カードセット「エルドレインの王権」とカードセット「エルドレインの森」の「白雪姫」モチーフのカードをまとめた。
追記(2023年9月12日):記事の各所に記述を付け足し、誤字などを修正した。
追記(2023年9月27日):公式記事Ten Stories Tallにおいて10種類のアーキタイプの簡単なストーリー解説が行われた。しかし、「白雪姫」アーキタイプには特に真新しい情報追加はなかった。
追記(2023年10月10日):カードセット「アルケミー:エルドレイン」の公式カードギャラリーが公開されたため、宝玉鉱山の監視者(Jewel Mine Overseer)を本記事に追加した。
追記(2023年10月11日):MTGアリーナにカードセット「アルケミー:エルドレイン」が実装されたことでフレイバー・テキストが確認できるようになった。宝玉鉱山の監視者(Jewel Mine Overseer)にフレイバー・テキストを追加した。
白雪姫の解説
エルドレイン次元は騎士とおとぎ話をイメージした世界だ。その中には「白雪姫」をモチーフとしたカード群が含まれている。
最初のカードセット「エルドレインの王権」では、「白雪姫」をそのまま想起させるようなカードが多かった。
2度目のカードセット「エルドレインの森」では、「白雪姫」は白黒のアーキタイプとなり、その上、関連カードの多くにはMTG的な大胆なアレンジが施されている。
「エルドレインの王権」の「白雪姫」
カードセット「エルドレインの王権」において、特に「白雪姫」との直接的な関連性が認められるカードを紹介する。
「エルドレインの王権」には様々な童話に共通するような要素(お姫様、王子様、意地悪な継母、狩人、呪いを解く口づけといったもの)をカード化したものが多く、その中には「白雪姫」に当てはめられるカードが複数存在するが、ここでは割愛した。
魔法の鏡
魔法の鏡(The Magic Mirror)はカードセット「エルドレインの王権」に収録された伝説のアーティファクト・カードである。
「白雪姫」では、どんな質問にも真実を答えてくれる魔法の鏡が登場する。
七人の小人
“The gleam of rubies and my brothers and sisters by my side . . . what more could I want?”
–Brognold the Third
「ルビーの輝きに、共に働く兄弟。これ以上何が望める?」
–三番目、ブログノルド
引用:七人の小人(Seven Dwarves)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
七人の小人(Seven Dwarves)はカードセット「エルドレインの王権」に収録されたクリーチャー・カードである。
白雪姫を助ける森の7人のドワーフだ。
誘いの魔女
“Murder clad in crimson beauty,
An end to life and love and duty.”
–Barrow witch incantation
「殺しが纏うは深紅の美。
命と愛と務めの終わり。」
–墳丘の魔女の詠唱
引用:誘いの魔女(Tempting Witch)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
誘いの魔女(Tempting Witch)はカードセット「エルドレインの王権」に収録されたクリーチャー・カードである。
「白雪姫」の毒リンゴを食べさせる継母である。
ガラスの棺
Fate will decide whether it’s a bed or a tomb.
ベッドか墓かは運命次第。
引用:ガラスの棺(Glass Casket)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
ガラスの棺(Glass Casket)はカードセット「エルドレインの王権」に収録されたアーティファクト・カードである。
「白雪姫」で、毒リンゴを食べた白雪姫が入れられたガラスの棺である。
次はエルドレイン再訪時のアレンジが効いた「白雪姫」を紹介しよう。
「エルドレインの森」の「白雪姫」
カードセット「エルドレインの森」では、「白雪姫」は白黒のアーキタイプのモチーフとなっている。
主人公の白雪姫役はネヴァ(Neva)が務め、毒リンゴを食べさせる継母の王妃役は魔女エリエット(Eriette)が配役されている。
ただし、エルドレインの森版「白雪姫」は大幅なアレンジが加えられている。
前回の「魔法使いの弟子」と同じく「白雪姫」も、個別のどのカードがストーリー上でどういう役割や関わり合いをどの順にしたのか、あるいは、物語の結末がどうなったのか、というところまではワールドガイドは触れていない。
物語の背景
AR4562年、新ファイレクシアによる侵略軍がエルドレイン次元に襲来した。
フェイの王タリオンと、エリエットら魔女三姉妹は、忌まわしき眠りの魔法を実行して、侵略者を退けた。エリエットは協力した見返りとして、タリオンから魔法のリンゴを賜った。しかし、戦後になっても魔女三姉妹は忌まわしき眠りを解除せず、世界を救った眠りの魔法はエルドレインの住人をも毒牙にかける呪いへと変貌したのであった。
