「オタリア・サーガ」の時系列検証、第3回目は小説Onslaughtである。
本記事では、前回に引き続いて小説Onslaughtの時系列検証を行うが、まずそれに先立って「オタリア・サーガ」という枠組みを確かめる。
また、当初は時系列検証と共に小説Onslaughtの詳しい内容を書き加えていたのだが、文章が嵩んでどうにも読みにくくなってしまった。本記事の主軸は、時系列を確かめることとして、小説の内容は分割して改めて別記事化することにした。ただし、オデッセイ・ブロックの時系列検証の前に投稿するか、その後にするかは未定。
では、「オタリア・サーガ」の時系列検証、第3回目の検証をスタートしよう。
追記(2023年3月24日):「パート5:カマールの準備」の範囲内で、季節を知る助けとなる情報を書き忘れていたと気付いたため、これを加筆した。
追記(2023年3月24日):更に小説の同じ章の時間経過を示す記述を同じ「パート5:カマールの準備」に書き加えた。この時点で「既に1年経過済み」と取れる記述で今まで真に受けないでいた内容なのだが……。
はじめに
今回の小説Onslaughtの検証が終われば、オンスロート・ブロック小説三部作の全てが完了だ。これでオタリア・サーガ後半戦であるオンスロート・ブロックのストーリーラインが埋め切れる。
と、小説の検証に入る前に、オタリア・サーガ全体の範囲を確認しておきたい。最初にやっておくべきだったが、今まで後回しにしてきてしまった。
オタリア・サーガ
「オタリア・サーガ」とは、オタリア大陸を舞台にした2つのブロック、オデッセイとオンスロートのストーリーラインのことである。
オデッセイ・ブロックは、カードセット「オデッセイ」「トーメント」「ジャッジメント」の3つから構成される。その詳細なストーリーはブロック小説三部作、小説Odyssey、小説Chainer’s Torment、小説Judgmentで語られている。
オンスロート・ブロックの方は、カードセット「オンスロート」「レギオン」「スカージ」の3つで構成され、ブロック小説三部作は小説Onslaught、小説Legions、小説Scourgeである。
オタリア・サーガの発生期間
旧公式サイトの簡易年表によると、オデッセイ・ブロックはAR4305年、オンスロート・ブロックはAR4306年と、それぞれその1年間だけが割り振られている。
この旧公式サイト簡易年表が全幅の信頼のおけるものではないことは、ファイレクシア侵略戦争期の記事で指摘済みだ。だからインベイジョン・ブロックを、簡易年表のAR4205年表記に従わず、小説ベースでAR4205-4206年に置き換えて解釈した。
オデッセイ・ブロックの小説三部作の出来事は1年間に圧縮し(そこそこ無理して)押し込めることは十分可能に思える。しかし、オンスロート・ブロックの小説の方は明らかに1年以上経過しているのは、前々回、前回の検証を見ても明らかだ。また、両ブロックのストーリーは隙間なく繋がっていることから、オデッセイ・ブロックの(少なくとも)最後は翌年AR4306年に発生していなくてはならない。
したがって、オデッセイとオンスロートの両ブロックでも、インベイジョン・ブロックと同様に処理をする。つまり、簡易年表よりも詳細なストーリーを語っているブロック小説の記述を優先して、簡易年表はブロックの始まりの年と見做すことにした。
次はオタリア・サーガはいつ終わりになるのか?を求める。
小説Scourgeの終盤において、カーンがカマールに対して「ミラーリは私の目だ。ミラーリが君と共にあったこの5年間のオタリアの惨状は見えていた。1」と明かしている。カマールがミラーリを所有したのは、オデッセイ・ブロックの最後のカードセット「ジャッジメント」からなのでAR4306年と見做すと、それから5年でAR4310年だ。2
小説Onslaughtの10パート構成
小説Onslaughtの時間の流れは、カマール主観で捉えると次のようなシンプルな構成になっている(この構成は本サイト独自の見方であり、小説の章分けとは合致しない点に注意)。
「発端」→「第1回カマール大移動」→「兄妹対決」→「第2回カマール大移動」→「カマールの準備」→「第3回カマール大移動」→「兄妹対決リベンジ」→「戦争準備」→「悪夢戦争」→「終戦」の10パート構成だ。
まず、ここに3回ある「カマール大移動」とは何かを説明しておく。
「カマール大移動」の解説
小説Onslaughtでは、カマールはオタリア大陸中央部を長距離移動する。カマールは作中でほぼ同じ経路を辿り、行って、戻って、もう1度行く、と合計3回の移動を繰り返す。
