新カードセット「エルドレインの森」が間近に迫って来たので、新ファイレクシア侵略戦争を振り返って、エルドレイン次元のおさらいをしよう。全4回シリーズの第4回(最終回)。
第1回記事はこちらに、第2回記事はこちらに、第3回記事はこちらにある。
侵略戦争の第4段階:戦後
連載シリーズ最終回は、新ファイレクシア侵略戦争の第4段階「戦後」である。戦争終結後のエルドレイン次元の状況を、開示されている情報を基に整理してまとめる。
戦後はカードセット「機械兵団の進軍:決戦の後に」が直接扱っている範囲であるが、本サイトでは更により厳密に範囲を定めた。カードセット「機械兵団の進軍」と、カードセット「エルドレインの森」の現在時間軸ストーリー、この間に起こっていたすべてが含まれる、とした。
すなわち、侵略戦争の第4段階:戦後は、AR4562年の新ファイレクシア侵略戦争の直後から、少なくとも6か月が経過した翌AR4563年、「エルドレインの森」のストーリー開始直前までとなる。1
本記事では「戦後の王国」と「戦後の僻境」の2つに分けて、順番に取り上げる。まずは「戦後の王国」である。
戦後の王国
エルドレインの王国は、侵略戦争により5宮廷が陥落した。
戦争が終結すると、王国を統べる崇王ケンリスと女王リンデンの葬儀が執り行われ、王国は戦後復興の道を歩み始める。
しかし、侵略軍を退けた「忌まわしき眠り」は、今やエルドレインの住人をも巻き込む呪いと化してしまっていた。
王国の前途は多難であった。
ケンリス王家の葬送
ケンリス王家の葬送(The Kenriths’ Royal Funeral)はカードセット「機械兵団の進軍:決戦の後に」に収録された伝説のエンチャント・カードである。
これはケンリス王とリンデン女王の葬儀を表現したカードである。
イラストの中央には、石造の棺が据えられ、周囲には王国の各宮廷からの弔問客が取り囲んでいる。棺の上の2体の像は、右がケンリス王で、左がリンデン女王である。棺には敬意を表してか何本もの剣が立てかけられており、左右にはこれから自分の剣を捧げようと歩み寄る姿もある。そして、床や壁にはまだ生々しい血痕が残されており、侵略戦争後間もない時期の出来事だと伺える。
こちらは特別版イラストの別バージョンだ。
イラストは違えども、描いている状況は通常版イラストとほぼ同じである。
平和の世継ぎ、ウィル
平和の世継ぎ、ウィル(Will, Scion of Peace)は、カードセット「エルドレインの森」で収録された伝説のクリーチャー・カードである。戦後のプレインズウォーカーの灯の喪失によって、プレインズウォーカーではなくなったウィル・ケンリスのカード化である。
崇王の息子ウィル・ケンリスは亡父アルジェナス・ケンリスの後継者として、新たな崇王を名乗った。ウィルは破壊されたアーデンベイル城からヴァントレス城へと拠点を移した。
山と積み上がった戦後処理のための書類を片付け、野に下り傭兵まがいと化した元騎士を懐柔するなどの対処をし、そうして仕事をしても、新たにエルドレイン中に広がり続ける「忌まわしき眠り」に関する報告がまた積まれていく……といった具合に身を粉にして働き、誰かがやらなくてはいけない地味で評価されにくい仕事をこつこつとこなしていった。
ウィルは崇王となるためのハイクエストを成し遂げたわけでもなく、統治者としての実績も、侵略戦争中の華々しい成果も何も持っていなかった。ゆえに人は彼を侮り「少年王」と呼んだ。
戦争の世継ぎ、ローアン
戦争の世継ぎ、ローアン(Rowan, Scion of War)は、カードセット「エルドレインの森」で収録された伝説のクリーチャー・カードである。戦後のプレインズウォーカーの灯の喪失によって、プレインズウォーカーではなくなったローアン・ケンリスのカード化である。
ローアンは双子の片割れウィルの味方で応援してはいたものの、正統な資格なしに崇王を名乗ることには内心快く思っていなかった。ウィルが世間に軽んじられることにも我慢がならず、ウィル自身もローアンの心情を汲み取ってくれない。そこに灯の喪失による違和感・不調が重なって、ローアンの内には表にぶちまけられない澱みが鬱積していった。
そうするうちにローアンは、人々に崇王と認めさせるには「忌まわしき眠り」の呪いを解いてみせればいい、と大博打に全額ベットで大逆転のような発想を抱くようになっていく。
訓練場
For those who survived, being prepared for the next crisis became one of the greatest virtues.
