新カードセット「エルドレインの森」が間近に迫って来たので、新ファイレクシア侵略戦争を振り返って、エルドレイン次元のおさらいをしよう。全4回シリーズの第2回。
前回記事はこちらに。
追記(2023年8月25日):カードセット「機械兵団の進軍」の統率者デッキのカードを見落としていたため、記事内に差し込んだ。
侵略戦争の第2段階:僻境の戦い
エルドレインは、アーサー王伝説をモチーフにした5つの「宮廷(Court)」から構成される「王国(The Realm)」と、童話モチーフの「僻境(The Wilds)」の2つの要素に大別される世界だ。
新ファイレクシアの侵略に対して、王国5宮廷は敗退し、多くの騎士たちがファイレクシアに改造されてその先兵に落とされてしまった(前回記事を参照)。
事ここに至り侵略戦争は第2段階を迎え、僻境のフェイたちが侵略軍と戦うことになったのである。フェイたち僻境の住人は、この地の魔法的な性質を利用した罠とゲリラ戦術を駆使して、ファイレクシア侵略軍に対抗していった。
本記事では、新ファイレクシア侵略戦争の第2段階:僻境の戦いを表現したカードを種族ごとに整理して列挙し紹介する。
僻境のフェアリー
エルドレインの僻境には、フェイと呼ばれる様々な形態のフェアリーやスプライトが暮らしている。
騎士団が敗退し王国が陥落したこの世界において、侵略者と戦う主体はフェイたちに移ったのである。
とげ刺しフェアリー
When the courts fell, Eldraine’s fae turned from their usual pranks to deadlier tricks.
宮廷が陥ちると、エルドレインのフェイはいつものいたずらから、より恐ろしい技に切り替えた。
引用:とげ刺しフェアリー(Prickle Faeries)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
とげ刺しフェアリー(Prickle Faeries)は、カードセット「機械兵団の進軍」に収録されたバトル・カードのエルドレインへの侵攻(Invasion of Eldraine)、その裏面となるクリーチャー・カードである。
このカードのイラストは武装フェアリー集団であり、ファイレクシアンに完成化したかつての宮廷騎士から姿を隠し隙を伺っている。
飛び回るゲリラ
飛び回るゲリラ(Flitting Guerrilla)はカードセット「機械兵団の進軍」に収録されたクリーチャー・カードである。
さて、イラストではフェアリーがファイレクシアンの手をすり抜けて飛び回っている。その一方、地面には左肩から血を流しうずくまる人が描かれている。
そして、カードのメカニズムに目を向けると、この飛び回るゲリラが死亡した時に、自分の墓地からクリーチャー・カードを回収してライブラリーの上に置く機能がある。
とすると、イラストのフェアリーは怪我をした人を助けるため、ファイレクシアンの注意を引きつけ自分の命を犠牲にした、と解釈が出来そうだ。
フェアリーの大群
フェアリーの大群(Cloud of Faeries)は、カードセット「機械兵団の進軍」の統率者デッキに再録されたクリーチャー・カードである。
初出はカードセット「ウルザズ・レガシー」だが、再録時にエルドレインのフェアリーを描いた新規イラストが与えられた。新ファイレクシアの次元壊しの大枝や培養ポッドといった侵略兵器も確認できる。
光素を漁る者
光素を漁る者(Halo Forager)はカードセット「機械兵団の進軍」に収録されたクリーチャー・カードである。
「光素(Halo)」とはカペナ次元の天使に由来する液体だ。何世紀も昔、カペナ次元は当時のファイレクシアの侵略を光素によって撃退した歴史がある。時は流れてAR4562年、新ファイレクシア侵略戦争が勃発し、カペナ次元は再び侵攻を受けたものの、新ファイレクシアのカペナ方面軍を退けることに成功した。カペナの天使たちは多元宇宙に旅立ち、侵攻を受けている他の次元にファイレクシアと戦う新たな武器として「光素」をもたらしたのだった。
このような経緯を経て、エルドレイン次元も「光素」を手に入れた。このカードのフェアリーたちは、丸いガラスのボウルに「光素」を探して集めているのである。この時点でもうカペナの戦いは決着しているはずなので、このカードはエルドレインの侵略戦争でも後半あるいは終盤の時期のものと考えられる。
僻境のエルフ
エルドレイン次元のエルフは僻境の住人であるが、王国でも確認ができる種族だ。
王国において、少なからずエルフが暮らしているのは黒の宮廷ロークスワインの空飛ぶ城であった。だが、侵略戦争の第1段階でロークスワイン城は陥落し、エルフのアヤーラ女王もファイレクシアの軍門に下ってしまった。
僻境のエルフは、改造されたかつての同族をも相手に戦わなければならなくなった。
野生林の随員
With Eldraine’s human knights called away to defend the courts, lost travelers were surprised to find themselves whisked to safety by the secretive folk of the wilds.
