ドミナリア:ハンディング・ギョルナーセン

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ハンディング・ギョルナーセン(Hunding Gjornersen)カードセット「レジェンド」収録の伝説のクリーチャーである。

ハンディング・ギョルナーセンはドミナリア次元の伝説の海賊団「ロバラン傭兵団(Robaran Mercenaries)」の初代頭目であった人物だ。ハンディングはコミック版ジェディット・オジャネンとそれを下敷きにした小説Johanの2作品に登場している。

今回は、ハンディング・ギョルナーセンの設定や登場ストーリー作品での描写、ロバラン傭兵団を解説する。コミック版でのハンディングとジェディット・オジャネンとの関係についても紹介しよう。

追記(2021年3月4日):記事全体を見直して、コミックに関する情報を大幅に書き加えた。

追記(2023年7月16日):ビジュアルガイドでレジェンドサイクル1はAR3334年と年代が明確化されたため記述を修正した。

ハンディング・ギョルナーセンの解説

“You would never guess, at the terrifying sight of the man, that Hunding was as charming a companion as one could wish for.”
「この男の強面の外見からは夢にも思わないだろうが、ハンディングほどに素敵な仲間は望んでも得られない。」
引用:ハンディング・ギョルナーセン(Hunding Gjornersen)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳

Hunding Gjornersen

データベースGathererより引用

ハンディング・ギョルナーセン(Hunding Gjornersen)はドミナリア次元のドワーフ後述)の男性である。イラストは厳ついが、フレイバー・テキストにあるように、外見に似合わず仲間としては素敵な魅力ある人物だ。公式に和訳されたことがないため「ハンディング・ギョルナーセン」は本サイトでつけた暫定訳である。

ハンディングはAR34世紀初頭、ジャムーラの西南地方で暴れ回った海賊団のロバラン傭兵団(Robaran Mercenaries)の初代頭目1である。荒くれ者の部下たちの中には頭目の座を狙って挑戦してくる者もいたが、ハンディングは腕っぷしの強さで君臨していた。

Hazezon Tamar

ハゼゾン・タマル(Hazezon Tamar)
データベースGathererより引用

ハンディングの部下には、若き副官のアディラ・ストロングハート(Adira Strongheart)やアディラの年上の夫ハゼゾン・タマル(Hazezon Tamar)がいる。ハンディングの海賊船は「スタングの牙号(Stangg’s Talon)」だ。

小説Johanの物語の10年前(AR3324年)、ハンディングは理由を誰にも告げずにロバラン傭兵団を引退している。後を継いだのがアディラ・ストロングハートである。



ハンディング・ギョルナーセンのクリーチャー・タイプ

2007年に大規模なクリーチャー・タイプの見直しが行われ、その際にハンディング・ギョルナーセンのカードにもクリーチャー・タイプが設定されて「人間・戦士」となった(2021年3月現在も「人間・戦士」のままである)。

しかし、登場作品を読んでみれば、明らかにこのクリーチャー・タイプはおかしいのだ。

The Robars had first banded as thieves led by the dwarf Hunding Gjornersen.
ロバーズは最初、ドワーフのハンディング・ギョルナーセンが率いる盗賊団として結成された。
引用:小説Johan
上が英語原文。下が私家訳

このように、ハンディングは小説Johanには「人間」ではなく「ドワーフ」と明記してある。

ハンディング・ギョルナーセン(頭身比較)
コミック版ジェディット・オジャネンvol.2より引用

コミックにはハンディングの種族は言及されていないものの、ロバラン傭兵団の面々と身長や頭身を比較してみれば、ドワーフとしか思えない。

ではハンディングの正しいクリーチャー・タイプは何だろうか?「人間」から「ドワーフ」への変更は当然として、海賊のロバラン傭兵団のメンバーであることを考慮すると、「戦士」より「海賊・傭兵」の方がクリーチャー・タイプとしてふさわしく思える。

レジェンドサイクル1三部作の設定は(作品の評価や人気が高くないせいか)あまり顧みられることが無かった感触がある。1人のファンとしては、いつかは作品上の設定との食い違いがないクリーチャー・タイプ「ドワーフ・海賊・傭兵」に修正されることを願っている。

ロバラン傭兵団

ハンディング・ギョルナーセンが率いたロバラン傭兵団(Robaran Mercenaries)は元々はジェディット・オジャネン(Jedit Ojanen)のフレイバー・テキストが初出の組織である。構成員は「ロバー(Robar)/複数形:ロバーズ(Robars)2と呼ばれる。

Mightiest of the Cat Warriors, Jedit Ojanen forsook the forests of his tribe and took service with the Robaran Mercenaries, rising through their ranks to lead them in the battle for Efrava.
猫人最強の戦士3ジェディット・オジャネンは部族の森を捨て、ロバラン傭兵団に雇われた。エフラヴァの戦いでは傭兵団を先導して出世階段を駆け上ったのだ。
引用:ジェディット・オジャネン(Jedit Ojanen)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳

