ゼラパ(Zerapa)はドミナリア次元の大山脈地帯である。
追記(2022年8月28日):カードセット「団結のドミナリア」にてゼラパのミノタウルスが猛然たる怒声(Furious Bellow)のイラストに再登場していた。
ゼラパの解説
ゼラパ(Zerapa)はドミナリア次元北ジャムーラ亜大陸の大山脈地帯である。ドミナリアでも2番目の広さを誇る山地帯(の1つ)である。ミノタウルスが居住している。
北ジャムーラ亜大陸の東から中央までに横たわり、南はミドマーシアン海(Midmersian Sea)があり、南西はナカイヤ(Nakaya)の沼沢地帯に隣接し、西の平原地方はキパム都市国家群(Kipamu City-States)の領域である。
情報のない土地ゼラパ
ドミナリア有数の大山脈であるにもかかわらず、ゼラパに関する情報は非常に少ない。確定情報はミノタウルスが居住していることくらいである。
ゼラパはカードセット「プロフェシー」では5色のマナのうち赤を担当する土地ではあったのだが、赤に属するカードはケルドの侵略軍がかなりの比率を占めており、北ジャムーラ亜大陸側の赤の勢力に割かれている数は充分とは言えなかった。
ゼラパをカード名に冠するカードはゼラパのミノタウルス(Zerapa Minotaur)1種類のみで、その上、フレイバー・テキストに至ってはゼラパという単語自体の言及すら存在しない。
小説Prophecyでもゼラパは登場せず、北ジャムーラを舞台とした短編でもゼラパは言及されたことがない。
カードセットの赤の代表土地だのにこの扱いだ。ゼラパはかなり不遇な地域なのである。
AR4205年のゼラパ
ゼラパと北ジャムーラ亜大陸はカードセット「プロフェシー」で初めて舞台となった地域である。AR4205年、ケルド軍が北ジャムーラ亜大陸を侵略するというストーリーであった。これが後世において「プロフェシー戦争(Prophecy War)」と呼ばれる戦いである。
前述の通り、ゼラパは小説Prophecyに登場しなかったが、プロフェシー直後のインベイジョン・ブロックの特設サイトの記述によって、ゼラパがケルドとの戦場になっていたことが明らかになった。
ZERAPA
The war with the Keldons has left the Jamuraans of Zerapa battle-weary. But, now with the Phyrexians invading in increasing numbers, the Zerapa people have joined with neighbors Vintara and Nakaya to create a new army of multi-colored warriors.
ゼラパ
ケルド人との戦争を終えて、ゼラパのジャムーラ人は戦いで疲弊していた。しかし、今やファイレクシアの侵略軍は増加の一途を辿り、ゼラパの人々は近隣のヴィンタラやナカイヤと協力して、多色の戦士の新しい軍隊を作り上げている。
引用:インベイジョン・ブロック期の特設サイトの地図(リンク)
上が英語原文。下が私家訳
以上の記述が、特設サイト地図のゼラパの項目に書かれていたのだ。そして、そこに添付されたイラストが雷景学院の戦闘魔道士(Thunderscape Battlemage)であった。
雷景学院の戦闘魔道士(Thunderscape Battlemage)はカードセット「プレーンシフト」収録のクリーチャー・カードである。
ストーリーではファイレクシアの侵略に対抗して、ドミナリアの異なる色の勢力が同盟を結んで立ち向かうことになる。このカードは黒と緑の勢力と手を結んだ赤のカードという立ち位置であり、「黒のナカイヤ(Nakaya)」と「緑のヴィンタラ(Vintara)」に同盟する「赤のゼラパ」の立場が合致している。その共通点から選別されたイラストと思われる。
ゼラパのミノタウルス
There’s no difference between bone and crystal when it’s piercing your throat.
