セゴビアの天使(Segovian Angel)はカードセット「モダンホライゾン」収録のクリーチャー・カード。
セゴビアの天使の解説
セゴビアの天使(Segovian Angel)はミニチュア次元セゴビア出身の天使である。When Worzel summoned Segovian angels to fight Thomil’s Gargantikari gnats, the ensuing battle numbered among the Multiverse’s least destructive.
トミルのガルガンティカリ羽虫に対抗してウォーゼルがセゴビアの天使を召喚したとき、その後に起こった戦闘は、多元宇宙で最も破壊的でない戦いの記録を樹立した。
引用:セゴビアの天使(Segovian Angel)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
カードセット「モダンホライゾン」全般に言えることだが、このカードも過去のMTGのカード、ストーリー、キャラクター、それらに絡めた冗談が複雑に盛り込まれている。
セゴビア次元出身の天使として、極小サイズのセラの天使(Serra Angel)のデザインに挑戦してみよう!…とか発想の元はその辺りだったのではないかと想像する。
触れたい要素が多すぎるので「極小のセラの天使」、「セゴビア次元」、「ガルガンティカー次元」、「MTG史上初のプレインズウォーカーとストーリー」の4つに分割して考えたい。
極小のセラの天使
カードメカニズム的な面白さは、呪文コスト1マナで、パワーとタフネスが1/1、飛行と警戒を持つ天使、…すなわちこのカードはミニサイズのセラの天使(Serra Angel)であるところだ。セラの天使はマジック初の天使であり、MTGを象徴するキャラクターとして長年親しまれてきたカードである。セラの天使はプレインズウォーカーのセラ(Serra)が生み出した天使であるとされて、単純に再録されるだけでなく、設定上はセラの天使である様々な天使カードがデザインされた。
このセゴビアの天使が、カードメカニズム的にセラの天使オマージュなのは明らかだが、イラストの方もセラの天使を意識したものになっている。基本セット第9版で刷新されたセラの天使のイラストと比較してみると、天使のポーズがほとんど同じである。
もしかしてセゴビア次元を訪問したセラが創造した天使がこのカード…というのは少々考え過ぎだろうか。
余談だが、基本セット第9版のセラの天使を意識したイラストには、このカード以前に「基本セット2010」の悪斬の天使(Baneslayer Angel)が存在している。こちらもポーズがかなり似せられていることが分かると思う。
セゴビア次元の来歴と設定
セゴビア(Segovia)はMTG最初期の次元の1つ。しかし、露出はかなり少ない次元である。セゴビアがどう扱われてきたか来歴を振り返りたい。1
セゴビアは1994年発売のカードセット「レジェンド」収録のカード「セゴビアの大怪魚(Segovian Leviathan)」のカード名が初出である。当時はセゴビアが何を意味するのか不明瞭であった。現実世界のスペインには同名の都市が存在するため、そちらに関連するものと考える者もいた2。2度目の言及が1998年のDuelist誌25号の記事Dominian FAQでのこと。セゴビアは「全ての大きさが100分の1のサイズのミニチュア次元」であると設定が公開された。
3番目の言及は2003年の小説Champion’s Trialである。登場人物がセゴビアにプレインズウォークして訪問するごく短い場面だが、実は「セゴビア」と言う名称は作中に出てこない。後に作者のスコット・マクゴウ(Scott McGough)がファンサイトの質問に回答してようやくセゴビアだったことが確定した。
モダンホライゾン時点で、セゴビアが小説やコミック作品で登場したのはこの小説Champion’s Trialの1度きりである。3
4番目が2009年発売のプレインチェイスの次元カード「ヒッポドローム(The Hippodrome)」である。ヒッポドロームとは「馬やチャリオットなどの走行競技場」である。セゴビアの天使のイラスト背景にも描かれている。
セゴビアはこうしてだいたい5年ごとにちょっとだけ登場しては去っていくそんな存在であった。
そして2019年、5番目の言及が今回のモダンホライズンということになる。前回から10年も経過してしまったが、その分、このカードは濃厚な仕上がりになっていてうれしい。
セゴビアは全てが100分の1サイズのミニチュア次元である。
カード化されたクリーチャーは2種類。セゴビアの大怪魚(Segovian Leviathan)とセゴビアの天使(Segovian Angel)。
作品の登場は小説Champion’s Trialのごく短いシーンの1回だけ。
次元カード1種類あり。ヒッポドローム(The Hippodrome)。
セゴビアと対極のガルガンティカー次元
セゴビアと対称的にガルガンティカー(Gargantikar)は何もかもが巨大な次元である。今回のフレイバー・テキストで初登場した新規の次元だ。
フレイバー・テキストによると、召喚されたガルガンティカーの羽虫とセゴビアの天使が戦いを繰り広げた。それは「多元宇宙で最も破壊的でない」として記録されるほどの戦いであった…。
イーサン・フライシャー(Ethan Fleischer)はTwitterのコメントで、モダンホライゾンのフレイバー・テキストに仕込んだ冗談で新たな次元ガルガンティカーを創造したんだ、と嬉しそうに報告をしている。この一連の会話の中では、セゴビアは小さくガルガンティカーは大きい。ガルガンティカー羽虫は1/1サイズになるだろう、などとも語っている。
和訳製品版では「ガルガンティカーの」を意味する「Gargantikari」が「ガルガンティカリ」と訳されているのが残念だ。
MTG史上最初のプレインズウォーカーとストーリー
最初のMTG製品である「基本セット・アルファ版」のルールブックにはリチャード・ガーフィールド(Richard Garfield)によるミニストーリーがイントロダクションとして掲載されていた。史上初のMTGのストーリー作品である。
このストーリーはプレインズウォーカーのウォーゼル(Worzel)とトミル(Thomil)の対決を描いている。ウォーゼルは女性で白と緑の魔法を使い、トミルは男性で赤と黒の魔法を得意としている。
この2人はそれからほんの数回だけ掌編で顔見せをしたマイナー・キャラクターであった。それが、このモダンホライゾンで再登場。カードのフレイバー・テキスト上には初登場である。
ウォーゼルは極小世界のセゴビアの天使を、トミルは極大世界のガルガンティカー羽虫を、それぞれ召喚して決闘している。いつまでも宿敵同士のままで微笑ましい。
とりあえず拾い上げられたネタは以上ここまで。
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