愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザット(Tevesh Szat, Doom of Fools)はドミナリア次元のプレインズウォーカーの男性である。カードセット「統率者レジェンズ」で初のカード化となった。
前回までに概説、伝説時代の誕生から暗黒時代のサーペイディア諸帝国の崩落までを取り上げた。今回はドミナリア氷河期のテヴェシュ・ザットを解説する。
テヴェシュ・ザットの氷河期の解説
愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザット(Tevesh Szat, Doom of Fools)はドミナリア次元のプレインズウォーカーの男性である。
テヴェシュ・ザットはドミナリアの全生命の根絶を決意している。氷河期を永続させるために魔法をかけ、生存者たちを自滅の道へと誘っていく。行く手を阻むは森の女神フレイアリーズ(Freyalise)らのプレインズウォーカーだ。果たしてテヴェシュ・ザットは死の『静寂(Silence)』が包む世界を達成できるのか?
今回は氷河期において悪魔王(Demonlord)とも評された巨悪テヴェシュ・ザットの真実の姿を各種登場作品・公式記事を調査して解明を試みた。
記事の大まかな構成は順番に、氷河期のストーリー概要、テヴェシュ・ザットの魔法、行動原理、味方たち、敵たち、おまけの赤いテヴェシュ・ザットとなっている。
テヴェシュ・ザットの氷河期のストーリー概要
本記事では氷河期中のテヴェシュ・ザットのみを扱っている。氷河期のストーリーとテヴェシュ・ザットを取り巻く背景についてまとめると、以下のような概要となっている。
AR170年頃、妹ティモリン(Tymolin)の死をきっかけに狂気に堕ちて怪物化したテヴ・ローングレイド(Tev Loneglade)は愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザットを名乗り、サーペイディア諸帝国に干渉して崩落を加速させた。テヴェシュ・ザットは世界を死の『静寂(Silence)』に包むためにドミナリアの全生命の根絶を決意していた。
ドミナリアは暗黒時代から次元のほとんどが氷に覆われた氷河期に変遷する。AR600年頃にはドミナリアを含む近隣11次元は多元宇宙から隔離された「シャード(The Shard)」になった。テヴェシュ・ザットはシャードに閉じ込められてしまった。
二千年以上の長期にわたる氷河期、テヴェシュ・ザットは冬を永続させるために魔法を駆使するかたわらで、過酷な時代で生存する人々を操って自滅するように働きかけていた。氷河期最後の年(AR2934年)には、ドミナリアを完全に氷漬けにして氷河期を永遠のものとする『大呪文(Mega-spell)』を行使するまでに至ることになる。
テヴェシュ・ザットと同様に「シャードの12次元」に閉じ込められてしまったプレインズウォーカーは他にもいた。その中には同盟者レシュラック(Leshrac)や、対立関係に位置するテイジーア(Taysir)とクリスティナ(Kristina)のコンビも含まれていた。
AR25世紀頃、テヴェシュ・ザットはテリシア大陸の都市国家ストーガード氷河王国を崩壊へと導いていた。ストーガードは目論見通りに廃墟となるのだが、王国最後の宮廷魔導士フレイアリーズ(Freyalise)がプレインズウォーカーの力に覚醒した。後にフレイアリーズは森を守護する女神として崇拝され、テヴェシュ・ザットの氷河期で最大の宿敵となって立ちはだかることになった。
AR2934年、プレインズウォーカーのファラリン(Faralyn)が「虚月の頂上会談」を開催する。テヴェシュ・ザットやレシュラック、テイジーア、クリスティナ、そしてフレイアリーズが一堂に会して、氷河期とシャードの現状と対策を話し合った。敵対者同士の会談が平和的に進行するはずもなく……すぐに戦場と化し、ファラリンに仕えるラヴィデル(Ravidel)とエルダー・ドラゴンのルエル(Rhuell)が命を落としてしまう。だが、誰か強力な存在が死ぬのは開催者ファラリンが望んでいたことで、ファラリンは死んだ従者の生命エネルギーを利用してシャードに穴を開けると、シャンダラー次元への脱出に成功するのだった。
レシュラックはファラリンに便乗してシャンダラーに旅立つことにしたが、テヴェシュ・ザットはドミナリアを『大呪文』で死滅させた後にシャンダラーに向かうことに決めた。一方、宿敵フレイアリーズは頂上会談でテヴェシュ・ザットに完敗したものの、すぐに氷河期を終了させる別の『大呪文』を用意し始める。
こうして、氷河期最後の日はテヴェシュ・ザットの死の『大呪文』とフレイアリーズの生の『大呪文』のどちらが先に完遂されるかの最終決戦となったのだ。
テヴェシュ・ザットの氷河期の魔法
氷河期のテヴェシュ・ザットは基本設定通りに黒主体の魔法を使っている。元々カードセット「アイスエイジ」初出なだけあって、作中使用の魔法はアイスエイジのカードが中心である。この時期の作品は黒に劣らず青の魔法も使用描写が多いのが特徴だ。
該当するカードは色ごとに分けると以下の通り(コミックでの登場順)。
コミック版フォールン・エンパイアで攻撃魔法として振るっていた火の玉(Fireball)はこのシリーズ中では使用していない。他の赤魔法も利用していない。赤の要素が部分的にでも含まれる魔法は霊魂焼却(Soul Burn)だけである。
上記に加えてもう1つ、例外的に緑のハリケーン(Hurricane)をかけている描写が確認できる。作中と巻末解説でもハリケーンだと明記してあるが、物語中での描写はハリケーンのカードとは全く似ていない。魔法の風でフレイアリーズとジェイソン・カルサリオンを空中に舞い上がらせて対決場所を移動させるためだけに使われているのだ。
テヴェシュ・ザットの下僕
“A minion given over to Tevesh Szat is a stronger minion gained.”
