フレイアリーズ(Freyalise)はドミナリア次元のプレインズウォーカーである。
初出はカードセット「アイスエイジ」で、カード化はラノワールの憤激、フレイアリーズ(Freyalise, Llanowar’s Fury)としてカードセット「統率者2014」でされた。
今回はフレイアリーズの外見デザインが初期からどのような変遷をしていったのか。また、そもそもフレイアリーズと言うキャラクターはどういう経緯を経てきたのか。フレイアリーズの全体像や歴史の概略に絞って取り上げてみたい。
フレイアリーズの解説
フレイアリーズ(Freyalise)はドミナリア次元テリシア出身のハーフエルフ女性のプレインズウォーカーである。メインの色は緑に属している。
誕生は氷河期のAR25世紀頃で、2000年以上にわたってドミナリアの森の守護者としてフィンドホーンやラノワール、スカイシュラウドなどで献身し、AR4500年に亡くなっている。フレイアリーズの成し遂げた最大の貢献と言えば、ドミナリアを数世紀にわたり氷に閉じ込めた氷河期を大呪文「世界呪文(Worldspell)」によって終結させた偉業であろう。
ラノワールの憤激、フレイアリーズ(Freyalise, Llanowar’s Fury)はカードセット「統率者2014」において、フレイアリーズをプレインズウォーカー・カードとしてカード化したものだ。旧世代プレインズウォーカーが大修復前の姿でカード化された最初の1枚でもある。
フレイアリーズの外見
この節ではフレイアリーズの外見の変遷を解説する。実はフレイアリーズはその姿を氷河期とそれ以後では大きく変えているキャラクターなのだ。
ほとんどのMTGユーザーが思い浮かべるフレイアリーズの外見はカードのイラストに描かれているものだろう。しかし、それはインベイジョン・ブロック期に再登場した際のリデザインされた姿だ。コミック版アイスエイジでは全く違ったイメージを抱く姿をしている。
プレインズウォーカーの灯点火前の姿
まず最初のフレイアリーズは、プレインズウォーカーの灯が点火する前のイラストだ。AR25世紀頃のストーガード氷河王国、宮廷魔導士フレイアリーズの全身図である。
円錐形の兜と鎧で全身を固め、剣を携えている。この剣は天界の剣(Celestial Sword)である。
そして、中でも特徴的なのが背面だ。毛皮で出来たマントとも母衣(ほろ)ともつかないものを装着している。これは単なる飾りなのか、毛皮の防寒具なのか判別しがたい(コミック作中には特に説明のない装備である)。
プレインズウォーカー(氷河期)の姿
そして、プレインズウォーカーとなったフレイアリーズの姿がこれだ。このイラストはAR2934年の姿である。
氷河期のフレイアリーズは、ストーガードの宮廷魔導士時代と全く同じ鎧装束を身にまとっている。長髪であり、後のトレードマークとなる「眼帯」はまだしていない。
後ろに背負っていた毛皮装備が無くなった代わりに、背中からは葉の生い茂った大枝が張り出しており、まるで「植物の翼を持った戦天使」といったイメージのシルエットを形作っている。
この格好はコミック版だけの旧デザインという扱いではなく、正史となる小説The Eternal Iceでも全く同じ姿で登場している。つまり、このコミック版の姿は現在でも公式なのである。小説The Eternal Iceによると、氷河期末期ではフレイアリーズの着ている衣装はもう何百年も昔に見られなくなった様式のものだと説明されている。およそ5世紀前のストーガードのものだから納得である。
プレインズウォーカー(氷河期後)の姿
カードのイラストでお馴染みのフレイアリーズの姿は、短髪で右目に眼帯をしたエルフで、肩口がむき出しの緑のドレスと、緑の丈の短めのマントを羽織って、緑の手袋にロングブーツを履いている。衣服や装身具は植物や自然を思わせるデザインでまとめられている。「植物の翼の戦天使」から「森の妖精」へと華麗なる変身を遂げたのだ。
フレイアリーズのストーリー登場は、氷河期以後はAR4205年のファイレクシア侵略戦争期まで1200年ほど待たねばならなかった。その間のどこかで、フレイアリーズはカードイラストに描かれるような姿へとイメージチェンジしたことになる。トレードマークとなる特徴的な「眼帯」はここでやっと装着するようになった。
ちなみに、この「眼帯」がどういうものか?そもそも眼帯をした右目は失明しているのか?その辺は別記事でまとめている。
また、フレイアリーズの歌(Song of Freyalise)のイラストを見ると、灯の点火前のイラストと構図がそっくりなことに気付かされる。2つのイラストを並べて比較してみよう。
ちなみに点火前の全身図はコミックでのフレイアリーズの初登場シーンである。並べると格好の違いが一目瞭然であるが、フレイアリーズのポーズがそっくりなのが確認できた。ただし、右腕の位置が違っていて、左イラストの身体に引き寄せられた腕は点火前の頑な心情を、右イラストの開かれた腕は森の民を受け入れ守る余裕を、それぞれ表しているようにも思える。
ラノワールの憤激、フレイアリーズの姿
カードセット「統率者2014」でカード化されたフレイアリーズは基本的にリデザイン・バージョンでありつつも、コミック版の生い茂る植物の翼の意匠を組み合わせた中間デザインでまとめられている。
氷河期以後でAR4205年までに、フレイアリーズはイメージチェンジしているが、ラノワールの憤激、フレイアリーズのイラストはその過渡期の姿なのかもしれない。
フレイアリーズと言うキャラクターの経緯
おしまいにフレイアリーズと言うキャラクターがMTG史においてどういった扱いであったかを語りたい。
