カード紹介:黄昏の風

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黄昏の風(Winds of Twilight)とはカードセット「プロフェシー」に収録された希少度レアの5色5種類のソーサリーまたはインスタント・カードの総称である。

黄昏の風に属するのが焼尽の風疫病風否定の風清めの風活力の風の5種類のカードだ。

今回も記事の最後では、黄昏の風に対して日本で拡散された誤った情報の内容や発信源について説明している。

黄昏の5つの風

疫病風(Plague Wind)

疫病風(Plague Wind)
データベースGathererより引用

黄昏の風(Winds of Twilight)とは、ケルドの預言にある世界の終末の最終戦争「ケルドの黄昏(Keldon Twilight)」に吹く5つの風である。

それぞれは昇天の風(wind of ascension)と呼ばれ、第一から第五までの順番で番号が振られ、5色のマナに対応したカードが割り当てられている。

黄昏の風一覧



黄昏の風の設定解説

「黄昏の風」とはどういうものなのか、カードセット「プロフェシー」関連の記事や作品での言及を拾い上げてみよう。

Prophecy Novel Guide

公式記事Prophecy Novel Guideによれば、ケルドの黄昏には5つの強風が惑星中に吹き荒れて、ドミナリアとそこに住まう人々に試練を課すであろう、この風が吹き始めたなら野蛮な者しか生き残れはしない。そうケルドの古文書には記されている。そして、後の時代にプロフェシー戦争と呼ばれる戦い(AR4205年)では、ケルドの予言にあるこれらの暴風により、北ジャムーラ亜大陸の国家は今にも滅ぼされそうになった。

ちなみにこの記事はProphecy Novel Guideという名前ではあるにも関わらず、小説Prophecyで扱っている範囲を遥かに超えた解説をしている(ただし、範囲は広いが1つ1つの掘り下げは浅い)。

実は小説では黄昏の風が吹く場面は登場しないという事実には驚かされる。だが、この記事は公式ソースの内容なので黄昏の風が発生したのは確定である。

したがって、単に小説で描かれていない時と場所において、黄昏の風が吹いていたに違いない。これは、北ジャムーラの古代の強大な化身達の復活と同じ扱いである(小説には化身も出てこない)。

小説Prophecy

小説Prophecyでは捕虜となったケルド人クーリック(Couric)の口から黄昏の5つの風と予言の内容が語られただけで終わっている。

黄昏の風よりも、小説では「ケルドの黄昏(Keldon Twilight)」と、それに際して大墳墓1から復活する英雄たちという、ケルドの預言への言及が主体となっている。

黄昏の呼び声(Twilight's Call)

黄昏の呼び声(Twilight’s Call)
データベースGathererより引用

この時に深掘りされたケルドの預言と文化は、カードセット「プロフェシー」直後のインベイジョン・ブロック三部作のケルドのストーリーに密接に関わってくる。複数のセットを跨いだ壮大な伏線である。ケルドの黄昏が現実化し、預言通りに大墳墓から死せる英雄たちが蘇ってくるのだ…ただし、ケルド人にとって最悪の形で。

プロフェシーのコミック

ケルド人のクーリック(Couric)
プロフェシー・コミックより引用

上述した小説Prophecyでのケルド人クーリックのエピソードは、Kev Walkerによるイラストでコミカライズ化されている(Top Deck誌vol.8初出)。この作品でラトゥーラの持つ書物の表紙に「Keld Triumphant(和訳は「輝かしきケルドの書」)」と書かれていることから、これが書名であったことが確定できる。

日本でも和訳されてデュエリスト・ジャパンvol.11に掲載されたが2つの固有名詞が誤訳されている。「Kipamu League」が「キパム連盟」でなく「キパムリー」となり、「Couric」がどう読み違えたのか「カリリック」と訳されている。

ちなみに、Kev Walkerが描くクーリックの容姿は、DCコミックのキャラクター「ロボ(Lobo)」にそっくりに思えてならない。

黄昏の風の該当カード

では本記事の残りでは「黄昏の風」に該当する5種類のカードを順番に掲載し、最後に日本で拡散されてしまった誤った情報について解説を行うことにする。

焼尽の風

“The first wind of ascension is Forger, burning away impurity.”
–Keld Triumphant
昇天の第一の風は鍛錬する者の風なり。不純なるものを焼き尽くす風なり。
–輝かしきケルドの書
引用:焼尽の風(Searing Wind)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

焼尽の風(Searing Wind)

焼尽の風(Searing Wind)
データベースGathererより引用

疫病風

“The second wind of ascension is Reaver, slaying the unworthy.”
–Keld Triumphant
昇天の第二の風は、もぎ取る者の風なり。価値なき物を破壊する風なり。
–輝かしきケルドの書
引用:疫病風(Plague Wind)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

疫病風(Plague Wind)

疫病風(Plague Wind)
データベースGathererより引用

否定の風

“The third wind of ascension is Eliminator, clearing Keld’s path to victory.”
–Keld Triumphant
昇天の第三の風は、排除する者の風なり。勝利へ向かうケルドの道の、邪魔物を取り除く風なり。
–輝かしきケルドの書
引用:否定の風(Denying Wind)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

