勝利の算段(Triumphant Reckoning)はカードセット「統率者レジェンズ」収録のソーサリー・カードである。
このカードは発表以来、ヴォーソスの中からちらほらと「このカードのイラストはどういう状況なんだ?アジャニ、チャンドラ、カーンの3人。いよいよ新ファイレクシア攻めが始まる予兆なのか?」などと話題にする声が聞こえてくる。
さて、このカードのイラストの状況はどういうことなのか?
最近重い記事が多かったので今回は軽い小ネタ記事である。
勝利の算段の解説
In a flash of light and a burst of aether, despair turned to hope and defeat turned to victory.
眩い閃光と霊気の奔流があった。絶望は希望へと、敗北は勝利へと変わった。
引用:勝利の算段(Triumphant Reckoning)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
勝利の算段(Triumphant Reckoning)は自分の墓地から全てのアーティファクトとエンチャントとプレインズウォーカーのカードを戦場に戻すソーサリーだ。1999年のカードセット「ウルザズ・デスティニー」に収録された補充(Replenish)の系譜にあり、プレインズウォーカー・カードも効果の範囲内に収めたスーパー補充である。
……と、ザックリとメカニズムとカード史に触れたので、本サイトで扱うべき内容に切り替えよう。注目はこのカードのイラストとフレイバー・テキストの方である。
勝利の算段のイラストとフレイバー・テキスト
カードのイラストには広い光の奔流の中に3人の人物のシルエットが浮かび上がっている。この3人は左から右にアジャニ(Ajani)、チャンドラ(Chandra)、カーン(Karn)だ。そして、フレイバー・テキストも「絶望は希望へと、敗北は勝利へと変わった」とある。
主役級のプレインズウォーカー3人が揃って援軍に駆けつけてくれた!これで逆転勝利だ!
印象的で劇的な瞬間を切り取ったシーンである。素直にそう解釈していれば、そこで話は終わったはずだが……。ここでファンは深読みを始めた。アジャニ、チャンドラ、カーンの3人が組んで戦うこのイラストはどこの場面だったろうか?と。
過去ストーリー検証
実はアジャニ(Ajani)、チャンドラ(Chandra)、カーン(Karn)が揃った状況はストーリー上でたった2日間しか描かれていない。灯争大戦のあった1日とその翌日までだ。
灯争大戦当日
灯争大戦当日は小説War of the Spark: Ravnicaに描かれている。戦争勃発直前にアジャニ、チャンドラ、カーンは他の仲間のプレインズウォーカーたちと初めて一堂に会する。彼らはラヴニカの灯争大戦で戦うことになるが、アジャニ、チャンドラ、カーンが3人だけで組んで戦っている場面は(少なくとも小説などで描かれた中には)存在していない。戦争はこの1日で終結した。
その後は、(描かれている範囲内であるが)3人がいる状況下で戦闘は発生していない。そうなると当然ながら、このカードの場面はいまだ語られていない未来の姿でないのかとなってくる。
灯争大戦翌日
3人の最後の動向が語られたのが続編小説War of the Spark: Forsakenである。この小説では灯争大戦終了直後からその翌日までの3人の行動が追跡できる。戦争翌日まで3人は行動を共にしており、テーロス次元でギデオン(Gideon)の葬儀を執り行った後、それぞれの道に一旦別れていった。
カーンは新ファイレクシア次元での戦争に備えており、アジャニとテフェリー(Teferi)は彼に助力を申し出て一緒にドミナリア次元のニアンビ(Niambi)の家に去った。
小説中ではチャンドラとヤヤ(Jaya)は、後日カーンらと合流する予定となっていることが語られている。
新ファイレクシアに立ち向かうためアジャニ、チャンドラ、カーンの3人が揃い、更にテフェリーとヤヤまで合流する!
いよいよ新ファイレクシアの決戦か?
以上のようなストーリーの流れを考慮するに、アジャニ、チャンドラ、カーンの次なる戦場は新ファイレクシア次元と予想が立ったことになる。
きっとこのカードは新ファイレクシアを攻撃する3人に違いない。テフェリーとヤヤはこの時は別行動中なんだろう。
カーンと新ファイレクシアの因縁の戦い。それはかれこれ9年前からほぼ放置状態になっているストーリーアークなのだ。ようやく待望の最終決戦が始まるんだ!とファンたちは妄想の翼を広げていた。
生配信で直撃質問
真相を確かめるチャンスがやってきた。
2020年11月6日に配信のtwitchのWeekly MTG: Commander Legends(番組リンク)にはゲストのガヴィン・ヴァーヘイ(Gavin Verhey)とイーサン・フライシャー(Ethan Fleischer)が招かれており、視聴者の質問に答えてくれるというのだ。
番組の質問にはヴァーヘイが主にカード開発について、フライシャーが主にストーリーや背景設定について、とお互いの専門分野を答えていく。そして……
「勝利の算段のカード・デザインとアート解説をお願いします」
待ちに待った質問が取り上げられた。この質問のやり取りは番組52分ごろから始まる(番組リンク)。
フライシャー「このカードはウルザズ・デスティニーの補充(Replenish)の系譜のカードで云々……」
ファンが望む言葉「新ファイレクシア」の一言がなかなか出てこない。
そして最後に進行役のブレイク・ラスムッセン(Blake Rasmussen)がこんな感じでまとめる。
「視聴者からは『新ファイレクシアのプレビューアートなのでは?』との質問も来ているけれど、このカードのアートの発注指示によると『場所は特定しない。担当者に任せる』とのことで、つまり将来起こる何か特定の情景というわけじゃないよ。申し訳ないけれど…」
勝利の算段は無関係
新ファイレクシアは無関係だし特定の状況を描いたものでもない!?
あああ、明確な回答がもらえたけれど……けれど……これにはガッカリだよ。
この番組を見てないユーザーたちが、これ新ファイレクシアかな?と楽しそうに話題にしてるのを見かけるたびに、残念だけど考え過ぎだよ、と教えるべきか否か困ってしまう。
では今回はここまで。
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