先日、本サイトではラミレス・ディピエトロ(Ramirez DePietro)の解説記事を投稿した(リンク)。
公開されていた公式情報はありったけ盛り込んで記事にしたのだが…。昨晩、ウィザーズ社公式サイトにて、カードセット「統率者レジェンズ」のキャラクター解説記事が公開され、ラミレス・ディピエトロに関する新情報が追加された。
私は記事の内容に驚かされた。新情報の中でも「クルシアス船長(Captain Crucias)」の名前が出されたのが、あまりにも予想外だったのだ。
ラミレス・ディピエトロがクルシアス船長と関わっていた……噂レベルでも今までされたことがないエピソードだったのだから。
ということで、今回はクルシアス船長について解説してみたい。
ラミレス・ディピエトロの幽霊が語る
DePietro has claimed to have served on Captain Crucias’s Backstab as a privateer in the South Sea during the Brothers’ War
ディピエトロは主張します。兄弟戦争の時代に、南海にてクルシアス船長の「悪口」号に乗りこんでいたと。
引用:上がThe Legendary Characters of Commander Legends, Part 1(英語原文記事)
下が『統率者レジェンズ』の伝説たち その1(公式和訳版)
ラミレス・ディピエトロの幽霊は該当記事中で上記のように語っている(ただし、公式和訳版では原文にある「as a privateer(私掠船の船員として)」の部分が欠落しているので、情報が足りなくなってる)。
まず気になる言葉の解説から始めて見よう。
「兄弟戦争の時代」とはドミナリア次元の「アンティキティー戦争期(AR0-63年)」を指している。テリシア大陸全土でウルザとミシュラによる戦争が繰り広げられた時代である。
次に、この文での「南海(the South Sea)」は、漠然とした南の海ではなく、テリシア地方アルマーズの南方海域を指す固有名詞である。この南海は小説Song of Timeが出典である。
つまり、生前のラミレス・ディピエトロはアンティキティー戦争期のテリシア大陸南海でクルシアス船長の私掠船悪口号の船員として働いていた。そうラミレスの幽霊は語っているのだ。
では、「クルシアス船長(Captain Crucias)と悪口号(Backstab)」とはどういった人物と船であったのか、次の節で説明しよう。
クルシアス船長の解説
クルシアス船長(Captain Crucias)はアンティキティー戦争期のドミナリア次元ヨーティア出身の人間男性である。海兵、海賊、私掠船船長、海運実業家の経歴を持つ。
悪口号(Backstab)1はクルシアス船長がアルマーズ地方の南海で乗っていた私掠船の名前である。
クルシアス船長のストーリーは短編集The Colors of Magic収録の作品Expeditions to the End of the Worldと小説Apocalypseで語られている。クルシアス船長の経歴を時系列順に並べてみた。
クルシアス船長のストーリー
クルシアスはヨーティア国(Yotia)の軍用ガレー船(war galley)で出世を目指すが、アルマーズ国(Almaaz)の首都スミファ(Sumifa)で提督令嬢と恋に落ちたことで、ヨーティア軍のキャリアを諦めることになった。
クルシアスは海賊家業に身をやつしたが、私掠船「悪口号(Backstab)」の船長にまで成り上がった。毎年スミファの提督令嬢と逢瀬を重ねて5年目のある日、クルシアスは提督令嬢が産んだばかりの女の赤ん坊を押し付けられ、提督からはクルシアスと赤ん坊は提督一家と一切関係ない赤の他人に過ぎないと言い渡された。落ち目の船長を捨てて船員は去っていき、残されたクルシアス親子はスミファから逃げ出した。
海賊から足を洗って真っ当に働いたクルシアスは9年後にはテリシア大陸一裕福な船長となっていた。海の見えるベランダがある邸宅でヌニーヴ(Nunieve)と名付けた愛娘と、折を見ては娘好みのジャムーラ茶(Jamuraan Tea)を一緒に飲んで、幸福な暮らしを送っていた。ところが、ヌニーヴは不治の病に侵されて治療の甲斐なく亡くなってしまう。三大陸一と言われる名医にも手の施しようがなかった。