喉を突き刺されるとしたら、骨で刺されようがクリスタルで刺されようが、どんな違いがあるんだい。
引用:ゼラパのミノタウルス(Zerapa Minotaur)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
ゼラパのミノタウルス(Zerapa Minotaur)は北ジャムーラ亜大陸の山脈地帯ゼラパに住むミノタウルスである。カード上でゼラパに言及する唯一のカードでもある。
このイラストのミノタウルスは角が赤い水晶体のような特徴を示しており、メカニズム的には対戦相手の妨害で先制攻撃を失うデメリットが持たされている。どちらもリスティック魔法的な特徴である。つまり、フレイバー・テキストにある「クリスタル」とは、リスティック魔法による水晶体の角を示している。
このカードは「リスティック魔法でゼラパから召喚されたミノタウルス」か、あるいは「リスティック魔法で角を強化しているゼラパのミノタウルス」か、どちらにも解釈が可能である。
猛然たる怒声
Minotaurs sometimes pretend to be lost in a battle rage, leading their opponents to understimete their cleverness.
ミノタウルスは激闘の中で我を失ったかのようにみせかけ、相手が賢さを見くびるように誘うことがある。
引用:猛然たる怒声(Furious Bellow)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
猛然たる怒声(Furious Bellow)はカードセット「団結のドミナリア」収録のインスタント・カードである。
イラストにはゼラパ・ミノタウルスが描かれており、おそらくここはAR4562年時点でのゼラパの山脈地帯であろうと考えられる。
カードセット「プロフェシー」は2000年発売なので、ゼラパ・ミノタウルスは現実世界で22年振りの再登場となった。
北ジャムーラ亜大陸の赤カード
尾根の憤怒獣
軍隊がジャムーラ全域で戦っていたとき、獣どもは高いところをうろつきながら獲物を探していた。
While armies battled across Jamuraa, beasts stalked the high places looking for victims.
引用:尾根の憤怒獣(Ridgeline Rager)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
尾根の憤怒獣(Ridgeline Rager)は北ジャムーラの「山の稜線(Ridgeline)」に住むビーストの1種である。
AR4205年のプロフェシー戦争では、戦争を尻目に獲物を探して高地をうろついていたという。その直後のファイレクシア侵攻戦争でも同様の態度であったのだろう。
岩滓の猫
Like a volcano, it too can erupt without warning.
火山と同じだよ。何の予告もなく、いきなり噴火するんだからね。
引用:岩滓の猫(Scoria Cat)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
岩滓の猫(Scoria Cat)は北ジャムーラの猫類の1種である。
カード名の「岩滓(がんさい:Scoria)」とは火山からの噴出物の1種で、気泡が多く黒い。イラストでは溶岩の流れる場所に居り、フレイバー・テキストでは火山のようにいきなり噴火する気質を持っているという。岩滓の猫は火山から噴出する岩滓のような気性の猫、あるいは、岩滓のある土地に住む猫といった意味合いか。
山脈の闘獣
Grapplers hunt in packs, driving their victims over steep mountain cliffs.
闘獣は群れで狩りをする。獲物を山の上の高い崖へ追い込んで突き落とすんだ。
引用:山脈の闘獣(Spur Grappler)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
山脈の闘獣(Spur Grappler)は北ジャムーラ亜大陸のビーストの1種である。
カード名で「山脈」と訳されている「Spur」は「拍車」のことで、「拍車状に突起した尾根」や「鳥や牛などの蹴爪」の意味も含む言葉である。一方、「闘獣」と訳された「Grappler」は「組み合う者」「格闘家」と言った意味の言葉で、このカード以降のカード名では「闘士」と訳されている。
フレイバー・テキストによれば、闘獣は群れで狩りをして、獲物を山中の急な崖に追い込んで落とすのだという。この狩りを行う際に、名前通りに「尾根」で「組み合う」のだろうか。
イラストを見ると、この闘獣は身体に比べて頭部は大きく、触覚か角のような細長い2本の突起が頭頂部から後方に伸びている。幅が広く大きな鳥に似たくちばしを持つ。4本足で、前足は細く指があり、発達した後ろ足は飛び跳ねるのに適した形状に見える。尾は見当たらない。体色は黄褐色で、背中に茶斑模様がある。
ちなみにこのカードのイラストはケルドの火弾兵(Keldon Firebombers)と繋がっており、元々はRandy Gallegosによる1枚のイラストである。イラストの左の方の一部が山脈の闘獣で使われ、右の方がケルドの火弾兵に利用されている。闘獣とケルド人が互いに背を向け合っている構図だ。
イラストについては、20年ほど前のウィザーズ公式サイト記事でも紹介されていたはずだが、すでに記事は失われている。
さて、大きなくちばしと飛び掛かるのに適した後ろ足を持ち、茶斑模様のある四足獣と言う点に注目すれば、カードセット「プロフェシー」には特徴の似たクリーチャーがいることに気付く。それが二重の造物(Dual Nature)に描かれた謎生物である。
この謎生物は、ケルド人に「組み付いている」様子がある意味で「Grappler」と言えるし、細長い2つの耳をピンと揃えて後ろに向けたなら山脈の闘獣と同じようなシルエットに見えるだろう。あるいは、北ジャムーラの森林地帯に生息する闘獣の近縁種がこの謎生物なのかもしれない。
移り気なイフリート
Flame chooses its own course.
