カード紹介:蹴爪のクズリ

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蹴爪のクズリ(Spurred Wolverine)はカードセット「オンスロート」収録のクリーチャー・カードである。

蹴爪のクズリの解説

After a few painful experiences, goblins learned not to pick their noses around the beasts.
ゴブリンは手痛い経験を経て、ビーストの周辺では鼻をほじくるべきでないことを学んだ。
引用:蹴爪のクズリ(Spurred Wolverine)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版

蹴爪のクズリ(Spurred Wolverine)

データベースGathererより引用

蹴爪のクズリ(Spurred Wolverine)はドミナリア次元オタリア大陸のクズリの1種である。全体的に体毛は黒褐色だが、体側の毛は白い。ゴブリンよりもかなり大型である。頭の後ろ側、背面には赤い「骨棘(こつきょく:Bonespur)」が何本も起立している。

カード名の「Spurred Wolverine」は公式和訳では「蹴爪のクズリ」と翻訳されているので本記事でもそれに従って書いているが、この和訳名は誤りである。「骨棘の生えたクズリ」くらいがまだそれらしいと考えられる。詳細は後述



蹴爪のクズリの先制攻撃

蹴爪のクズリは、カード・メカニズム上では、ビースト2体をタップして先制攻撃を与える能力を持っている。

当時のクリエイティブ・ライターのマット・カヴォタ(Matt Cavotta)公式記事The Ballpark at Otariaによると、このクズリは背中に生えているような赤い骨棘によって仲間に先制攻撃を与えている、と解説している。

イラスト(画:Daren Bader)に描かれたクズリの骨棘を赤丸で囲った

よく分かるように大きめのイラストに描かれた骨棘を赤丸で囲ってみた。クズリの背面はもちろん、ゴブリンの右手の甲にも同じ赤い骨棘が生えているのが分かる。これがクズリが仲間に与える先制攻撃の正体だ。

このゴブリンと骨棘は、おそらくアメリカン・コミックのヒーロー「ウルヴァリン」の爪を意識したものだろう。なぜなら、ウルヴァリンはクズリを意味するコードネームであるし、ウルヴァリンの爪は手の甲からまっすぐに生える必殺武器なのだ。それに、ゴブリンの苦み走った表情もウルヴァリンことローガンにどことなく似ている。

鼻をほじるゴブリンの教訓

After a few painful experiences, goblins learned not to pick their noses around the beasts.
ゴブリンは手痛い経験を経て、ビーストの周辺では鼻をほじくるべきでないことを学んだ。

フレイバー・テキストは何だかおかしな文章である。鼻をほじるゴブリンの教訓とは?

「ビースト」とはこのクズリのことを指しているので、その周辺に居ればイラストのゴブリンのように手から骨棘が生やされてしまう。となると、いつものように鼻をほじろうとすれば、ゴブリンは骨棘で鼻を傷つけてしまうのは必然。これがゴブリンの「手痛い経験」だ。

クズリの近くでは決して鼻をほじってはならない。



蹴爪のクズリのカード名

まず最初にはっきりさせておきたい。このカード名の「Spurred」が「蹴爪の」と和訳されているが、これは間違いである。また、オンスロート・ブロックの公式和訳や当時の日本公式サイトの翻訳記事クリーチャー・タイプ“人間”でも「Spur」や「Bonespur」が「蹴爪」と訳されているがそれらも間違いである。

確かに「Spur」には辞書的には「拍車」や「蹴爪」という意味がある。「蹴爪」とは「鶏などの雄の足の後ろ側にある突起」や「牛や鹿などの足の後ろにある地面に着かない小さい指」のことだ。

では、オンスロート・ブロックのビースト・クリーチャーが統一した特徴として持たされている「Spur」とはどういったものか?足の後ろに生えた蹴爪なのだろうか?

オンスロート・ブロックの「Spur」とは、ビーストの主に背面に鋭く大きく発達した突起状部位を指し示している。これは当時の複数の公式記事で「Bonespur」つまり「棘のように変成した骨」「骨棘(こつきょく)」と解説されているものだ。

オタリアのビーストの骨棘

背中なのに蹴爪という意味が通らない図
翻訳記事クリーチャー・タイプ“人間”より引用

上図は翻訳記事から引用したものだ。背面の骨棘が「蹴爪」と訳されているのがはっきりと分かる。背中に位置しているにもかかわらず、当時の公式翻訳は常に「蹴爪」で押し通していた。翻訳方針としては一貫性があるものの、やはりこれを蹴爪と呼ぶのは不自然だ。

仕切り直してカード名を再解釈

では、誤訳を確認できたところで、蹴爪のクズリ(Spurred Wolverine)のカード名を再解釈しよう。このクズリのイラストでも「骨棘」は頭の後ろの背面にびっしりと起立している。もちろん足の蹴爪の位置には突起など何もない。

素直に考えれば「Spurred」は背中の骨棘を指すと見て、「骨棘の生えたクズリ」くらいに解釈できる。

あるいは、「Spurred」には辞書的に「拍車をかけた・激励した」という意味があるので、先制攻撃を与えるメカニズムを「仲間に拍車をかける」と捉えているのかもしれない。そういう含みも少しはあると個人的に感じる。

さて、今回の記事はここまでだ。2002年のカードセット「オンスロート」から数えて18年になるが、前々から「蹴爪」という不適切な訳に関するもやもやが心の隅に積もっていた。ここでようやく言語化して書くことができ、いくぶんスッキリした。

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