ラジャンの精(Radjan Spirit)はカードセット「レジェンド」で収録されたクリーチャー・カードである。
今回は、ラジャンの精に関連したストーリー作品をもとにこのスピリットを解説しよう。また、ストーリー作品に登場したラジャンの精のハーフのキャラクター、ヒース(Heath)を詳しく取り上げる。ヒースと意外な伝説のキャラクターとの関係とは?
ラジャンの精の解説
ラジャンの精(Radjan Spirit)はドミナリア次元に存在が確認されている森のスピリット1の1種である。登場作品から推測するに、西ジャムーラ亜大陸の南の方にいると考えられる。
ラジャンの精はエルフとの間に子を成すことができる。このハーフであるキャラクターがレジェンドサイクル1小説三部作(小説Johan、小説Jedit、小説Hazezon)に登場していた(詳細は後述)。
イラストのラジャンの精は男性で、胸元大きく開き、表が紫色で裏地が橙色の外套のようなものを羽織っている。あるいは、コウモリのような飛膜の類にも見えるため、衣類ではなく身体の一部の可能性もある。どちらにしろ、身体の大部分はこの外套とも飛膜ともつかないもので覆い隠されており全身像がよく分からない。
カードの能力としては、ターン終了時まで対象のクリーチャーの飛行を失わせる起動型能力がある。飛行喪失能力、これがどういう意味合いを持たされているのか、唯一の情報源であるレジェンドサイクル1小説三部作(小説Johan、小説Jedit、小説Hazezon)を調べてみたものの言及はされていなかった。
ラジャンの精のフレイバー・テキスト
“Crawing, crawing,
For my crowse crawing,
I lost the best feather i’ my wing
For my crowse crawing.”
–Anonymous Scottish ballad
カアカア、カアカア鳴いているのも、 わたしの烏が鳴いているから。 わたしの翼でいちばんの羽根がないのも、 わたしの烏が鳴いているから。
–作者不詳のスコットランドのバラッド
引用:ラジャンの精(Radjan Spirit)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
ラジャンの精(Radjan Spirit)はカードセット「基本セット第5版」再録時に新規のフレイバー・テキストを与えられたものの、それは現実世界のスコットランドのバラッドの引用であったため、MTG世界とは特に関係が無い。
ラジャンの精のストーリー
カードセット「レジェンド」を基盤にしたレジェンドサイクル1小説三部作(小説Johan、小説Jedit、小説Hazezon)において、ラジャンの精とエルフのハーフであるヒース(Heath)が登場した。
ただし、作中にラジャンの精そのものは出てこない。
この1例を除き、ラジャンの精への言及は(少なくとも私には)どこにも見つけられなかった。
ロバラン傭兵団七人衆、ヒース
ヒース(Heath)は、AR3334年から3336年の西ジャムーラ亜大陸を舞台にしたレジェンドサイクル1小説三部作(小説Johan、小説Jedit、小説Hazezon)の登場人物である。
ラジャンの精とのハーフ
ヒースはラジャンの精とエルフのハーフの男性である。
青白い2肌をし、髪は骨のように白い3、顔は面長で、哀愁漂う4雰囲気の人物だ。襟なしのリネンのチュニックの上に、鹿革のベストを着込み、光沢のある黒檀5の弓を携えている。
面識のないノスリ湾の住人から「エルフキン6」と呼ばれる場面があることから、一風変わったエルフくらいの外見をしていると考えられる(おそらく尖った耳とかのエルフ的特徴をしているのだろう)。
小説作中の描写は、カードのラジャンの精とはほとんど似ていない。
ロバラン傭兵団七人衆
ヒースはロバラン傭兵団(Robaran Mercenaries)に所属している。
2代目頭目アディラ・ストロングハート(Adira Strongheart)が率いる七人衆のメンバーであり、射手であり、アディラの配下で最高の斥候でもある。鷹のように鋭敏な視力を誇り、遥か遠方の目標物を精確に捉えることができるのだ。
ハゼゾン・タマル(Hazezon Tamar)はヒースと30年を超える付き合いである。ハゼゾンから見てヒースは初対面の時から1日たりとも歳を取ったようには見えないし、未だに謎めいた奴だと思われていた。
