ザルファー史その2:テフェリーの関与

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前回に続きドミナリア次元ジャムーラ大陸北西部(ザルファー周辺)の歴史について時代検証する。

ザルファーの歴史ではプレインズウォーカーのテフェリーの行動が大きな影響を与えている。あるときは宮廷魔導士として、あるときは事件の発端として、またあるときは戦争からの救い手として。

第2回目の今回は、テフェリーが関与したザルファーの歴史を掘り起こし、それらがどの時代に起こったかを検証したい。

※ 2020/06/16 記事投稿から一晩経って見返したところ「a millennia」を「a millennium」に誤読していたことが判明したため、本記事は該当部分を修正しました。

テフェリーが関与したザルファー

時間の大魔道士、テフェリー(Teferi, Temporal Archmage)

時間の大魔道士、テフェリー(Teferi, Temporal Archmage)
データベースGathererより引用

テフェリーがザルファーの歴史に影響を与えた行動は大きく分けて以下の4つになる。時系列順。

  1. テフェリーはザルファーの宮廷魔導士として従事した。
  2. テフェリーの島がフェイズアウトする。この事件をきっかけにマンガラ、ケアヴェク、ジョルレイルがジャムーラ北西部の歴史に介入することになった。
  3. ミラージュ戦争勃発後、テフェリーの島がフェイズインし、テフェリーは事態収集のために英雄たちに幻視を送る。
  4. ザルファーをフェイズアウトさせる。

このうち4番目のザルファーのフェイズアウトについては前回語った通りだ。AR4205年にザルファーはフェイズアウトしてドミナリア上から消失した。



ザルファーの宮廷魔導士

テフェリーはザルファーの宮廷魔導士(Court Mage、Royal Mage、Lord Mageなどと表記)として国に仕えた。テフェリーはザルファーの王家に仕え、内戦を解決に導き、魔術ギルドの創設するなど、様々な貢献をした。テフェリーはザルファーを離れ、プレインズウォーカーとして他の次元に旅立ったか、あるいは、島に籠って時間魔法の研究に取り組んだ。

テフェリーの国政への具体的な貢献はまた次回以降に取り上げたい。

ここでは、テフェリーがいつ頃に宮廷魔導士となり、最後はいつ頃にザルファーを離れたか、を問題にしたい。

テフェリーの島

The three wizards knew only that this isle held a great mystery–and that patience alone would solve it.
不毛の岩地が、マンガラとケアヴェクとジョルレイルを迎えた。三人のウィザードたちにわかるのは、この島が大いなる謎を秘めていること–そして、根気以外にその謎を解く鍵がないということだけだった。
引用:テフェリーの島(Teferi’s Isle)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

テフェリーの島(Teferi's Isle)

テフェリーの島(Teferi’s Isle)
データベースGathererより引用

ザルファーを離れたテフェリーは時間魔法の実験のため島にこもった。あるとき事故が起こりテフェリー自身と島の表層部が全て、ドミナリアとは別の位相へと消失してしまう(フェイズアウトした)。時間流の異変を感じ取った3人の大魔術師がテフェリーの島に集う。マンガラ、ケアヴェク、ジョルレイルである。3人はこの島で発生した事象を解明できなかったが、謎の究明のために島の近くに留まって観察することにした。

この事件をきっかけにマンガラ、ケアヴェク、ジョルレイルがジャムーラ北西部の歴史に介入することになったがそれはまた別件として扱う。

ここでの問題は、いつテフェリーの島がフェイズアウトしたのか、である。

ミラージュ戦争の幻視

AR4195~4196年のミラージュ戦争ではテフェリーは島と共にドミナリアに帰還する(フェイズインした)。状況を把握したテフェリーは英雄たちに幻視(ビジョン)を送り、マンガラの救出を手助けした。テフェリー自身は島で予期せぬ時間災害が再び起こらないように考え、島を離れなかった。

ここでの問題はテフェリーの帰還がミラージュ戦争中のいつ頃かである。

最初期の公式資料

1996年、カードセット「ミラージュ」発売時のDuelist誌13号の記事The War of Mirageでは以下のように書かれている。

  1. 「テフェリーの教えが数千年近くザルファーの人々を導いてきた((Teferi’s) teachings had guided the Zhalfirin peple for nearly a millennia.)」
  2. 「およそ200年前(some two hundred years ago)」にテフェリーの島がフェイズアウトした。
  3. ミラージュ戦争が開戦した初期(原文では「During the opening days of this conflagation」)にテフェリーが帰還した。

同年のDuelist誌15号では、カードセット「ビジョンズ」の記事Visions Told: The Resolution of the War for Jamuraaが掲載されたが時間の経過を示すような記述は確認できない。