–Lim-Dûl, the Necromancer
「テヴェシュ・ザットに授かった下僕がいればより強力な下僕が得られる。」
–屍術師、リム=ドゥール
引用:Minion of Tevesh Szatのフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳
「Minion of Tevesh Szat」つまり「テヴェシュ・ザットの下僕」は名前の通り下僕のデーモンだ。
MTG史上初のテヴェシュ・ザットに言及するカードである。……というか、カードセット「アイスエイジ」時点でこれ以外にテヴェシュ・ザットに言及するカードはない(カード名にもフレイバー・テキストにもこれが唯一で、他には存在しない)。
当時たった1つだけのテヴェシュ・ザット関連カードであったにもかかわらず、この下僕デーモンはコミックや小説作中に一度も出てきたことがない。
レシュラックの下僕である「Minion of Leshrac」の方は小説2作品(小説The Eternal Iceと小説Future Sight)で登場しているのに比べて、かなり不憫なカードである。
テヴェシュ・ザットの氷河期の行動原理
氷河期中のテヴェシュ・ザットはコミック版アイスエイジ全4話で語られているが、これでは情報が足りていない。コミックがカバーしている範囲はAR25世紀頃のストーガード王国、そして氷河期末期の数年間に過ぎない。それを除けば、氷河期の二千数百年間の行動に関して作中に詳しい言及は見つからないのだ。
そこでアルマダ・コミック系の他の公式ソースを調査したところ、PCゲームのBattlemageとその背景解説文The Story of the Battlemage Ravidel1に短いながらも回答を見つけられた(この2つには他にも有用な情報がある)。
Tev Loneglade, now called Tevesh Szat, continued his quest to exterminate all life on Dominaria. He used his magic to perpetuate the endless winter, and tried manipulating the surviving populace into destroying itself.
テヴ・ローングレイドは今はテヴェシュ・ザットと呼ばれ、ドミナリアの全生命の根絶を目指した探求を続けた。終わりなき冬を永続化させるために魔法を使う一方で、生存者たちを操って自滅へと導いた。
引用:The Story of the Battlemage Ravidel
上が英語原文。下が私家訳
氷河期のテヴェシュ・ザットはドミナリア次元の全生命の根絶を目的として行動している。世界を死の『静寂(Silence)』に包むという氷河期以前と変わらぬ決意であると確認できた。そのための手段が「冬の永続化魔法」と「自滅への導き」である。
冬の永続化魔法
では、「冬の永続化魔法」とはどういったものか、MTGのカード的に説明はできるものだろうか?
