陽景(ようけい)・嵐景(らんけい)・夜景(やけい)・雷景(らいけい)・荊景(けいけい)は、インベイジョン・ブロックの5つの魔術師ギルドである。カードセット「インベイジョン」が初出で、続くカードセット「プレーンシフト」にも関連カードが収録された。
前回は同じインベイジョン・ブロックのカードセット「アポカリプス」の秘密ギルドとボルバー記事を再編集したので、今回は同時代の5つの魔術師ギルドを取り上げることにした。
陽景・嵐景・夜景・雷景・荊景の解説
陽景(ようけい)・嵐景(らんけい)・夜景(やけい)・雷景(らいけい)・荊景(けいけい)は、ドミナリア次元の5つの魔術師ギルドである。それぞれ白・青・黒・赤・緑に属するものの、友好色2色に紐づけられた能力が持たされており、実質的に3色の性質を有している。
AR4205年に起こったファイレクシア侵略戦争に際して、5つのギルドはドミナリア連合に参加して侵略軍に対抗した記録が残されている。
カードセット「インベイジョン」で2種類、カードセット「プレーンシフト」で2種類の合計4種類の関連カードが存在している。
また、各ギルドの「Master」と「Apprentice」は「師匠」と「弟子」と訳されており、教える者と教わる者の師弟関係が訳語内に含意されてしまっている。「学院」解釈のバイアスがかかっていると考えられるため、本サイトではより広い意味合いの「達人」と「見習い」に置き換えて表記している。
5つのギルドのストーリーや背景設定
5つのギルドに関するストーリーや背景設定は情報が見つからない。
カードセット「インベイジョン」と「プレーンシフト」の関連カードおよび当時の公式発行物Planeshift: Player’s Guideの記述を見るに、明白な事実は以下の2つだけだ。
- 5つの魔術師のギルドである。
- ファイレクシア侵略戦争でドミナリア連合に参加した。
以上2つを除くと、どのギルドもその起源や設立時期、拠点の所在地など全く不明なのだ。インベイジョン・ブロック小説三部作をはじめとするストーリー作品にも言及はない。
5つのギルドの起源
そんな中で、侵略戦争勃発後に新たに登場したと思わせるような関連カード1が散見されるため、侵略戦争時に急造された対ファイレクシア戦力に過ぎない、との見方もある。
ところが一方では、たった2年程度の侵略戦争期間に収まり切れない歴史を見せている。各ギルドには修練する「見習い魔術師」と、見習いを終えた「達人魔道士」という階級がある。特に嵐景ギルドでは、使い魔のフクロウを手ずから育て上げることが達人昇格の条件とある。このような伝統が戦争勃発後数か月程度で築かれるはずもなく、魔術師の戦時同盟的な急造組織には到底思えない。
見習いと達人
カードセット「インベイジョン」には、5つのギルドの構成員である魔術師がコモンとレアで1種類ずつ収録されている。
「弟子」と訳されたコモンの「Apprentice」の方が「見習い魔術師」を表しており、「師匠」と訳されたレアの「Master」は「達人魔術師」である。2
これら魔術師カードは、友好色2色に対応した2種類の起動型能力を持っている。カードの開発史的には、カードセット「ミラージュ」のギルド魔道士の直系に当たるカード群である。ただし、メカニズムが同種というだけで、「ミラージュ」のギルド魔道士との設定的な繋がりを示す公式情報はない。
使い魔
5つの魔術師ギルドの使い魔はカードセット「プレーンシフト」で収録されている。友好色のカードを唱えるコストを軽減するメリットを有している。