Jedit Ojanen

ジェディット・オジャネン(Jedit Ojanen)
データベースGathererより引用

小説Johanでの記述は少なく曖昧であるが、「ロバーズはハンディングが団結した当初は盗賊の集まりだった」「ハンディングが引退した後にアディラ・ストロングハートが、ロバーズを傭兵団へと作り変えた」という件が出てくる。文章通りに解釈すると、ハンディング時代は傭兵組織ではなかったことになるので、「ロバラン傭兵団」という名称が不自然になる。

このことから、ハンディング時代の単なる海賊団の「ロバーズ」が組織改編によって、アディラの「ロバラン傭兵団」に改名したという解釈が生まれた。ただし、アディラ時代でも構成員は変わらずに「ロバーズ」と呼ばれている場面があるので、この解釈には曖昧さが残る。

ヴォーソス間ではあまりこの辺の区別を厳密につけることはないようで、この海賊団はどの頭目の時代でも「ロバラン傭兵団」と呼ばれている(本記事でも厳密さより分かりやすさを優先してそうしている)。



ハンディング・ギョルナーセンのストーリー

ハンディング・ギョルナーセンはコミック版ジェディット・オジャネンでロバラン傭兵団の一員として作品に初めて登場した。このコミックシリーズを下敷きに創作されたクレイトン・エマリィのレジェンドサイクル1小説三部作では、一作目の小説Johanでロバラン傭兵団の初代頭目として名前とその人となりが軽く言及された。

コミック版と小説での描写には大きな差異があるが、小説の方がコミックを上書きした正史である。

だが、コミック版のハンディングはこのまま無かったことにするには勿体無いほど魅力的に描かれている。特にジェディット・オジャネンとのコンビが良いのだ。ここではコミック版のハンディング・ギョルナーセンを紹介したい。

コミック版のハンディング・ギョルナーセン

ハンディング・ギョルナーセン(初登場シーン)
コミック版ジェディット・オジャネンvol.1より引用

コミック版ジェディット・オジャネンに登場したハンディング・ギョルナーセンは、ロバラン傭兵団の一員であることは小説と同じだが、引退はしてはいないし、頭目でもない。コミックのハンディングはアディラ・ストロングハートの部下の1人として、主人公ジェディット・オジャネンと一緒に敵魔術師ヨハン(Johan)と戦う、お道化た仲間という役どころであった。カードのフレイバー・テキストでは「強面の外見」とあるのだが、コミックの姿には厳つさはなく、柔和で愛嬌のある雰囲気である。

ハンディングがジェディットを連れてパルミラの街を案内する
コミック版ジェディット・オジャネンvol.1より引用

コミックのハンディングは主人公のジェディットと組んで行動している場面が多い。

2人の初対面はこんな感じだ。ロバラン傭兵団で最初にジェディットに名乗った人物がハンディングであった。その際に、「ぶはは!お前が傭兵だって言うのか?」とジェディットにからかわれて、「どっちがタフか分からせてやる!猫小僧」とハンディングがタックルしてあわや喧嘩に……というシーンだ。

半分喧嘩から始まった2人はその後かなり仲が良くなる。

ジェディットは故郷エフラヴァ(Efrava)のオアシスしか知らない世間知らずだ。見るもの知るものすべてが新鮮で、次々に疑問が湧いてくる。そんな猫小僧に応えて、ハンディングは外の世界の知識を教えてやっていく。ロバラン傭兵団が本拠地パルミラ(Palmyra)の街に到着すると、ハンディングはジェディットを連れて街のあちこちを案内して回る。「自由の街だ。きっと気に入ると思うぜ!?」

ハンディングはジェディットの危機に仲間を呼んでくる
コミック版ジェディット・オジャネンvol.2より引用

そして、ジェディットはヨハンに騙されていたことを知る。ヨハンは変装してジェディットに接近し、友人として振舞っていたが、その狙いはエフラヴァを攻めて奪い取ることだった。パルミラの街中でヨハンの召喚したボガーダンの獣(Beasts of Bogardan)ジェディットに襲い掛かってくる。ハンディングはすぐさま仲間に助けを求めロバラン傭兵団を引き連れて戻って来た。

やるじゃねえか、毛玉野郎
コミック版ジェディット・オジャネンvol.2より引用

「加勢を呼ぶまで1人にして済まなかったな。でも大丈夫だと信じてたぜ」と謝るハンディングに気にしてないと返すジェディットはボガーダンの獣を倒していた。「やるじゃねえか、毛玉野郎」とハンディングは肩を叩くのだった。

コンパスと首飾り
コミック版ジェディット・オジャネンvol.2より引用

ジェディットは父親イェーガーを探して故郷を離れたのだが、いまだ行方はしれない。父の遺した半分に欠けた首飾りが導いてくれるはずだったのだが…。気落ちしたジェディットにハンディングは「猫ちゃんよ。このスクールヴィアの砂丘じゃ、俺のコンパスも役立たずだ。砂に混ざった重金属の影響だ。この玩具がダメなんだから、首飾りだって動いてないだけさ」そんな風に返して慰めるのだった。