否定の風(Denying Wind)

否定の風(Denying Wind)
データベースGathererより引用

清めの風

“The fourth wind of ascension is Anointer, deifying the worthy.”
–Keld Triumphant
昇天の第四の風は清める者の風なり。その資格あるものを聖別する風なり。
–輝かしきケルドの書
引用:清めの風(Blessed Wind)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

清めの風(Blessed Wind)

清めの風(Blessed Wind)
データベースGathererより引用

活力の風

“The fifth wind of ascension is Exalter, fulfilling Keld’s destiny.”
–Keld Triumphant
昇天の第五の風は意気高揚させるさせる者の風なり。ケルドの運命を実現させる風なり。
–輝かしきケルドの書
引用:活力の風(Vitalizing Wind)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

活力の風(Vitalizing Wind)

活力の風(Vitalizing Wind)
データベースGathererより引用



黄昏の風に関する日本の誤情報

黄昏の風に関しても、当時の代理店とライターによる日本の雑誌記事や刊行物において、ウィザーズ公式情報と異なった独自設定が拡散されていた。

黄昏の風の記述を抜粋すると以下の通りである(「終末の風」は「黄昏の風」と同じもの。当時の翻訳には両者が混在していた)。

ケルドの戦士たちの間には、「終末の風」に関して言及した預言書「輝かしきケルドの書」が伝わっており、彼らはそれが北ジャムーラを攻略してケルドの領地にすることなのだと解釈した。ケルドの軍監ラトゥーラはこの預言に従い、軍団を率いてジャムーラ北部に侵攻した。
また、彼女の計画の中には、一連のアーティファクト兵器の実戦試験も含まれていた。ケルドの長老評議会は、ジャムーラにいる強力な魔力の化身(アバター)たちが出現し、侵略を妨害することを懸念し、彼らが戦いに参加する前に、そしてケルドの風が世界の終末をもたらす前にジャムーラを占領するには、これらのアーティファクト兵器が必要だと考えていたのである。
引用:Gameぎゃざvol.12の記事「ドミニア年代記 第11回プロフェシー ~予言の時来たれり

この記事とほぼ同内容がデュエリスト・ジャパンvol.11の記事「プロフェシー攻略ガイド 預言(プロフェシー)の時来たる!~プロフェシー・ワールド・ガイド~」にも記載されている。さらに、同内容の簡略版は「プロフェシー公式ハンドブック」やゲームショップで入手できたブックレット「プロフェシー・ガイド」などにも確認できる。

ここで抜粋した部分は、ウィザーズ社の公式記事Prophecy Novel Guideをリライトして、独自設定を差し込んで文章の嵩を増したものと思われる。したがって、公式情報と独自設定が互い違いに入り混じった状態になっており、非常に紛らわしい。

黄昏の風の部分に絞って語るのは難しいので、抜粋した全文について公式設定との差異を解説する。それを以て本記事の締めくくりとしたい。

まず抜粋の前段部分について、ほぼ正しいが重要な動機が欠落している。その動機はProphecy Novel Guideにも書いてあるが「ラトゥーラと信奉者は北ジャムーラがケルドの先祖の所有地であり、失地回復の大義があると信じている」ことである。小説Prophecyではそれに加えて、ジャムーラで先祖の英雄が流した「血」と呼ばれる資源をジャムーラ人は採掘し工業的に利用しており、これがケルド人には信仰的に許されざる行いでもあったとも語られている。また、後の作品でもケルドが領土を持っていた時代が言及されており、少なくとも部分的には歴史的事実であった裏付けがされている。雑誌記事ではここの経緯を完全に省いたことで、ケルド軍が大義を持たない単なる侵略者に成り下がってしまっているのだ(大義を認めても蛮行ではあるが)。

次に抜粋の後段だが、こちらは独自設定が大部分を占めている。ケルドの指導者層である評議会が「化身たちが出現し、侵略を妨害することを懸念し、彼らが戦いに参加する前に、そしてケルドの風が世界の終末をもたらす前にジャムーラを占領するには、これらのアーティファクト兵器が必要だと考えていた」という件が、公式設定とは全く何一つ一致する部分がない。記事Prophecy Novel Guideによれば、評議会はラトゥーラの戦争を全面的に支持をしているわけでなく、アーティファクト兵器の実戦試験ができることと、ドミナリア最大の大陸にケルドの存在を示すこと、この2つの利点があるので黙認している、とある。小説Prophecyでは、評議会の姿勢はより詳しく描写されている。当初は戦争行為自体は容認していたものの、ラトゥーラがケルド本国の聖地に眠る英雄たちを強制的に復活させるという暴挙に及ぼうとしたため、評議会はラトゥーラとその一派を異端としてケルドからの追放刑に処したのだ。つまり要点だけ言うと、プロフェシー戦争において黄昏の風もジャムーラの化身もケルドの評議会とは一切関係がないのである。

では今回はここまで。

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