Planeshift: Player’s Guideの解説によれば、5つのギルドの魔術師はしばしば使い魔に助けられて戦う。使い魔の中には奇妙な物理的な形態3を有する者もいるが、真の力は形態ではなく、その内に宿るスピリット4にこそある。とのことだ。
奇妙な物理的な形態とは、陽景ギルドの使い魔が城壁の姿をしているといったことだ。その他の使い魔カードは、フクロウ、戦闘魔導士のゾンビ、カヴー、巨大スカラベである。荊景の使い魔のフレイバー・テキストによれば、カード化された使い魔の他にも違った形態の使い魔が存在しているようだ。
そして、使い魔の力は形態よりも内に宿るスピリットの方が重要である。
フレイバー・テキストによれば、陽景の使い魔と夜景の使い魔は斃れた戦闘魔導士のスピリットが宿っている。戦闘魔導士は侵略戦争中に登場した新たな魔術師との解説が見られる(次節参照)。とはいえ、それ以前にも両ギルドには使い魔がいたはずだろうから、そのスピリットは戦闘魔導士とは別の由来を持っていたのだろう。
戦闘魔導士
5つの魔術師ギルドの戦闘魔導士はカードセット「プレーンシフト」で収録されている。友好色2色に応じた2種類のキッカー能力を持たされている。
Planeshift: Player’s Guideでは、ファイレクシア侵略戦争中に新たに誕生した「戦う魔術師(combat Wizard)」との旨で説明されている。
ただし、この解説文は新規カードの紹介という性格が強いため、カードセット「プレーンシフト」で新登場したカード、という以上の意味はないのかもしれない。
ちなみに「プレーンシフト」以前(5年ほど前)のMTGにおいて、「戦闘魔導士」こと「Battlemage」はアルマダ・コミックの悪役プレインズウォーカー、ラヴィデル(Ravidel)の二つ名として既出ではあった。同名の「Battlemage」というビデオゲーム(ラヴィデルが悪の黒幕)も発売されていた。
とはいえ、名称が同じなだけで、ラヴィデルと戦闘魔導士カードには関係はないだろう。
まずは白の陽景ギルドから始める。
白:陽景ギルド
陽景(ようけい:Sunscape)は、カードセット「インベイジョン」と「プレーンシフト」に登場した、白の魔術師ギルドである。
ギルド名は「Sun(太陽)」+「Scape(景色)」。
陽景ギルドの見習い
陽景学院の弟子(Sunscape Apprentice)はカードセット「インベイジョン」収録のコモンのクリーチャー・カードである。
このカードは、陽景ギルドの見習い魔術師を表している。
イラストでは、人間女性の見習い魔術師が右手から何かの魔法を放っている。彼女の背中には、白鳥と思われる大型の鳥が両翼を広げてとまっている。空にはドミナリアの2つの月が昇り、画面左下には遠方の旗や軍が小さく描かれている。
陽景ギルドの達人
陽景学院の師匠(Sunscape Master)はカードセット「インベイジョン」収録のレアのクリーチャー・カードである。
このカードは、陽景ギルドの達人魔術師を表している。
イラストでは、人間男性の魔術師が2人の上半身裸の人物に魔法をかけており、右側の人物は凍らされ、左の人物の身体の一部は樹木のように変化している。間違いなくカードのメカニズムに応じた描写で、前者は青、後者が緑の起動型能力を表現している。
陽景ギルドの使い魔
The spirits of fallen battlemages can serve their guilds as familiars by joining with any physical form.
