錆ゴライアス(Rust Goliath)はカードセット「兄弟戦争」のアーティファクト・クリーチャー・カードである。
今回は錆ゴライアスから始まるミニストーリーを取り上げる。錆ゴライアスを操縦するカル軍曹(Sergeant Calle)が思いついたアイデアとは何だろうか!?
追記(2022年11月19日):記事投稿後に「莢」が描かれたカード・イラストが他にもあると気付いたので、おまけの節にチェック漏れした分を追加した。
追記(2022年11月20日):「莢」の発想元が判明したので追記した。→こちら
錆ゴライアスの解説
“You know those seedpods cluttering the eastern approach? I’ve got an idea….”
–Calle, Urzan sergeant
「東の入り口に散らばってた莢のこと知ってるか?良い考えがあるんだ……。」
–ウルザの軍曹、カル
引用:錆ゴライアス(Rust Goliath)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
錆ゴライアス(Rust Goliath)はカードセット「兄弟戦争」のアーティファクト・クリーチャー・カードである。
ウルザが指揮を執るアルガイヴ連合国軍の戦闘機械の巨人だ。右腕には物を掴める3本の指があり、左腕はチェーンソー型である。錆ゴライアスに比べれば人が虫のように小さく見える。
実は、このカードのフレイバー・テキストとイラストは繋がった小さな物語の始まりを描くものだ。
「東の入り口に散らばってた莢(さや)のこと知ってるか?良い考えがあるんだ……。」
カル軍曹(Sergeant Calle)は、いったい何を思いつき、錆ゴライアスでどうしようというのだろうか?
錆ゴライアスとカル軍曹のストーリー
ウルザ軍のカル軍曹が言う「莢(さや:seedpods)」とは何だろうか?まずはそれから確かめよう。
莢の正体
カードセット「兄弟戦争」収録の森(Forest)を見ると、枝から松ぼっくりに似た形の、発光する実か何かがぶら下がっている。
森のもう1種類の絵柄の方では、木の下にはイガイガの転がっている。枝から地面に落ちて発芽したらしい。これがカルの言う「莢(さや:seedpods)」に違いない。
アルゴスの森を収穫せよ
Once the brothers discovered the pristine island of Argoth, the war came down to who could plunder it faster.
兄弟が自然のままのアルゴス島を発見した時点で、戦争はどちらが早くそれを略奪できるかに変わった。
引用:荒涼たる収穫(Wasteful Harvest)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
荒涼たる収穫(Wasteful Harvest)のイラストでは、錆ゴライアスと同型の、片腕が3本指でもう片方がチェーンソーの、しかし錆もなくピカピカの機械巨人が巨木を担いで運んでいるところだ。よく観察すると、左の木の枝にこの「莢」がぶら下っている。これはアルゴス島を描いたものだ。
カードセット「兄弟戦争」の緑系カードはアルゴス島に関連するものが多くを占めているため、基本土地の森もアルゴスと考えるのは無理が無い。
荒涼たる収穫のイラストも加味すれば、カル軍曹はアルゴス島に居ると考えて間違いない。ただし、他の巨人はピカピカだのに、カルのゴライアスは錆びついており、あまり待遇は良くないようだ。
錆ゴライアスのイラストでは「莢」を収穫して集めている。カル軍曹は切り倒した幹ではなく、こんなものばかり集めて何に使うつもりなのかだろう?