エリエットはアーデンベイル城の廃墟を新たな本拠地とした。彼女の協力者がプレインズウォーカーのアショクである。エリエットが忌まわしき眠りを拡大してより多くの者を眠らせるなら、アショクは眠り人たちの宮廷を建設する手助けをする、と取り引きしたのだ。こうしてエリエットは眠り人の家臣を増やし、アショクは眠り人の夢から具現化させた夢魔を解き放った。
戦争の翌年、AR4563年が「エルドレインの森」の舞台となる。
では、次の節でネヴァの物語を紹介することにしよう。
ネヴァの物語
ネヴァが覚えている最後の記憶は、ファイレクシアの侵略軍から隠れていたことだ。騎士が斃れ、王国が崩壊し、大勢が亡くなっていった。機械のホラーが近づいてきた時に、ネヴァは紫色の忌まわしき眠りの霧に包まれて意識を失った。
現在、ネヴァの身体はヴァントレスにある。何百人もの目覚めぬ人々と共に、ネヴァの身体はガラスの棺に納められ保護されているのだ。ヴァントレスの魔道士は忌まわしき眠りの治療法を必死に探していた。
一方、ネヴァの精神は現実世界とは異なる状況に置かれている。ネヴァが気づくとそこは夢の世界であった。ネヴァは夢の中で、王国中をさまようことになってしまったが、不可解なことに何故かアーデンベイル城の廃墟へと引き寄せられてしまうのである。
ネヴァを追って危険な夢魔たちが迫ってくる。侵略戦争の記憶からファイレクシアンに似た姿で生み出された悪夢の怪物どもである。
ネヴァには正体不明の味方がついている。神秘的な人物「狩人」だ。狩人はネヴァを気にかけ、悪夢から護っている。その正体は、ネヴァのように眠りに落ちた者か、僻境のアルコンか、それとも別の何者かなのだろうか。
ネヴァを救えるのは、「狩人」なのかもしれなかった……。
ネヴァの物語に関連するカード
カードセット「エルドレインの森」から、ネヴァの物語に関連のあるカードを1種類ずつピックアップして紹介する。
悪夢に追われる者、ネヴァ
悪夢に追われる者、ネヴァ(Neva, Stalked by Nightmares)はカードセット「エルドレインの森」に収録された伝説のクリーチャー・カードである。
ネヴァ(Neva)はエルドレインの王国の若い貴族である。人間女性。
新ファイレクシアによる侵略戦争の際、忌まわしき眠りの魔法に囚われて目覚めぬ眠りに落ちてしまった。
ガラスの棺
While Neva’s mind wandered the realm of dreams, her body lay protected as mages worked frantically to find a cure for the Wicked Slumber.
ネヴァの精神が夢の世界を彷徨っている間、彼女の肉体はその忌まわしき眠りを解こうと必死に模索する魔道士らによって守られ続けていた。
引用:ガラスの棺(Glass Casket)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
ガラスの棺(Glass Casket)はカードセット「エルドレインの森」に再録されたアーティファクト・カードである。「エルドレインの王権」から引き続いての再録である。
フレイバー・テキストとイラストでは、眠り続けるネヴァの身体はガラスの棺に納められヴァントレスの魔道士によって守られている。しかし、ネヴァの精神の方は夢の中で、王国中をさまよい続けているのだった。
「白雪姫」では、森の7人のドワーフが毒リンゴを食べた白雪姫をガラスの棺に安置した。ネヴァの物語にはドワーフは登場しないものの、ヴァントレスの魔道士たちがドワーフの役割の一端を担っていると解釈はできる。
安らかなる眠り
“The king ordered those lost in sleep be placed in glass caskets, protected and watched in case they might one day wake.”
–The Wicked Slumber
「王は眠りに落ちた者をガラスの棺に納めさせました。そしていつか目覚める日のために、保護し、見守るように命じたのです。」
–「忌まわしき眠り」
引用:安らかなる眠り(Rest in Peace)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
安らかなる眠り(Rest in Peace)はカードセット「エルドレインの森」のおとぎ話という特別枠で再録されたエンチャント・カードである。
フレイバー・テキストでは、王の命令で眠りに落ちた人々をガラスの棺で保護しているという。ここでいう「王」とは、ヴァントレス城を本拠地として戦後処理や王国再建に尽力するウィル・ケンリス(Will Kenrith)のことであろう。
ワールドガイドよると、こうしてガラスの棺に納められた人々は何百人もの数になるとのことだ。
魔法の林檎のエリエット
“Hush now. I need your beauty sleep.”