倒れた戦闘魔道士は、その霊魂をあらゆる物体と融合させることによって、死後も使い魔としてギルドに奉仕できる。
引用:陽景学院の使い魔(Sunscape Familiar)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
陽景学院の使い魔(Sunscape Familiar)はカードセット「プレーンシフト」収録のコモンのクリーチャー・カードである。
このカードは、陽景ギルドの使い魔を表している。
イラストに描かれた使い魔の姿は、白い石造の城壁である。フレイバー・テキストによれば、斃れた5陽景ギルドの戦闘魔導士の霊魂(スピリット)がこの城壁と結合して、使い魔としてギルドに仕え続けているとのことだ。
また、イラストには紫地に、黄色の太陽のような文様の旗が掲げられている。白マナ・シンボルをアレンジしたデザインにも見えるし、あるいは、これが陽景ギルドの紋なのかもしれない。
陽景ギルドの戦闘魔導士
陽景学院の戦闘魔道士(Sunscape Battlemage)はカードセット「プレーンシフト」収録のアンコモンのクリーチャー・カードである。
このカードは、陽景ギルドの戦闘魔導士を表している。
武器と鎧で武装し、騎馬した人間魔術師(女性か?)だ。剣を右手で振り上げ、左で手綱を捌き、赤い胴着の上に鎧と白いマントを装備している。胸当てには、ドミナリア連合のシンボルの一部がデザインされていて、右胸に緑、左胸に青のシンボルが確認できる。剣の他にも鞍の後ろに弓と矢、そして戦闘魔導士の腰にはスクロール・ケース3つがあり、魔法の巻物が入っているのだろう。騎馬突撃をかけている敵はもちろん右下のファイレクシアンだ。
青:嵐景ギルド
嵐景(らんけい:Sunscape)は、カードセット「インベイジョン」と「プレーンシフト」に登場した、青の魔術師ギルドである。
ギルド名は「Storm(嵐)」+「Scape(景色)」。
嵐景ギルドの見習い
嵐景学院の弟子(Stormscape Apprentice)はカードセット「インベイジョン」収録のコモンのクリーチャー・カードである。
このカードは、嵐景ギルドの見習い魔術師を表している。
イラストを見ると、人間男性の魔術師が魔法を行使している。周囲に描かれた槍兵のシルエットはドミナリア連合軍であろう。つまり、ここはファイレクシア侵略戦争の戦場なのだ。
嵐景ギルドの達人
嵐景学院の師匠(Stormscape Master)はカードセット「インベイジョン」収録のレアのクリーチャー・カードである。
このカードは、嵐景ギルドの達人魔術師を表している。
イラストには、人間女性の達人魔術師が両手からそれぞれ魔法を放っている姿があり、背後にはいくつもの軍旗が林立している。
嵐景ギルドの使い魔
Each Stormscape apprentice must hand-raise and train an owl before attaining the rank of master.
嵐景学院の弟子は師匠の資格を得るには、それぞれフクロウを一羽育て上げ、調教しなければならない。
引用:嵐景学院の使い魔(Stormscape Familiar)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
嵐景学院の使い魔(Stormscape Familiar)はカードセット「プレーンシフト」収録のコモンのクリーチャー・カードである。
このカードは、嵐景ギルドの使い魔を表している。
嵐景の見習いが達人位に昇格するには、それぞれフクロウを一羽育て上げ、調教しなければならない。
フレイバー・テキストによると、嵐景ギルドの使い魔は、見習い魔術師の手によって調教されたフクロウである。使い魔を育て上げることで見習いは達人の資格を得られる。
嵐景ギルドの戦闘魔導士
嵐景学院の戦闘魔道士(Stormscape Battlemage)はカードセット「プレーンシフト」収録のアンコモンのクリーチャー・カードである。
このカードは、嵐景ギルドの戦闘魔導士を表している。
クリーチャー・タイプは「メタスラン」である。メタスランは、ウルザがファイレクシア侵略戦争に備えてトレイリアのアカデミーで生み出された戦闘種族であり、カードとしては青の特性を持たされている。青のギルドである嵐景に相応しいクリーチャー・タイプとしてメタスランが選択されたのであろう。このカードがメタスランだからと言って、嵐景ギルドの戦闘魔導士が全員メタスランであった、とまでは言えない。他の種族の戦闘魔導士がいてもおかしくはないのだから。
イラストでは、メタスランの戦闘魔導士が左手で槍、右手で斧を振るって周りを囲むファイレクシアンと激闘を演じている。左右の肩当ての胸の付け根辺りを観察すると、ドミナリア連合のシンボルが確認できる。左右がそれぞれ白と黒のシンボルだ。
黒:夜景ギルド
夜景(やけい:Nightscape)は、カードセット「インベイジョン」と「プレーンシフト」に登場した、黒の魔術師ギルドである。