これを本記事中では「カマール大移動」と呼ぶことにする。
大移動中の時間経過
「カマールの大移動」は陸路で、北西のクローサの森の中心ゴルゴン山から、コーリアン断崖のある砂漠地帯を抜けて、南東の陰謀団の本拠地(最初はアフェットだが後に大闘技場に移る)まで、を踏破している。
オタリア大陸横断にほぼ近い長距離である。移動中にかなりの時間が経過しているはずだが、具体的にどれだけの時間がかかったかの言及はない。
この移動期間中に、他の場面の登場人物達が「色々と」行動する。そちら側から調べても、具体的な時間経過がどれだけなのかは読み取れない。
したがって、小説Onslaughtには、「カマール大移動×3」だけの時間経過が不明な長期間が存在していることになる。
全3回の大移動の差
また、3回にわたる「カマール大移動」だが全部が完全に同じではない。
2回目は1回目よりカマールは腹部に不治の傷を負った分、時間がかかっている可能性が高い。ただし、第1回目の時には同じように不治の傷を負った妹ジェスカがカマールに追いつかれずに先にアフェットまで到着し、しかもカマールが来る前に闘技場で試合までこなしている時間的余裕がある。先行出発の利点があるとしても長く見ても1週間程度であろうし、カマールは魔法的なジェスカ探知機を用意してから出発したために移動自体には時間ロスはなかったはずだ。屈強なパーディックの蛮族兄妹の移動には、不治の傷はあまり大きな影響が無いと考えた方が無難だろう。
3回目は砂漠からコーリアン断崖までクローサの森が拡張していることから前回、前々回と違って砂漠の移動はしなくて済んだか、あるいはより短距離になっていたはずだ。しかし、目的地はアフェットよりも遠いと推定される沼地の中心にある大闘技場であり、沼地は陰謀団によって橋や道路が整備されたとはいえ距離自体は増えている。その上、3回目はカマール単身ではなくクローサ軍を統率しての進軍なので、そこで差が出ている可能性もある。
小説Onslaughtの検証
カマールの行動を主軸として時系列を整理した10パート構成で、小説Onslaughtの物語の流れを見ていこう。
パート1:発端
AR4306年、小説Onslaughtの物語は小説Judgmentの直後より始まった。舞台となるのは引き続きクローサの森である。
ジェスカは兄カマールが原因で腹部に不治の傷を負っており、クローサでも治療不能であった。ジェスカは間近に迫った死に恐怖し、生き延びたいと懇願した。そこに陰謀団のブレイズ(Braids)が現れ、陰謀団ならまだ生き残るチャンスがあると示した。ジェスカはブレイズに縋り、共にクローサを発ってアフェットを目指した。
カマールが帰還すると、ジェスカが行方不明となっており、妹を預けていたシートンの遺体も発見された。カマールは再びミラーリ剣の刺さった場所に戻ったりして状況を把握。クローサの森と砂漠の境界で見つけた世紀草3の茎を一晩かけて掘り出して「世紀草の杖(Century Staff)」4に変えると、それが導くジェスカのいる方向を目指し森から旅立った。
パート2:第1回カマール大移動
最初の「カマールの大移動」だ。クローサの森から砂漠地帯を踏破して、南東の陰謀団の本拠地である都市アフェットまでの長距離を旅する。
カマールの移動中に以下のような出来事が起こった。5
ジェスカからフェイジに
ジェスカとブレイズはカマールに先んじて出発し、アフェットに到着した。
陰謀団の総帥ザ・ファーストに謁見したジェスカは、触れたいかなる生物をも死に至らしめるザ・ファーストの抱擁を受けた。不思議なことにジェスカは死なずにザ・ファーストと同等の存在に変貌した。彼女の新たな名はフェイジ(Phage)だ。フェイジは陰謀団のピット・ファイターとなった。
イクシドールとニヴィア
アフェットの闘技場では、2人組のピット・ファイターが活躍していた。男がイクシドール(Ixidor)、女がニヴィア(Nivea)で、恋人同士だ。
2人組はフェイジと対戦したが、ニヴィアはフェイジの死の接触で命を落とした。敗残者イクシドールは砂漠への追放刑に処せられた。
イクシドールの覚醒
砂漠を流浪する3日間で、イクシドールは「夢を実体化させる」という無から有を生み出すような現実改変能力に覚醒した。
砂漠の真ん中にオアシスとそこに住む生き物(食料にできるものも含む)を創造することで、生き延びることができた。
パート3:兄妹対決
カマールが陰謀団の本拠地アフェットに到着した。陰謀団のブレイズから、ジェスカはフェイジと名を変えピット・ファイターとなったと知る。妹と対面するにも、陰謀団から取り戻すにも、カマール自身が妹との賭け試合をするしか選択肢が無かった。
