航海士、ターンガース(Tahngarth, First Mate)はカードセット「統率者2019」収録の伝説のクリーチャー・カード。ターンガースはウェザーライト号の副長である。カードセット「ウェザーライト」から「アポカリプス」まで続く長編ストーリー「ウェザーライト・サーガ」の主要登場人物の1人として活躍した。
2021年は「丑年」ということで、正月ネタとしてミノタウルスのターンガースを取り上げてみた。ファイレクシアに改造される前の姿、航海士いや「副長ターンガース」を紹介しよう。
航海士、ターンガースの解説
航海士、ターンガース(Tahngarth, First Mate)はターンガースの2度目のカード化になる。前回はファイレクシアによる改造を受けた後の姿でのカードであったのに対し、今回は改造前の本来の姿である。
ターンガースはドミナリア次元のタールルーム・ミノタウルスの男性で、短気だが勇敢で誇り高い獰猛な戦士である。自分の強さ、美しさを見せつけるナルシストでもある。イラストで左手に携えた武器はタールルーム族の水晶製武器「ストリヴァ(Striva)」だ。
ターンガースはウェザーライト号の艦長シッセイの下で働く副長(First Mate)である。カード名の公式和訳では単に「航海士」と訳されているが、原文「First Mate」は「一等航海士」とも訳される言葉であり、ターンガースは重い責任のある役職に就いているのだ。公式記事The Rath Cycle: Heroes, Villains, and Shipsによると、かつてジェラードが乗艦していた時期には、ターンガースとジェラードの2人が副長職に就いていた。
ターンガースの年齢と身長
カードセット「テンペスト」時点での公式キャラ紹介(リンク)では、ターンガースは20歳の若いタールルーム・ミノタウルスとなっている。テンペストの設定年代はAR4205年であるから、ターンガースはAR4185年誕生と計算できる。
設定集アート・オブ・マジック -ラース・サイクル編-によると、ターンガースの身長は7フィート(約2.1m)である。テンペスト・ブロック時点での主要キャラクター(グレヴェンやセレニアも含む)の中で一番背が高い。
ターンガースの指の数
ドミナリア次元には複数種のミノタウルスが生息している。頭部が牛である典型的なミノタウルスの他にも、ガゼル頭のミノタウルスなどもいるほどだ。
ドミナリアのミノタウルスでメジャーなのは牛頭の定番タイプだ。しかし、手の指の本数で2種類に大別される。5本指ミノタウルスと4本指ミノタウルスだ。
5本指ミノタウルスは人間と同じで、4本指と1本の親指を持つ。ハールーン(Hurloon)がこのタイプだ。
一方、4本指ミノタウルスは2本指を挟む形で2本の親指がある。スタハーン(Stahaan)やミルティーン(Mirtiin)、タールルーム(Talruum)のミノタウルスがこのタイプになる。小説Ashes of the Sunでは、スタハーンとミルティーンのミノタウルスは、指の本数という肉体的な違いもあるからなのか、ハールーン・ミノタウルスを蔑む描写が見られる。
ターンガースはタールルーム・ミノタウルスなのでもちろん4本指だ。既存カードで4本指で描かれているのが確認できる。
ところが、航海士、ターンガースのイラストをよく見てみると、なんと5本指に描かれてしまっている。20年近く昔のキャラクターの再カード化となるわけで、アート・ディレクターの指示漏れ・チェック漏れなのだろうなあ…と仕方ない面もあるかとは思うのだが。
ターンガースと言うキャラクターの経緯
ターンガースの初出はカードセット「ミラージュ」と「ビジョンズ」のストーリーを描いた掌編Scalebane’s Eliteである。そこではウェザーライト号のミノタウルスの船員として名前を言及されずに登場していた。そこでは単に「鋭い目つきのミノタウルス(the sharp-eyed minotaur)」とのみ書かれている。
1997年、カードセット「ビジョンズ」収録のカードでは、名前は出てこないものの「タールルームの勇者(Talruum Champion)」のイラストとして描かれ、Duelist誌15号では別バージョンのイラストが表紙を飾った(これらのイラストがターンガースであるのはカードセット「ウェザーライト」のプレビュー期のDuelist誌17号にて明かされる)。ちなみに、両方のイラストを担当者したピート・ヴェンタース(Pete Venters)は当時のコンティニュイティ・マネージャーとして設定面での整合性を調整し、各種ソースにばらけていた情報を網羅的にまとめていた人物である。