ギルド名は「Night(夜)」+「Scape(景色)」。
夜景ギルドの見習い
夜景学院の弟子(Nightscape Apprentice)はカードセット「インベイジョン」収録のコモンのクリーチャー・カードである。
このカードは、夜景ギルドの見習い魔術師を表している。
クリーチャー・タイプは「インベイジョン」当初は「ウィザード」だけであったが、後のエラッタによって「ゾンビ・ウィザード」に変更された。次の夜景ギルドの達人の節も参照のこと。
夜景ギルドの達人
夜景学院の師匠(Nightscape Master)はカードセット「インベイジョン」収録のレアのクリーチャー・カードである。
このカードは、夜景ギルドの達人魔術師を表している。
クリーチャー・タイプは「インベイジョン」当初は「ウィザード」だけであったが、後のエラッタによって「ゾンビ・ウィザード」に変更された。
MTGにおいて、クリーチャー・タイプの「ゾンビ」の範囲は広く、その中には、魔法により自らアンデッドに生まれ変わった魔術師「リッチ」なども含まれている。夜景ギルドの構成員は、この達人魔術師だけでなく上述の見習いも含めて、ただのゾンビではなく魔法でアンデッドになった不死の魔術師を示しているのだろう。
イラストに目を向けると、達人魔術師は右手から青、左手からは赤の魔法の力を発している。両手から友好色の魔法を放つ姿は他ギルドの達人魔術師のイラストと共通している。
夜景ギルドの使い魔
Nightscape masters don’t stop at raising the spirit of a fallen battlemage. They raise the flesh along with it.
夜景学院の師匠たちは、死んだ戦闘魔道士の霊魂を蘇らせるのみではない。一緒に肉体も蘇らせる。
引用:夜景学院の使い魔(Nightscape Familiar)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
夜景学院の使い魔(Nightscape Familiar)はカードセット「プレーンシフト」収録のコモンのクリーチャー・カードである。
このカードは、夜景ギルドの使い魔を表している。
夜景の達人たちは、戦死した戦闘魔道士の霊魂を蘇らせるのみではない。一緒に肉体も蘇らせる。
夜景ギルドの使い魔は、陽景ギルドの使い魔と同様に斃れた戦闘魔導士の霊魂(スピリット)が宿っている。ただし、夜景ギルドでは、達人魔術師が魔法でアンデッドのゾンビとして蘇らせた使い魔なのだ。
イラストでは、使い魔の後ろにメタスランがいて、更に奥にはミノタウルス2人の姿も見える。メタスランが青で、ミノタウルスが赤と、夜景ギルドの友好色に対応している。彼らが夜景ギルド所属なのか、単なるドミナリア連合軍の味方なのかは不明だ。
夜景ギルドの戦闘魔導士
夜景学院の戦闘魔導士(Nightscape Battlemage)はカードセット「プレーンシフト」収録のアンコモンのクリーチャー・カードである。
このカードは、夜景ギルドの戦闘魔導士を表している。
クリーチャー・タイプは「プレーンシフト」当初は「ウィザード」だけであったが、後のエラッタによって「ゾンビ・ウィザード」に変更された。上記した夜景ギルドの達人の節も参照のこと。
イラストの戦闘魔導士は、騎馬した鎧武者である。左下で助けを求めるように手を伸ばすのは味方のドミナリア人のようだ。戦闘魔導士の左腿には、ドミナリア連合の赤のシンボルがある。おそらくイラストで見えない反対側の右腿には青のシンボルがあるのだろう。
赤:雷景ギルド
雷景(らいけい:Thunderscape)は、カードセット「インベイジョン」と「プレーンシフト」に登場した、赤の魔術師ギルドである。
ギルド名は「Thunder(雷:かみなり・いかづち)」+「Scape(景色)」。
雷景ギルドの見習い
雷景学院の弟子(Thunderscape Apprentice)はカードセット「インベイジョン」収録のコモンのクリーチャー・カードである。
このカードは、雷景ギルドの見習い魔術師を表している。
イラストの人間女性の魔術師見習いは右手の指が長く鋭い鉤爪になっている。黒雲から雷鳴が轟き、彼女の周りにはいくつもの軍旗と槍が立ち並んでいる。
雷景ギルドの達人
雷景学院の師匠(Thunderscape Master)はカードセット「インベイジョン」収録のレアのクリーチャー・カードである。
このカードは、雷景ギルドの達人魔術師を表している。
イラストでは、人間男性の達人魔術師が(他の達人魔術師と同じく)それぞれの手から友好色の魔法の力を放っている。背後のレンガ積みの壁に開いた窓からは、遠くに浮遊する陸地のようなものが複数確認できる。
雷景ギルドの使い魔
Thunderscape masters release familiars to help guide their apprentices down the thunderscape path.