炎は自分の行き先を自分で決める。
引用:移り気なイフリート(Fickle Efreet)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
移り気なイフリート(Fickle Efreet)は北ジャムーラのイフリートである。
両手は長い触手である。右手を牛に巻き付けており、大きさの対比からこのイフリートが巨人であることが分かる。頭部から背中にかけて炎を噴き上げている。口は歯茎がむき出しで、上下ではなく、左右に開く形になっている。
北ジャムーラ亜大陸の南にはミドマーシアン海を挟んで、東ジャムーラ亜大陸のティヴァン砂漠(Tivan Desert)があり、遥か昔からラバイア次元と繋がる魔法門が存在していた。魔法門を経由して、アラビア風次元のラバイアからイフリートやジンなどがドミナリアに移住してきた歴史があることから、移り気なイフリートもそういった移住者かその末裔なのかもしれない。
火炎弾
火炎弾(Flameshot)には火球を発生させたジャムーラ人の女性魔術師が描かれている。
カードセット「プロフェシー」において、リスティック魔法的な要素のない赤のジャムーラ人魔術師はこのカードだけだ。
一芸魔道師の集会
一芸魔道師の集会(Task Mage Assembly)は輪になった特務魔導士の集団である。
カード名で「一芸魔道師」と訳された「Task Mage」は「特務魔導士」が定訳である。公式記事Magic Storyline & Environment FAQによれば、「特務魔導士は用心棒、雇われ魔導士である。経験の浅い魔法使いであることが多く、特定の仕事をするために雇われる。特務魔導師は特定の一族や王、ギルドなどへの忠誠は誓っていない。」という設定である。
イラストが細部まで描かれてなく不明瞭なので、特務魔導士たちはジャムーラ人でなくケルド人の可能性もある。ただし、他で取り上げることもないと思うのでここで拾い上げてみた。
おまけ:ドミナリア第2位の面積の大山脈
ゼラパはドミナリア次元で第2の広さを持つ山脈地帯と思われるが、明言ができない。
ドミナリア世界地図によると、ドミナリアで最も広い山地帯は東ジャムーラ亜大陸中央を占める大山脈なのは明らかである。1だが、その次の山脈となると難しい。この世界地図がメルカトル図法で描かれているためだ。
メルカトル図法の性質上、緯度が高くなるほど形が歪むため正確な面積比較はできない。公式記事Dominarian Cartographyによると、地図作成の過程で地形がより見栄えが良いように少々手を加えてあるという(コンピューターなど現代的な技術を持たないドミナリア人が描いた地図だという雰囲気を意識)。
例えば、シヴ(Shiv)の山々はゼラパよりも大きく描かれているものの、緯度が高いのでゼラパよりも面積は小さいはずだ。
ゼラパは位置的に赤道直下にあるので地図上での形の歪みは少ない。他の山脈は描かれているよりもっと狭いはずで、おそらくゼラパが次元第2位の広さの山脈地帯と言って間違いではないとは思うのだが…。
歯切れが悪いが今回はここでおしまい。