ターンガースは1997年発売のカードセット「ウェザーライト」から本格登場となる。その人となりや能力、役割、人間関係が他のウェザーライト号の面々と共にしっかりと描写されていった。ターンガースの活躍はテンペスト・ブロック(1997-1998年)、カードセット「メルカディアン・マスクス」(1999年)、そしてインベイジョン・ブロック(2000-2001年)と描かれており、ファイレクシアとの過酷な戦いを最後まで生き抜いている。
また、各種カードセットのストーリーと並行してDuelist誌に掲載された連載短編シッセイ・クエストでは、ターンガースがウェザーライト号に乗艦するきっかけとなったシッセイとの出会いが語られている。
ターンガースが最後に登場したインベイジョン・ブロック期から20年近くが経過した2019年、カードセット「統率者2019」では改めてターンガースがカード化されることになった。このセットには、ターンガースとの関係が深いウェザーライトの艦長代理ジェラード(Gerrard)、ライバル関係のグレヴェン(Greven)、その上司であるエヴィンカーのヴォルラス(Volrath)が同時収録されている(ちなみに4人ともカード化は2回目である)。
航海士、ターンガースに言及するカード
ファイレクシアに改造されるまでのターンガースに言及するカードをおおよそ時系列順に並べて解説を加えてみた。
ちなみに、カードセット「ウェザーライト」では、フレイバー・テキストの担当者は主要キャラクターごとに同一のライターが割り振られている。ターンガース担当はJennifer Clarke Wilkesである(スクイーも担当している)。
ヴァンガード版ターンガース
Tahngarth, first mate of the Weatherlight under Sisay, knows that there are really only two forms of life: the ugly ones and the minotaurs. A narcissist, he considers the condition of his hide as important as the accuracy of his blade.
引用:ヴァンガード版ターンガースのフレイバー・テキスト
ターンガースは普通のMTGでカード化される以前に、特殊製品ヴァンガードでカード化されている。ヴァンガードはデッキに入れるカードではなく、ゲーム開始以前から1種類を出しておくことができ、初期ライフや初期手札に修正が加えられたり、特殊な効果を受けられたりするものだ。
カードセット「ウェザーライト」のターンガース
ベナリアの宣教師(Benalish Missionary)
“These horn-haters say no gods but theirs exist. I say let him find out for himself-right now!”
–Tahngarth of the Weatherlight
この角嫌いどもは、自分たちの神以外、全部偽物だとぬかしやがる。だから言ってやったさ。どっちの言い分が正しいか、確かめに行かせてやろうって!
–ウェザーライトの副長、ターンガース
引用:ベナリアの宣教師(Benalish Missionary)のフレイバー・テキスト
ベナリアの宣教師(Benalish Missionary)はAR4204年のドミナリア次元ベナリアの天使の炎教会の宣教師である。天使の炎教会は天使の炎ガブリエル(Gabriel Angelfire)を崇拝する、当時のベナリアで最も人気のある宗教であった。
ターンガースはかつての乗組員ジェラード・キャパシェン(Gerrard Capashen)を再びウェザーライト号に迎え入れるためにベナリアへとやって来たのだ。ターンガースはジェラードのことを責任を放棄して船から逃げたとして個人的には快く思ってはいなかったのだが、艦長シッセイ(Sisay)が誘拐される緊急事態において、その解決のためにしぶしぶジェラードの力を借りに来たのだ。
このカードは、ターンガースとジェラードが再会した場面を描いている。ターンガースはベナリア市の波止場で説教する宣教師にいら立って激発寸前であった。ウェザーライト号寄港の噂を耳にしたジェラードがまさにこの場面を発見し、ターンガースの腕をつかんで気持ちを抑えるようになだめたのだ。口の達者な宣教師だったがターンガースの剣幕にしり込みして立ち去ってしまう。
このカードの場面はDuelist誌17号掲載の掌編Maelstromで詳しく描出されている。
ラノワールのドルイド(Llanowar Druid)
“This forest means more to the druids than their own kin. The loss of a tree is like the loss of a child.”