雷景学院の師匠たちは、弟子が雷景の教えを修めるための道案内にと、使い魔を解き放つ。
引用:雷景学院の使い魔(Thunderscape Familiar)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
雷景学院の使い魔(Thunderscape Familiar)はカードセット「プレーンシフト」収録のコモンのクリーチャー・カードである。
このカードは、雷景ギルドの使い魔を表している。
雷景の達人たちは使い魔を放って、見習いが雷景道を修める手助けをする。
フレイバー・テキストを本サイトの用語に合わせて手を入れてみた。
雷景ギルドの使い魔は「カヴー」である。カヴーはファイレクシア侵略戦争が発生したすぐ後に、大地母神ガイアの命でドミナリア上に出現した生き物である。それまではファイレクシアの襲来に備えて地中で眠りに就かされていた。したがって、カードになっているタイプの使い魔はAR4205年よりも前には存在していないことになる。
雷景ギルドの戦闘魔導士
雷景学院の戦闘魔道士(Thunderscape Battlemage)はカードセット「プレーンシフト」収録のアンコモンのクリーチャー・カードである。
このカードは、雷景ギルドの戦闘魔導士を表している。
イラストの戦闘魔導士は真紅の鎧で全身の守りを固め、二丁斧を振るい、更に腰には剣を差している。
斧にはそれぞれドミナリア連合のシンボルが刻まれており、右が黒で左が緑だ。余談だが、このイラストには元々間違いがあって、右の斧のシンボルは黒ではなく青のデザインで描かれてしまっている。色も元は青で彩色されていたのを黒に修正したものだ。
このカードのイラストは、インベイジョン・ブロック期の特設サイトの地図(リンク)において、ドミナリア次元北ジャムーラ亜大陸のゼラパ(Zerapa)のイラストとして転用されていた。詳細はこちらの記事を参照。
適当なイラストが無いためにこのカードが代用されたように思われるものの、雷景ギルドはゼラパに存在した可能性があると解釈もできる。
緑:荊景ギルド
荊景(けいけい:Thornscape)は、カードセット「インベイジョン」と「プレーンシフト」に登場した、緑の魔術師ギルドである。
ギルド名は「Thorn(棘・いばら)」+「Scape(景色)」。和名の「荊」の字は「いばら」を意味する。
荊景ギルドの見習い
荊景学院の弟子(Thornscape Apprentice)はカードセット「インベイジョン」収録のコモンのクリーチャー・カードである。
このカードは、荊景ギルドの見習い魔術師を表している。
イラストでは、人間男性魔術師の見習いが左手からは白、右手からは赤の魔法の力を放出している。
荊景ギルドの達人
荊景学院の師匠(Thornscape Master)はカードセット「インベイジョン」収録のレアのクリーチャー・カードである。
このカードは、荊景ギルドの達人魔術師を表している。
イラストの達人魔術師は人間男性で、達人魔術師の例のごとく両手からそれぞれ友好色の魔法の力を放っている。見習いのイラストとも似ているけれど、達人魔術師は左手が赤で、右手が白と見習いとは逆になっているのが面白い。
荊景ギルドの使い魔
Blessed with many options, Thornscape masters favor scarabs as familiars.