カマールとフェイジの兄妹対決は、妹の勝利に終わった。フェイジの死の接触によって、カマールは腹部に自分がかつて妹につけたと同等の癒えない傷を負わされた。失敗したカマールはリベンジを決意して、クローサへの帰路についた。
試合後、ザ・ファーストはフェイジとブレイズに対して、陰謀団の新規事業計画「大闘技場」を語り、その建設指揮をフェイジに任せるのであった。沼地の中心にある大きな島に大闘技場を建設し、島と島を結ぶ橋や道路を整備するのだ。ブレイズは興行を成功させるための宣伝やピット・ファイターの調達などで奔走することになった。
フェイジは以後、大闘技場建設の責任者となって現場で指揮を執る。最初にフェイジが建設予定地買収に赴く章は、「第2回カマール大移動」を終えて「カマールの準備」の途中に配置されているのだが、おそらくそれよりもっと早い時期の「第2回カマール大移動」中に起こっていたはずだ。
パート4:第2回カマール大移動
アフェットの1日の後は、再び「カマールの大移動」だ。今度はアフェットからクローサへの帰路である。
カマールの移動中に以下のような出来事が起こった。
陰謀団の総帥ザ・ファーストの追跡
ザ・ファーストはフェイジの死の接触を受けてなお健在のカマールを脅威とみなし、単身でその後を追って観察した。クローサに到着する3日前から、ザ・ファーストはカマールを3夜連続で闇に隠れて魔法で殺しにかかったが、命を奪えなかった。
カマールは邪悪な存在の追跡を察知していたが、ザ・ファーストは魔法で姿を隠匿した上で夜にのみ攻撃したので正体は気付かれていない。
ザ・ファーストは最悪の敵になると確信し、カマール殺害のためにクローサの森へと潜入した。
今回の検証で小説Onslaughtを詳細に再読したことで初めて、ザ・ファーストのカマール追跡の場面を誤認していたことに気付いた。
本作中のザ・ファーストは、自分1人でカマールの後ろをのこのこ着いて行ったのだ。フェイジとブレイズに新事業の展望を語ったのが試合当日だったので、翌日からの一切を2人に丸投げした後、ストーキングに出発したことになる。しかも、大陸を横断するほどの旅が終わる最後の3日になるまで直接攻撃はせずに、最後の3晩連続で殺害を図って失敗したのだ。
信じられなかった。この前のオデッセイ・ブロック小説三部作のザ・ファーストはこうじゃなかった。
まず自分で現場まで動くなんてありえない。陰謀団のエージェントを遣わしたり、別陣営の者を誘導して意図通りに動かしたりと、どっしり構える大物の風格だったはずなのだ。ブレイズ以外の組織と構成員はどこに消えたのか?
それに、高度な魔法テクノロジーがあったはずなのだ。要注意人物は大陸の向こうでも位置を把握できる魔法の大陸地図とか、長距離瞬間移動魔法(こちらは海の帝国側のものだが)とか。
告白すると、今まで私はオデッセイ・ブロック小説の文脈で、今作のザ・ファーストを無意識に補って読んでしまっていたのだ。ザ・ファーストはアフェットに居たままで、専門家の構成員に魔法の地図でカマールの位置を観測させており、遠からず死ぬはずだったカマールが存命のままクローサに帰り着くと報告を受けた。その時点でただならぬ脅威を覚えて瞬間移動して自ら魔法で死の力を浴びせてみた。そういう流れだったはずだと。
これは私個人の願望が入り過ぎた解釈に過ぎないと判断して、作中描写に忠実に従うことにした。チェイナーの下克上とカバル市の壊滅の一件で陰謀団組織は以前の力はもう無くなったのだろう。前作の小説Judgmentでは、アフェットの陰謀団はそこまで落ちぶれていたようには感じなかったのだが、「大闘技場」という一大新事業に物資も人員も取られてしまっていたのだろう。きっとそうに違いない。
だからって、新参幹部のフェイジに大事業を丸投げして、総帥がたった1人で敵地にのこのこ歩いて行くなよ。
パート5:カマールの準備
クローサの中心ゴルゴン山に戻ったカマールは、ゴルゴン山深部で森の声と対話したり、森の力で生き物を怪物的な変異化をさせたり、森の軍団を編成するなどして少なくとも1か月を費やした。この時、ケンタウルスのブロンという人物を魔法増幅によって巨大化させて、ストーンブラウと新たな名を授け副官とした。
ザ・ファーストはカマールを観察しつつ、ゴルゴン山にまで侵入して死の接触によって森を蝕む堕落の工作を施した。森の化身となったカマールを現時点ではまだ殺すことはできぬと悟っていた。ザ・ファーストはクローサを発ち、魔法の闇の翼で砂漠を飛び越えて沼地まで行き、平底船と船頭を探し、フェイジのいる大闘技場を目指した。
カマールは軍団を編成して準備完了し、クローサから進軍を開始した。
