黴墓のヤスデ(Moldgraf Millipede)はカードセット「イニストラード:真紅の契り」収録のクリーチャー・カードである。
間も無く発売される「イニストラード:真紅の契り」のカードについて、小ネタを拾って解説する。今回はこのカードだ。「黴墓(ばいぼ:Moldgraf)」とはどんな場所なのか?巨大ヤスデは他にも生息しているのか?探ってみた。
黴墓のヤスデの解説
縫い師と狂信者と屍肉あさりの間では、死体の需要が高い。
Between stitchers, cultists, and scavengers, corpses are in high demand.
引用:黴墓のヤスデ(Moldgraf Millipede)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
黴墓のヤスデ(Moldgraf Millipede)はカードセット「イニストラード:真紅の契り」収録のクリーチャー・カードである。
「黴墓(ばいぼ:Moldgraf)」に生息する巨大なヤスデだ。クリーチャー・タイプは昆虫・ホラーであることから、普通の虫にあらずおどろおどろしい性質を持っているはずの生き物だ。
ちなみに「ヤスデ」の英名「Millipede」はラテン語の「mille (千)」+「pedis (足)」が語源だ(余談の余談:「ムカデ」の「Centipede」は「centi(百)」の足)。
黴墓のヤスデのフレイバー・テキスト
縫い師と狂信者と屍肉あさりの間では、死体の需要が高い。
Between stichers, cultists, and scavengers, corpses are in high demand.
フレイバー・テキストを見ると、「縫い師と狂信者と屍肉あさりの間では、死体の需要が高い。」とある。
「縫い師(Stitcher)」とは青に属するゾンビを作るスカーブ師のこと。スカーブ師はイニストラード次元に特有の専門職で、錬金術的な性質が強い青の屍術師である。もちろん死体はゾンビの材料として欠かせない。
「狂信者」は「cultists」なので「カルト教団員」を指し、イニストラードでは悪魔崇拝者などのカルト教団が隠れて活動している。1死体は生け贄や儀式、屍術に用いるのだろう。
そして「屍肉あさり」こと「腐食生物(scavengers)」というのが、このヤスデのような生き物だ。死体は食べ物だ。
このように、縫い師と狂信者と屍肉あさりの三者はそれぞれで死体を必要としており、「黴墓(ばいぼ:Moldgraf)」では死体の奪い合いが起こっている。
黴墓の解説
「黴墓(ばいぼ:Moldgraf)」とは一体どんな場所なのだろうか?
原語の「Moldgraf」は、英語の「mold(カビ)」とドイツ語の「Graf(墓)」から成る合成語だ。和訳の「黴墓」は「黴(カビ)の墓」と直訳になっている。
設定解説記事A Planeswalker’s Guide to Innistrad: Nephalia and the Undeadによれば、イニストラード次元では「墓所」は、ドイツ語の「墓」を意味する「Graf」と表記されることが多々ある。そして名称に「墓(Graf)」とつくスポットは、屍術界隈において魔術に使う死体の供給源となる場所でもあるというのだ。
したがって、黴墓はカビが一面に広がった墓場、あるいは正規の墓場ではないが沢山の死体が埋まっている場所などを表したイニストラードの言葉だと解釈できる。
設定解説記事A Planeswalker’s Guide to Innistrad: Nephalia and the Undeadでは、典型的な「墓(Graf)」として3種類が挙げられている。
「沼墓(しょうぼ:Fengraf)」:氾濫原にある墓場。かつては聖なる墓場だったが、長年放置された場所。
「海墓(かいぼ:Seagraf)」:漁師の墓場。
「戦墓(せんぼ:Diregraf)」:戦場となって沢山の死体がある場所。関連カードはこの戦墓が一番多い。
黴墓の関連カード
黴墓(ばいぼ:Moldgraf)に該当するカードは「イニストラード:真紅の契り」時点で3種類ある(実はメジャーなはずの沼墓よりも言及カードが1種類多い)。
黴墓のヤスデ(Moldgraf Millipede)は既に見たので、残り2種を紹介しよう。
黴墓の大怪物
The border between life and death is as thin as a layer of topsoil.