コミック版アイスエイジvol.4の巻末解説を参照すると、この氷山(Iceberg)の持つフレイバーが見事に合致することに気付かされる。
このエンチャント・カードはマナを氷カウンターの形に変えて溜めるメカニズムがある。唱えるときに払ったXマナ分の氷カウンターが乗り、戦場に出た後でも3点のマナにつき1個の氷カウンターが追加できる。
つまり、マナを払うほどにドミナリアを覆う氷河が成長し、氷河期が続いていくという解釈になるのだ。ちなみに、このカードには氷カウンターを取り除いて1個につき無色1マナを引き出す機能もあるが、テヴェシュ・ザットは初めから氷河の融解なんてするつもりがないため考慮しなくてよい。
コミック版アイスエイジvol.4のストーリーでは、テヴェシュ・ザットは氷河期最後の日にこの氷山カードに他のカードも組み合わせた『大呪文(Mega-spell)』を完成させようと計画する(宿敵フレイアリーズが同時進行で実行していた別の大呪文・『世界呪文(Worldspell)』に一歩先んじられ、氷河期を終わらされてしまうが…)。
複数の呪文の組み合わせで『大呪文』を成すという着想は虚月の頂上会談に参加するまでテヴェシュ・ザットには(フレイアリーズにも)無かったものなので、それまでの2000年以上は氷山カードを単体で使っていたとゲーム的な解釈ができるだろう。
自滅への導き
氷河期のテヴェシュ・ザットは生存者たちを操って自滅へと導いていた。友好的な態度を装って近づき、悪意を忍ばせた言葉を囁きかけ、被害妄想を煽って無分別な行動へと駆り立てる。これはテヴェシュ・ザットの得意な手法の1つだ。
二つ名として「Doom of Fools」すなわち「愚者たちの破滅」を名乗っているように、テヴェシュ・ザットは愚者が愚者自身の行いで破滅するように仕向ける。登場作品では魔力や暴力で直接殺傷する手段をまず最初に選択はしない傾向が見える。犠牲者の心を堕落させるデーモンタイプの悪役であると言えよう。
「Doom of Fools」は公式和訳では「愚者滅ぼし」となっており、能動的に「滅ぼす者」と解釈している。私としてはちょっと行き過ぎた翻訳に感じる。あくまでもテヴェシュ・ザットは自身のことを「破滅」そのものと標榜し、そのように生きてきたからだ。「Doom of Fools」とは「愚者にやがて訪れる(待ち受ける)破滅の宿命」を意味していたのではなかったろうか。
理想の最終形
“At last, silence.”
–Tevesh Szat
「やっと静かになった。」
–テヴェシュ・ザット
引用:真冬(Dead of Winter)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
真冬(Dead of Winter)は2019年発売のカードセット「モダンホライゾン」に収録されたかなり新しいカードだが、これがテヴェシュ・ザットの最終理想形であったと言える。
フレイバー・テキストの英語原文は「At last, silence.」すなわち、遂に望んだ『静寂』が訪れた、とテヴェシュ・ザットが語っているのだ。
このカードはメカニズム的には、自分の氷雪パーマネントの数だけ氷雪でないクリーチャー全てにマイナス修正を与える全体除去呪文だ。戦場に並べられた氷雪パーマネントはドミナリアが氷河に覆われる様を想起させるものだし、クリーチャーが一掃された戦場は永遠の冬が支配する死の『静寂』世界のようだ。
終わりなき氷河期、乱されることのない『静寂』に包まれた死の世界はここにある。
氷河期の味方
氷河期にテヴェシュ・ザットの味方となった有力者が2人知られている。プレインズウォーカーのレシュラックと屍術師リム=ドゥールである。
夜歩みし者、レシュラック
夜歩みし者、レシュラック(Leshrac, Walker of Night)はテヴェシュ・ザットと同盟を組んだプレインズウォーカーである。各登場作品や解説で「狂人(Mad)」と形容されることが非常に多く、邪悪で危険な人物と認知されている。
レシュラックは黒の魔法を操ることに長けている(関連カードも下僕のリム=ドゥールも黒に属する)。その実力も確かなもので、AR29世紀頃のクリスティナとの戦いでは、エルダー・ドラゴンのアルカデス・サボス(Arcades Sabboth)を強制召喚して使役できたほどである(この戦いでアルカデス・サボスはクリスティナに滅ぼされた)。
テヴェシュ・ザットとの関係は数千年にわたる長いものだ。これはコミック版シャンダラーvol.2での発言が出典であり、AR2934年時点で最低でも2000年の付き合いがあることになるから、2934-2000=934と計算して、AR10世紀かそれ以前にまで遡る関係と推測できる。
シャードに閉じ込められた期間にレシュラックは氷河期の秘密を解明し、ドミナリアを征服しようと試みた(コミック版アイスエイジvol.2巻末解説)。ただし、レシュラックは盟友テヴェシュ・ザットと違って寒冷化を作り出す方法には関わったことはない(小説Future Sight2)。