–Mirri of the Weatherlight
ドルイドたちにとって、この森は仲間以上に大切な森。一本の木が死ねば、それは子供を一人亡くしたも同じこと。
–ウェザーライトの戦士、ミリー
引用:ラノワールのドルイド(Llanowar Druid)のフレイバー・テキスト
ラノワールのドルイド(Llanowar Druid)はAR4204年のドミナリア次元ラノワールのエルフのドルイドである。イラストの左上にはウェザーライト号のターンガース、ジェラード、そして航行長ハナ(Hanna)がいる。
ベナリアでジェラードを復帰させた後、ラノワールの森に元乗組員のミリー(Mirri)を迎えにきたところだ。ドミナリアからラース次元に誘拐された艦長シッセイを救出するには、ウェザーライト号で次元移動しなければならない。しかし、その機構を扱える魔法の使い手が現在の乗組員にはおらず、ミリーならあるいはその手の魔法を知っているのでは、と白羽の矢が立ったのだ。
この時のラノワールの森では怪物アボロス(Aboroth)の脅威が問題となっており、ウェザーライト号一行はアボロスの対処に尽力しミリーを再び仲間に迎え入れた。しかし、残念なことにミリーは次元移動に関する魔法的知識は持っていなかった。
このラノワールでの件は短編集Rath and Storm収録の短編Tahngarth’s Taleに詳細がある。
トレイリア島への旅:ターンガースと魚のシッポども
ラノワールの森を離れた一行は次にトレイリア島を目指す。航行長ハナの父バリン(Barrin)は魔術師であり次元移動の魔法知識は当然持っているはずだからだ。しかし、ハナ親子は折り合いが悪く、これまで互いに距離を置いていた。トレイリアを訪問したウェザーライト号一行はバリンの代わりに若い魔術の達人アーテイ(Ertai)の助力を得ることになり、ラース次元へ移動することが可能となった。
この後、元乗組員クロウヴァクス(Crovax)、ラースの案内人スターク(Starke)が加わってラースへと出発する。
このトレイリア島への旅において、ターンガースに言及するミニストーリー「ターンガースと魚のシッポども」がフレイバー・テキストで展開されている。
スペースを取るのでカードは折り畳み表示にした。確認するにはクリックしてほしい。
カードセット「ウェザーライト」でのランダムイベント
このカードはカードセット「ウェザーライト」での時系列が不明なカードである。おそらくは特にどのタイミングで派生した出来事であるか決められていないウェザーライト号の航行中の一場面だろう。
“Maybe we can trap them with bait,” thought Tahngarth, eyeing Squee.
ひょっとすると、囮を使ってあいつらを捕まえられるかも知れんな。ターンガースはスクイーを横目で見ながら考えた。
引用:エイヴィーゾア(Avizoa)のフレイバー・テキスト
“I believe it when they say they’re connected to the land-looks like somebody plowed her face.”
