ドミナリア:山婦人

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山婦人(The Lady of the Mountain)カードセット「レジェンド」初出のキャラクターである。

1994年のカードセット「レジェンド」で、伝説のクリーチャー・カード「The Lady of the Mountain」として初登場した。2002年の短編The Lady of the Mountain短編集The Myths of Magicに収録)ではドミナリア創世神話においてドワーフの創造者としての物語が与えられた。

初出から28年後のカードセット「団結のドミナリア」において、「語り継がれる伝説1」という特別枠でリデザインされ、オタリアの婦人(The Lady of Otaria)という新バージョンで収録された。

本記事では、ドミナリア創世神話に登場するドワーフの創造者たる「婦人」を紹介する。

山婦人の解説

Her given name has been lost in the mists of time. Legend says that her silent vigil will one day be ended by the one who, pure of heart and spirit, calls out that name again.
彼女の名前は遠い時の彼方に消え去った。伝説によれば、彼女の静かなる寝ずの祈りは、純粋な心と精神を持つ者が再び名を呼んだ時に終わるのだという。
引用:The Lady of the Mountainのフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が私家訳

The Lady of the Mountain

The Lady of the Mountain
データベースGathererより引用

山婦人(The Lady of the Mountain)はドミナリア次元の創世神話によれば、大地母神ガイア(Gaea)と火の神フィアース(Fiers)の娘であり、ドワーフという種の創造主である。

ドミナリア次元の世界創生期。世界最高峰のフィアース山(Mount Fiers)の地下で、山婦人はフィアースの手で作られた水晶の卵から誕生した。山婦人は父神を真似て水晶からドワーフ族を創り出した。

山婦人は世界を脅かす悪魔と戦い退けたものの、傷ついてフィアース山の地下で眠りに就いているとされる。

種族の創造主として、山婦人は現代でもドミナリアのドワーフから信仰されていると考えられる。しかし、山婦人に言及する作品が少ないため、実際に描写されたのはAR44世紀初頭を描いたストーリー作品だけに留まっている(2022年9月現在)。そこではオタリア大陸パーディック山脈のドワーフ諸部族や人間の蛮族が、火の神フィアースと共に山婦人を信奉していた。



山婦人の秘密の名前と3回の召喚

山婦人には遠い昔に忘れ去られた3つの名前があった。

その名前は信奉者のドワーフによって密かに語り伝えられている。大いなる困難に直面した際に、3人のドワーフがそれぞれ名前を1つずつ唱えると、山婦人を召喚することができるのだ。ただし召喚できる回数はたったの3回である。

暗黒時代のサーペイディア大陸のドワーフは、帝国が崩壊した時に山婦人を召喚し、テリシア大陸へと避難した。これが1度目だ。

AR4205年に勃発したファイレクシア侵略戦争において、2度目の召喚が行われた(短編内で暗示されている)。

山婦人の召喚は、既に3回中2回を使い切っており、将来の危機に残されたのは最後の1回きりとなっている。

AR4562年、ドミナリアは再びファイレクシアの脅威にさらされている。山婦人最後の召喚は近いのかもしれない。

山婦人のクリーチャー・タイプ

カードセット「レジェンド」の伝説のクリーチャーには、本来クリーチャー・タイプが設定されていなかった。2007年9月に全体的なクリーチャー・タイプの見直しが行われて、それまでクリーチャー・タイプを持たされていなかったカードにも追加されることになった。

この時にThe Lady of the Mountainに与えられたクリーチャー・タイプが「巨人」である。これはとてもおかしな追加であった。

当時すでに4年前の短編において山婦人はドワーフの創造主であると語られた後であったし、短編中の描写を見ても巨人だとは読み取れない。ストーリー的に不可解な変更であったが、カードセット「団結のドミナリア」が発売された2022年9月現在でも巨人のままとなっている。

オタリアの婦人

オタリアの婦人(The Lady of Otaria)

オタリアの婦人(The Lady of Otaria)
公式カードギャラリーより引用

オタリアの婦人(The Lady of Otaria)カードセット「団結のドミナリア」でリデザインされた新バージョンである。

オタリアの婦人は、短編The Lady of the Mountain短編集The Myths of Magic収録)を踏まえたトップダウン・デザインで作り上げられている。

リデザインを担当したイーサン・フライシャー(Ethan Fleischer)によると、トップダウンでストーリーを再現する試みは、赤緑のドワーフへの報酬という奇妙な結果となった。将来的に緑のドワーフ・カードをもっと印刷したい。また、ストーリー上では「巨人」ではないためクリーチャー・タイプは「アバター」に修正した。とのことだ。(出典リンク1リンク2

カードのメカニズムを見る限り、かなり雰囲気は出ている。ドワーフ3体のタップで戦場に出せるのは、名前を呼んで召喚できる設定の再現だ。そして、土地が失われるとドワーフ・カードをサーチして手札に加える機能は、ドワーフの守護者の性格を表せている。いや、あるいは水晶からドワーフを創造した再現かも知れない。

一方でフライシャーも懸念しているように、赤緑という色がドワーフという部族に合致しない点が心もとない。緑のドワーフ・カードがいないのである(2022年9月現在で1種類のみ)。オタリアの婦人は、リデザイン元のThe Lady of the Mountainが赤緑だったため、それを踏襲せざるをえなかった。だから、フライシャーは将来的に緑のドワーフを増やそうと考えているのだ。

山婦人というキャラクターのオリジン

この節ではMTGのキャラクターとしての山婦人ではなく、その原型となったキャラクターについて掘り下げる。

カードセット「レジェンド」の制作者スティーブ・コナード(Steve Conard)は、2002年3月の公式記事Magic meets D&Dにおいて、山婦人をダンジョンズ&ドラゴンズ(当時最新版ルールの第3版)にコンバートしたキャラクター・データを公開したことがある。

これによれば、山婦人は元々はコナードのD&Dキャンペーンに由来するキャラクターだったという。2D&Dがベースであったものの、かなり独自の改造を施してD&Dとはかなり違う形にカスタマイズしたゲームだったようだ。それを当時の最新版ルールにコンバートしてみせたのだ。

さて、公開された山婦人のD&Dデータを見ると、MTGのカードやストーリー作品で描かれたキャラクターとはまるっきり別人であった。大雑把に言えば、超高レベルの人間女性の魔法戦士で、これまた超強化されたスードゥドラゴンの使い魔を従え、様々な魔法のアイテムを所持していた。神レベルのキャラクターではあるが、ドミナリアのドワーフ創生神といった雰囲気ではないのだ。

MTGでの山婦人の設定が公開されたのは、短編The Lady of the Mountain短編集The Myths of Magic収録)であったが、その発行は2002年3月だ。つまり、コンバート記事と同時期である。

2002年3月。ここで山婦人はD&Dオリジンと分岐して、MTG独自の背景と物語を有するキャラクターとして独立したのである。

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  1. 原文は「Legends Retold」なので、本来は「新たな形で語り直された伝説」くらいの意味合い。「語り継がれる伝説」という和訳はかなり意味がずらされている。
  2. カードセット「レジェンド」には同じ出自のキャラクターが他にも複数確認されている。この件に関して、レジェンドのキャラクターは全てD&D由来だ、との主張が度々されるのだが、それは正しいとは言えない。スティーブ・コナードは全員がそうだとまではコメントしてはいないのだ(少なくとも私の知る限りでは)