氷河期末期には屍術師リム=ドゥールの後援者として力を与えてアンデッドの軍団を生み出させた。そしてシャードからの脱出法を探索する中でAR2934年に自由浮遊次元シャンダラーの接近を知った。この時点ではドミナリアの覇権は気にしておらず、シャードの束縛からの解放とマナの潤沢なシャンダラーに興味が移っていた。最終的にドミナリアの離脱に成功し、リム=ドゥールとテヴェシュ・ザットを連れてシャンダラーに侵攻したのだった。
レシュラックはテヴェシュ・ザットに比べてカードでの露出が多く、コミック版アイスエイジや小説The Eternal Iceにも登場していたが、それらは全て氷河期末期のリム=ドゥールとシャンダラーに関する事柄に限定される。つまり、そこを除くとレシュラックは氷河期に具体的に何をやっていたかほとんど分からないキャラクターである。テヴェシュ・ザットといつどのように出会って協力関係を結んだのか、誕生はいつの時代か、あるいは出身がドミナリアなのかも不明瞭である。
屍術師リム=ドゥール
屍術師リム=ドゥール(Lim-Dûl the Necromancer)は氷河期末期のテリシア大陸をアンデッドの大軍団で脅かした大屍術師である。人間男性。リム=ドゥールは元々はキイェルドー国の兵士だったが、暗黒時代の遺物である指輪を手に入れたことで大魔術師メアシル(Mairsil)の精神と力をその身に宿すことになった。
リム=ドゥールはテヴェシュ・ザットとレシュラックを主人として戴いているものの、主人との関係性はレシュラックの方が遥かに密接である。レシュラックは精神的・肉体的になぶりながらも力を与えており、さらにリム=ドゥールの姿を2本の大鹿の角を持つ怪物的巨人へと徐々に変身させた。上記の怪物化したイラストはコミックのものだが正史の小説The Eternal Iceでも同様の姿に変身する。
氷河期の敵
氷河期にはテヴェシュ・ザットと同じようにシャードに閉じ込められたプレインズウォーカーが他にもいた。もちろんその中には、レシュラックのような仲間だけでなく、敵対する者たちも含まれていた。
テイジーアとクリスティナ
During their many years trapped together, Taysir and Kristina explored all twelve of the Shard’s planes. They searched for clues as to how to break the Shard, and became involved in the affairs of the various civilizations struggling for survival. Both Taysir and Kristina became great heroes to many, and he couldn’t help but fall ever more deeply in love with her.
何年も一緒に閉じ込められていた間、テイジーアとクリスティナはシャードの全12次元を探検した。シャード破壊方法の手がかりを探すかたわら、生き残りをかけて苦闘する様々な文明の問題に関わった。両名は多くの人にとって偉大な英雄となった。そしてテイジーアはクリスティナをより深く愛さずにはいられなかった。
引用:The Story of the Battlemage Ravidel
上が英語原文。下が私家訳
テイジーアとクリスティナは人間プレインズウォーカーのコンビだ。
テイジーア(Taysir)3はラバイア次元出身の5色の魔法を操つる男性で学者でもある。森のクリスティナ(Kristina of the Woods)はドミナリア次元コロンドール大陸出身で自然や大地の力を振える聡明な女性である。どちらも強大な力を秘めている。
テイジーアはシャードが完成される前にドミナリアに来訪し兄弟戦争などの調査研究をしていたところ、コロンドールでクリスティナと出会って恋に落ちた。シャードに閉じ込められた2人は協力してシャードを破壊する方法を求めるとともに、12次元で苦闘する多くの人々を手助けすることで英雄となった。
人々を救済するこの英雄コンビはテヴェシュ・ザットとは対立する真逆の存在なのだ。
当時のテイジーアは最強のプレインズウォーカーの1人と称されていたし、クリスティナはそのテイジーアをして瞠目する強大な能力を示していた。上述の通り、クリスティナはレシュラックとの戦いで召喚されたエルダー・ドラゴンのアルカデス・サボス(Arcades Sabboth)を滅ぼすほどの力を持っている。
最強だ強大だと語られる一方で、両者ともコミック作中での戦闘描写は多くはなかった。だが、それが逆に2人の実力にケチが付く隙が無かった理由だとも言える。
ちなみに、どちらも最期は味方側からの予想外の裏切り即死攻撃による瞬殺だ。強者設定の古参キャラを扱いあぐねた処置にも見える…。
フレイアリーズ
フレイアリーズ(Freyalise)はドミナリア出身でエルフと人間の混血の女性プレインズウォーカーである。