※ この節ではフレイアリーズの設定やストーリーには詳しく言及していない。
初期のフレイアリーズ
フレイアリーズの初登場は1995年のカードセット「アイスエイジ」収録の各種関連カードである。カード名とフレイバー・テキストで森の女神として登場した。
カードセットにひと月ほど遅れたコミック版アイスエイジでは、フレイアリーズは主要登場人物の1人になった。シリーズ全4話中3話に登場してオリジンとプレインズウォーカーであること、宿敵テヴェシュ・ザット(Tevesh Szat)との戦い、氷河期を終わらせた偉大な功績が語られることになった。
1997年頃の公式サイト記事Encyclopedia Dominiaにおいて、フレイアリーズの設定は拡張されており、ラノワールのエルフとは氷河期以来ずっと深い関係にあるとの解説が公開された。フレイアリーズと眼帯が結び付けられたのはここからだ。
ここまでの期間、フレイアリーズ本人はコミック版アイスエイジを除いて登場していない。カードや記事でフレイアリーズが言及される場合はフィンドホーンやラノワールを守護する女神としてであり、プレインズウォーカーである事実に踏み込むことすらほぼなかった。
そして、フレイアリーズのストーリー上の露出や設定の更新はここでしばらく打ち止めとなる。記事Encyclopedia Dominia以後、2000年のインベイジョン・ブロック開始までフレイアリーズの再登場も情報更新も全くなくなってしまうのだ。
フレイアリーズの不在期
1997年のカードセット「ウェザーライト」ではラノワールが舞台の1つ、かつ緑の代表地となっており、短編集Rath and Stormではラノワールの解説がされたり、短編集Rath and Stormでラノワールでのストーリーが短編作品になっていた。だが驚くことに、森の守護神フレイアリーズに関して全く触れられなかったのだ(名前すら出されてない)。
1999年のカードセット「ウルザズ・デスティニー」と小説Bloodlinesでも扱いは変わらず。ラノワールに出番は少ないもののスポットライトが当たったのだが、この時もフレイアリーズに言及はなかった。
こんな具合でフレイアリーズの存在が最新ストーリーに浮かび上がる機会は一度も与えられなかった。これが2000年以降の再登場から少し事情が変わってくる。
フレイアリーズの再登場
2000年に発刊された小説The Eternal Iceと小説The Shattered Allianceではフレイアリーズが初登場から5年振りに登場している。この2作品はドミナリア氷河期の正史を描いたもので、カードセット「アイスエイジ」と「アライアンス」の範囲を扱っている。コミック版アイスエイジを下敷きにし、別視点から語り直されたストーリーであった。本質的にはこの小説シリーズは過去の焼き直しであったので、本格的な再登場はすぐ後のインベイジョン・ブロックである。
2000-2001年のインベイジョン・ブロックのストーリーで、フレイアリーズはリデザインされた姿で再登場し、ファイレクシアと戦うためにウルザが招集したナイン・タイタンズのメンバーとなった。この大戦争のストーリーにおいて、タイタンズは9人中7人が死亡したがフレイアリーズは生き残った。
カードのイラストに描かれたのはこの時が始めてだ。もちろんインベイジョン・ブロック小説三部作でも登場しており、この三部作はEncyclopedia Dominiaの各種設定を踏まえたフレイアリーズとラノワールのエルフの描写が初めてされた小説である。同時期には公式サイト記事でフレイアリーズや他のタイタンズが取り上げられることも何度かあった。
このインベイジョン・ブロック期にフレイアリーズの認知度は各段に上がった確かな感触があった。リデザインされた姿が優れていたからか?カードや小説で再登場し活躍したからか?公式サイト記事に取り上げられたからか?ストーリーで生き残ったからか?私が思うに、おそらくそれらは主因ではない。認知度上昇の最大の原因は、強力な有名カードにフレイアリーズのイラストと名前が載ったからだ。
破滅的な行為(Pernicious Deed)はカードセット「アポカリプス」のカードで、当時は全体除去としてよく使われ、非常に人気が高かった。フレイアリーズのイラストが描かれ、フレイバー・テキストにはフレイアリーズの名前が記載されている。このカードが競技シーンで度々登場したおかげで、フレイアリーズの姿と名前が印象づけられ、彼女の認知度向上にかなり大きく貢献していたと思われる。
フレイアリーズの退場
それからおよそ5年後の2006-2007年、時のらせんブロックのストーリーでフレイアリーズは再々登場している。ただし、この時にスカイシュラウドの時の裂け目を塞ぐために命を捧げて最期を迎えた。カードセットではフレイアリーズの物語がほとんど見えてこないが、小説Time Spiralと小説Planar Chaosでは詳しく語られている。
プレインズウォーカーとしてカード化されたのはさらに後で、初登場から19年後の2014年のカードセット「統率者2014」でのことだった。
フレイアリーズはストーリーの舞台から退場してしまったが、それ以降もカードのイラストやフレイバー・テキスト、カード名に(まれではあるものの)登場し続けている。2019年には、日本公式サイトのコラム記事でマスコットキャラ的な扱いで登場したりもしていた(フレイアリーズの「グッとくる」マジック英雄譚)。
フレイアリーズはそれなりの人気を保ったまま、非常に息の長いキャラクターとなって生き続けている。
では今回はここまで。
フレイアリーズの関連記事
フレイアリーズの関連記事
カードセット「アイスエイジ」同期のキャラクターたち