生と死の境目は、表土の層ほどに薄い。
引用:黴墓の大怪物(Moldgraf Monstrosity)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
黴墓の大怪物(Moldgraf Monstrosity)はカードセット「イニストラード」収録のクリーチャー・カードである。
昆虫系の巨大な怪物である。イラスト注意深く見ると、体が長い芋虫やムカデ系であり、背面には棘のような突起が林立している。口吻?を伸ばして鹿を捕食しているのだが、大怪物に比べて鹿がまるで小さなネズミのように感じるほどの巨体である。
そしてフレイバー・テキストによれば、生と死の境目は地面の表層部よりも薄いという。「黴墓」を名に冠する怪物なので、生息地には当然ながら死体が埋まっている。つまり、生者の暮らす地上に対して、表土を境にした地下は死の世界なのだ。
黴墓のゴミあさり
“When I was a child, we worried about picking the wrong mushrooms for the cook pot. Now we must worry about being picked ourselves.”
–Halana, Kessig ranger
「私が子供のころ、間違ったキノコを食べてしまわないように気を付けていました。今は、私たちが食べられてしまわないように気を付けねばなりません。」
–ケッシグのレインジャー、ハラナ
引用:黴墓のゴミあさり(Moldgraf Scavenger)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
黴墓のゴミあさり(Moldgraf Scavenger)はカードセット「イニストラードを覆う影」収録のクリーチャー・カードである。
「ゴミあさり」と訳された「Scavenger」は、このカードが菌類系の怪物なので「腐食性・腐肉を食べる生き物」という意味合いだ。黴墓に埋まった死体を漁って生きているのだ。
本体はキノコそのものに見える。しかし、基底部には黒い触手に似た部位を何本か周囲に広げて伸ばしていて、これで這いずっているように見える。
フレイバー・テキストによれば、この手のキノコの怪物はハラナ(Halana)が子供の頃には見られず、最近になって現れたようだ。「イニストラードを覆う影」という時代背景と、「昂揚」メカニズムを持たされていることを考慮するに、次元外からの来訪者エムラクール(Emrakul)の影響で狂気に侵され異形化したキノコと考えられる。
余談だが、フレイバー・テキストの和訳は原文と少しニュアンスが違っている。
「子供の頃は鍋に入れちゃ駄目なキノコを採取しないよう気をつけた。今は逆に採取されないよう気をつけなければならない。」
語調を整えて試しに訳してみるとこんな感じになるだろう。つまり、原文は「食べてしまうこと」を気をつけるのではなく、「採取すること」に気をつけるのである。和訳製品版は文章の通りをよくするためか、このように内容を改変しているようだ(個人的に許容範囲の言い換えだと感じる)。
イニストラード次元の巨大ヤスデ
最後のこの節はおまけに近い。
これまで黴墓に関連するクリーチャーを見てきたが、黴墓のヤスデ(Moldgraf Millipede)と黴墓の大怪物(Moldgraf Monstrosity)は巨大なヤスデ・ムカデ系であった。
イニストラード次元には、同じようなヤスデ・ムカデ系生物が他にも確認できるので、それらは同種か近縁種の腐食生物なのかもしれない。
食百足
“If you think you’ve killed one, guess again.”
–Thalia, Knight-Cathar
「一体殺したと思うのなら、二度目もあると思いなさい。」
–聖戦騎士、サリア
引用:食百足(Vorapede)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
食百足(Vorapede)はカードセット「闇の隆盛」収録のクリーチャー・カードである。
カード・メカニズムとして「不死」能力を持っているので、1度倒されても復活してくる。このゲーム的な特徴はフレイバー・テキストの文章に反映されている。「二度目もあると思いなさい。」
上述のように、「Millipede(ヤスデ)」は「千の足」、「Centipede(ムカデ)」は「百の足」が語源だ。
この「食百足(しょくむかで)」の「Vorapede」を同じようにラテン語から解釈すると、「vorō(貪る者)」+「pedis (足)」で「貪る足」となり、「貪り喰うヤスデ・ムカデの仲間」くらいの意味合いだと読み解ける。
風変わりな農夫
“Careful now. Don’t want to get the seeds stuck to your feelers like last time.”
「気をつけて食べなよ。この前みたいに触角に種がくっついたら困るからね。」
引用:風変わりな農夫(Eccentric Farmer)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
風変わりな農夫(Eccentric Farmer)はカードセット「イニストラード:真夜中の狩り」収録のクリーチャー・カードである。
このカード自体は農夫であるが、イラストやフレイバー・テキストでは巨大ヤスデが描写されていて、農夫から餌としてカボチャを与えられている。これがどういうシチュエーションなのか理解に苦しむ(ホラー作品の元ネタがあるのかも分からない)が、「風変わりな」で済むレベルをとっくに超えているじゃなかろうか。
さておしまいになるが、またもあっちこっちと取っ散らかった記事になってしまった気がするな…。では今回はここまで。
黴墓のヤスデの関連記事
イニストラード次元の関連記事一覧