AR25世紀頃、フレイアリーズはストーガード王国の最後の宮廷魔導士であった。ストーガードの破滅を目論むテヴェシュ・ザットは、国の命運をかけたフレイアリーズとジェイソン・カルサリオンの決闘に干渉を行った。フレイアリーズは決闘において命を落としたかに見えたが、その際にプレインズウォーカーの灯が点火して力に覚醒した。この経緯からテヴェシュ・ザットとは宿敵同士となった。
プレインズウォーカーとなったフレイアリーズはフィンドホーンやラノワールのエルフを守護したことで女神と崇拝されることになる。
フレイアリーズはAR2934年にテヴェシュ・ザットと戦って敗北し、正面からの直接対決では敵わないと悟った。そのためか、フレイアリーズは最終決戦では搦め手で攻めている。テヴェシュ・ザットの『大呪文』をジェウール・カルサリオンを差し向けて妨害しつつ、最終的には『世界呪文(Worldspell)』を完遂させて氷河期を終結させる。こうして先に大目的を達成したフレイアリーズはテヴェシュ・ザットから戦略的勝利をもぎ取ったのだ。
カルサリオン家
カルサリオン家(Carthalions)はドミナリア次元で最も古い一族とも言われる。氷河期のテリシア大陸ではジェイソン・カルサリオンとジェウール・カルサリオンがテヴェシュ・ザットとフレイアリーズに関わりを持つことになった。
ジェイソン・カルサリオン
ジェイソン・カルサリオン(Jason Carthalion)はAR25世紀頃のストーガード王国の人間男性。フレイアリーズの幼馴染で親しい友人だが、2人は政治的に対立する派閥の代表者として決闘することになる。テヴェシュ・ザットはその決闘の陰から干渉して、ジェイソンに悪魔の囁きで堕落を誘ったがジェイソンは最後には跳ねのけた。
ジェウール・カルサリオン
ジェウール・カルサリオン(Jaeuhl Carthalion)は氷河期末期の若きキイェルドー騎士の人間男性である。AR2934年、フレイアリーズはテヴェシュ・ザットの『大呪文』完成を阻み、自分の『世界呪文』を完遂するためにカルサリオンの末裔ジェウールを刺客として差し向けた。ジェウールの行動によりテヴェシュ・ザットは敗北を喫してしまう。
カルサリオンの末裔
さらに氷河期終焉後1000年以上が経過してもカルサリオン家との因縁は切れることが無く。AR4196年のプレインズウォーカー戦争では、ジャレッド・カルサリオン(Jared Carthalion)がテヴェシュ・ザットの前に立ちはだかることになる。
おまけ:赤いテヴェシュ・ザット
では「赤いテヴェシュ・ザット」の雑談で記事をおしまいにしたい。
カードセット「統率者レジェンズ」でカード化されたテヴェシュ・ザットには、特別版イラストのバージョンが存在している。
このイラストでは、テヴェシュ・ザットは手から赤い電光を放っていて背後の建造物が破壊されている。注目してほしいのテヴェシュ・ザット本人の色だ。電光の照り返しによって、本来は青黒い身体が赤く色づいているのが分かるだろう。
私はこのイラストを見たときにピンときた。このイラストもアルマダ・コミックのオマージュであるかもしれない、と。
では、次のイラストを見てもらいたい。
赤いテヴェシュ・ザットは過去にも存在していた。
このイラストはコミック版アイスエイジvol.4の表紙に使われたものだ。表紙にはタイトル文字が入っているのだが、こちらはvol.3巻末で次号予告として掲載された文字無しバージョンの方だ。ジェウール・カルサリオンに圧し掛かる巨大なテヴェシュ・ザットのイメージである。
アルマダ・コミックにおいてテヴェシュ・ザットの体色は青または青黒で一貫している。ところが、この表紙イラストだけは何故か赤いテヴェシュ・ザットが描かれていた。
アルマダ・コミックの表紙はどの本でも本編とは大なり小なり差異があるもの(作中に居ない謎のキャラが描かれることもある)……なので、これくらいはスルー案件であった。表紙だから目立つ赤に塗ったんだろうなぁ、くらいのものだ。
意外にもコミックから25年も経ってから、この特別版イラスト・カードの登場である。「赤い体色は実は魔法の電光が反射しているんですよ」と公式解釈が返って来たように感じてならなかった。後付けなのは重々承知で、私はこの解釈を喜んで受け入れよう。
では、今回はここまで。
テヴェシュ・ザットの関連記事
- 当時のBattlemageの公式サイトと公式攻略本Official Strategy Guideに掲載されたテキストだが、両者には微妙に差異が認められる。ありがたいことに、ここで引用した範囲内に問題となる内容の違いはない
- 「the cold was a familiar thing, even comfortable, though Leshrac had no hand in creating it.」との記述。人工の冬に関して、寒冷には慣れ親しみ心地良さすら覚えるが、それを作り出すのに手を貸したことはなかった、との旨
- 基本セット第5版のフレイバー・テキストで「テイジーア」、過去の雑誌記事では「テイザー」と表記されていた。公式の発音ガイドは「TAY-seer」なので、本サイトでは正確な表記を採用する