本記事ではプレインズウォーカーのフレイアリーズ(Freyalise)のトレードマークである『眼帯』について取り上げたい。
今回も軽い内容だ。
フレイアリーズの眼帯
フレイアリーズ(Freyalise)はプレインズウォーカー・カードのラノワールの憤激、フレイアリーズ(Freyalise, Llanowar’s Fury)としてカード化されている。
フレイアリーズの顔を見ると、彼女のトレードマークである『眼帯』に気付けるだろう。右目を覆う海賊風のアイパッチである。

フレイアリーズの眼帯各種カードより引用
3種類のカードからフレイアリーズの顔を抜き出して並べてみた。いかにも海賊がつけていそうな『眼帯』である。だが、これはただの『眼帯』とはわけが違う。特殊なゴーグル型装置なのである。
フレイアリーズは隻眼ではない
ちなみに『眼帯』に見える形状であるが実際はゴーグルなので、フレイアリーズは隻眼ではなく、右目にはきちんと視力がある。
小説Planar Chaosで、最期を覚悟したフレイアリーズは『眼帯』を外すのだが、隠されていた右目は虹彩が「ルビーレッド(ruby-red)」で、左の虹彩は「アイスブルー(ice-blue)」であった。左右で虹彩が色違いだ、といっても、フレイアリーズがオッドアイであったと言うことにならない。普段の左目は「ハシバミ色(hazel)」なのだ(小説Time Spiral
より)。最期の戦いに出陣する前は、本気を出した魔力の影響でこのような色合いに変わっていたのだろう。

フレイアリーズの眼帯各種カードより引用
イラストでもだいたいハシバミ色に見える。特別版イラストのラノワールの憤激、フレイアリーズの左目が青く発光している(上の抜粋イラストの右側)のは小説の描写を受けてのものだろう。
眼帯型ゴーグル装置

破滅的な行為(Pernicious Deed)のイラストの『眼帯』はいかにもゴーグル装置らしい外見だ
フレイアリーズの『眼帯』は各登場作品中で「眼帯(eye patch)」や「ゴーグル(goggle)」、「ハーフゴーグル(half-goggle)」などと表現されている。最も詳しい記述は小説Planar Chaosにある。
情報を総合すると、この『眼帯』は真鍮色をした金属製の眼帯型ゴーグル装置であり、煌めく宝石が1個はめられている。宝石は発光したり点滅したりする。何らかの魔法的な機能が備わっている。
ラノワールのエルフと『眼帯』の機能
フレイアリーズの『眼帯』は、ラノワールのエルフの鉄葉教団(Order of the Steel Leaf)が装着する伝統的なゴーグルと同系統の装備である。カードセット「リミテッドエディション(基本セット第1版)」のラノワールのエルフ(Llanowar Elves)のイラストに描かれているゴーグルがまさにそれである。
フレイアリーズの『眼帯』自体の機能は作中描写からは余り読み取れないものの、ラノワールの鉄葉教団の方ならきちんと設定が公開されている。公式サイト記事Encycropedia Dominia見出し語解説によると、鉄葉教団が片目につける眼帯の中には、フレイアリーズ本人から最初に授けられたものがあり、着用者に見たものの本質を見抜く魔法的視力を与えると言われている。
したがって、鉄葉教団の信仰する女神フレイアリーズの『眼帯』ならば、当然ながらこの魔法的視力機能が備わっているはずだ。フレイアリーズ本人の特別版となれば、さらに特殊な機能が追加されていたり威力が強化されていてもおかしくはないだろう。
ドミナリア氷河期、エローナ大陸ラノワールの森に住むエルフたちは生き残るのに厳しく困窮した時代に、よそ者嫌いの性質を深めていった。ラノワールのエルフは森の資源を奪いに来る侵入者を問答無用に矢で射殺すのだ。
鉄葉のチャンピオン(Steel Leaf Champion)はAR4500年以後の鉄葉教団を表現したカードの1つだデータベースGathererより引用
フレイアリーズがAR25世紀頃にプレインズウォーカーとなると、ラノワールの森を守護するようになる。フレイアリーズは森を守る戦闘組織「鉄葉教団(Order of the Steel Leaf)」を創設し、鉄葉教団は使命に忠実に働き侵略者を遠ざけた。氷河期以後も、そしてAR4500年のフレイアリーズの死後でも、鉄葉教団は森の守護者であり続けているが、フレイアリーズの聖なる教えと使命に厳格すぎるがゆえにしばしばラノワール内の対立の火種となった。
鉄葉教団は眼帯やゴーグルを装着し、刺青をしており、明るく染めた髪はしばしばモヒカンにしている。
氷河期のフレイアリーズと眼帯
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フレイアリーズ(灯の点火前の姿)コミック版アイスエイジvol.1より引用
フレイアリーズは氷河期中のAR25世紀頃の生まれでプレインズウォーカーとなった。プレインズウォーカーの灯の点火前から、氷河期終焉のAR2934年まで、フレイアリーズは『眼帯』を装着してはいなかった。フレイアリーズのオリジンから氷河期終焉まではコミック版アイスエイジで語られている。
また、前節で解説したように、フレイアリーズは氷河期中に鉄葉教団を創設している。鉄葉教団は眼帯やゴーグルを必ず着けているのだが、最初の眼帯はフレイアリーズから授けられたものである。コミック作中でフレイアリーズ本人がまだ『眼帯』をしていないので、鉄葉教団の方も氷河期以降に装着するようになったと考えるのが自然ではないだろうか。