使い魔の候補は他にいろいろあったが、荊景学院の師匠たちはスカラベを使い魔にすることにした。
引用:陽景学院の使い魔(Sunscape Familiar)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
荊景学院の使い魔(Thornscape Familiar)はカードセット「プレーンシフト」収録のコモンのクリーチャー・カードである。
このカードは、荊景ギルドの使い魔を表している。
和訳製品版のフレイバー・テキストは内容が異なっているため、本サイトでは以下のように修正した。
多くの選択肢に恵まれていたが、荊景の達人たちは使い魔としてスカラベを好んだ。
原文では「多くの選択肢の中からスカラベを好んだ(他の種類を選んだ者もいる)」なのだが、和訳製品版は「候補の中からスカラベだけを使い魔にした」との意味合いに書き変えられてしまっている(「好んだ」と「することにした」では全然話が違ってくるのだ)。
イラストのスカラベは普通の大きさではない。足元に転がる兜と対比すると、巨大さがよく分かる。
荊景ギルドの戦闘魔導士
荊景学院の戦闘魔道士(Thornscape Battlemage)はカードセット「プレーンシフト」収録のアンコモンのクリーチャー・カードである。
このカードは、荊景ギルドの戦闘魔導士を表している。
クリーチャー・タイプは「エルフ」であり、イラストの特徴からラース次元のスカイシュラウド・エルフだと判別できる。ラースのエルフがなぜドミナリアで戦っているのだろうか?
ファイレクシア侵略戦争の侵略第二段階において、フィレクシアは人工次元ラースをドミナリアに重ね合わせる次元被覆を実行した。その結果、ラース上の地形や住人はドミナリアの各所に転移して現れたのだ。スカイシュラウドの森とエルフは、ドミナリア次元ドメインズ地方のケルドに出現した。エルフたちはケルドに受け入れられ、ドミナリア連合の一員としてファイレクシアと戦ったのである。
こうした経緯を経て、スカイシュラウド・エルフの中には、荊景ギルドの戦闘魔導士となるものがいたようだ。イラストでエルフが跨る動物は、ケルドの大型山羊類コロス(Colos)である。コロスはケルド人が馬のように乗用生物としていた獣なので、ケルドの新住人スカイシュラウド・エルフが利用しているのは筋が通る。
イラストでエルフが持つ杖を見ると、ドミナリア連合のシンボルが見つけられる。三角に尖った先端は赤のシンボル、その反対、丸みを帯びた先端は白のシンボルがデザインされているのだ。
おまけ:5つのギルドに関する日本の誤情報
本記事をまとめるに当たって、インベイジョン・ブロック当時のある日本の専門誌記事を取り上げなければならないと決めていた。
それがGameぎゃざ誌の連載記事「ドミニア年代記」の第18回である。当時のMTG日本販売代理店が発行していた雑誌で最初期から連載されていた記事である。ライターはMTG初代翻訳者でもあった人物だ。
陽景・嵐景・夜景・雷景・荊景に関する該当部分を以下に抜粋した。
その(註釈:トレイリアの魔道学院の)分院ともいうべき五つの魔道学院はそれぞれの色ごとに魔術の研究を進めていた。彼らの研究はジャムーラの魔道士ギルドでの研究を踏まえて、友好色の活用にまで及び、優れた使い魔と戦闘魔導士を輩出するに至っていた。
引用:Gameぎゃざvol.19(2001年3月号)の記事「ドミニア年代記 第18回ラース顕現~プレーンシフト・ストーリー パート1~」
筆が滑ったとしか思えない内容だ。20年以上も昔の雑誌記事を今更と思われるかもしれないが、物持ちの良いプレイヤーとかゲームショップのデュエルスペースの本棚には、古い雑誌が何気なく置いてあったりするものだ。誤情報拡散源を潰しておくに越したことはない。ここでちゃんと否定しておく。
トレイリアの分院
本記事であらかじめ書いたように、5つの魔術師ギルドにはほとんど設定情報が無い。ウルザの創ったトレイリアのアカデミーとの関連性は公式ソースのどこにも見つけられなかった。