30年以上前、すなわちAR3300年頃のハゼゾンは海賊時代だったと推測できるため、ヒースは当時の海賊仲間だったのであろう。となると、ロバラン傭兵団初代頭目ハンディング・ギョルナーセン(Hunding Gjornersen)時代からの構成員であったろうし、AR3324年にアディラが2代目になった時から七人衆の初期メンバーの1人でもあったことは想像に難くない。
現に三部作の最後では、ヒースはあらゆる七人衆の中で最長期間にわたってアディラとハゼゾンに忠実に仕えてきたと記されていた。
ちなみにヒースが歳をとっていないように見える件だが、長命種族のエルフと、森のスピリットの血を引いているなら納得できる描写である。
その後のヒース
ヒースは、主人公ジェディット・オジャネン(Jedit Ojanen)の味方として、脇役ながらも小説三部作を通して登場し続けた。
物語は北からの侵略者、皇帝ヨハン(Johan)を打倒して幕を下ろす。アディラは斃れ、ジェディットは跡を継いで三代目頭目となった。輝かしき新時代の始まりだ。しかし、この機会にロバラン傭兵団を離れるものもいた。
ヒースはというと、2日間何も口をきかずにいた後にジェディットに対してロバラン傭兵団からの引退を告げた。そして、エフラヴァから砂漠の遠く向こうに自分だけが見える何かを捉えたような目を向けて、「森から長い間、離れすぎてしまったな。」ヒースはそう言い残した。
ヒースとジャスミン・ボリアル
さて、ヒースと他のキャラクターの絡みの中で、1つエピソードを取り上げるなら、私はジャスミン・ボリアル(Jasmine Boreal)との関係を選びたい。
ジャスミンはAR3334年に短期間だけ七人衆となった人間女性のドルイドだ。ロバラン傭兵団本拠地パルミラの街から、宿敵ヨハンを追跡して大陸北西のノスリ湾にまで赴き、そこから南進してアルボリア(Arboria)の松の森に入り込み、吸血鬼ショークーと対決した。
ヒースとジャスミンはアディラの七人衆としてこの追跡行に加わり、ノスリ湾からアルボリアに向かう頃から2人は急速に仲を深めていったのだ。ノスリ湾から南下する船上では、ヒースとジャスミンは同じ1つの毛布にくるまって寝ていた。アルボリアの森で松の民から媚薬を盛られた際には、ジャスミンはヒースの耳元で何やら囁いた後に耳を甘噛みしていた(→媚薬の件はこちらを参照のこと)。
2人のロマンスが発展する気配があったものの、媚薬の場面から以降はショークーの根城への突入で戦いに次ぐ戦いとなり、息つく暇もなかった。そうして最後、星界からの恐怖(Cosmic Horror)の隕石雨でショークー城一帯が崩壊して事件が終息してしまうと、ジャスミン・ボリアルはアルボリアの森のドルイドとして逗留し生きていくことを選びロバラン傭兵団と袂を分かった。ヒースともそれっきりのようだ。
2年が経ちAR3336年、北方からの侵略者、皇帝ヨハンが倒されてレジェンドサイクル1小説三部作は終幕となった。最後にロバラン傭兵団を引退した際、ヒースはエフラヴァから砂漠の遠い先を見ていたが、位置関係を考慮すればその方角は当然西になるだろう。エフラヴァからスクールヴィア砂漠、さらに山脈を越えた大陸の向こうにはどんな森がある?
アルボリアの森がある。ヒースの視線の遠い先にはアルボリアがあったのだ。
ヒースは物語の後にジャスミン・ボリアルと再会したのだろうか?
さいごに
なんとかラジャンの精を記事にまとめられた。
元々はラジャンの精ではなくて、ヒースを取り上げるための文章として書き始めたものだ。ロバラン傭兵団かジャスミン・ボリアルの記事の方で軽く触れるだけで済ます想定をしていた。ジャスミン・ボリアルとの関係性に重心を置いているのも元は彼女の記事内に含めるつもりが頭にあったからだ。
結局、文章の嵩が増していき独立記事化した方が読みやすいんじゃないか、となってこうなった。
ラジャンの精とは何か?というところに切り込めておらず、そちらを期待した方々には申し訳ない。でもラジャンの精だけで書けるほどの情報は私には見つけられないのだ。
では、今回はここまで。
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ロバラン傭兵団
ジャスミン・ボリアル
カードセット「レジェンド」関連のリスト
- 小説Jeditでヒースの素性に関して「forest spirit」との表現がある
- 原文「pale」
- 原文「bone white」
- 原文「melancholy」
- 原文「glossy ebony」
- 原文「elf-kin」で「エルフの血縁」くらいの意味合い