–Tahngarth of the Weatherlight
大地とハールーンの者たちとの絆のことを聞かされても、疑う気にはならなかったね–あの女の顔、誰かが鋤で耕したみたいじゃないか。
–ウェザーライトの副長、ターンガース
引用:ハールーンのシャーマン(Hurloon Shaman)のフレイバー・テキスト
フレイバー・テキストを見ると、この時点でのターンガースはハールーン・ミノタウルスに対してかなり厭味で辛辣な物言いをしている。容貌に自信があるターンガースだからこその鼻持ちならなさとまだ未熟な青臭さがある。相手の姿を馬鹿にしてここまでいきがっているターンガースだが、これから先で自慢の姿を失って苦難を乗り越え、遂にはハールーンから認められる高潔な英雄へと成長するわけだ。長編ストーリーの登場人物はこれだから面白い。
カードセット「テンペスト」のターンガース
ウェザーライト号はラース次元に次元移動してすぐにプレデター号の急襲を受ける。プレデター号はグレヴェン(Greven)が指揮をする戦闘飛翔艦である。グレヴェンは艦長シッセイを誘拐した黒幕のヴォルラス(Volrath)に仕える副官なのだ。
プレデター号からモグの部隊がウェザーライト号に乗り移ってくる。ターンガースは襲撃者と戦うが、モグの部隊はレガシーを略奪するとプレデター号へ引き揚げていく。レガシーの一部であり乗組員でもあるカーン(Karn)も連れ去られてしまった。
激怒したターンガースはプレデター号に跳び移り、船内でグレヴェンと戦うこととになる。しかし、力及ばずに敗れて捕虜となり、ラースの要塞に移送される。ターンガースはヴォルラスの手でファイレクシア風に改造されてしまうのだった…。これがカードセット「テンペスト」のメインストーリーにおけるターンガースの行動である。
ターンガースの激怒(Tahngarth’s Rage)
“Taste my horns!”
–Tahngarth of the Weatherlight
おれの角の味を試してみろ!
–ウェザーライトの副長、ターンガース
引用:ターンガースの激怒(Tahngarth’s Rage)のフレイバー・テキスト
ターンガースの激怒(Tahngarth’s Rage)の場面は以下のようなものだ。
略奪を終えたプレデター号がウェザーライト号から遠ざかっていく…だがターンガースはただでは済まさんとプレデター号に飛び移った。
番犬(Watchdog)
Its growl is a long, rumbling grind of gears and clockwork, its bark a blast of hissing steam.
そのうなり声はギアかぜんまいがこすり合うようなギリギリと長く尾を引く音であり、その吠え声は蒸気が吹き出すときのようなシューッという鋭い音である。
引用:番犬(Watchdog)のフレイバー・テキスト
番犬(Watchdog)はプレデター号のアーティファクトの番犬である。このイラストにもターンガースが描かれているのだが、パッと見ても分かりにくい。
公式記事Twenty Things You Might Not Have Known About Tempestの大きなイラストならば右上で忍び歩くターンガースの姿がハッキリ見えるだろう。
プレデター号に飛び移ったターンガースが敵艦内で隠密行動をしているのだ。
モグの徴集兵部隊(Mogg Conscripts)
“Torahn’s horns! They’ve seen us. Now, statue, you must fight to save yourself!”
–Tahngarth, aboard the Predator
「トランの角だ!見られてしまったぞ。おい、像め、助かるためにはお前も戦わねばならんぞ!」
–プレデター艦上のターンガース
引用:モグの徴集兵部隊(Mogg Conscripts)のフレイバー・テキスト
モグの徴集兵部隊(Mogg Conscripts)の場面は以下の通りだ。
プレデター号の艦内、ターンガースはどうにかさらわれたカーンを発見したものの、脱出しようとしているところをモグたちに姿を見られてしまった!?
白兵戦(Hand to Hand)
The match between Tahngarth and Greven was close only in the mind of the minotaur.