カマール主観の時系列のみが小説の最初から最後までの流れを推測できるストーリーラインだ。「カマール大移動」という概ね同じ移動時間3回という流れを挟むことで大体の発生時期が定められるというわけだ。他はいつ起こっていても不思議ではない。「フェイジの大闘技場建設」はまだ少々の時間経過情報があるものの、「イクシドールの国トポスの創造」の方は最初の3日間がギュッと詰まっているだけでアクローマの創造までの間はひどく曖昧だ。
小説第13章の「厄介な」時系列情報その1
「カマールの準備」期間を語った小説第13章には、2種類の「厄介な」時系列情報が見つけられる。
まず1つ目の「厄介」情報は次のようなものだ。
ゴルゴン山はミラーリ剣が刺さっているまさにその場所で、ミラーリによる異常な急速成長の影響を最も受けている。そこで、カマールが地面に落下した大枝の断面を観察する場面がある。
「大枝の心材は細くて腐っていたが、生きている外側は単一の太い年輪を成しており、1年間でこれほど成長したのだ。6」との記述がある。この枝は1年間止めること無く成長をし続けていたのだ。
素直に読むと、この時点で「ミラーリが刺さってから1年間が経過済み」になる。
ただ、そう読んでしまうと、「カマール大移動」2回でほとんど1年近く費やされたことになる。ストーリーの空白期間にそんなに時間が経過していていいのか?と私としては正直受け入れ難いのだ。
小説第13章の「厄介な」時系列情報その2
第13章のもう1つ「厄介な」時系列情報は次の通りだ。
カマールがクローサの森の声と対話をする場面がある。やり取りの中で、以下のような季節を知る助けとなる情報が得られるのだ。
カマールがクローサの森の異常な急成長7を危惧して、森自身に向けてこう言っている。「このまま成長が続けば、冬になる前に森が全滅してしまう。8」と。「冬になる前に(before winter)」という言い方なので、第13章の現時点で季節が冬の前だと分かる。
それに対する森の声の返答は「あなたは私に6か月間の余命を与えた。9」というものだ。この発言は、カマールの見立てがもし正しいとするなら「クローサの森には余命6か月間しかない」という余命宣告だと解釈できる。
ただし、この季節情報は実は余り役に立たないものかも知れない。オタリア大陸の季節の移り変わりが分からないので、冬がアルガイヴ暦の何月から始まるのか不明なのだ。これでは計算ができない。
季節情報に関して、根拠のほとんどない雑な仮説なら、私は1つだけ思いついてはいる。
MTGはアメリカのゲームであり、小説作者のJ. Robert Kingもアメリカ人だ。一般読者層と想定されているであろう北米読者は無意識に現実と同じ北米の季節感覚で読むのが自然ではないだろうか?
仮に北米と同じとするなら、春(3-5月)、夏(6-8月)、秋(9-11月)、冬(12-2月)である。前回記事の検証結果から第13章はおそらくAR4307年中の出来事になるはずだ。
したがって、第13章は「冬のおよそ7か月前」とするなら「AR4307年5月頃」、「冬の6か月前」とするなら「AR4307年6月」となるだろう。
ここに、もし前節の「1年経過済み」も加えると、小説Judgment終了時点がその1年前、「AR4306年5月頃」あるいは「AR4306年6月」となる。
以上は雑な仮説なので、一応こんな考え方もできるんじゃないか、くらいでここに置いておく。
パート6:第3回カマール大移動
三度の「カマールの大移動」だ。
今度はカマールは軍団を引き連れている。旅の到着地点はアフェットではなく大闘技場となる。
大闘技場オープン
陰謀団の新たなる中心地「大闘技場」が建設完了し、いよいよお披露目の興行が開催された。
ザ・ファーストは遺恨試合が起こるとフェイジに告げた。カマールがやって来て、1か月後に兄妹対決になると。
アクローマ創造
イクシドールは夢を見ていた。陰謀団のフェイジに襲われ片腕を失ったところを、恋人ニヴィアそっくりの天使に助けられて目覚めた。
そこには、夢で見た通りの天使がおり、イクシドールの右腕は無くなっていた。天使はニヴィアその人ではなく、イクシドールの創造物であるアクローマであった。創造主イクシドールよりフェイジ殺害の使命を授かり、アクローマは大闘技場へと空を翔けた。
パート7:兄妹対決リベンジ
カマールが大闘技場でフェイジと再戦。軍団を連れてきたもののクローサ側の方が数的に劣勢であり、結局は1対1の兄妹対決で決着をつけることになった。
しかし、対戦中にアクローマが乱入しフェイジを攻撃。フェイジはアクローマに反撃し、妹を守るためにカマールも協力。アクローマを撃退した。