生き残った者にとって、次なる危機に備えることこそが最大の美徳のひとつとなった。
引用:訓練場(Training Grounds)のフレイバー・テキスト
上が英語原文。下が和訳製品版
訓練場(Training Grounds)はカードセット「機械兵団の進軍:決戦の後に」に再録されたエンチャント・カードである。初出はカードセット「エルドラージ覚醒」だ。
イラストに鍵穴デザインが確認できるため、ここはヴァントレス城内だ。ヴァントレスの魔術師がファイレクシアンの亡骸を魔法で操り、騎士はそれを相手に剣術の訓練をしている。
侵略戦争での反省を生かし、次の不測の事態に備えた鍛錬を積んでいるのである。
こちらは特別版イラストの別バージョンだ。
イラストは違えども、描いている状況は通常版イラストと全く同じである。
アヤーラの誓約者
アヤーラの誓約者(Ayara’s Oathsworn)はカードセット「機械兵団の進軍:決戦の後に」に収録されたクリーチャー・カードである。
アヤーラ女王の名を冠するロークスワイン騎士であるが、アヤーラの名を名乗るからには並々ならぬ覚悟がありそうだ。というのも、ロークスワインの女王であったアヤーラは、ファイレクシアに改造され、敵軍司令官となってエルドレイン次元を苦しめた人物であるからだ。改造後の行動はアヤーラの本意とは異なるとはいえ、戦争を経験したエルドレインの住人にとっては素直に飲み込むのは難しかろう。
イラストは、黒馬に騎乗したロークスワインの女性騎士である。騎士の他には、地面から突き出た大牙のような構造体、遠くに見える次元壊しの大枝など、機能停止した新ファイレクシアの遺物の数々が描かれている。
右奥のシルエットは、墜落しファイレクシアに改造を受けたロークスワイン城である。戦後は無人の廃墟となっているのか?それとも復興が試みられているのか?
こちらは特別版イラストの別バージョンだ。
こちらもロークスワインの女性騎士である。ファイレクシア的構造物(戦争の遺物か?)を剣で切り裂いている。騎士の右腕を注視すると、左腕に比べて細い上に、肩の付け根が球状で、肘関節は丸い金属だ。おそらくは侵略戦争時に右腕を失っており、機械の義腕になっているのだ。
紅蓮鎚、イモデーン
紅蓮鎚、イモデーン(Imodane, the Pyrohammer)は、カードセット「エルドレインの森」に収録された伝説のクリーチャー・カードである。人間女性。
終戦から少なくとも6か月の間、イモデーンは山賊まがいの集団の頭領に落ちぶれていた。村を脅かす略奪団から守ってやるとの名目で貢がせていたものの、その略奪団はイモデーンの旗を掲げる自作自演だったのだ。
イモデーンは王国には強い支配者が必要とされていると考え、遂にはイモデーン女王を自称するほどになる。
次の節では、僻境の様子を確認しよう。
戦後の僻境
三魔女姉妹は終戦を迎えても尚、「忌まわしき眠り」の魔法を解除せずに継続することを選んだ。
侵略者の魔手から世界を救った魔法は、エルドレイン次元の住人を蝕む、永久の眠りの呪いへと変貌してしまった。
紫色をした靄のような眠りの魔法が、じわじわとエルドレイン全土へと拡散し、取り巻かれた者を目覚めぬ眠りに落としていったのである。
穢れの大釜、アガサ
アガサはダンバロウの地の魔女小屋にて、魔法の大釜を駆使した様々な調理の可能性に挑戦していった。不用意な者はこの恐ろしき魔女の餌食となるであろう。
氷冠のヒルダ
ヒルダは野心的な気質の他の姉妹たちとは異なり、ただ平穏で静かな孤立を望んでいた。