ターンガースとグレヴェンの争いが互角だったなどということは、ターンガースの頭の中にだけあることだった。
引用:白兵戦(Hand to Hand)のフレイバー・テキスト
白兵戦(Hand to Hand)ではプレデター号艦内で一騎打ちをするターンガースとグレヴェンである。
モグたちに見つかったターンガースは獰猛に戦いモグを蹴散らすが、そこに敵艦長グレヴェンが到着するや風向きが変わった。ターンガースは奮闘するも打ち負かされ、カーンと共に捕虜となってしまった。
拷問室(Torture Chamber)
拷問室(Torture Chamber)はラース次元の要塞内にある。
プレデター号はヴォルラスの要塞に帰港し、ターンガースとカーンの身柄はグレヴェンからヴォルラスへと渡った。ヴェルラスは先ほどの戦いでジェラードはウェザーライト号から落下したとの報告を受けるが、それで死んだとは確信できず、もしジェラードが生きていれば仲間たちを救出に乗り込んでくるに違いないと考えた。ターンガースとカーンは要塞の拷問室に閉じ込められた。
ヴォルラスの呪い(Volrath’s Curse)
ヴォルラスの呪い(Volrath’s Curse)の場面は以下のようなものだ。
ヴォルラスは投獄したターンガースとカーンを痛めつける。ターンガースには肉体的な苦痛を、カーンには精神的苦痛をたっぷりと味わわせる。
この時点での記述は曖昧だったが、ターンガースはカード名のような「呪い」やストーリー解説の「肉体的苦痛」だけで終わっていない。ヴォルラスはファイレクシア技術でターンガースを改造して、外見を変えたばかりか身体機能を向上させてもいるのだ。
カードセット「テンペスト」でのランダムイベント
ターンガースに言及するカード群はメインストーリーを描くカードばかりではない。ラースに居住する人々や生物に対してコメントを入れているカードが5種類ある。
スペースを取るのでその5種類のカードは折り畳み表示にしている。確認するにはクリックして展開してほしい。
これらはいつの出来事になるのか…?
以下の2つのケースが考えられる。
- ラース到着後からプレデター号襲来までの間に発生した出来事や遭遇したもの。
- ターンガースのコメントが採用されているが、カード自身とは関係がない。
その後のターンガース
“Volrath has killed me. All that remains of me is the scar”
–Tahngarth
ヴォルラスは私を殺した。私の残骸として残っているのは、傷跡だけなんだ!
–ターンガース
引用:責め苦(Torment)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
責め苦(Torment)はカードセット「テンペスト」ではなく続編のカードセット「ストロングホールド」収録のカードである。このカードでは拷問室でヴォルラスに痛めつけられ、全く別人の姿に変えられてしまったターンガースが描かれている。
ターンガースはグレヴェンに敗北した上に、ヴォルラスには肉体を歪められてしまった。自分の強さと容貌にうぬぼれていたナルシストに残されたのは傷跡だけだ。ターンガースにとって地獄の責め苦であった。
ここからのターンガースの物語は過去の敗北と今の姿を受け入れ克服する方向にシフトする。その決着はインベイジョン・ブロック期の小説Planeshiftで描かれていく。
小説Planeshift
ハールーン山脈にはハールーン・ミノタウルスが住み都市カルドルーム(Kaldroom)を築いていた。ファイレクシアの侵略でカルドルームには要塞の一部が次元転移してきた。ターンガースが改造された拷問室もそこに出現した。カルドルームでは次元転移したファイレクシアとの戦闘が起こり、ミノタウルスが敗北し都市は破壊され虐殺が行われた。戦いで捕らえられたハールーンの戦士達はファイレクシアの改造のために生かされたまま保存された。
そこをウェザーライト号が急襲し、ファイレクシアの生体改造施設を破壊してハールーン・ミノタウルスを救助した。ターンガースはこの救出戦闘で最も苛烈に戦い、最も多くのミノタウルスを救い出した。自分が受けた改造の苦しみから同胞を救うため我武者羅に働いたのだ。そうした後に、ターンガースは同胞たちが覚醒する前に姿を隠し、離れた湖に潜り身を清めていた。完璧な肉体を持つ同胞たちに、歪められた自分の肉体をさらすことはできない。ハールーンの同胞に会うつもりはなかった。