一方、「ドミニア年代記」では「トレイリアの魔道学院の分院『ともいうべき』五つの魔道学院」という関係性を強く匂わせつつも断定をしない文章が記されている。これは実質的には5ギルドの系譜設定に関して何も言っていない文章である。分院「だ」ではなく「ともいうべき」としか書いてないのだから、それはそうだ。
そうではあるが、読者はそうは受け取らない。わざわざこんな書き方をしているのだから何か関係があるのか、そういう関係性が読み取れる内容が小説や公式記事にあるのかも、と推測してしまうのだ。けれど、そんなものはないのだ。
嘘は書いてない。不誠実だなとは感じる。
魔道学院
また5つの魔術師ギルドを「五つの魔道学院」と書いているが、本記事で既に何度も述べたように公式ソースでは「ギルド」であり「学院」でも「魔道学院」でもない。
その上、トレイリアのアカデミーも含めて「魔道学院」と記してある点も気になる。公式和訳は「(トレイリアの)アカデミー」であるのだけれど、MTGの「魔道学院」とはいったい何を指している言葉なのだろうか?
「ドミニア年代記」の担当ライターは最初のMTG和訳を担った人物で、MTG初和訳製品であるカードセット「基本セット第4版」には放蕩魔術師(Prodigal Sorcerer)が収録されていた。このカードのフレイバー・テキストが鍵となる。以下の通りだ。
Occasionally a member of the Institute of Arcane Study acquires a taste for worldly pleasures. Seldom do they have trouble finding employment.
魔道学院の研究者も、時には快楽に目覚めることがある。 それでも、彼らが雇い主に困ることはめったにない。
引用:放蕩魔術師(Prodigal Sorcerer)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
放蕩魔術師(Prodigal Sorcerer)のフレイバー・テキストを見ると「魔道学院」の文字がある。ライターはこの「魔道学院」と他のドミナリアの魔術師組織を同一視していた疑いが出てくる。
でも公式設定では、放蕩魔道士の「魔道学院(The Institute of Arcane Study)」はトレイリアのアカデミーとは全く別系統の系譜の組織なのである。魔道学院はトレイリアとは全然違うタミンガジン地方に存在しており、アイスエイジ・ブロックの見えざる者と呼ばれる魔術師たちの末裔なのである。断じてウルザの系譜ではない。これらの設定はインベイジョン・ブロックの数年前にはもう既出情報だったのだ。
したがって、「魔道学院」も「トレイリアのアカデミー」も「インベイジョン・ブロックの5ギルド」も明らかに別々の組織なのは間違いない。同一世界内のストーリー用語をごちゃまぜにして用いるのは無用な混乱を呼ぶので避けるべきだった。
ジャムーラの魔道士ギルド
最後に、「ドミニア年代記」の解説文の後半は、「カードの開発史の流れ」と「組織の系譜設定」とを混同して独自設定を創作してしまっている。
カードセット「インベイジョン」の弟子・師匠サイクルは、カードセット「ミラージュ」のギルド魔道士サイクルのメカニズムの系譜にあることは明らかではある。であるが、それはカードのメカニズムやカード開発史の視点においてである。それは設定とはまるで関係が無い。
ジャムーラ大陸ザルファー国の社会構造を支えるギルド魔道士の研究を踏襲して、使い魔や戦闘魔導士を輩出できた、などという旨のウィザーズ公式の設定解説もやはり見当たらない。
当時のライターや販売代理店に対しての私の意見は3年前のグリールの記事の最後に書いたので改めて繰り返すことはしない。
さいごに
およそ3か月振りの新記事の投稿になる。今回もだらだらと冗長な記事になってしまったな。
では、今回はここまで。
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