物語のクライマックスはエフラヴァの戦いだ。ヨハンの軍がジェディットの故郷エフラヴァに攻めてきたのだ。砂漠を渡り攻め来る巨大戦車(Juggernaut)の軍団。それを迎え撃つエフラヴァの戦士達。さらにアディラの呼びかけに答えてハゼゾン・タマルの飛行船団が援軍に駆けつけてくれた。そして、敵陣に乗り込んだジェディットはついにヨハンとの対決となった。ヨハンは戦いの中でアディラの命を奪っており、さらにジェディットの父イェーガーの仇であることも判明した。ジェディットが倒すべき敵だ。追い詰められたヨハンは死なば諸共!とジェディットを掴み、2人は落下した…。

勝者ジェディットを迎え入れるハンディング。隣はハゼゾン・タマル
コミック版ジェディット・オジャネンvol.2より引用

ヨハンは死んだ。そして生き残ったのはジェディットだ。

ロバラン傭兵団は頭目アディラ・ストロングハートを喪ったが、ハゼゾン・タマルの推薦でジェディット・オジャネンが後継者となった。かたやエフラヴァの民の意見は真っ二つ割れていた。ジェディットは裏切り者か、それとも英雄かと。

コミックのラストシーンもハンディングとジェディットのツーショット
コミック版ジェディット・オジャネンvol.2より引用

そんな故郷を理解しているジェディットはロバラン傭兵団と共に故郷を去ることを決意した。もし父イェーガーがまだどこかに生きているのならそれを探そう、と。

母ムサタから祝福の言葉を受けたジェディット。その傍らには友ハンディング・ギョルナーセンの姿があった。

クレイトン・エマリィ!

以上がコミック版のハンディングだ。正史となる小説Johanでは、ハンディングは引退済みで、ジェディットとは顔を合わせてもいない。

レジェンドサイクル1三部作の作者クレイトン・エマリィがなぜハンディングの設定を改変したのか理由は定かではない。小説のロバラン傭兵団の一員として別のドワーフが登場しているため、それがハンディング・ギョルナーセンであっても一向に問題がないように思えるのだ。

エマリィの語った内情によると、伝説のクリーチャーにはそれぞれ独自の物語があるため使用には大きな制約が課せられたという。その証言から想像するに、ハンディング・ギョルナーセンも本編に登場させる許可が下りなかった可能性は考えられるだろう。

コミックにあったハンディングとジェディットのコンビが正史では無くなってしまったことが非常に残念だ。だが本編登場は逃したものの、ただの1メンバーから初代頭目という重要な地位に格上げされたことだけは、ハンディング・ギョルナーセンにとって幸いであった(かもしれない)。

おまけ:凍りつく霊気

Gjornersen entertained his followers by taking bets on which would move first–the drowsing land wurm or the frozen goblins.
ギョルナーセンは随行者達を、どちらが先に動くか賭けをして楽しませた–眠っているランド・ワームと凍りついたゴブリンと。
引用:凍りつく霊気(Frozen Aether)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

凍りつく霊気(Frozen Aether)

凍りつく霊気(Frozen Aether)
データベースGathererより引用

ハンディング・ギョルナーセンはカードセット「次元の混乱」の凍りつく霊気(Frozen Aether)のフレイバー・テキストで登場している。

「随行員達」と訳されている「followers」は設定から考えて、ギョルナーセンの部下であるロバラン傭兵団であろう。

そしてフレイバー・テキストの「眠っているランド・ワーム(the drowsing land wurm)」は、ギョルナーセンと同じカードセット「レジェンド」に収録された「老いたるランド・ワーム(Elder Land Wurm)」で間違いない。

老いたるランド・ワーム(Elder Land Wurm)

老いたるランド・ワーム(Elder Land Wurm)
データベースGathererより引用

老いたるランド・ワーム(Elder Land Wurm)は自身がブロックに参加するまで攻撃ができない制約が課せられており、それを眠りにたとえているのだ。また、このランド・ワームは、ハンディング・ギョルナーセンの言及がある小説Johanに登場している。

さらにこの凍りつく霊気自体がカードセット「レジェンド」収録の宿命(Kismet)を元ネタにしている。

凍りつく霊気はフレイバー・テキストもメカニズムもハンディング・ギョルナーセンと同期のカード群でまとめられたデザインとなっているのだ。

さて、これで今回のハンディング・ギョルナーセンに関する四方山話は終わりである。

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レジェンド
マジック・ザ・ギャザリング(MTG)のカードセット「レジェンド」収録のカードの中からピックアップしてストーリーや設定を解説する。
  1. 原文は「leader」
  2. Robarはスペイン語の「盗む」か?
  3. 「Mightiest of the Cat Warriors」は慣例的には「最強の猫族の戦士」と訳されるが、近年は「猫族の戦士」を種族名で用いることが少なくなってきているため、「猫人最強の戦士」とした