パート8:戦争準備
フェイジの命を狙うアクローマとイクシドールの脅威を排除するため、カマールと陰謀団の総帥ザ・ファーストは同盟を組む。同盟軍の準備期間で1か月経過。
トポスでもアクローマの帰還から1か月の間、イクシドールが迎え撃つ軍団を準備していた。
大闘技場から同盟軍がイクシドールの国トポスに向けて出陣した。
したがって、AR4307年10月に大闘技場がオープンし、同年11月に兄妹対決リベンジ戦がありそれから1か月の準備を経て、同年12月に同盟軍の出陣となる。
パート9:悪夢戦争
トポスで悪夢戦争。
全軍激突の戦いは1日で終わっているように思える。しかし、時間経過が書かれていないだけで、実際は何日にも及ぶ大戦闘だったという可能性もなくはない。
パート10:終戦
戦後間もない状況が短く語られて終幕となる。小説Legionsの冒頭はそれより少し時間が巻き戻った終戦間際の場面となっている。
小説Onslaughtの検証まとめと課題
小説Onslaughtは以上のような10パート構成で進行する物語である。
↓
カマール出発までの短い期間。
↓
「カマールの大移動」
↓
アフェットでの兄妹対決の1日。
↓
「カマールの大移動」
↓
1か月のカマールの準備。(雑な仮説:AR4307年5-6月頃?)
↓
「カマールの大移動」(途中、AR4307年10月に大闘技場オープン。)
↓
AR4307年11月にカマールとフェイジのリベンジ戦がありそれから1か月間の同盟軍の準備期間。
↓
AR4307年12月に出陣。
↓
AR4308年1月にトポス付近にて悪夢戦争が起こり、終戦となってこの小説は終わる。
つまり、AR4306年のいつかからAR4307年10月までの期間が定まっていない。「カマールの大移動」2回分と残りの1回の間に挟まれた「1か月間」だけが具体的な時間経過の分かる期間だ。
次の課題
このあやふやさは、オンスロート・ブロックの始まりが「AR4306年の何月か」を求められれば解決できるだろう。
それでAR4307年10月までの長さが分かり、そこから1か月減算して3等分すると「カマールの大移動」1回分の時間が概算できるからだ。ジェスカのフェイジへの再誕、そしてニヴィアの死とイクシドールの追放は、初めの「カマールの大移動」の期間のお終いの月での出来事のはずだし、その他諸々も今よりもだいぶ具体的な発生時期が推定できるだろう。
現時点では「オンスロート・ブロックの始まり」が何月になるかは分からないけれど、オタリア・サーガ前半戦であるオデッセイ・ブロックの時系列、AR4305年からAR4306年を埋めることで導き出せると期待したい。
以上、今回はここまで。
オンスロートの検証の関連記事
- 原文「The Mirari is my eye. I’ve seen through it and been with you through these five terrible years.」
- ここで、ミラーリの所有年をAR4305年スタートと置いて、AR4309年までの5年間と仮定することも可能だ。ただ、それでは期間が短すぎて破綻してしまうのを、私は今シリーズの詳細な検証を開始する前に察していた。なにせ20年前の作品群であり、何度も時系列解釈に挑戦して上手くいかなかったから。
- 原文「century plant」で、100年ごとに1度だけ咲き誇る、砂漠のリュウゼツラン(agave)の1種。
- 当時の日本の雑誌連載記事「ドミニア年代記 第39回オンスロート:悪夢の王国」において、「千年樹の杖」と滅茶苦茶な名称に改変されている。「century」なので決して「千年」を意味するわけではないし、リュウゼツランの仲間なので「草」であって「樹」ではないのだ。
- ちなみに、カマール自身は移動についてはほんの少しあるだけだ。「his march across the desert」とか「his long trek across the desert」とか。
- 原文「The heartwood of the bough was slender and rotten, but the quick was a single thick ring–all that growth in one year.」
- 作中では「森の癌化」とも
- 原文「If this growth continues, the whole forest will be destroyed before winter.」
- 原文「You have given me six months to live.」