「ねんねんころりよ、おころりよ。よく寝てもらわないとね。」
引用:魔法の林檎のエリエット(Eriette of the Charmed Apple)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
魔法の林檎のエリエット(Eriette of the Charmed Apple)はカードセット「エルドレインの森」に収録された伝説のクリーチャー・カードである。
魔法のリンゴを所持し、忌まわしき眠りの呪いを利用して眠れる人々を従え、アーデンベイル城廃墟の魔女王として振舞う悪者である。まさに「白雪姫」の王妃役にピッタリの人物だ。
とはいえ、エリエットは「白雪姫」の王妃とは大いに異なる設定がされていて、何よりもネヴァと直接的な関りを持っていないのだ。エリエットは魔法のリンゴを所持する魔女ではあるが、ネヴァにリンゴを食べさせてはいないし、もちろん継母でもない。ただエリエットは、忌まわしき眠りの魔法をかけた4人のうちの1人であるので、ネヴァがガラスの棺に入れられる間接的が原因だとは言える。
エリエットの誘う林檎
エリエットの誘う林檎(Eriette’s Tempting Apple)はカードセット「エルドレインの森」に収録された伝説のアーティファクト・カードである。
忌まわしき眠りの魔法に協力した見返りに、エリエットがフェイの王タリオンから授かった魔法のリンゴである。
MTGアリーナの豆知識によれば、これを食べた者は誰でもエリエットの虜になってしまうのだが、エリエットはより大きな夢を描いており、眠りながら歩く者や夢を見る者を命令に従わせるようになったという。したがって、エリエットが眠る者を家臣にする能力は、この魔法のリンゴの力を活用したものだと分かる。
そして、ワールドガイドによると、夢の中のネヴァは王国をさまよいつつも、エリエットが根城としているアーデンベイル城へと何故か引き寄せられているというのだ。
以上を合わせて考えるに、夢の中の眠り人を引き寄せる謎の作用、これもおそらく魔法のリンゴの影響なのだろう。
アショクの死神
Neva’s dreams were haunted by memories of the invasion—oil-black tendrils grasping at her through the mist. Or . . . was this something new?
ネヴァの夢は、侵攻の記憶に取り憑かれていた–それは霧の中、黒く、油ぎった蔦が彼女に絡みつく夢だった。あるいは……新たな何かだったろうか?
引用:アショクの死神(Ashiok’s Reaper)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
アショクの死神(Ashiok’s Reaper)はカードセット「エルドレインの森」に収録されたクリーチャー・カードである。
アショクによって生み出された夢魔(ナイトメア)の怪物を表現したカードの1種だ。こういった夢魔がネヴァを追ってくるのだ。
フレイバー・テキストによると、ネヴァは侵略戦争の記憶に悩まされており、彼女を襲う夢魔はファイレクシア的な雰囲気を持っている。これはネヴァ個人だけの話ではない。ワールドガイドにも同様の記載があり、侵略戦争の記憶から、夢魔はファイレクシアンに似た姿を取ることが多いとのことだ。
覆われた羊飼い
覆われた羊飼い(Shrouded Shepherd)はカードセット「エルドレインの森」に収録されたクリーチャー・カードである。出来事は影の切断(Cleave Shadows)だ。
色が白黒で「白雪姫」アーキタイプのカードであり、顔を隠した謎の存在であり、出来事名が「影の切断」と夢魔退治を思わせる。以上から、これがワールドガイドでネヴァを助ける謎の存在と記された「狩人(The Hunter)」に相当すると考えられる。公式記事Ten Stories Tallでも、狩人役の解説においてこのカードが挿入されており、やはり間違いなさそうだ。
「白雪姫」において、狩人は王妃に白雪姫の殺害を命じられたが逆らって森に逃がしていた。それが、ネヴァの物語では彼女をずっと見守る心強い味方にアレンジされたのだ。
イラストを見ると、このスピリットは肩幅広いがっしりとした男の姿をしている。燐光や靄のようなものを身に漂わせ、フードで影になった顔は全く見えず、頭部には大鹿の角が生えている。両手には大きな斧を携え、腰には短刀か鉈のようなものを差している。背後の黒い影は、この羊飼いに近づけず遠巻きにしている夢魔たちに見える。
カード名の「覆われた」と和訳された「Shrouded」は解釈に難儀するが、「燐光や靄に覆われた」または「謎に包まれた」くらいの意味合いなのかもしれない。
しかし、「エルドレインの森」には他にも「白雪姫」モチーフのカードが含まれている。
鏡に願いを
鏡に願いを(Beseech the Mirror)はカードセット「エルドレインの森」に収録されたソーサリー・カードである。
上のカード画像は拡張版イラストだ。実は、通常版イラストでは両脇が枠で隠されてしまって見えないのだが、この拡張版イラストでは左右の端の棚に赤いリンゴがあるのが確認できる。
魔法の鏡に嘆願する魔女、そして、棚には真っ赤なリンゴである。「白雪姫」の王妃をモチーフにしてデザインされたカードなのは間違いない。
自惚れた魔女
She wasn’t much for self-reflection.
