小物泥棒、チビボネ(Tinybones, Trinket Thief)は2020年発売の特殊なカードセット「ジャンプスタート」収録の伝説のクリーチャー・カードである。
今回はこの小さな泥棒を取り上げたい。(ちなみに久々の記事投稿になるが、チビボネを選んだ理由は特にない。)
追記(2021年8月16日):おまけとして「アーボーグの奇妙な住人」の節を一番最後に新設した。
小物泥棒、チビボネの解説
Big distractions mean tiny nuisances can slip by unnoticed.
大惨事が起これば、ちょっとした悪さは見落とされがちだ。
引用:小物泥棒、チビボネ(Tinybones, Trinket Thief)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下がMTGアリーナでの和訳
小物泥棒、チビボネ(Tinybones, Trinket Thief)はドミナリア次元のアーボーグに住む小型スケルトンの男性だ。空腹の家族を養うために、仕方なく盗みを働いているのだという(スケルトンの家族ってのがどんなのか分からないが…)。
名前は「tiny(小さい)」+「bones(骨)」で「チビボネ」と訳されている。
小物泥棒、チビボネの公開されているストーリーと設定
小物泥棒、チビボネの設定やストーリーは公式記事The Lore of Jumpstart on the Cardsで語られている。
該当部分を引用して翻訳してみたのが以下の通りだ。
Tinybones doesn’t enjoy stealing. Tinybones doesn’t enjoy hurting the people of Urborg. Tinybones isn’t in it for the adrenaline. Tinybones doesn’t even have an adrenal gland. No, Tinybones steals because Tinybones has a tiny family to feed, and they have a giant appetite.
チビボネは盗みを楽しんではいない。チビボネはアーボーグの人々を困らせて楽しんでいるのでもない。チビボネはアドレナリン中毒でもない。チビボネは(アドレナリンを分泌する)副腎すら持っていないのだ。なのにチビボネには盗みを働く理由がある。チビボネには養うべき小さな家族がいて、腹を空かせて待っているのだ。
引用:公式記事The Lore of Jumpstart on the Cards
上が英語原文。下が私家訳
ちなみに「(アドレナリンを分泌する)副腎」の部分だが、括弧内は翻訳した時に補足説明として付け加えた。原文では「アドレナリン」と「副腎」はそれぞれ「adrenaline」と「adrenal gland」なので対応が分かりやすいが、日本語ではそれがピンとこないだろうと思ったからだ。
小物泥棒、チビボネのイラスト発注指示
チビボネに関する公式情報はこの記事だけだが、イラストを担当したジェイソン・レインヴィル(Jason Rainville)は、発注指示や制作過程をツイートで公開している(出典)。
この発注指示によって、チビボネのイラストの状況や場所が明確になった。さらに、発注指示には「彼」とあるので、チビボネは男性を想定していると分かる。制作時には「小物泥棒」ではなく、アーボーグのゴミあさり(Scavenger)やたかり屋(Scrounger)と呼ばれていたことも読み取れる。
小物泥棒、チビボネのイラストとフレイバー・テキスト
イラストでは、チビボネはアーボーグの村の屋台から緑色の安物装飾品を盗んで両手いっぱいに抱えて逃げているところだ。屋台は紫色の炎に飲まれている。
フレイバー・テキストにあるように、大きな混乱が起こればそっちに目が向けられるため、チビボネの些細な盗みなんかは見過ごされることになる。イラストの状況に照らし合わせるなら、火事に出くわしたチビボネはどさくさに紛れて盗みを働いているのかもしれない。
だが、おそらく真相はもっと凶悪だ。屋台から盗んだのもチビボネなら、火を放って大混乱を起こした張本人もおそらくチビボネであったのではないか?
小物泥棒、チビボネのカード・メカニズム
最後にカードのメカニズムに注目してみる。
チビボネは「対戦相手がカードを捨てていたなら、ターン終了時にあなたはカードを1枚引きライフ1点を失う」という能力を持っている。これを解釈すると、誰かが物を無くすと、なぜかチビボネの懐が潤う。つまり、チビボネが誰かから盗んで家族を養っている、という背景設定に合致した挙動だと分かるだろう。
また、チビボネのカードはもう1つの能力を持っている。4黒黒を払うと、手札が空の対戦相手はライフを10点失うという攻撃的なものだ。盗む物を持たない相手だったら、代わりに命を奪ってしまう。そんな印象を抱かないだろうか。前節のイラストの解釈において、私は屋台に放火した張本人がチビボネでないか?と述べた理由の1つは、この物騒な能力にある。
チビボネの小柄でコミカルな見かけに決して騙されてはならない。では今回はここまで。
おまけ追記:アーボーグの奇妙な住人
チビボネの暮らすアーボーグ(Urborg)はドミナリア次元でも黒マナの代表地の1つとして挙げられる大きな島だ。
暗黒時代のリッチの王ネビニラル(Nevinyrral)の後継者を自称するリッチたちが跋扈し、おどろおどろしいアンデッドやスピリットが彷徨い、悪魔王ベルゼンロック(Demonlord Belzenlok)の陰謀団が暗躍し、獰猛な豹人が住まう恐ろしい土地……というのが昔ながらのイメージであった。だが、2018年発売のカードセット「ドミナリア」期から少し様子が違ってきた感がある。
例えば、この闇の取り引き(Dark Bargain)のイラストはアーボーグの露店が描かれている。強面の黒騎士はいかにも昔ながらのアーボーグらしい人物だが、その相手をしている2人の店員の方はなんともユーモラスな外見をした種族もよく分からない者たちだ(ある種のスピリットか?)。
不気味さや恐ろしさ、邪悪さの中にも何かユーモラスで親しみを感じる面々がいる。これがドミナリア期以降のアーボーグのイメージとなっている。こうしてイメージ刷新を遂げたアーボーグだからこそ、チビボネみたいな変わった存在も許容できるのであろう。
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※ 今のところカードセット「ジャンプスタート」関係のリスト作成の予定はない
アーボーグ関連のキャラクター
暗黒時代のアーボーグの支配者ネビニラル
ある意味でチビボネ以上にふざけたアーボーグの怪物のヤーグル