ところが、ターンガースが湖から上がるとそこにはハールーン・ミノタウルスが肩を並べて整列して待ち受けていた。醜い自分の姿を同胞たちに侮蔑されようとも仕方がない。せめて堂々とウェザーライトの仲間のところに戻ろう…ターンガースがそう心に決めた。すると、ハールーン・ミノタウルスたちがターンガースの前に跪きひれ伏した。高貴なる英雄ターンガースに全員が敬意を払ったのだ。改造された姿形などは関係が無いのだ。
最後はグレヴェンとの再戦である。グレヴェンはファイレクシア技術で改造した自分を「完全なファイレクシア人」と自負する一方で、ターンガースを「半端な存在」だと嘲った。しかし、ターンガースはそんな言葉をものともせずに堂々と立ち向かい、グレヴェンを打ち負かした。
カードセット「テンペスト」でターンガースに刻まれた「傷跡」はこうして消え去ったのだ。
おまけ:タンガースの役職の翻訳
ウェザーライト号におけるターンガースの役職は「副長」「一等航海士」「航海士」と3種類が確認できる。複数の役職を兼任しているのだろうか?実はこれは和訳だけであって、英語原文は「first mate」である。つまり単なる訳ブレである。
ターンガースの役職はカードセット「ウェザーライト」以降の各種記述を見ると、英語原文では「first mate」つまり辞書的には「一等航海士」と訳される地位となっている。この一等航海士という役職は船では艦長に次ぐ第2位という高い地位である。
このカードのカード名も原文は「first mate」であるが、公式和訳では単に「航海士」と訳されている。航法担当の「navigator」も「航海士」と訳されるため混同しないように注意したい。
カードセット「ウェザーライト」とテンペスト・ブロックのカードやブックレット、記事などの和訳では、ターンガースは「副長」と書かれている。これも原文は「first mate」である。艦長に次ぐ第2位という意味合いを重んじて「副長」と訳を当てたのだろう。また、同時期には別の訳語も存在している。カードや記事の翻訳者とは別のライターが訳した設定集アート・オブ・マジック -ラース・サイクル編-では「一等航海士」となっている。
ちなみに、カードセット「ウェザーライト」と「テンペスト」のフレイバー・テキストでは「ウェザーライトの副長、ターンガース」となっている。しかしこれは原文とは合致しない。原文は「Tahngarth of the Weatherlight」と役職は書かれていなく、和訳は役職を補っているのだ。
さて、「副長」「一等航海士」「航海士」の3種類の訳語の内で、最も適切な訳語はどれだろうか?私個人は「副長」だと思っている。理由は2つある。
1つ目の理由は、乗艦が「飛翔」艦ウェザーライト号であり海よりも空を飛ぶ船であることから、「航海」という言葉に違和感を覚えることだ。
2つ目の理由は、ターンガースの同僚「航行長ハナ(Hanna, Ship’s Navigator)」の存在だ。ハナの役職「navigator」が「航行長」と訳されていることから、「一等航海士」や「航海士」よりも高い地位の役職に見えてしまう。ターンガースとハナには明確な上下関係はなく、ウェザーライト号の幹部乗組員として同格である。だから、「副長」と「航行長」ならつり合いが取れているのだ(いくぶん副長の方が高いような雰囲気はあるものの)。
以上が「副長、ターンガース」が訳語として適切だと考えられる理由だ。
さいごに
2021年は丑年ということで書き始めた本記事だ。しかし、改造前のターンガースの話で終わるつもりが最後が捕虜となって拷問の場面で尻切れになるのでは、正月ネタとしてはいささか縁起が悪い。だから、小説Planeshiftでターンガースがテンペストの傷跡から完全に解き放たれる件まで収めてみた。苦難の先には報いあらんことを。
では今回はここまで。
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