アルゴスの地元ではこの「莢」をどう利用しているのか、そこに手掛かりがあるかもしれない。
薮打ち
薮打ち(Bushwhack)はカードセット「兄弟戦争」収録のソーサリー・カードである。
イラストでは、アルゴスのツリーフォークが手ごろな大きさの「莢」を棍棒代わりにしている。大きくスイングした一撃で、戦闘機械がほとんど消し飛んでしまっている。
なるほど「莢」はゴライアス達の即席武器になりそうだ。
別のカードでも「莢」はツリーフォークの武器になっている。
「莢」はアルゴス界隈ではどこでも手に入るポピュラーな武器なのかもしれない(彼岸島の丸太のようなものか)。
岩枝のゴーレム
岩枝のゴーレム(Boulderbranch Golem)では、「莢」はゴーレムの材料になっているようだ。ボディの上部から覗かせるイガイガと緑の発光は森(Forest)のイラストで見た「莢」とそっくり同じだ。
これでアルゴスの森の「莢」は、即席棍棒にも、ゴーレムのパーツにも利用できる多目的な素材であると分かった。
では、カル軍曹は何に使うつもりなのだろうか?武器か?パーツか?答えは次だ。
要塞化した海岸堡
要塞化した海岸堡(Fortified Beachhead)はカードセット「兄弟戦争」収録の土地カードである。
クリーチャー・タイプ「兵士」と共に使うことで恩恵のある「白青」の二色土地だ。
カルは軍曹なのでもちろん「兵士」であるし、ウルザ陣営のメインの色には「白青」が含まれている。
イラストを見れば、海岸に「莢」が並べて置かれているのがハッキリ分かる。これがミシュラのファラジ帝国軍を阻む「要塞化した海岸堡」だ。
錆ゴライアスとカル軍曹のストーリーの結末
では頭から通してみよう。
まずカル軍曹はアルゴスの森で「莢」を発見した。そして錆ゴライアスを利用して「莢」を収穫して海岸線まで運び、間隔を置いて配置した。やがて「莢」は沢山のイガイガを伸ばす。イガイガは敵を阻む障害となると共に、位置を固定する足となる。こうして天然物を活用した要塞化が完成するのである。
現地にあるものを動かしただけで大きな効果を生み出す。カル軍曹はなかなかのアイデアマンなのだ。
追記:「莢」が描かれた他のカード
本記事の投稿後に他のカードのイラストにも「莢」が描かれていることに気付いた。
執筆中のチェック漏れを途中に挿入すると記事の体裁が崩れてしまうのため、ここにおまけとして追加し、記録しておくに留める。
節くれ根の棺担ぎ(Gnarlroot Pallbearer)のイラスト左上に目立たたないが、莢が2つ枝になっている。
自然の聖域、アルゴス(Argoth, Sanctum of Nature)の方はカードではイラストが小さくてかなり分かりにくいだろう。実は中央の白い巨木の枝には少なくとも13個の莢が確認できる。
「莢」設定の起源
はてさて少し脱線。
以上のようにアルゴス島の樹々のそこかしこに「莢」が発見できた。「莢」はカードセット「兄弟戦争」になってから急に描かれるようになったもので、私は完全に新規の後付け設定だと思い込んでいた。
しかし兄弟戦争期のアルゴスを舞台にした過去の諸々のカードを調べていたところ、「莢」の発想元に違いないカードを見つけ出せた。それがツリーフォークの若木(Treefolk Seedlings)だ。
ツリーフォークの若木
The year that the brothers landed on Argoth, the trees produced five times as many seeds as normal.
兄弟がアルゴスに上陸した年、木々は普段の年の5倍もの種を生産した。
引用:ツリーフォークの若木(Treefolk Seedlings)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
ツリーフォークの若木(Treefolk Seedlings)はカードセット「ウルザズ・サーガ」収録のクリーチャー・カードである。
フレイバー・テキストによると、アルゴス島に兄弟が上陸した年に、アルゴスの樹木は例年の5倍の量の「種(seeds)」を生み出したのである。このカードは、そうして新たに生まれた若きツリーフォークたちだ。乱伐された樹木を回復させるため大量に実らせ、急速成長させる。まさにガイアの魔法の御業だ。
既存の設定情報として、この時期のアルゴスには大量の種があったはずだったというのだ。もちろん「莢(seedpods)」の中には複数の「種(seeds)」が詰まっている。したがって、諸々のカード・イラストに「莢」が描かれるのは寧ろ必然だったのだ。
いやはや。裏付けがあっての新規描写だったのだから、心底びっくりした。
さいごに
ということで、錆ゴライアス(Rust Goliath)から要塞化した海岸堡(Fortified Beachhead)までの繋がりをミニストーリーとして解釈してみた。カル軍曹(Sergeant Calle)はぽっと出の新キャラなのにやるじゃないか。
しかし、アイデアを思いついたカルの功績はもちろん一番だが、一軍曹の進言を取り入れた上官もよくやったものだ。ウルザ軍は意外に風通しがいい組織だったのかもしれないな。
では、今回はここまで。
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