彼女は内省するような質ではなかった。
引用:自惚れた魔女(Conceited Witch)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
自惚れた魔女(Conceited Witch)はカードセット「エルドレインの森」に収録されたクリーチャー・カードである。出来事は美の代価(Price of Beauty)だ。
自分の若さと美しさに執着し、鏡に向かう魔女であり、周囲には赤いリンゴがある。このカードも明らかに「白雪姫」の王妃モチーフだ。
がぶりんご飴
“Don’t you mean ‘poisonous’? There’s no such thing as a venomous—AGGHHH!”
「それを言うなら『毒入り』だろう?毒を持つりんごなんて……うわあああ!」
引用:がぶりんご飴(Candy Grapple)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
がぶりんご飴(Candy Grapple)はカードセット「エルドレインの森」に収録されたインスタント・カードである。
これは毒リンゴは毒リンゴでも、食べたら死んでしまう「毒入りのリンゴ」ではなく、それ自身が「有毒の牙を持つリンゴ」である。おそらく黒緑の「ヘンゼルとグレーテル」アーキタイプに属するカードではあると思われるが、毒リンゴのバリエーションとして一応取り上げておく。
こちらの記事も参照のこと。
「アルケミー:エルドレイン」の「白雪姫」
宝玉鉱山の監視者
“Hey, I don’t hear any whistling! Get back to work!”
「こら!音が何も聞こえないよ!早く仕事に戻りな!」
引用:宝玉鉱山の監視者(Jewel Mine Overseer)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下がMTGアリーナの和訳
宝玉鉱山の監視者(Jewel Mine Overseer)はカードセット「アルケミー:エルドレイン」に収録されたクリーチャー・カードである。
このカードが戦場に出ると、7枚の七人の小人(Seven Dwarves)を創出してライブラリーに加えて切り直す。これらの7枚のカードは「戦場に出たときにカードを1枚引く」というおまけつきになる。鉱山を掘って宝石を見つけるイメージだろう。
宝玉鉱山の監視者には他に、アップキープにライブラリーの1番上のカード追放してそのターン中にプレイできる機能がある。これはライブラリーを鉱山に見立てて掘り進む雰囲気がある。
以上のように、このカードは7人のドワーフと共に働く人間女性で、しかもクリーチャー・タイプは「貴族」である。となれば、これは「白雪姫」のエルドレイン風の新解釈とみていいだろう。
フレイバー・テキストに目を向けると、「音」と和訳されているが原文は「whistling」なので「口笛の音」である。ここでディズニー映画の「白雪姫」を思い起こすと、7人の小人は宝石鉱山での仕事を終えて帰宅する際に、ハイホーハイホーと歌いながら口笛を吹いていた。つまり、アニメ映画では口笛は仕事を終えたときに吹くものだったが、このカードでは仕事中に吹いて採掘をちゃんとしている証となるもの、まるで反対になっているのだ。
鉱山の荒くれ者を指揮する強面の「白雪姫」となってしまっているけれど、ネヴァ(Neva)に比べたら、大分モチーフが分かりやすい。
さいごに
今回はエルドレインの森版「白雪姫」を取り上げた。
この「白雪姫」ネヴァの物語だが、原作童話で言うと毒リンゴを食べてガラスの棺に安置された白雪姫が見ている夢の中の物語、となっている。毒リンゴの後ってそれは「白雪姫」の終盤であるし、しかも夢の中の話だとは、大胆なアレンジにもほどがある。
眠っている話がメインだったら、むしろ「白雪姫」ではなく「眠れる森の美女」ではないだろうか?(まあ、エルドレインの森版「眠れる森の美女」の方も、「眠りながらも対戦相手を求めてさまよう妖精の剣姫」という大分ぶっ飛んだアレンジなのだが……。)
ワールドガイドを確認できてよかった。こんな設定の話だなんて、予想できっこないのだからさ。
では、今回はここまで。
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