エルドレインの人間の騎士が宮廷を守るために呼び出されため、道に迷った旅の者たちは、秘密主義たる野生の民に安全なところまで運ばれていたことに驚いた。
引用:野生林の随員(Wildwood Escort)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
野生林の随員(Wildwood Escort)はカードセット「機械兵団の進軍」に収録されたクリーチャー・カードである。
イラストでは、巨大な狐に跨った、僻境住みのエルフが人を拾い上げて助けている。画面の向こうには、ファイレクシアの侵略兵器である培養ポッドが設置され、僻境内部にまで敵の手が及んでいる事実が見て取れる。
野生林の随員のカード名とフレイバー・テキスト
このカードはエルドレイン次元に属するものだが、和訳製品版ではそういう背景が十分に汲み取って訳されていない。カード名とフレイバー・テキストがエルドレインらしくないのだ。
具体的言うと、カード名の「Wildwood」とフレイバー・テキストの「the wilds」がそれぞれ「野生林」と「野生」と翻訳されている。ここが間違いだ。
エルドレインにおいては「The Wilds」とは「僻境」が定訳として当てられており、騎士の「王国」に対する童話の世界を指している固有名詞だ。
そして、カード名「Wildwood」の方は「僻森」と訳された言葉だ(カードセット「エルドレインの王権」に僻森の追跡者(Wildwood Tracker)という先例がある)。
ちなみに、フレイバー・テキストには単純なミスもある。本来は「呼び出され『た』ため」だったであろう部分が、「呼び出されため」と脱字しているのだ。
エルドレインの人間騎士団が宮廷防衛で呼び出され、旅人たちは途方に暮れた。だが驚いたことに、秘密主義たる僻境の民が安全な場所まで連れて行ってくれたのだ。
フレイバー・テキストを整理して、意訳含みで訳してみた。
次元外からの侵略の危機に直面したことで、「王国」と「僻境」の垣根を越えた協力関係が構築され始めている。
僻境のレッドキャップ
レッドキャップはエルドレイン次元のゴブリン種で、僻境の住人である種族だ。
レッドキャップの踵斬り
Biffle was delighted to have an excuse to use the nice cutlery he’d liberated from Edgewall.
