ぼろぼろのネズミ飼い(Tattered Ratter)はカードセット「エルドレインの森」に収録されたクリーチャー・カードである。
今回はこのカードのイラストやフレイバー・テキスト、メカニズムなどに注目して読み解く。
ぼろぼろのネズミ飼いの解説
“What’s that, Snappers? Yes, you’re right! It was very rude of the innkeeper to throw us out!”
「なんじゃね、パチパチ?うむ、その通りじゃ!あの宿主め、ワシらを追い出すなんてひどい奴じゃった!」
引用:ぼろぼろのネズミ飼い(Tattered Ratter)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
ぼろぼろのネズミ飼い(Tattered Ratter)はカードセット「エルドレインの森」に収録されたクリーチャー・カードである。
このぼろをまとった白髭の男は、ネズミ捕りの籠からネズミを解放して仲間として、憎い相手(エッジウォールの亭主)を齧ってやれと嗾けている。
ちなみに、エッジウォールの街はトーテンタンズ(Totentanz)と駆け抜け候(Lord Skitter)が活動中であるため、沢山の飢えたネズミで溢れている状況なのだ。
ぼろぼろのネズミ飼いのイラスト
カードのイラストはネズミを率いて街を練り歩く、ぼろを着た男だ。
この男は籠を開けて捕まっていたネズミを逃がしており、ネズミの群れが共に駆け回り、更に体中にネズミが乗っかっている。
ネズミの中には、双頭で2本の尻尾を持つ個体もいる。イラストの右端で見切れた2本の尻尾も、尻尾同士の位置が近いため、同様の双頭個体なのだろう。
イラストを担当したTyler Walpoleのコメントによれば、左肩に乗ったネズミは帽子をかぶりデニッシュを食べているが、これは後ろにいるデニッシュを積んで運ぶ男からくすねたものだ(出典リンク)。
ぼろぼろのネズミ飼いのフレイバー・テキスト
“What’s that, Snappers? Yes, you’re right! It was very rude of the innkeeper to throw us out!”
「なんじゃね、パチパチ?うむ、その通りじゃ!あの宿主め、ワシらを追い出すなんてひどい奴じゃった!」
フレイバー・テキストに関して、2つのポイントを語りたい。
まず1つ目のポイントは、和訳製品版で「パチパチ」と訳されているのは誤りだということ。
そして2つ目のポイントは、この文章は和訳製品版のようにも読めるけれど、他の読み方も可能だということだ。
では、この2つを順番に説明する。
その1:「パチパチ」は誤り
フレイバー・テキストでは、ネズミの群れは「Snappers」と呼ばれている(「Snapper」の複数形)。
和訳製品版では「パチパチ」とネズミの個体名のように作文している。おそらく「Snapper」を「パチっという音を鳴らすもの」と解釈して、複数形だから「パチパチ」という名前の一匹のネズミと解釈したのだろう。しかし、この解釈は誤りと考えられる。
まず、このカードが何をしているのかを見ると、自軍のネズミはブロックされると+2/+0修整を受ける。そして、ネズミという生き物は齧ることで相手を攻撃するものだ。つまり、このぼろを着た男が嗾ければ、ネズミはいつにも増して激しく相手に齧りつくのだ。
次に、「Snapper」という言葉は広い意味合いがあるが、その中には「喰いつくもの・噛みつくもの」との含みがある。例えば、カミツキガメも「snapper」と呼ばれる。
以上を踏まえると、このフレイバー・テキストでは「齧りつく鼠の群れ」に対して「Snappers(齧り屋ども)」と呼び掛けていると読み取れる。
「なんじゃね、齧り屋ども?うむ、その通りじゃ!あの宿の亭主め、ワシらを追い出すなんてひどい奴じゃった!」
「Snappers」は「パチパチ」という音由来のあだ名ではなく、齧りつき攻撃をするネズミの群れ、すなわち「齧り屋ども」なのだ。
ちなみに、「宿主」と和訳されていた「the innkeeper」は、カードで言うならエッジウォールの亭主(Edgewall Innkeeper)を指すので、「亭主」に置き換えた。
その2:フレイバー・テキストの別解
フレイバー・テキストは、和訳製品版のような文章と解釈することもできるが、それとは別の読み方も可能な文章である。
和訳製品版の文章は、簡単に言うと「(ネズミたちが何か言わんとしたのを受けて)お前もそう思うのか。あの亭主は酷い奴だったよな。」と過去の出来事として語っている雰囲気だ。昔のことだと愚痴っているだけなのかもしれないし、もう既にその亭主に報復し終わった後なのかもしれない。どちらでもありうる。
だがここで、原文文頭の「What’s that?」を「あれは何だ?」と質問と捉えたならば、異なる読み方ができる。訳し直して次のような感じ。
「齧り屋ども、ありゃなんじゃ?はい、ご名答!ワシらはあの亭主から宿を追い出されるという無礼千万な扱いを受けたんじゃ!」
このように解釈して読んだ場合、このカードの状況は「因縁のある宿が見えるところまで来た」のか、あるいは、「宿の亭主を街中で見かけた」かした、そのどちらかと考えられる。
憎き仇を目にしたところで、相棒のネズミたちに「あれは何だ?」と問いかけ、「あの宿の亭主に無礼な扱いされたんだ(だから許せない)」と皆の憎しみを煽っている。
したがって、まさにこれから報復を始めようとしている場面となるのだ。
さいごに
本記事は本来はエルドレイン:ハーメルンの笛吹きの一部として書きまとめていたものだ。しかし、このカードだけ内容が長くなりすぎてしまったため、こうして分割して個別記事にすることにした。
では、今回はここまで。
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