用を恐れ、ドミナリア惑星の衛星軌道上まで打ち上げて兄弟の手に入らないようにしたのであった。それがおよそ4000年振りに地表に落着し、魔術師たちによる争奪戦が始まったのである。
コメティア
短編集The Dragons of Magicに収録されているブライアン・B・トムセンの短編Because of a Twig…では、隕石のクレーターに出来たオアシス、コメティア(Cometia)が登場する。コメティアはドミナリアのシヴにあるが正確な位置は書かれていない。それほど広い地域ではないのでシヴの地図を見ても見つけることはできない。
大昔にシヴの山地に彗星が落下しクレーターを作り出した。彗星を形成していた氷は雨となって降り注ぎ、湖ができ、植物が育つ土壌が生まれ、森となった。クレーターは高く険しい岩壁に囲まれた谷であり、外界からの干渉を妨げている。こうしてシヴの焼けつく暑さの真ん中でも緑豊かな楽園が成立した。「彗星(comet)」の落ちた土地ということで「コメティア(Cometia)」と呼ばれるようになった。
コメティアはエルフのアダムキン王(King Adamkin)が統治しており、エルフの評議会・射手・騎兵、ドルイド、羽の生えたフェイ(Fey)、密林の猫人3、ブラウニー、大喰らいのワームの番人、エメラルドのドラゴン、極小の小枝ドラゴン(Twig Dragon)、コヨーテなど森のクリーチャーが居住している。コメティアの住人は非常に長い間、危険に満ちた外界との接触を持っていなかった。
ある時、地震が起こり楽園コメティアを囲む岩壁に割れ目ができた。それを発見した醜悪三人組の毒蛇製造器(Serpent Generator)による攻撃でコメティアは崩壊寸前の危機に陥った。しかし、小枝ドラゴンのスナップ(Snap)の活躍で毒蛇製造器は破壊され、この楽園は救われている。→こちらの記事も参照のこと。
カードセット「次元の混乱」にはシヴの隕石がカード化されている。裂け目時代(AR4306-4500年)のドミナリアに時の裂け目から出現した隕石である。このカードのような隕石がコメティアを作り出したのだろう。
ちなみに和訳カード名が「シヴ山」となっているのは、MTG初期邦訳の名残りを引きずったもので正確な訳ではない。シヴは「山」の名前ではなく小大陸に近い「大きな島」である。このカードは単に「シヴの隕石」である。
短編「宿敵(ネメシス)」
コメティアは2022年のカードセット「兄弟戦争」において、21年振りにストーリーに再登場した。現在時間軸ストーリー第3章Nemesis(公式和訳版「宿敵(ネメシス)」)だ。
AR4562年、ドミナリア次元に侵攻したシェオルドレッド配下の新ファイレクシア軍がコメティア内部の洞窟網を基地にしていたのだ。マナ・リグ攻撃前にはファイレクシア軍がひしめいていたとされ、攻撃後にはローナとテゼレットが会合して作戦を練っている様子が描かれていた。
公式和訳版の短編「宿敵(ネメシス)」では、「Shiv’s Cometia Crater」を「シヴのコメティア噴火口」と誤訳している。本記事で解説したように、コメティアの「Crater」は「噴火口」ではなく彗星の落ちた「クレーター」なのだ。21年前の短編ストーリーが出典の地名なので、公式和訳担当陣に知識が無くとも仕方ない所ではある。
カバル市
ドミナリア次元オタリア大陸のカバル市(Cabal City)はクレーターの内側に作られた都市である。オタリア大陸最大の都市であり、陰謀団(The Cabal)と呼ばれる組織の本拠地であった。ピット・ファイトは当時のオタリア中で陰謀団が興業していた格闘競技であるが、ここカバル市には最大の闘技場が置かれていた。繁栄を極めたカバル市はAR4305年に壊滅している。
小ネタ:不可解なカバル市の地勢
カバル市は、オデッセイ・ブロックの3つのカードセット(オデッセイ、トーメント、ジャッジメント)で主要舞台の1つとなった都市である。ストーリー上の重要拠点にもかかわらず、カバル市の様子と位置は小説でかなり食い違いが見られる。ヴォーソスを悩ませてきた問題である。
※ 地勢の食い違いは説明すると、くどくなるので折り畳みにしておく。興味なければ読まなくてOK。
オデッセイ・ブロックからはや16年、真面目に考えても仕方のないことだと諦めていたが、カードセット「ドミナリア」期にこのカバル市の位置問題が解決した。カバル市の位置を公式が確定してくれたのだ。
地図の赤丸の辺りにかつてカバル市があったのだ。イーサン・フライシャーやケリー・ディグズの仕事には感嘆を禁じ得ない。
…さて、隕石のクレーターから脱線が過ぎたので今回はここで終わり。
隕石のクレーターの関連記事
カードセット「プレーンシフト」のリストは作成予定なし。