スタング(Stangg)はカードセット「レジェンド」収録の伝説のクリーチャー・カードである。
スタングはドミナリア次元の双子戦士であるが、ファンの間ではジャムーラの海賊「ロバラン傭兵団」の一員だったのではないか、とまことしやかに噂されることがある人物だ。スタングがハゼゾン・タマル(Hazezon Tamar)やジェディット・オジャネン(Jedit Ojanen)の仲間だった…この噂は本当だろうか?
今回はスタングが言及されるストーリー作品を調査して、噂を検証してみた。
追記(2022年8月20日):カードセット「団結のドミナリア」では、スタングはリデザインされた新カードとなって登場することになったため、新たに節を設けて追記した。
追記(2022年9月10日):設定解説記事が掲載されなかった件を書き足し、リンクの追加などの細かい変更を加えた。
追記(2023年7月16日):年代記述をより明確に修正し、ロバラン傭兵団へのリンクなどを追加した。
スタングの解説
スタング(Stangg)はドミナリア次元の双子の人間男性の戦士である。AR34世紀頃かそれより昔の人物であると考えられる。
スタングは、MTG史上初の「1枚のカードでそっくりのクリーチャー2体を生み出す」メカニズムを持ったカードであった。これを皮切りに現在まで、同系カードが何種類もデザインされている。
スタングの場合は双子の戦士ということで、全く同じ性能の「スタングの双子(Stangg Twin)」トークンを生成する。
カードセット「カルドハイム」現在、スタングは固有の物語が語られていないキャラクターであるが、クレイトン・エマリィ作品での描写からドミナリア次元に属しており、AR34世紀以前の人物であることだけは確定している。また、その作品内での記述から、ヴォーソスの中にはスタングがジャムーラのロバラン傭兵団の一員だと主張する者もいる。本稿ではその点についても検証する(→スタングとロバラン傭兵団の関係)。
スタングの素顔
カードセット「マスターズ25th」で再録された際に新規イラストとなり、スタングの素顔が初めて公開された。
スタングの双子トークンの方も新規のイラストで収録されている。
Tumblrの公式MTGブログには、新旧イラストを並べて「He may not look the same as he once did, but he’s still the same old Stangg.(見た目は同じじゃないけれど、昔ながらのスタングと同一人物。)」とコメントが添えられている。
こだまの戦士、スタング
こだまの戦士、スタング(Stangg, Echo Warrior)は、カードセット「団結のドミナリア」において「語り継がれる伝説1」という特別枠で収録される新バージョンのカード化である。
イラストを見ると、カードセット「マスターズ25th」のイラストと全く同じ姿格好に描かれている。
メカニズム面では、今回のスタングでもスタングの双子トークンを生み出すメカニズムは継承されている。ただし、トークンの出るタイミングは「こだまの戦士、スタングが攻撃するたび」にその都度誘発になり、こだまの戦士、スタングについている「オーラと装備品もそっくりそのままコピーし、スタングの双子についた状態で生成する」ようになった。しかも、こうして生成したトークンは全てターン終了時に生け贄に捧げなければならなくなった。
以上のように、スタングの双子の扱いが恒常的ではなく、一時的な存在のようになっている。血を分けた双子ではなく魔法的な存在という解釈にでもなったのだろうか?
追記:ところがウィザーズ公式は、語り直された伝説たちの解説記事を掲載しなかった。このところウィザーズはクリエイティブ関係の記事に余り注力していないのが明らかになってきた。落胆しか残らない。追記ここまで
スタングとロバラン傭兵団の関係
スタングがロバラン傭兵団に関係しているのではないか?スタングはロバラン傭兵団の一員あるいは首領あるいは船長である。こういった主張が20年近く昔からヴォーソスの中にはある。その根拠となっているのが小説Johanでの記述である。
ロバラン傭兵団はAR34世紀初頭頃からジャムーラ西南地方で活動を開始した海賊団である。その首領アディラ・ストロングハート(Adira Strongheart)は、物語現在(AR3334年)の10年以上昔、ハゼゾン・タマル(Hazezon Tamar)と夫婦であり海賊仲間でもあった。そして、2人の海賊時代の船が「スタングの牙号(Stangg’s Talon)」なのである。
この船名「スタングの牙号」の存在によって、スタングがAR34世紀頃かそれより昔のドミナリアの人物であったことが確定した。これだけが動かせない事実である。
この事実を踏まえた上で、「スタングの牙号」という名前はスタングの所有する船と解釈できるというのが、スタングがロバラン傭兵団の一員であるとする主張なのだ。主張には幅があり、人によっては「当時の首領がスタングだ」とか「船長がスタングだ」とかも見かけたことがある。時にはこの主張が確定事項のように書かれていることもあった。
解釈としては興味深いが上述した通り、公式のストーリー作品や関係記事にはスタングに関してそこまでの情報は見つけられない。それに「当時の首領がスタングだ」という説だけはあり得ない。なぜなら、ロバラン傭兵団の初代頭目はハンディング・ギョルナーセン(Hunding Gjornersen)で、二代目がアディラ・ストロングハートなので、スタング頭目時代が割り込む隙間が無いのだ。
カードセット「レジェンド」のキャラクター同士で横のつながりができるのは、ファン心理としてはとても興味深く嬉しいものではある。ジェディット・オジャネン(Jedit Ojanen)の先代にハゼゾン・タマルがいて実は同期にはスタングもいた、となれば、私だってワクワクしてしまう。しかし、厳密には小説中にスタングがロバラン傭兵団に所属しているとは書かれていないのだ。したがって「スタングがロバラン傭兵団である」はファンの仮説であり公式設定ではない。…少なくとも現時点では。もし公式がこのファン設定を拾ってくれたら私は嬉しくなってしまうだろう。
スタングのストーリー
スタングは上述の通り固有の物語は語られておらず、登場する作品も存在しない。クレイトン・エマリィの3作品で名前だけがちらりと出てくるだけである。
クレイトン・エマリィ!
クレイトン・エマリィの作品ではよくあることだが、登場人物が感嘆や罵りの場面や単に言葉の調子を揃えるために固有名詞を口にする。小説Final Sacrificeでは「スタングの石ころ!(Stangg’s Stones!)」、小説Jeditでは「スタングの無知蒙昧なる名の下に、あそこで何が起こった?(What in Stangg’s benighted name happened back there?)」という表現が確認できる。後世にも名前が伝わっているという事実以外に、これらの言葉に特に意味はない。
また、上述の通り小説Johanでは「スタングの牙号(Stangg’s Talon)」という船名が登場して、スタングがAR34世紀頃かそれより昔のドミナリアの人物であったことが確定し、ロバラン傭兵団との関係性に想像の翼を広げるきっかけとなった。これだけはただの感嘆や罵りとは違って有益な情報源と言えるだろう。
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