最愛の娘を喪ったクルシアスは心の穴を埋めるためか娘と同じ名前の船を造る。12か月一心不乱で設計を行い、それから10年をかけて完成させた「ヌニーヴ号」である。愛娘の似姿を船首像に持ち、積載量はないがスピードには自信の船だ。ヨーティア国の首都クルーグ(Kroog)のため、海の向こうの新天地を発見する希望の船…となるはずであった。
だが、ここでもクルシアスを突然の不幸が襲う。AR28年、クルーグの街はミシュラのファラジ帝国(Fallaji Empire)の攻撃で一晩で廃墟となったのだ。後援者も尽くすべき母国も消えてしまった。新造船ヌニーヴ号は無事だったので、クルシアスはアルガイヴ国(Argive)で海運業を始めたものの、積載量の少ないヌニーヴ号では稼ぐよりもむしろ金貨を失うことになった。
兄弟戦争末期ともなると、困窮したクルシアスは貴族相手の最低な旅行に手をつけることになる。「世界終末への遠征旅行(Expeditions to the End of the World)」と名付けられたこの仕事は、ウルザとミシュラが最終決戦を行っているアルゴス島の近海まで貴族を連れて行って、戦場を見物させるというものだった。
4度目の遠征旅行はAR63年の最後の日。アルゴス近海に旅客を運んだヌニーヴ号はウルザの解き放ったゴーゴスの酒杯の大爆発の衝撃波に呑み込まれた。船は破壊され乗組員も旅客もクルシアスも命を落とした。
しかし爆発がクルシアスの命を奪った時、愛娘ヌニーヴが夢の中で語りかけてくる。娘の言葉は再び目覚めて生きることを促すものであった…クルシアスのプレインズウォーカーの灯が点火された。クルシアス船長は船の残骸の下で覚醒した。そして、プレインズウォーカーのボウ・リヴァー(Bo Levar)として第二の人生を歩み始めるのだった。
ボウ・リヴァー
…ということで、クルシアス船長の正体はインベイジョン・ブロックで登場したプレインズウォーカー「ボウ・リヴァー(Bo Levar)」の覚醒前の姿…である。クルシアス船長の認知度はほぼないにしてもボウ・リヴァーなら結構な人の記憶に残っているのではないだろうか?
このボウ・リヴァーという人物はかいつまんで言うと、AR4205年のファイレクシア侵略戦争で、ウルザが結集したナイン・タイタンズの一員で、強力なプレインズウォーカーだ。ファイレクシア次元に乗り込んで戦い、最後には愛する海のエリテレイトのマーフォークを守って命を散らした英雄でもあった。
実はクルシアス船長として初登場した時はボウ・リヴァーとの関係性は書かれていなかった。元々は短編Expeditions to the End of the Worldは独立したクルシアスの物語として発表されていて、それがインベイジョン・ブロックのクライマックスの小説Apocalypseの終盤で、いきなりボウ・リヴァー=クルシアス船長だとバラされて、(短編既読の数少ない)読者(だけ)はビックリさせられたものだ。
では、改めてラミレス・ディピエトロとクルシアス船長の2人の話に戻して終わりにしたい。
ラミレス・ディピエトロに話を戻し
ラミレス・ディピエトロ(Ramirez DePietro)は大ぼら吹きだと人々が言う人物である。クルシアス船長(ボウ・リヴァー)と組んでいたという話も話半分以下で受け取っていた方がよいだろう。
だが、もし本当だったとしたら…ラミレス・ディピエトロはどれだけ昔からドミナリアにいたのだろう?今は幽霊になったとはいえ何歳になるのだろう。
今までの登場作品からラミレス・ディピエトロはAR34-35世紀頃からの人物だと考えられていたわけだが…。
クルシアス船長(ボウ・リヴァー)がアルマーズで悪口号船長であった時期は計算すると、AR3年以降でAR8年までの期間となる。
クルーグ陥落がAR28年で、その前の11年でヌニーヴ号を設計建造しており、さらに娘のヌニーヴ9歳で亡くなったとすると、28-11-9=8となってAR8年がヌニーヴ誕生の年。その5年前AR3年がスミファの海賊になった年と計算できる。
ということは、ラミレス・ディピエトロは今まで信じられていたよりも3300年以上前からドミナリアで海賊家業を営んでいたことになる。どうも嘘っぽいのだが…逆に本当のようにも思える。真相はまだ闇の中だ。
では今回はここまで。
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