南西ジャムーラ地域の地図作成の第2回目。(→前回記事)
小説Johan付属地図をベースに地理情報を書き込んでいく。現在の状態はこれ。
ここにさらに情報を追加していこう。今回はレジェンドサイクル1小説三部作の地理情報を反映する。
レジェンドサイクル1小説三部作の地理情報
レジェンドサイクル1小説三部作では街や島や山など沢山の地名が出てくるのだが、実は地図上の位置がハッキリと確定できる場所はそれほど多くはない。今回は小説中でも位置が明確に確定できる地名と、おおよその位置が分かっている地名を拾い上げてみよう。
小説1作目Johan
小説1作目Johanの物語はティラス(Tirras)の皇帝ヨハン(Johan)が南下して侵略を始めたことで動き出す。ヨハンはティラスとその周辺の都市国家や北の蛮族アイラーシ(Aerathi)や砂漠の遊牧民らを支配下に置いている。これらはまとめて「北方領域(Northern Realms)」1と呼称されている。
山岳都市のティラスがある山々をティラス山脈(Tirran Mountains)2と呼ぶ。この呼称は私の確認できた限りで小説中で1回だけ登場する。
アイラーシの蛮族が住まう青色山脈(Blue Mountains)3はティラスの遥か北と記されているが、広大な大山脈地帯のどこにあるか正確な位置は不明である。ちなみにアイラーシはジャムーラではなくドメインズ地方の地名4なので、青色山脈にはそこからの入植者が住んでいると考えられる。
一方、ヨハンに対抗し都市国家群が同盟を組んで侵略を阻む。トロロン川(River Toloron)の都市国家パルミラ(Palmyra)やブライス(Bryce)そして峨々海岸(Craggy Coast)の都市国家エネツ(Enez)、カラン(Kalan)、ヤーコイ(Yerkoy)だ。こちらの勢力は北方領域に対して「南部(Southern)」と称される。
都市国家群の中で小説付属地図に記載がないのがカランとヤーコイだ。カランの位置情報はほぼないため峨々海岸のどこかにあるとしか分からない。ヤーコイについては小説3作目Hazezonのところで改めて言及する。地図上の都市シャイバラ(Shaibara)は小説1作目の時点では参戦していないが後に共闘している。
沈める海(Sunken Sea)はスクールヴィア砂漠(Desert of Sukurvia)の地下に存在する地底海である。沈める海は水に満たされた地底トンネルでジェイマ海(Jaema Sea)方面とも繋がっている。ドミナリア次元には南西ジャムーラの他にもこういった地底海の存在が確認されている(オタリア大陸やテリシア地方)。
燧石山脈(すいせきさんみゃく:Flint Mountains)はスクールヴィア砂漠を一望できる高い山脈である。大山脈地帯南西部スクールヴィア側のどこかであると推測される。
本作中盤以降にはフィスマタン(Fysmatan)とルクレジア(Lucrezia)5という対立する2国絡みのエピソードが差し挟まれるが、静寂海のどこかくらいとしか言えないほどに位置情報がない。したがって、フィスマタンとルクレジアはその他の位置不明の地名も含めて次回に回す。
小説2作目Jedit
小説2作目Jeditでは途中から物語の舞台は移り、スクールヴィア砂漠と山脈地帯を挟んだ西側にあるアルボリア(Arboria)や付近の海岸へと宿敵ヨハンを追跡して主人公たちはやってくる。
ノスリ湾(Buzzard’s Bay)こと嵐海岸(Storm Coast)はアルボリアに近い海岸である。ジェイマ海の海岸の一部(おそらくアムローヘイブン(Amrou Haven)南西の湾曲部)と考えられる。この海岸は9か月のうち6か月が嵐が吹き荒れることから「嵐海岸」と名づけられた。渦巻く海面下にはギザギザの岩礁がそこかしこに隠れていて、数多の船が座礁し水死体が打ち上げられる。そういった死骸をノスリが地面で腹一杯についばんでいた様子から「ノスリ湾」とも呼ばれるようになった。作中ではノスリ湾呼びの方が一般的で、住人はノスリ湾人(Buzzard’s Bayman)ともっぱら呼ばれる(ごくまれに湾の民(bay folk)とかノスリ人(Buzzardman)などとも)。
魔女の堰(Wiche’s Weir)はノスリ湾の南の入り江(southern arm)である。
魔女の堰の街には船乗り波止場(Seafarer’s Quay)がある。レジェンドサイクル1三部作はカードセット「レジェンド」を基としていることから、同名の土地カードを指していることは明らかだ。
また、同じ街には冒険者ギルドホール(Adventurers’ Guildhall)が出てくるが、こちらはレジェンドのカードAdventurers’ Guildhouseのことであろう。ギルドホールとギルドハウスの違いはあるが、レジェンドサイクル1三部作全体を俯瞰してみると、これくらいの違いはよくある表記ブレとして許容できる。
魔女の堰の街から海岸沿いに南下するとフルマート砦(Fulmart’s Fort)があり、そこの海に流れ込む川を遡ってアルボリアの森の奥へと分け入るとショークー(Shauku)の住処へと到達できる。
希望岬(Cape of Hope)はノスリ湾の南端の岬でガラボス(Garaboss)の街がある。