以上の記事はコンティニュイティ・チームのピート・ヴェンタース(Pete Venters)スコット・ハンガーフォード(Scott Hungerford)によるものだ。ウルザズ・サーガを最後にピート・ヴェンタースはコンティニュイティ・マネージャーを辞めてウィザーズ社から離れてしまうが、それ以降の担当者による各種記事でも概ね時系列のつじつまが合うようになっている。

では、この最初期の情報を基盤として各資料を調べてみよう。

ウルザズ・レガシー期

押収(Confiscate)

アカデミー時代のテフェリーとジョイラ、先生のバリンを描いた押収(Confiscate)
データベースGathererより引用

小説Time Streamsでは少年期のテフェリーがトレイリアのアカデミーで成長し、ザルファーに帰還して内戦を平定するまでが描かれている。この作品中では序盤に1度だけ具体的な年が示される(最初のアカデミーが時間災害に見舞われたAR3307年)。だが、それ以外の時間経過は曖昧で大雑把でありテフェリーがザルファーにいつ頃帰ったのかが特定できない。

小説の終盤と一部内容の被る掌編「遺産の傷(Scars of the Legacy)」では、テフェリーはザルファーの宮廷魔導士となっている。テフェリーは、ジョイラが指揮するウェザーライト号が連れてきたセラの領土次元からの難民を、ザルファーに受け入れている。

時代の特定には小説発行と同時期の情報が手掛かりになる。Duelist誌34号にはカードセットの対応年表が掲載されており、カードセット「ウルザズ・レガシー」と小説Time Streamsの扱う範囲はAR3360年までとなっている。ここから逆算すると、テフェリーの帰還はおおよそAR3355年かその前後と推定でき、AR3360年までに内戦は解決されて、テフェリーが宮廷魔導士となっていることが分かる。

これは先述の「テフェリーの教えが数千年近くザルファーの人々を導いてきた」に合致しない。AR3360年からミラージュ戦争現在のAR4195年までは、8世紀以上の期間しかなく、千年にも満たない。ミラージュ・ビジョンズ当時は「古代のプレインズウォーカー」という漠然とした存在だったテフェリーが、アカデミーで少年時代を送り、後にプレインズウォーカーとなった、と詳細設定が詰められていく過程でできてしまった矛盾であろう。ここは設定変更されたと考えるしかない。

テフェリーはAR3355年頃にザルファーに帰還し内戦を平定し、AR3360年にはすでに宮廷魔導士となりセラの領土次元の移民を受け入れた。

公式サイトのミラージュ・ビジョンズ記事

2000年以降にはウィザーズ社公式サイトで、カードセット「ミラージュ」と「ビジョンズ」の登場人物とストーリーを詳しく解説する記事3本が公開された(Character ProfilesThe Story of JamuraaVisions: The Backstory)。ここでミラージュとビジョンズのストーリーは総括されて、より詳細で具体的にまとめられている。

では情報を拾い上げる。

テフェリーの島のフェイズインはミラージュ戦争勃発から「数か月を超えた(Over the coming months)」後に起こった。そして、フェイズアウトからフェイズインまでの期間は、「何十年も(Returning many decades later)」、「およそ200年(some two hundred years ago)」、「もう少しで200年(Almost two hundred years after its disappearance)」と書かれている。

まず、フェイズインが戦争中のいつ頃に起こったかを考える。初期資料では「ミラージュ戦争が開戦した初期」となっているが、こちらでは「数か月を超え」ている。ミラージュ戦争はAR4195-4196年の2年に跨ぐことが分かっているため、最初の年の2-3か月後くらいに想定すると「戦争初期」かつ「数か月経過」の両方の条件が満たせるだろう。したがって、テフェリーの島がフェイズインした年はAR4195年と考えられる。

では、フェイズアウトからフェイズインまでの期間はどうかというと、すべての記述を同時に満たすのは「もう少しで200年(ほぼ200年だが200年までは行っていない)」しかない。

これでフェイズアウトした時期が割り出せる。4195-200=3995なので、3995年より少し後の時代になる。これでAR4000年頃と推定できた。そして、テフェリーはAR4000年より前にザルファーを離れて島に籠ったことになる。

テフェリーの島はAR4000年頃にフェイズアウトし、AR4195年にフェイズインした。

閑話:テフェリーの島がフェイズアウトしてフェイズインするまでに200年かかった。これを証拠にゲーム中の1ターンは200年だ、と主張するのは「冗談で言う」分には罪はないと思う。



ザルファー史その2のまとめ

  1. テフェリーはAR3355年頃にザルファーに帰還し、AR3360年までには内戦を平定し宮廷魔導士となった。
  2. ザルファーを離れたテフェリーは島に籠って時間魔法の研究をし、AR4000年頃に事故で島と共にフェイズアウトした。
  3. AR4195-4196年、ミラージュ戦争。
  4. テフェリーはAR4195年にドミナリアにフェイズインして、英雄たちに幻視(ビジョン)を送った。
  5. AR4205年、ザルファーをフェイズアウトさせる。

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