ヒルダは氷冠の魔力を用いてロレント湖の畔に氷の城を築いて閉じ籠った。
ヒルダの氷の王国は拡大し続け、全てのものを氷結させると共に、凍え死なせていったのである。
魔法の林檎のエリエット
エリエットは臣下からの称賛を欲していた。魔法の林檎の力で相手を服従させたり、目覚めぬ眠りに落ちた者たちを意のままに操った。
無人の廃墟となっていたアーデンベイル城は、いまやエリエットの根城となった。
魔女王エリエットは王座の間にて、眠れるアーデンベイル騎士たちを傅かせていた。
忌まわしき干渉者、アショク
忌まわしき干渉者、アショク(Ashiok, Wicked Manipulator)は、カードセット「エルドレインの森」で収録された伝説のプレインズウォーカー・カードである。
プレインズウォーカーのアショクは悪夢の専門家である。エルドレイン次元中に広がる「忌まわしき眠り」は、当然アショクの興味をかき立てた。
アショクはエリエットを同盟者に選び力を貸し与えると共に、次元を覆っていく「忌まわしき眠り」の悪夢を存分に楽しみ始めたのであった。
慈愛の王、タリオン
フェイの王タリオンの計画では「忌まわしき眠り」は終戦後に解除するはずであった。しかし、協力関係にあった魔女三姉妹はタリオンの要求を拒絶し、賜物として与えた魔法の物品を濫用したのである。
こうした経緯を経て、タリオンは「忌まわしき眠り」の呪いを解くために、有望な者に三魔女姉妹を退治するクエストを課すようになるのだった。(連載ストーリーでは、イモデーンとケランが別々にクエストを受けていた。それ以前にも、他にクエストに挑み失敗した者たちが居たはずだ。)
ベルーナ・グランドスコール
ベルーナ・グランドスコール(Beluna Grandsquall)は、カードセット「エルドレインの森」で収録された伝説のクリーチャー・カードである。雲の上のストームケルドの宮殿に住む巨人の女主人だ。
エルドレイン中の色々な宝を収集しているが、そのレパートリーを見ると通常ならば絶対入手不可能なものが含まれている。その1つは魔法の鏡インドレロンだ(イラストでは、ベルーナの玉座の後ろに飾られている)。
魔法の鏡インドレロンは王国の青の宮廷ヴァントレスの至宝であり、本質的に言えばヴァントレスの指導者でもある(とはいえ、インドレロンにその役目は向いていないため、魔法使いのガドウィックのような者が実質的な指導者としてヴァントレスを取り仕切っている)。そのような、至宝の鏡を持ち出すことなど決して許されはしないのだ。
まず間違いなく、ベルーナは侵略戦争中か戦後のどさくさに紛れて宝を手に入れたに違いない。この時期にはインドレロンに留まらず、方々から希少な品物をかき集めていたのだろう。
「エルドレインの森」の連載ストーリーでは、インドレロンをヴァントレスから運び出したのはゲラ・グランドスコール(Gerra Grandsquall)という人物だとされる。グランドスコールという名前からして、ベルーナの縁者か、ベルーナの別名であるかのどちらかだと考えられる。
さいごに
エルドレイン次元の侵略戦争を整理するシリーズ全4回はこれにて終了である。
拾い切れていない情報がまだあるかとも思うけれど、カードセット「エルドレインの森」のストーリー開始直前までのエルドレインの現状を知る助けとなれば幸いである。
では、今回はここまで。
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