ドミナリア:最初の噴火

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最初の噴火(The First Eruption)はカードセット「ドミナリア」に収録されたエンチャント・英雄譚カードである。

再編集(2022年9月28日):古い記事だったので体裁を整え、加筆した。

追記(2022年10月4日):シヴの創世神話と、エルダー・ドラゴンの誕生とを関連付けて語った説を新たに加えた。

最初の噴火の解説

最初の噴火(The First Eruption)

データベースGathererより引用

最初の噴火(The First Eruption)はシヴに住む人間の遊牧民「ギトゥ(Ghitu)」が語り伝えるシヴの創世神話を表したカードである。カード名だけでなく、ギトゥの創世神話の名称自体が「最初の噴火(The First Eruption)」である。



ギトゥのシヴ創世神話

神話によると、シヴの島は「炎の卵黄を包んでいる石の殻」を持つという「卵」から孵った。原始世界のドミナリアの熱を浴びて、新たな噴火をするたびに、シヴはその「鱗」を脱皮していった。シヴの住人はシヴの元素から生み出されたという。すなわち、ギトゥは「炎」から、ドラゴンは「大気」から、ヴィーアシーノは「大地」から。1

神話の続きは、シヴの国家間で争いが起こるためにシヴ自身が国々に罰を与え、艱難辛苦を共に乗り越えさせようとしているというものだ。そうした結果、近代のシヴ国(Shivan Nation)は土地そのものに鍛え上げられたシヴの住人の同盟から生まれたものである。

修復時代現在のシヴ国は、AR4520年にシヴの主要四種族(ドラゴン、ギトゥ、ゴブリン、ヴィーアシーノ)が同盟して誕生したもので、各種族から2名ずつ計8人の長老からなる評議会がシヴ国家を統治している。

カードのイラストはギトゥのタペストリーを表している。遊牧民であるギトゥは重要な物語をこうした巻物に描いて持ち運べるようにしている。

ギトゥの起源

マナ・リグ(The Mana Rig)

マナ・リグ(The Mana Rig)
データベースGathererより引用

歴史的にはギトゥはシヴに起源を持つ民ではない。スラン時代にシヴに建造されたマナ・リグ(Mana Rig)のスラン人の末裔である。

しかし、語り伝わる「最初の噴火」神話にはそれを暗示させるような内容は含まれていない。

シヴ創世神話の共有

このカードの発想元は実は20年前のカードセット「ウルザズ・サーガ」の燎原の火(Wildfire)のフレイバー・テキストである。

“Shiv hatched from a shell of stone around a yolk of flame.”
—Viashino myth
シヴは炎の卵黄を包んでいる石の殻が割れて生まれ出た。
–ヴィーアシーノの神話
引用:燎原の火(Wildfire)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

燎原の火(Wildfire)

燎原の火(Wildfire)
データベースGathererより引用

ご覧のように元々はギトゥの神話ではなくヴィーアシーノの神話であった。ドミナリアの設定集The Art of Magic: The Gathering – Dominariaによると、数千年にわたる文化的接触を通じて、ヴィーアシーノとギトゥはシヴの起源神話についてほぼ同一の物語を語り伝えるようになった。両種族のシヴ起源神話は、そもそもの成り立ちから異なっていたのにもかかわらずである。

ウルザズ・サーガの1枚のカードのフレイバー・テキストが、20年の時を経て、シヴのヴィーアシーノとギトゥが共有する創世神話持つという設定へと拡張されて、英雄譚カードに採用されるまでに至った、ということになる。

エルダー・ドラゴンの誕生

ギトゥの神話は、ヴィーアシーノの神話に起源を持つと確認できた。では、ヴィーアシーノの神話は更にどこに遡れるのだろうか?

私は、ドミナリア神話時代の始まり、エルダー・ドラゴンの誕生に神話の原型があると推測している。

暴虐の龍、アスマディ(Vaevictis Asmadi, the Dire)

暴虐の龍、アスマディ(Vaevictis Asmadi, the Dire)
データベースGathererより引用

ヴァエヴィクティス・アスマディ(Vaevictis Asmadi)はシヴのドラゴンの始祖となったエルダー・ドラゴンだ。AR-20000年頃、空から産み落とされた卵石からヴァエヴィクティスらドミナリア史上初のドラゴンが現れたのだ。エルダー・ドラゴンは現在にまで繋がるドラゴンの子孫を遺しただけに留まらずに、ワームやドレイク、ヴィーアシーノの祖ともなったのである。

「最初の噴火」の神話を再確認すると、シヴの土地は卵から孵り、ドラゴンは大気より生まれ、ヴィーアシーノは大地より生まれた、と伝えられている。

シヴの歴史の始まりが神話時代の始まりと同義だったとしたなら、空から落とされた卵石からエルダー・ドラゴンが孵った時、シヴも同時に始まったことになる。「シヴの土地は卵から孵り、ドラゴンは大気より生まれ」たのだ。

そして、ヴィーアシーノはドラゴンとは違い翼を持たない種族だ。空を飛ぶドラゴンに対して、派生種族の「ヴィーアシーノは大地より生まれた」のである。

現代より遥か20000年以上もの昔の出来事が、抽象化された伝承に変化した末に創世神話として結実した。というのは、十分筋が通っている。



最初の噴火のストーリー

最初の噴火は小説やコミックなどの作品で描かれたものではないが、公式サイトの記事「Dominaria Card of the Day: The First Eruption」書籍「The Art of Magic: The Gathering – Dominariaでその背景が解説されている。記事は以下のリンクで閲覧可能である(英語のみ)。

404 | Magic: The Gathering
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