右目を押さえるフレイアリーズコミック版アイスエイジvol.4より引用
氷河期のフレイアリーズの右目にまつわるエピソードと言うと1つだけ思い当たるものがある。
コミック版アイスエイジvol.3で、フレイアリーズはテヴェシュ・ザット(Tevesh Szat)に敗北した際、全身の皮膚が焼けただれた状態になってしまった。続くコミックvol.4冒頭では、フレイアリーズは右目を苦し気に抑えていたのだ。その後、フレイアリーズの目には瞳が描かれることはなく物語の最後から3ページ目まで痛々しい姿の状態であった。

完治したフレイアリーズコミック版アイスエイジvol.4より引用
しかし、フレイアリーズの傷ついた身体は、氷河期を終結させる大呪文『世界呪文(Worldspell1)』を完了させた瞬間に、右目共々完治したようだ(小さめの1コマに傷の無くなった顔と右目の瞳が描かれている)。
敗北によって右目を負傷した苦い経験から、目を保護する眼帯を装着するようになった…という発想はいささか安直であろうか?
フレイアリーズの『眼帯』設定の経緯
では、改めてフレイアリーズの『眼帯』がいつ頃から設定として作られ、どの作品で登場しどう扱われてきたか?その経緯をまとめてみたい。
1997年頃、公式サイト記事Encyclopedia Dominiaにおいてフレイアリーズは、ラノワールのエルフ(Llanowar Elves)と設定上のつながりが作られて公開された。鉄葉教団と眼帯はここが初出だ。フレイアリーズがエルフに最初の眼帯を授けたとあるが、フレイアリーズ本人の『眼帯』はこの時はまだ出ていなかった。
2000-2001年のインベイジョン・ブロック期に、フレイアリーズはコミック版とは違うリデザインされた姿で再登場を果たした。この時にフレイアリーズの『眼帯』が初めてカード・イラストに描写された。小説三部作すべてにフレイアリーズは登場するものの、私の見たところ『眼帯』の言及は小説Planeshiftの「片目をハーフゴーグルで覆っている2」旨だけであった。
そして2006-2007年の時のらせんブロック期に小説Time Spiralと小説Planar Chaos
で再々登場し、フレイアリーズの『眼帯』と右目の詳しい描写が小説Planar Chaos
で初めて記載された。ただし、フレイアリーズはここで死亡してしまいストーリーから退場することになった。
以上のように、フレイアリーズのトレードマークの『眼帯』を振り返ってみた。カードのイラストで印象が深いものの、実は『眼帯』は後付けで加わった要素なのが分かる。設定の起源はMTG初のカードの1つラノワールのエルフのイラストである。
それに、登場作中で『眼帯』に関して触れられた記述は多くないことにも驚かされる。フレイアリーズの外見を記述する際には『眼帯』はかなり特徴的であるにも関わらず、リデザイン再登場時のインベイジョン・ブロック三部作での言及は一言のみだった。ようやく描写が詳しくなってきたと思いきやそこでフレイアリーズの退場となったのだ。
フレイアリーズがなぜ眼帯型ゴーグル装置を作り出したのか、いつラノワールのエルフに授けたのか、その辺を掘り下げたならば面白い物語が生まれそうであったのだが…いまだ語られずじまいである。これは残念なことだ。
おまけ:フレイアリーズと丸被りのキャラクター
フレイアリーズには丸被りのキャラクターが存在しているのをご存じだろうか?
緑のプレインズウォーカーのニッサ・レヴェイン(Nissa Revane)やビビアン・リード(Vivien Reid)であろうか?
いや違う。
まずはフレイアリーズというキャラクターを構成する4つの要素を挙げよう。ほとんど本記事で扱った範囲だ。
- カードセット「アイスエイジ」が初出である。
- 作品上のストーリーでプレインズウォーカーの灯が点火している。
- プレインズウォーカー・カード化されている。
- ゴーグルが後付け設定されている。
この4つの要素が丸被りしているキャラクター。
…もうお分かりだろう。
そう、ヤヤ・バラード(Jaya Ballard)である。
ヤヤ・バラードはカードセット「アイスエイジ」のフレイバー・テキストが初登場で、小説The Shattered Allianceでプレインズウォーカーの灯が点火するストーリーが語られている。カードセット「ドミナリア」では初のプレインズウォーカー・カードとなった。ヤヤのゴーグルが後付け設定である経緯はこちらの記事で解説している。
このように4つの要素が完全一致しているのだ。
ヤヤ・バラードはフレイアリーズの丸被りキャラクターと言って過言ではない。
…………。
悪乗りはここまでとして、ヤヤ・バラードを引き合いに出したのは少しまじめな理由もある。それが次の伝説のカードだ。
紅蓮術師のゴーグル(Pyromancer’s Goggles)はカードセット「マジックオリジン」収録の伝説のアーティファクト・カードである。このカードはヤヤ・バラード(Jaya Ballard)その人のゴーグルをカード化したものなのだ。
この紅蓮術師のゴーグルだが、後付け設定されたゴーグルがカード化されただけでなく、さらにストーリー上でもキーアイテムとして使われていたのだ。
この先例はフレイアリーズの『眼帯』において希望の光となるのではないだろうか?つまり、今後フレイアリーズの『眼帯』がカード化される可能性が皆無ではない、ということだ。あるいは、『眼帯』の来歴や鉄葉教団との関連性、次世代キャラクターへの継承、などストーリーが語られるかもしれない。
「フレイアリーズの眼帯(Freyalise’s Eyepatch)」とか「鉄葉のゴーグル(Goggle of Steel Leaf)」とか。そんなカードがデザインされる未来を夢見て本記事は〆とする。
軽い記事のつもりが少しオーバーしてしまった気がしないでもない。では今回はここまで。
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