エッジウォールからくすねた上等なナイフを使用する口実ができ、ビッフルは喜んだ。
引用:レッドキャップの踵斬り(Redcap Heelslasher)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
レッドキャップの踵斬り(Redcap Heelslasher)はカードセット「機械兵団の進軍」に収録されたクリーチャー・カードである。
イラストでは、レッドキャップがナイフでファイレクシアンの踵を斬りつけている。
フレイバー・テキストによると、このレッドキャップの名前はビッフル(Biffle)で、ナイフはエッジウォールの街で入手したものだ。
また、和訳製品版のフレイバー・テキストでは「上等なナイフ」と訳されているが、原文の方では「the nice cutlery」つまり「上等なカトラリー」である。カトラリーなのできっと、ナイフだけでなく、フォークやスプーンまでの一式を頂戴してきたのであろう。
僻境のマーフォーク
エルドレイン次元のマーフォークはウンディーネ(Undine)と呼ばれる。
湖に潜む者、エムリー
湖に潜む者、エムリー(Emry, Lurker of the Loch)は、カードセット「機械兵団の進軍」の「多元宇宙の伝説」という特別枠として再録された伝説のクリーチャー・カードである。
エムリーはウンディーネの女性。イラストでは、水中でファイレクシアンと戦っている。
寛大な夜明け、ラシエル
寛大な夜明け、ラシエル(Lathiel, the Bounteous Dawn)は、カードセット「機械兵団の進軍」の「多元宇宙の伝説」という特別枠として再録された伝説のクリーチャー・カードである。
初出はカードセット「統率者レジェンズ」初出の伝説のクリーチャー・カードで、当初は出身次元は不明であった。
「多元宇宙の伝説」として再録された際、カード枠のデザインがエルドレイン組と同じであったことから、エルドレインのユニコーンであると判明した。
僻境へのファイレクシア侵攻
僻境に対する新ファイレクシアの侵略の影響は、カードセット「機械兵団の進軍」において以下2種のカードとして表現されている。
2種類ぽっちで詳しい状況がハッキリしないのだけれど、そもそも「機械兵団の進軍」は侵略を受けた次元が多すぎたため、エルドレイン次元に割り当てられた枠自体が少ないのだ。
茨森の滝
Deep in Eldraine’s wilds, strange eyelike appendages twined among the vines and faerie lights.
エルドレインの自然の奥深く、蔓やフェアリーの光のはざまで目のようなものを生やした怪しげな脚が身をねじらせている。
引用:茨森の滝(Thornwood Falls)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
茨森の滝(Thornwood Falls)はカードセット「機械兵団の進軍」に再録された土地カードである。
新ファイレクシアの侵攻により、僻境の地形の一部は改造され、機械と有機物の融合した異様な風景となった。
光る眼のような先端部を持つ機械的な肢が、地面でのたくり絡まって伸び、あるいは天を向いてうねうねと林立している。これらの眼と肢は、新ファイレクシアの青陣営的な雰囲気がある。
そして、イラストの画面奥が高台で、手前に来るに従い段々に低くなっている。角張った人工の貯水プールの段々畑は、おそらくかつては自然な川の流れであった。奥が靄で煙っているためよく見えないが、「滝」はあの奥で流れ落ちているのだろう。
こちらの茨森の滝は、カードセット「エルドレインの王権」に再録されたバージョンのイラストだ。こういう自然な地形がファイレクシアに改造されて、上記のような人工的で不気味な場所に変えられてしまったのだ。
最後に、フレイバー・テキストに目を向けると、「Deep in Eldraine’s wilds」が「エルドレインの自然の奥深く」と訳されている。普通なら何の問題もない文章であるけれど、ここはエルドレイン次元であるから、「エルドレインの僻境の奥深く」と読む方がより相応しい。
機械蜘蛛の順応
“Deploy the blightwidows. Rankle’s pests should make for a delicious meal.”
–Ayara, Furnace Queen
「荒廃後家蜘蛛を配備せよ。ランクルの害虫どもを御馳走してやろう。」
–炉の女王、アヤーラ
引用:機械蜘蛛の順応(Arachnoid Adaptation)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が本サイトの独自訳
機械蜘蛛の順応(Arachnoid Adaptation)はカードセット「機械兵団の進軍」に収録されたインスタント・カードである。
この「Arachnoid Adaptation」は「蜘蛛に似た形態への適応改造」を示しており、僻境のフェアリーに対処するために、今やファイレクシアンとなった女王アヤーラの命で配備された、異形の荒廃後家蜘蛛系人型ファイレクシアンを表現したカードであると考えられる。
さいごに
エルドレイン次元の侵略戦争を整理するシリーズその2はこれでおしまいだ。
侵略軍との戦場は「王国」から「僻境」へと移動し、フェイたちはファイレクシアンにゲリラ戦術を用いて抗戦した。長引く戦争は次なる第3段階、「忌まわしき眠り」の魔法へと変遷していくのであった。
では、今回はここまで。
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