山羊道(Goat’s Walk)はノスリ湾以南の海岸線。切り立った断崖で砂浜もなく上陸可能地点は少ない。
ノスリ湾と山羊道の正確な位置は小説の記述と地図を照らし合わせてもはっきりとはしない。ただし、個人的には上の添付図のように位置を推定してはいる。6公式地図が早くほしいものだ。
ノスリ湾から南に向かうには船を利用する。航行途中の海岸線には上陸できるポイントが限られているが羊の頭(Sheep’s Head)と呼ばれるはげた丘(bald knob)を超えると一転し、海岸線は東へと向きを変え峨々海岸へと至る。したがって、羊の頭は西ジャムーラ亜大陸の南西の角辺りに存在する地名と推測される。
小説3作目Hazezon
小説3作目Hazezonでは、敵の都ティラスで捕らわれた主人公ジェディットたちはヨハンの秘密工廠から飛翔船を奪取し、東に飛んで逃れるものの山中で墜落してしまう。飛翔船の金属が「磁力の山(Magnetic Mountain)」に引き寄せられて制御不能になってしまったのだ。磁力の山の位置は不明瞭だが青色山脈より明確に東である。
磁力の山(Magnetic Mountain)はカードセット「アラビアンナイト」収録のカードである。つまりドミナリアではなくラバイア次元に属するものだが、かつて東ジャムーラにはラバイアに繋がる複数の次元門が開かれていて熱砂や住人、文化、財宝そして魔法をもたらした。ドミナリアにもラバイアと同様の魔法的な山が存在していても設定上の破綻はない。
墜落したジェディットたちはパルミラやブライスに帰還する計画を立てる。ただし西の陸路は戦争状態で危険であるとして、遠回りになるが海路を念頭において旅程を考える。まず東に進めばミドマーシアン海(Midmersian Sea)へと行きつく、東西ジャムーラ亜大陸を繋ぐ地峡である瑪瑙橋(Onyx Bridge)を越えれば南には静寂海(Sea of Serenity)に面するイシャン湾(Bight of Ishan)である。そして、海路を西に向かって豊穣岬(Horn of Plenty)を回り込むとシャイバラ湾(Bay of Shaibara)でありそこにはヤーコイ(Yerkoy)がある。ブライスのある真珠江(Bay of Pearls)はシャイバラ湾のすぐ先だ。これが当面の帰還計画であった。
シャイバラ湾のヤーコイは、豊かな港湾都市との説明が小説三部作の別の箇所に見つかるが位置ははっきりとしない。小説Hazezonの記述順によれば、豊穣岬を回ってシャイバラ湾に至るとヤーコイがあり、再び密林と沼地が広がりその先にエフラヴァがあるという。この記述順通りに考えるなら、ヤーコイはシャイバラ湾の東海岸沿いでかつスカーウッドより南のどこかに存在していると考えられる。7
さて、小説Hazezonのまた別の部分では瑪瑙橋の街ガリディ(Gallidi)の存在が語られる。ミドマーシアン海唯一の港と解説がされているため、瑪瑙橋の北岸に位置すると考えられる。
レジェンドサイクル1三部作とほぼ同時期のインベイジョン・ブロック特設サイト地図には、ミドマーシアン海はジャムーラ海(Jamuraan Sea)と記載されていた。カードセット「ドミナリア」での公式ポッドキャストではミドマーシアン海の別名と解説されている。
現時点の状況
地図上に位置が確定している地名を追記した。
ミドマーシアン海(Midmersian Sea):ジャムーラの3つの亜大陸に囲まれた海。別名「ジャムーラ海(Jamuraan Sea)」。
瑪瑙橋(めのうきょう:Onyx Bridge):西ジャムーラと東ジャムーラの2つの亜大陸を繋ぐ地峡。
ガリディ(Gallidi):瑪瑙橋の都市。ミドマーシアン海に唯一存在する(と言われる)港。
イシャン湾(Bight of Ishan):瑪瑙橋の南側の湾岸。
豊穣岬(Horn of Plenty):イシャン湾とシャイバラ湾の間にある半島部の先端の岬。
シャイバラ湾(Bay of Shaibara):港湾都市シャイバラのある湾岸。
次回はレジェンドサイクル1小説三部作から、位置が分からない地名を取り上げてみたい。→次回
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ドミナリア地理:南西ジャムーラの地図作成おまけ
- Northern Reachesという表記ブレも1回確認できる。
- 「Tirran」とは「ティラスの」を意味する
- 青色山脈は作中で初めだけは「Blue Mountain」と単数形だったがその後は複数形の「Blue Mountains」に記述が変化する。この手の記述ブレはレジェンドサイクル1三部作では珍しくはない。
- アイラーシの発音と位置の出典はコミックの記述
- イタリア風に「ルクレツィア」とも読めるが、カードセット「ドミナリア」の公式ポッドキャストでの発音に倣った
- 小説Johan付属の地図ではこの辺の地形が文字の跡で消えているので、推定図には現代ドミナリア地図を利用した。
- 海外ヴォーソスの中にはヤーコイが国名である可能性を挙げる者もいる。港湾都市シャイバラを含む地域の国である可能性だ。しかし、ヤーコイとシャイバラがそれぞれ別の港湾都市と読み取れる記述があるため、私はこれには賛同しない。